※この作品はR-18です。

エルデンリングって何だよ   作:ポチ&タマ

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第40話 神授塔

 一夜が明け、いよいよカーリア書院へ。

 書院は塔の形をしており、ざっと五階建てのビル相当の高さがある。

 中に入ると、残留思念のお爺さんが居たが、何を言っているのかサッパリだ。大抵、よく分からん抽象的なことを言ってる気がする。

 一階正面には巨大な天球儀。二階と三階が書架となっており、夥しい量の書物が納められているのだが、至るところにクモの巣が張っているため、殆ど使われていないのだと分かる。

 

「なんかすげぇところだけど、絶対保管場所として適してないだろ此処」

 

 上から大量の水が流れ落ち、遥か下で湖並の水溜りを作っている。

 周囲には巨大な彫像が等間隔で設置されていたり、頭上にはシャンデリアが吊り下げられいて、とても豪奢で神秘的な景観なのだが、絶対湿気でカビとか出来るだろ此処。

 

「しかし、何処に置くんだ?」

 

 イジーさんの話によれば分かりやすい所にあるっぽいんだけど、それらしき場所が見当たらない。

 何故か梁の上まで梯子で登れるが、ネズミがうろちょろしているだけで、特に収穫はなかった。

 カーリアの亡霊なのか、所々で出現する青白い霊体をぶった斬りながら書院の中を隈無く探していた時、ついにメリナが発見。

 

「此処じゃないかしら」

 

 メリナが指し示したのは、一階の天球儀がある場所。

 天球儀の前には確かに、台座らしきものが置かれていた。

 早速【カーリアの逆さ像】を設置してみる、と。

 

「地震か?」

 

 建物全体を襲う揺れ。震度六程度の揺れを感じる。

 

「おぉ! なにこれかっけー!」

 

 安置されていた天球儀だが、突如ギミック音とともに中央の球体やその外周の輪が回転し始める。

 何周かグルングルンすると、すべての輪と赤道が一直線に重なり、やがてゆっくりと元のポジションへ戻った。

 中々見応えのあるギミックだ。試しに【カーリアの逆さ像】を台座から上げると、再び大きな振動が建物全体に伝わり、またもや天球儀がグルングルンし始める。

 

「⋯⋯」

 

 あまりにギミックが格好良すぎて、もう二回ほど天球儀をグルングルンさせたら、メリナに『いい加減にしなさい』と叩かれた。

 まあ、毎回地震並みの揺れに襲われたら、そのうち建物が崩壊するかもしれんしな⋯⋯。

 今度からストレス発散のため定期的に訪れようと密かに決心しつつ、何が変わったのか再度調べに出掛けたのだが。

 変化は分かりやすい形で現れていた。

 

「だから逆さ像なのか⋯⋯しかし、すっげぇな⋯⋯」

 

 二階に向かうとするも、あるはずの昇降機がなく。

 まさかと思って上をみたら、逆さまの状態で天井に待機していた。

 下を見ると、かろうじて足場となる場所はあるが、昇降機が通過する空間が闇となって広がっている。

 そして、道中気付かなかったが、丁度抜け道となる場所が出来ているではないか。

 どうやら、建物全体が逆さまになったらしい。ていうか、建物の構造ってどうなってんだコレ? 

 

「──うげぇぇぇぇえ! 何で此処にいんだよぉぉぉ!」

 

 アーチ状の通路の正面と両壁にいたのは、まさかのキモ生物ユビムシ。

 獲物を待ち構える蜘蛛のようにジッと張り付くその姿。思わず鳥肌が立つ。

 情けなく背中を向けていると、メリナとボックが始末してくれた。ありがとうでは言い表せないくらい、圧倒的感謝ッ! 

 

『まだユビムシが居るかもしれません。しばしお待ちを』

 

 そう言い姿を消したアレクトーは、一分ほどで戻ってくると片膝をつきながら『残りは全て始末しました。確認できる範囲にユビムシの影は御座いません』と報告してくれた。絶対的感謝ッ! 

 危うく探索を打ち切るところだった。ユビムシとかマジでふざけんなよ。レギュレーション違反だろこんなの! 

