一気に加速するぜ。
第一回騎竜選手権は厳選なる審査の結果、輝石竜スマラグくんちゃんに決定した。
持ち時間一分で各々アピールポイントを示してもらい、審査員がジャッジするという仕組み。審査員はもちろん俺。
皆、自分の強みを活かした戦力的視点からアピールしていたが、スマラグくんちゃんは戦闘が苦手で逃げ足の速さをアピール。飛行速度も他の竜たちに比べて一段と早かったため、俺のニーズにマッチしていると判断した。
初代騎竜がただの飛竜では格好が付かないだろうから、特別に加護を与えると、スマラグくんちゃんも随分スマートに進化。
頭部や胴体を蝕んでいた輝石が綺麗に剥がれ落ちると、ユニコーンのように一際長い輝石が頭部に、翼角と呼ばれる翼の曲がった箇所と尻尾に鋭い輝石が生えた。
魔炎竜となったアデューラとボレアリスには及ばないものの、この場に集った竜の中では断トツの力を得たスマラグ。
それでも生来の気質は変わらず、相変わらず戦闘は苦手意識を持っているようで、俺的にほっこり。
早速、スマラグくんちゃんに乗せてもらおうと思ったのだが、騎乗するにも
俺のカンストステータスなら力押しでいけなくもないだろうが、力加減を誤って首の鱗を割ったり、最悪首を圧し切る可能性もなくはない。
なので今回はモン◯ン式移動術、足に捕まって異動することにした。
「じゃあスマラグ、頼む」
「グォ」
スマラグくんちゃんに運んでもらう先は、ラニ様の目的地、大教会。
標高数千メートルはある切り立った崖の上に位置しており、普通ならラニ様のようにノクローン経由の地下ルートでしか行けない秘境の地なのだが。
折角、飛べる子がいるんだから、お願いしない訳がないよね。ということで、此度スマラグくんちゃんの力を借りて超ショートカットを決行した。
ボックを肩車しながらスマラグの足に掴まり、しばしの遊覧飛行。
ていうか、飛んでる途中で気付いたんだが、しろがね村って此処の崖下にあったのか。
「高いですねぇ〜!」
「ボックは高いところ大丈夫なん?」
「あ、はい! むしろオイラ、高いところ好きなんです!」
風を切る音が耳元で鳴る中、確かにボックの目が輝いているように見える。
ちなみにメリナは霊体化した状態で、俺の後ろに抱き着く形でついてきていた。
「うわぁ⋯⋯すごくきれい⋯⋯」
辿り着いた場所は非常に神秘的なところだった。
色鮮やかな花々がそこらかしこに咲き乱れ、リスやシカ、イノシシなどの野生動物がのんびり寛いでいる。
そして、何よりも神秘的なのは、頭上に輝く大きな満月と、幾重にも伸びる月の光。
まるで大地に突き刺さる剣のように、青白い月の光が地上に向って伸びているんだ。月も、手を伸ばせば届きそうなほど近くにあり、月のクレーターがしっかりと見える。
メリナも幻想的な光景に目を奪われていて、うっとりとした表情を浮かべている。
「⋯⋯ん?」
しばし、神秘的な光景を楽しんでいた俺だが、何者かがこちらに向って走り寄ってくるのを視界の隅で捉えた。
いつぞやのミリセントを彷彿とさせる、赤い体の剣士──いや、ブライヴだ!
使い込まれた黒騎士の鎧を身に纏い、無骨なグレートソードを手に走るブライヴは、殺意に満ちた目をしている。
「おい、どうした!?」
問答無用で斬り掛かってくるブライヴ。バックステップで回避すると、影から姿を現したアレクトーがブライヴの背後を取り急所を狙うが、豪快に大剣を振るい無理矢理間合いを稼いだ。
「止めろアレクトー! おいどうしたんだよブライヴ! ラニ様からも何か言ってやってくれ!」
「……無駄だ。アレに何を言っても響かん」
肩に腰掛けるラニ様の冷たい声。
「災いの影……私に仕えてくれているブライヴだが、元は二本指が遣わせた従者。二本指を害する存在は排除するように、魂に細工されているんだ。故に、ブライヴは常に殺意と戦ってきた」
「じゃあ、今のブライヴは……」
「ブライヴの殺意のみが顕現した姿、とでも言うべきか。アレもブライヴだが、ブライヴ本人ではない」
改めて視てみると、確かにアレはプライヴであってブライヴてないのが分かる。
ラニ様の言う通り、ブライヴの根幹に根差すラニ様への殺意、それを核に魔力で構築されているのだ。その魔力もブライヴのものでない。話を聞くに恐らく二本指のものか。
「ブライヴの奴、これほどの殺意といつも向き合っていたのか⋯⋯」
肌が泡立つような凄まじい殺気を押し殺して、ラニ様に仕えていたとは。
バカ犬要素が目立っていたけどその忠誠心は本物なのだと、認識を改めた俺は、眼前の殺意ブライヴを始末することを決意。
