※この作品はR-18です。

異世界『TS出産』レビュワーズ ~産んでたらなぜか『聖女扱い』されてくんだが~   作:馬路まんじ……?

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1話の初体験シーンあたりとかちょくちょく改修しました(昨日)(七夕前にやること)(こんな大人になりたくなかった)


ツンツンツンエリカさん!(絶対に負けない!)

 

 

 シスター鍛冶師のエルダーさんに出会ってから一日。森の中にて、俺はゴブリン集団と対峙していた。

 

 

『ゴギャァアアアッ!』

 

 

 俺を捕えんと襲い掛かってくるゴブリン共。だが、前までの俺じゃないぜ?

 

 

「いけっ、子ゴブリン! 第壱級天技【筋力強化(ムスクルシオ)】【敏捷強化(クルーシオ)】発動!」

 

『ゴキャーッ!』

 

 

 赤と青の光を纏い、子ゴブリンが突撃した。

 

 そのスピードたるや敵の三倍以上だ。そして強化された筋力の下、黒い双短剣で次々と敵を引き裂いていった。

 

 

「よしいいぞ子ゴブ。すっかり武器を使いこなしたようだな」

 

『ゴキャキャッ、ママァ!』

 

「いやママじゃねえから」

 

 

 呼び方は不満だが、ともかく〝見てて見ててっ〟て感じでやる気いっぱいに敵を引き裂く子ゴブリン。そのままサクッと勝利してしまった。

 

 

「よ~しよくやったぞ~。トゥルーデも見てたかよ?」

 

「うむうむ。かなり驚きじゃな」

 

 

 木の太枝からトゥルーデが下りてきた。高みの見物を決め込んでいた最強魔女様だ。先ほどの戦闘について「まずは子ゴブリンじゃが」と述べる。

 

 

「以前話した通り、人間から産まれた魔物は強くなりやすい。とはいえ生後一週間程度で成体ゴブリン共を仕留めまくるとは」

 

「すげーよな。最初のスライム戦から強かったけどさ」

 

 

 トゥルーデ曰く、強化天技を使っても元が弱すぎれば効果は薄いらしい。その点、子ゴブリンは人間の大人顔負けだ。

 

 

「ククク。レーテは母体として超優秀なのかもしれんな?」

 

「そんな褒められ方しても嬉しくねーよ」

 

 

 もう二度と孕まないからな!?

 

 

「あと、武器の切れ味もなかなかじゃわい。あのボッキンシスター、よい『魔宝霊装』を作りおる」

 

 

 魔宝霊装。この世界の武器の一種だな。

 

 強い魔物の素材を加工し、またエネルギー源となる魔晶石を埋め込むことで、特殊な力を宿した武器が生まれる。それが魔宝霊装だ。

 

 俺が子ゴブリンに渡したのも『ブラックゴーレム』を素材とした黒曜の短剣で、非常に高い靭性を持つという。

 

 

「流石、エルダーさんの店で一番高い品だな」

 

「二本で百万以上したからのぉ。にしてもおんし、本人は『タダで渡してもいい』と言っておったのに、わざわざ金を払いおって」

 

 

 タダで受け取るわけにはいかねーだろ。

 

 

「エルダーさん、シスターとして廃人みたいになった女の子たちを保護してるそうだからな。その足しにしてやらないと」

 

「おっ、聖女のごときレーテ様は立派じゃなあ?」

 

「その呼び方やめろ!」

 

 

 変な勘違いからそんな風に見られちまったが、俺はお前に流されただけだからな!?

 

 

「くそぉ~、まさか出産レビューしてたらシスターやら研究協会やらから謎評価されることになるとは……!」

 

「棚からぼた餅じゃな」

 

「腹からゴブリンだよバカ」

 

「ぎゃははははははは!」

 

「ウケんなッ!」

 

 

 てか日本のことわざあんのかよ。日本語を広めた女神ゼヒレーテとやらは、本当に日本人だったっぽいな。名前的に信じられんが、ニホン大好き外人なのか、あるいは偽名か。

 

 

「ま、いいか。俺も天技を使う疲労感に慣れてきたし、ひたすら強くなるだけだ。というわけで……子スライム」

 

『チュァ~~ッ!』

 

「ぬぐぐっ!?」

 

 

 乳腺からズルッと抜け出し、服の隙間より子スライムが飛び出してきた。

 

 手のひらサイズのおもちみたいな可愛い奴だ。住んでる場所は可愛くないが。

 

 

「ほれ、魔晶石の吸い出し頼むぞ」

 

『チュァア~!』

 

 

 子スラはぴょこんとゴブリン共の死体に乗ると、肉を溶かし、次々と金になる魔晶石を吸い出していった。

 

 

「解体の手間いらずじゃなぁ。慣れぬうちは魔晶石を取り出すのに苦労するもんじゃが」

 

「助けられてるよ。俺の服も汚れないし、溶かした血肉は子スラの養分にもなるしな」

 

 

 まだ戦闘に参加するのは難しい子スラの運用方法だ。

 

 生まれたばかりなため身体が小さく、少ししか酸を出せないアイツだが、あれなら成長しながら役立てるからな。

 

 

「ぬっはっはっ。この調子で勝ちまくって稼ぎまくって、さっさと男に戻ってやるぜ!」

 

 

 見てろよトゥルーデ!