 メリナとラティナ、アレクトーにハグしてもらって精神を回復。ボックの頭を撫でてささくれた心を癒し、ようやく中に踏み込んだ。

 

「水が上に落ちて行ってるわね⋯⋯。どうなってるの此処の重力は⋯⋯」

 

「よく見たら、シャンデリアの鎖も下に向ってピンと張られてます。不思議な光景ですね⋯⋯」

 

 メリナとボックの言う通り、周囲に流ている水は上へと向かっており、シャンデリアも下から上へ。

 逆さ像で建物が上下に反転しているとしても重力はそのままだから、普通水もシャンデリアも下に向かうはずなのだが。

 何だか頭が混乱してきた。視ようと思えばその辺りの仕組みも解析出来るだろうけど、メッチャ頭痛するだろうから止めておく。

 

「ん? なんだアイツ⋯⋯」

 

 少し離れた場所にある逆アーチ状の足場。

 パッと見て幅三メートル、長さ二十メートルほどはあり恐らく支柱の一つと思われる。

 そんな逆さになった天井のド真ん中に居座っているのは、ツバの広い帽子を被った魔術師風の男。

 彼は俺の姿を認めると、徐ろに魔力で構成された大弓を右手に出現させた。あれは【ローレッタの大弓】か! 

 

「おいちょっと待て! こっちに交戦の意志はない!」

 

「⋯⋯」

 

「チッ、殺されても文句いうんじゃねぇぞ⋯⋯!」

 

 奴の返答は魔力による矢。殺意マシマシで放たれた矢をステップを踏み回避する。

 何だかんだ戦い慣れてきたボックやメリナも、危なげなく躱すと散開した。

 いつの間にか姿を消したアレクトーは存在感を限りなく薄くして暗殺を狙っている。一郎たちはぐれ狼組も参戦したがっているが、此処は足場的に不利なためハウス。ラティナは遠距離狙撃での援護に徹してもらう。

 

 こうして“雷斗の愉快な仲間たち”によるアシストを得た俺は、長刀を手に疾走。

 無駄に美しい彫刻が施された凸凹の足場だが、葦名流走術の一つである【狐走り】で危なげなく走り渡る。

 

「⋯⋯っ」

 

「ハッハァ! やり辛そうだなァ! 戦いは数だぜ兄貴ィ!」

 

 遠距離魔術の【ローレッタの大弓】や【カーリアの連剣】で近付かせないようにしているが、ラティナやボックの狙撃で強制キャンセルさせられている。

 その上、メリナも接敵しているから狙いは二分の一。結果、迎撃しようにも中途半端な形で終わってしまう。

 

「オラ、懐に入られたぞ。どうすんだ魔術師さんよぉ!」

 

「⋯⋯!」

 

 我流刀術──疾走連斬! 

 走りながら水平斬りと逆水平斬りを連続で浴びせる。通常とは異なり押し斬りのため、斬る度に押し退けているから常に間合いを確保する形になる。

 杖を縦に構えて怒涛の連撃から身を守るが、圧力に負けて後退を余儀なくされる魔術師。

 あっと言う間に壁を背にした魔術師へ引導を渡すべく、剣閃を跳ね上げたその時。

 

「お?」

 

 懐から取り出したスクロールで姿を晦ました。いや、短距離転移の魔術か! 

 背後を振り返ると、最初に位置していた場所へ転移した魔術師は、その輝石杖を掲げる。

 が──。

 

「ナイスタイミング」

 

 身を潜めて機会を窺っていたアレクトーの黒き刃が、鎖骨から心臓に向けて突き刺さり。

 同じく接敵していたメリナは、祈祷【聖律の光】で聖属性を付与した短剣を心臓に突き刺した。

 前後からの挟み打ちくかつ、どちらも致命傷。

 吐血した魔術師は力なくその場に倒れた。

 

「結局何だったんだろうな、コイツ」

 

 最期の最期まで一言も発することなく死んだ魔術師。

 ここで何をしていたのか。何故、俺を襲ったのかも分からないが、問答無用で襲ってくるのはいつものことかと考え直す。

 

「さて、引き続き先に進むぞ」

 

 気を取り直して、再び道なりに進んで行き。

 シャンデリアを足場に下の階へと降りる。

 

「おっ、此処だけまともだ」

 

 ネズミが彷徨いていた梁に飛び乗り、その下の階の中央に設置された足場に飛び降りる。

 半径二メートルほどの広さはある八角形のエリア。周囲には落下防止柵があり、中央には見慣れた踏み台式の板。

 板を踏むと、小気味よい音を立てて床が下がり、下の階へと下っていく。逆さだから、この場合上昇しているのか? 