祈禱【黄金樹の祝福】でメリナを顕現し、彼女にミニラニ様を託してから愛刀の長牙を抜き放つ。
力強いステップで距離を詰めて来たブライヴは、振り上げたグレートソードを豪快に叩きつけて来た。
長牙で受け流しながら踏み込み袈裟斬り。返す刀で逆袈裟斬り。一呼吸で放つ、葦名流刀術──寒波の太刀。
鎧に阻まれて有効打は与えられなかったが、衝撃で仰け反ったのを見計らい前蹴りで距離を取る。
「よくよく視てみると、お前と俺って結構似ているな」
ソウルライク系の世界のためか、ステータスもそれっぽいもので構成されている。
生命力、精神力、持久力、筋力、技量、知力、神秘、信仰の八つ。ブライヴはこの中の筋力と信仰のステータスが高い。
俺のステータスは全てカンストしているが、していなかったらきっと筋力と信仰、次いで技量の順でステータスが伸びていたことだろう。俺もブライヴもラニ様を信仰しているからな。
「ここは無手でいくか」
長牙をポーチに収め、代わりに取り出したのは【落葉格闘】という無手の武器。
バンテージを巻いたような見た目をした薄いグローブで、元は掌打と蹴りを組み合わせた武術、落葉派と呼ばれる求道者たちが扱う代物だ。
本来は武と礼を認めた者にのみ伝承される武術だが、例によって体が覚えているため何となく意識しただけで技を放てる。
「ふん! はっ! せぃ!」
ステータスはブライヴの倍近くあるため、普通のパンチでも重い一撃に変ずる。
左右の掌底から回し蹴り、後ろ回し蹴りと流れるようなコンビネーション。
なんとかグレートソードを盾にして防ごうとしているが、問答無用でガードを崩し、晒した隙に剛拳を叩き込んでいく。
「破ァアアアッ!」
そして、トドメの戦技【大発勁】をまともに食らい膝をついたブライヴの殺意は、そのまま溶けるように消えていくのであった。
1
「──よくやった、雷斗。見事な戦いだった」
拍手をしながら現れたのは、ラニ様だった。
殺意ブライヴと戦っている間に辿り着いたようだ。
「感謝する。手間をかけさせてしまったな。だが、これでやっと、あやつに至れる」
おぅふ、今度はいつの間にか肩に座っていたミニラニ様の囁き声。
目の前にいらっしゃるというのに、あえてミニラニ様をお使いになられるとは⋯⋯。
これ、ご本人とミニラニ様でバイノーラル出来るじゃん。やられたら確実に気絶するぞ俺。
「⋯⋯さて、少々卑怯な手だったが、勝負はお前の勝ちだな。約束通り褒美をやろう、と言いたいところだが、その前に一つ頼まれてはくれないか」
涼し気な眼差しを向けられ反射的に敬礼する。
そんな俺にフッと微笑むと、冷気を漂わせながら先を進む主は、肩越しにこう言った。
「ブライヴとイジーに伝えてくれ。愛していると」
「ラニ様?」
そして、肩に座っていたミニラニ様も、ふよふよ空を飛んでラニ様の元へ。
それ以上何かを告げることなく、確かな足取りで先を進むラニ様の背を見送った俺は、急いで主の言伝を伝えに向かうのであった。
「⋯⋯そうですか、ラニ様が」
ラニ様のお言葉を告げると、しみじみと噛み締めるように呟くイジーさん。
鏡面で隠れているが、その目はきっと孫を慈しむ祖父のような慈愛の光が宿っているだろう。
「⋯…私の役目も、もうすぐ終わりです。このイジー、もうずっと、ラニ様にお仕えしてきましたが…⋯本当に素晴らしい、長き旅でした」
貴公、ラニ様をよろしくお願いしますぞ。どうか最後まで、彼女に仕えてくだされ。
そう言葉を続けるイジーさんに深く頷き返した俺は、今後はとうするつもりなのか尋ねる。
「⋯⋯例え、ラニ様が私の元を去ろうと、この身はラニ様の軍師。最期まで、役割を全うするだけです」
ラニ様の魔術師塔に行くと、ブライヴが蹲っていた。
苦しげに独り言を呟いており、その尋常ではない様子に慌てて駆け寄る。
❲「違う⋯⋯! 俺は欠けることのない一部、決してラニを裏切らぬ⋯⋯! ずっと、何があろうとも…⋯ラニは、俺を待っているんだ…⋯!」
「おい、どうしたブライヴ!」
背中を叩き、耳元で呼び掛け続けてようやく俺の姿に気付いたブライヴ。
酷く消耗しきった顔をしている。
「あ、あぁ、雷斗か⋯⋯。すまない、呆っとしていた」
「大丈夫か? 何だか尋常じゃない様子だったけど⋯⋯むっ」
そこでようやく、ブライヴの体から瘴気のような赤いモヤが立ち上っているのが視えた。
これは、覚えがある。先ほどぶっ飛ばしたブライヴの殺意だ。
既に自制が利かないまで膨らんでいたか⋯⋯!
