もうあんな無茶はしとうないでござる⋯⋯。
その後、メリナから聞いた話によれば丸三日は寝込んでいたようで。起きた時には顔真っ青。
そりゃそうだ。すぐに終わるはずの言伝が、まさか三日も掛かってしまったのだから。きっとラニ様はカンカンに違いない。
だが、その甲斐あってブライヴに根差していた殺意は綺麗さっぱり消えていた。これで心置きなくラニの側に居られる、と喜んでいたから、まあ甘んじて怒られますか。
ブライヴとイジーさんはその場に残り、ラニ様の魔術師塔を守るらしい。ラニ様が二本指に迫り、ブライヴの殺意も解放されたとなると、これまで以上に彼女を狙う影が増えるだろう、とのこと。
イジーさんはともかくとして、主人の帰りを待つのも番犬の勤めだからな。まあ、頑張れ。
ちなみに、ブライヴにもちゃんとラニ様の言伝を伝えると「そういうのは本人が言うものだ」とちょっと怒ってたり。
「ラニ様ー! 只今戻りました~!」
再びスマラグくんちゃんに掴まり、ラニ様の元へ。
とはいっても、この三日で随分と先に進んだのは間違いなく。
二本指が潜んでいると言われている【マヌス・セリス大教会】へ向かうと、そこは寂れて半ば朽ちており、一部の床には大穴が開いていた。
底は奈落──なんてこともないようなので、きっとこの先に違いないと。意気揚々と飛び込み、壁沿いに伝って穴の先を進んでいくと。
「──遅かったじゃないか。待ちくたびれたぞ」
なんか血塗れの二本指と、返り血を浴びたラニ様がそこにいた。
二本指は既にこと切れているようで、青白い色をした指がグニャグニャに折れ曲がり、夥しい血を垂らしている。
そんな手元に、優雅に足を組みながら腰掛けているラニ様。
遅くなったことをお詫びし、ご報告申し上げますと告げるべきことを告げる。
「ブライヴに巣食う殺意の塊を除去いたしました。これで正真正銘、ラニ様のみの従者です」
「──」
俺の報告を聞き、珍しくキョトンとした表情を浮かべたラニ様だが。
やがて、小さく肩を震わせて、笑い声を漏らした。
「ハ、ハッハハハハ……! 前々から変わり者だと思っていたが、ついにはブライヴの呪縛までもどうにかしてしまったか。お前は本当に、変わった奴だよ」
そう言い立ち上がるとラニ様の体を霧が覆い、やがて晴れると返り血は綺麗に拭われ、いつもの麗しい主様がお目見えになられた。
手招きするラニ様に従い歩み寄る。
「約束の褒美だ。特別にこれをやろう」
そう言って渡して来たのは、一つの指輪。
中央に群青色の美しい水晶が嵌められた、銀細工の指輪。
ブライヴの件で解析眼を酷使したためか、自然と表層の情報を読み取ってしまい。
その内容に思わずラニ様の顔を見た。
【暗い満月を象った大粒の指輪。
月の王女ラニが、その伴侶に贈るはずだった、冷たい契りの指輪。
ラニが神人であれば、伴侶とは即ち王である。
そして指輪には、忠告が刻まれている。
何者も、これを持ち出すことなかれ。
夜の彼方、その孤独は、私だけのものでよい】
ラニ様に伴侶が!? いや、この場合婚約者か。あっ、確かにラニ様の左手薬指に指輪がある!
ていうか、えっ!? 伴侶に贈るってことはエンゲージリングだよな? それを俺に渡したってことは、遠回しの告白なのか!?
「どうした? 私の顔に何かついているか?」
「い、いえ! なんでもないっす!」
涼しげな顔で微笑むラニ様。
その美しい微笑みを見た俺はその場で膝をつくと、ありったけの勇気を振り絞ってラニ様の左手を手に取った。
「し、失礼します……!」
なすがまま左手を差し出すラニ様は、ニヤニヤした顔で成り行きを見守っている。
緊張で震えそうになる手を気力で抑えながら、受け取ったばかりの指輪を薬指に倒した。
薬指に輝く暗月の指輪を眺めるラニ様。
そのままお手を取り、手の甲にキスを落とした俺は、首を垂れる。
「──お前が、私の王だったのだな。嬉しいよ。私の王が、お前でよかった」
穏やかな声でそう話すラニ様だが、俺は緊張と混乱で頭の中がいっぱいだった。
えっと、俺はラニ様の従者で、主人はラニ様で。でも、ラニ様から賜った【暗月の指輪】には、ラニ様の伴侶となる人が王様なわけで。プロポーズを受け入れてくれたということは、ラニ様が婚約者で、即ち俺が王様で。でも、俺はラニ様の従者なわけで⋯⋯。
え、えぇ⋯⋯?
「私は夜空に行く。私の律がそこにある。お前は王の道を歩んでくれ。そして、互いに全てが終わったとき、再び見えるとしよう」
混乱する俺を他所に平常運転のラニ様。
あの、わたくしの渾身のプロポーズをお受けになられて、何故そこまで普段通りなのですか……。
我が主は人の心が分からない……。私は悲しい……ポロロン……。
心の中のトリスタン卿が嘆いている中、冷気を霧散させながらラニ様の体が露となって消える。一種の転移魔術か。
しかし、いつの間にか舞い戻っていたミニラニ様が、肩の上にちょこんと乗っかっており、俺の視線に気づくと少しだけ頬を赤らめながらそっぽを向く。
「お前は私の王なのだ。王の旅路を気にしても可笑しくあるまい」
それに英雄色を好むというが、夫となる人物の浮気をみすみす逃すほど、私は出来た女ではないからな。
そう言って、メリナに視線を向けるミニラニ様。
メリナも受けて立つと言いたげに勝気な目で見返し、両者の間で火花が散るのを幻視する。
あれ? これってもしかしなくても、今後メリナたちと逢瀬するの激ムズになったのでは?
早まったかもしれない。
「ところで、随分と久しい顔があるな。お前がここに居る、ということは」
『お久しぶりですラニ様。お察しの通り、雷斗様が、我らの導きの光で御座います』
「そうか……ふっ、竜の御子と救世の御子が同一人物だったとは。さすがは私の王といったところか。また、よろしく頼むぞ」
『ハッ』
とりあえず、ここまで。
ということで、ラニ様ルートは一先ず終了。
次回から各ヒロインたちのチャートに入ります。
エルデンリングはどこまで知っている?
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ストーリー考察含めて大体熟知している
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本編クリア済だが難しくてよく分からん
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本編未プレイだが、考察動画で大体履修済み
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大雑把な概要だけ知ってる
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タイトルは聞いたことがある