 

 やがて、塔の天辺付近に到達。周囲は薄暗く、一部のシャンデリアとトーチがぼんやりと照らしている。

 逆さになった銅像が等間隔で配置されている中、巨大な両扉が目に入った。

 ここの扉も逆さまであり、力を籠めると重い音を立てながらゆっくりと開く。

 

「外だ……」

 

 扉を抜けた先は巨大な橋が続いていた。

 

 

 

 1

 

 

 

 石畳の大橋だ。橋の両脇には騎士などの巨大な石像が等間隔で並べられているが、ほとんどは顔や上半身など損壊している。

 トレントに乗って橋を進むと、光りを宿した石──“遺跡石”や“神殿石”が道しるべのように転がっており、奥に聳え立つ巨大な塔へと誘っている。

 やがて、橋の半ばまで到達すると──。

 

「むっ?」

 

 紋章のようなものが浮かび上がり、黒炎を巻き上げながら一人の男が現れた。

 非常にふくよかな男性だ。というか、超肥満体と言っていい。その上、身長は二メートルを超えている。

 白いフードを被り前掛けのような服を着ているが、肌が病的なまでの白さだ。

 ていうか、コイツが着ている服って人の肌を縫い合わせたものじゃん! 前掛けには複数の不気味な顔が浮かんでるし! レザーフェイスかよ! 

 

「神肌の貴種……っ!」

 

 メリナは何か知っているようだが、デブ男が右手に灯した炎を投げつけて来たので緊急回避。

 ていうか、黒炎!? 黒炎を使う奴なんて初めて見たわ。

 ちなみに俺も使えるけど、メリナが炎嫌いだから控えてたりする。

 

「なんなんだコイツ」

 

 再びファイアーボールしてきたため居合で斬り裂くと、左手に持つレイピアを華麗に振るってきた。

 体重が乗った重い斬撃だ。受け流しながら返す刀で斬り掛かるも、意外と身軽なフットワークで距離を開けられる。

 

「神肌の貴種……。かつて運命の死たる宵眼の女王に仕え、黒炎を授かって神を狩った者たちよ」

 

「神狩りってことか」

 

 しかも宵眼の女王って、記憶を失う前の俺を攫った奴だよな。その部下が一体何の用だってんだ? 

 中々骨が折れそうな相手のようだから、久しぶりに目隠しを取る。

 目隠しありと無しなら、後者の方が断然けた違いだ。例えるならカ〇シが写〇眼を発動するようなもの。

 情報量に気を付けながらいつでも斬り掛かれるように、鯉口を切っていると──。

 

「…………」

 

 一瞬固まったデブ男は、小さく首を傾げた。

 そして、レイピアを仕舞うと、トテトテと擬音が聞こえてきそうな足取りで近づいてくる。

 さっきまで感じていた敵意や殺気が霧散しているんだが……え? 何事? 

 

「な、なんだ?」

 

 俺の間合いの丁度外。後一歩で間合いに入る、という絶妙な距離で立ち止まったソイツは、フードで顔を隠しながらジッとこちらを見てくる。

 やがて、彼の中で得心がいったのか。恭しく頭を下げると、黒炎を身に纏い、一瞬で姿を消してしまった。

 妙に品性を感じさせるデブ男だったが……結局なんだったんだ? 

 

「……もしかしなくても、宵眼に目を付けられた?」

 

『その可能性はあるな。宵眼の女王が主を手放した理由は不明だが、不本意な結果なら……』

 

 メリナとアレクトーの推察は聞かないことにする。

 あー、すっげぇ面倒な予感がすんなぁ! 

 

 

 

 やがて、橋を渡り切り、ピザの斜塔のような厳かな石造りの塔に辿り着いた。

 

「此処が神授塔……」

 

 メリナの言葉を聞き、地図を開く。

 カーリア書院の先にある丸い建物の図。そうか、これは神授塔のマークなのか。

 神授塔は全部で六つあるようなのだが、地図を見るとどうも中央の海を基点に六角形を形成しているように見える。

 試しに、解析眼で塔全体を視てみると──。

 

「──塔そのものが結界の楔になってるのか」

 

 塔が結界を構成する楔の一つであることが分かった。

 各地に散らばる神授塔が結界を作っているのは間違いないのだが、何を封じているんだろうな。

 

 塔の中に入ると、またもやお馴染みの支柱型昇降機が。

 天辺まで結構距離があるようで、他の昇降機に比べるとそこそこの時間を要して上層階へ。

 道なりに進むと祝福があるのだが、そこから見える景色は圧巻の一言だった。何より、黄金樹がすげぇ近くに見える。

 こうしてみると、黄金樹って霊的な存在っぽいな。うっすらと透けてみえるし、根元の方は朧げだし。

 