 

 

「それまでに何度孕むかのぉ?」

 

「ってもう孕まねーよ!」

 

 

 

 ◆ ◇ ◆

 

 

 

 ――魔物と戦う者たちのことを、『冒険者』と呼ぶそうだ。

 

 この世界には未開拓の地やダンジョンが多くある。そんな場所を切り拓いていくのが冒険者の仕事だ。

 

 んで。魔晶石や武器に使えるような素材の買い取り、あとは冒険者に仕事の斡旋をしている組織があるらしい。それが、

 

 

「『冒険者ギルド』にようこそっす!」

 

「おうよ」

 

 

 ファンタジーでは定番の存在、冒険者ギルドってわけだな。

 

 

「って、『出産レビュワーズ』のレーテさんじゃないっすか!?」

 

「あ、やっぱ知られてるのね……」

 

 

 対応してくれたのは、腰から羽根が生えた受付嬢さんだった。

 

 たしか鳥人族というのだったか。骨は脆いが、多少の飛行が可能な亜人種らしい。

 

 

「有名だから知ってるっすよ~。あ、ウチはハルピといいます! お見知りおきを~!」

 

「ああ。これからたびたび世話になるよ」

 

 

 手を差し伸べて握手した。

 

 ギルドにはどんどん魔晶石を持ってくる予定だからな。礼儀正しくいかねば。……あと、この子かわいいしな。羽根がめっちゃフカフカだし。

 

 

「――チッッッ!」

 

「ってどうしたトゥルーデ!?」

 

 

 なんでまた不機嫌になるんだよ!?

 

 

「あ、あはは、なんだか修羅場みたいっすね。ああ、それじゃレーテさんには手早く説明を」

 

 

 カウンターより何やらボードを取り出すハルピさん。そこにはほぼ日本語な文字で、『冒険者ランクについて』と書かれていた。

 

 

「登録した冒険者さんにはランク付けをさせてもらってるっす。ギルドに魔晶石や素材を納めるたび、そこから倒した魔物と数を判定して、冒険者さんに評価を加えていくっす。んで一定以上になればランクが上がっていく感じすね」

 

「なるほどな」

 

 

 そりゃわかりやすいや。要は活躍しまくればいいってことだろ?

 

 

「高ランクになれば、ギルドを通してお貴族様からの依頼を紹介することになるっす。『ドラゴンの剥製が欲しいから死体綺麗にもってこい』とか」

 

「そ、そりゃ難しそうだな……」

 

「あははっ、今のは極端な例っすよ。でもランクが上がればそれだけ難しい依頼が来るってわけっす。……その点、『S級』冒険者のトゥルーデさんなら詳しいかと」

 

「えっ、トゥルーデも冒険者登録してるのか? それに、S級って?」

 

「最上位ランクすよ。国から人間兵器扱いされるほどの」

 

 

 へーっ人間兵器! 俺は「すげーなぁ、流石最強の魔女」と呟きながらトゥルーデを見た。

 

 さっきまで機嫌を崩してた彼女だが、俺が見てると誇らしげに胸を反らし始める。

 

 

「おやおや、ふふん。どうやらこのトゥルーデの偉大さがわかってしまったようじゃな~? 握手してやってもよいぞ!?」

 

「握手は出産のときだけでいいっつの」

 

 

 調子いいヤツめ。でも国から認められるのも納得の強さだからな、実際。

 

 

「それでハルピ、俺は何級からスタートするんだ?」

 

「登録したばかりなので、最下位ランクのE級からっすね。そこからD級、C級、B級、A級と上がっていって、さらに偉業を成せばS級だと認められるっす」

 

「へー。じゃあトゥルーデも偉業を成したのか」

 

「はい、この地を切り拓いたのはトゥルーデさんなんで」

 

「ここトゥルーデが切り拓いたの!?」

 

 

 マジですげー人じゃねえか。頭はピンクだが、実力と乳の立派さは本当にすごいな。

 

 

「ふふ~ん、畏敬したかレイテよ? わらわほどの最強人間はおらんからなぁ!」

 

「ああ、俺も負けないよう頑張るよ」

 

「っ……ふふ、そうか」

 

 

 笑みを深めるトゥルーデ。俺に褒められたことがそんなに嬉しいのだろうか。

 

 

「じゃ、登録ついでに魔晶石の換金頼むわ。これ袋に詰めてきたから」

 

「はい、ってわぁっ!? たくさん取ってきたっすね~!? ゴブリンの魔晶石のようですが、何十個もあればそこそこの額になりますよ!」

 

「やったぜ!」

 

 

 この世界ではじめてマトモに得た金だな。出産レビューでもらった大金は……あれは何かの間違いだ……! もう二度とあんな方法じゃ稼がんぞ!