「ブライヴ、お前⋯⋯」
「止めろ⋯⋯そんな、目で、見るな⋯⋯! 俺は、ラニを裏切らぬ⋯⋯絶対にだ!」
「⋯⋯」
ブライヴの殺意は魂に根ざしているものであり、怪我や病気のように病巣を摘出、というわけにはいかない。
あらゆるモノを解析してしまう眼を持っているから解る。彼を救うのは、不可能と言っていいだろう⋯⋯。
この殺意を取り除くには、それこそ死んで生まれ変わるくらいでないと──!
「死んで、生まれ変わる⋯⋯?」
「⋯⋯?」
自然と口から漏れ出た言葉を耳にし、怪訝な目を向けるブライヴ。
ふと顔を上げた俺は、影に隠れたアレクトーに声を掛けた。
「アレクトー、前に言ってたよな。影の地に居た頃、攫われた姉妹たちを助けたって。その時の姉妹たちの様子を教えてくれ」
『──近年攫われた姉妹たちは、深い裂傷や一部の壊死が主でしたが、それよりも昔に攫われ壺にされた子たちは、悍ましい姿に変異していました』
「死にそうな子、もしくは死んだ子はいなかった?」
『無論、おりました。御子様のお力で快癒出来た子たちは大勢居ましたが、それでもやはり生きる希望を失った姉妹たちは⋯⋯』
「つまり、死んだ子でも、生きたいと願った子は回復した?」
『はい』
それを聞いて、思わず口角が上がる。
何を聞かされているのか分からず、目を白黒させているブライヴに言う。
お前がラニ様の元で生きたいと願うならば、その殺意のくびきから逃れられるかもしれないぞ、と。
「ほ、本当か⋯⋯?」
「確証はない、が可能性はある。そのためには一度お前を殺す必要があるが⋯⋯」
「構わん。ラニの元に居られるのであれば」
「⋯⋯失敗するかもしれないぞ?」
「承知の上だ。頼む」
覚悟を完了した目を向けてくるブライヴ。
その期待に応えるように大きく頷いた俺は、長牙を抜き放ち。
両眼を覆う、黒い布に手を掛けた。
──かつて、この地に君臨していた神竜は、創造と破壊、風と雷を司っていたと言われている。
──姿を隠した神竜に代わり、新たに現れた人間も、神竜と同じく創造と破壊、風と雷を操ったらしい。
──緋色の瞳は万物を見抜き、過去・現在・未来、あらゆる時間を見通した。
──そして、影の地の英雄である彼は、死せる乙女を救い出した実践がある。
──なら、俺に出来ない道理はない⋯⋯!
「ぐぅぅぅううう⋯⋯っ」
ブライヴの最奥を、魂を視ようとすると、これまでの比ではない頭痛が襲う。
魂の色、形、構造など深く視れば視るほど頭痛は強まり、脳の血管が何本か破れた音が聞こえた。
途方もない負担は血涙となって滴り落ちる。メリナたちが何やら騒いでいるみたいだが、それも意識の外へ追いやる。
──今、使える祈祷や魔術じゃダメだ。そんなんじゃブライヴは救えねぇ。あるはずだ、俺の何処かに。創造の権能、それに連なる何かが⋯⋯っ!
ブライヴの魂に注視しながら、俺自身にも意識を向ける。
俺という人間を丁寧に解剖するように、奥深く意識を潜り、創造の力を探す。
意識を完全に分断し、なおかつ最大限集中しないといけないのだから、控えめに言って難易度ルナティックだぞコレ。
言わば、右手で小説を日本語で要約し、左手で英語の小説を和訳するようなもの。それを綱渡りしながらやってるのだ。しかも、落ちたら即死。
いつしか、周りの音が聞こえなくなり、ブライヴの魂以外何も視えなくなる。
ブライヴの魂はグレー色で、その魂は螺旋のような形をしていた。
その螺旋の一部、そこだけグレーではなくドス黒い色をしている。
──視えた! コレが、ブライヴに埋め込まれた殺意⋯⋯っ!
その時の俺は全く自覚していなかったのだが、それまで血涙を流しながら鬼のような形相でブライヴを睨んでいた俺は、徐ろに刀を振りかぶったらしい。
そして、緋色の目を爛々と輝かせ、背中に竜の紋章を浮かべながら、一太刀でブライヴを斬り伏せた。
その途端、彼の顔が安らいだものに変わり、同時に俺は崩れ落ちて気を失ったとのこと。
事が済み、朗らかな顔になったブライヴ本人から聞いたことだ。
エルデンリングはどこまで知っている?
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ストーリー考察含めて大体熟知している
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本編クリア済だが難しくてよく分からん
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本編未プレイだが、考察動画で大体履修済み
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大雑把な概要だけ知ってる
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タイトルは聞いたことがある