「うわぁ、ここからだと黄金樹がすごい近いですね」

 

 ポックも感動しているようだ。けど、驚き方が、富士山が見えた観光客のそれなんよ。

 黄金樹の方を指差したメリナは、静かに口を開いた。

 

「見える? 黄金樹の向こう側にある城。あれが黄金樹の麓。王都ローデイルよ」

 

「王都ローデイル……。ていうことは、あそこが目的地ってことか」

 

「ええ。そのためにはデクタスの大昇降機を使ってアルター高原に行かなければならないわ」

 

 まだまだ先は長いわね。そう言うと、一人先に進んでいくメリナ。メリナのためにも、さっさと他の大ルーンを手に入れてローデイルに向かわないとな。

 その後、道なりに進み最上階に辿り着いたのだが。

 

「……焼死体?」

 

 開けた空間の中央には、何故か黒こげの女性が横たわっていた。

 身長はおよそ二メートルほど。襤褸切れを纏っており、髪は焼け焦げてしまっているが、赤髪が確認できる。

 腕には煤けた赤のバングル、首にはペンダントのようなものを付けている。

 そして、その焼死体の側にはムカデのような形をした【死の呪痕】と、【星見少女の伝承】のタリスマンが転がっていた。

 

「──っ」

 

【月の王女ラニの、棄てた肉体に刻まれた呪痕。

 百足傷の欠環とも呼ばれる呪痕は、デミゴッド最初の死に刻まれ、円環を成すはずである。

 だが、デミゴッド最初の死者は二人あり、呪痕は2つの欠環となった。

 ラニは肉体だけの最初の死者であり、ゆえに死王子は魂だけの最初の死者なのだ】

 

【死の呪痕】を手にした途端、久しぶりに解析眼の暴走が……! 

 比較的表層の情報だけを捉えたため程度は軽いが、暴走は勘弁してくれ。頭と心に悪い。

 

「って、ラニ様に刻まれた呪痕? っていうことは、この焼死体……まさか、生前のラニ様!?」

 

 なんという惨いお姿に⋯⋯! 

 何故、ラニ様が俺に【カーリアの逆さ像】を託したのか、ようやくその真意が分かった。

 ラニ様は生前のご自身を手向けて欲しかったんだ。無惨に焼け焦げ放置されたご自身の体を、埋葬して欲しかったに違いない。

 その役目をブライヴやイジーさんではなく、俺に託した。それこそ、ラニ様一の従者と認められたからに他ならない! 

 

「⋯⋯っ、ラニ様! 御身のご遺体は、この雷斗が、責任を持って埋葬致しますッ!」

 

 ラニ様が座す魔術師塔の方角へ敬礼した俺は、魔術【ハイマの大槌】で床を堀ると慎重にラニ様のご遺体を埋め。

 

「よいしょっ、と」

 

 墓標の代わりに【暗月の大剣】を突き刺した。元の持ち主はラニ様だし、正式に賜ったものじゃないからな。

 自然と手を合わせそうになるが、ラニ様の魂は健在であることを思い出し、合掌はしないでおこう。

 

「それにしても、このタリスマンってラニ様のことじゃないよな?」

 

【女王の伝承が刻まれたタリスマン。知力を高める。

 星見の少女は、夜空を見上げ歩いた。

 ずっとずっと、星を追って旅をした。

 そして満月と出会い、女王となった】

 

 ラニ様は女王ではないから彼女の伝承でないことは分かるけど、なら何故コレをラニ様が持っていたんだろう。偶然? 

 ラニ様も夜と星を信仰しているのは俺も知っているけど、満月と出会ったという女王とも関連しているのか? 

 

 まあいいや。取り敢えずラニ様に報告しよう。

 神授塔の祝福からラニ様の魔術師塔へ跳んだ俺は、主の意向通りに埋葬してきたぜ! と報告しに来たのだが──。

 

「ラニ様がいねぇっ!?」

 

 いつも腰掛けていた椅子に本人の姿はなく。

 俺の叫び声が無人の魔術師塔に響き渡るのてあった──。

エルデンリングはどこまで知っている?

  • ストーリー考察含めて大体熟知している
  • 本編クリア済だが難しくてよく分からん
  • 本編未プレイだが、考察動画で大体履修済み
  • 大雑把な概要だけ知ってる
  • タイトルは聞いたことがある
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