 

 

「あぁ、お聞きしたっすよ、レーテさん。魔女さんの出産レビューに参加しているのは、可哀想な目に合った女性たちのためだと」

 

 

 んえぇええっ!? こ、この子もシスターの妙な勘違いを真に受けてんのか!?

 

 

「や、それはだな……!」

 

「受付嬢として問題だと思ってました。実際、顔見知りの女冒険者さんたちも、少なくない人数が魔物の被害にあって引きこもっちゃってるっすからね……」

 

 

 ハルピさんは悲痛そうな顔で目を伏せた。

 

 や、あの、俺は別に大層な目的があってあんなレビューしてるんじゃなくてだな……!

 

 

「だからっ! たとえ恥辱の憂き目にあっても堂々と生き、女性たちを勇気付けんとするレーテさんのことは応援したいっす! どうかこれからも頑張ってくださいッ!」

 

「あ、はい……!」

 

 

 ……真摯に応援されたら真実を話せるわけもなく、俺はまたも流されて頷いてしまうのだった……!

 

 チ、チクショーーーッ!

 

 

「じゃあレーテさん、これ報酬の五万ゴールドっす!」

 

「お、おう。ありがとう」

 

 

 そうして換金してもらい、内心〝何十匹もゴブリン倒して五万か。出産レビューは一発百万くらいなのに……〟と微妙な気分になっていた時だ。

 

 カツッ、カツッ、と鋭い足音を立て、こちらに近づいてくる者がいた。

 

 

「――ふん。淫猥な匂いがすると思えば、例の恥知らずたちがいましたか」

 

 

 冷たい声を出しながら、そいつは俺の横に来た。

 

 

「ハルピさん、換金に来ました。さっさとその二人を退けてください」

 

 

 女性用の式典服のような衣装を纏った黒髪の少女だ。いかにも女騎士って感じだな。腰に剣を差してるし。

 

 

「お前は?」

 

「チッ、話しかけないでください汚らわしい」

 

 

 って汚らわしい!? い、いきなりなんだこの子!?

 

 その辛辣な物言いに、受付嬢のハルピさんもムッとした表情を浮かべた。

 

 

「ちょっとエリカさん、失礼すぎっすよ! レーテさんに謝ってくださいっ」

 

「汚らわしいのは事実でしょうが。魔物の仔を孕んだ慰み者。汚れた子宮。それが堂々と表を歩いている神経がわかりません」

 

「アンタ言い過ぎっすよ!?」

 

 

 ハルピさんが怒鳴った。さらにエリカの物言いを聞き、ギルド内に屯(たむろ)していた他の冒険者たちも口を出す。

 

 

「おいエリカさんよぉ、それはねぇんじゃないのか!?」

「オレのパーティの子も魔物にヤられて引退しちまった。テメェそういう女冒険者たちに同じこと言えるのかよ!」

「レーテちゃんは、可哀想な子たちを励ますために出産レビューしてんだぞっ!?」

 

 

 ギルドは一気に険悪な雰囲気になった。多くの冒険者たちが「都落ちが」「調子のんなよ」「そんな態度取ってるから……」と、エリカを睨みながら口走る。

 

 どうやらこのエリカという少女、これ以前からだいぶ評判が悪いらしい。生き方ヘタクソか?

 

 

「は。田舎者たちが喚いていますね。弱い犬ほどなんとやら、ですか」

 

 

 周囲から棘を向けられるも、当のエリカはまったくブレない。

 

 なんかすごいなぁこいつ。俺なんて流されるままに生きてたらママになってたのに。そんで変な勘違いされてるのに正せない始末だ。年下なのに偉いやエリカ。

 

 

「っ……なんですかアナタ、その微笑ましげな視線は!? 泣き喚くなりわたしに怒るなりするところでしょう!?」

 

「いや、立派だなぁって」

 

「は、はぁ!?」

 

「口の悪さは駄目だと思うが、自分を曲げないところはいいと思うぞ」

 

 

 俺もこれくらい精神が強かったらヒキニートになってなかっただろうなぁ。

 

 肉体的には俺のほうが年下っぽいが、こちとら中身は成人済みだ。そんな自分より一回り若い子が立派に生きてるのは、なんかコッチも頑張ろうって気になってくるよ。

 

 

「俺は別に怒ってねーから。ただ他の女の子を罵るのはやめとけよな?」

 

「なっ……なんなんですか、アナタは。意味が分かりませんっ……!」

 

 

 エリカはぷいっと目をそらしてしまうと、ハルピさんに「さっさと換金してください」と促し、左手で魔晶石の詰まった袋を出した。

 

 この子、左利きなのか? めずらしいな。

 

 

「ひひっ、ざまぁないっすねエリカさん。レーテさんの余裕っぷりにタジタジじゃないっすか」

 

「黙りなさいっ。王都の騎士を侮辱する気ですか!?」

 

「元、じゃないっすか」

 

「うるさいッ!」

 

 

 エリカは出された金貨を左手でぶん取ると、またも鋭い足取りでギルドから出ていってしまった。

 

 

「すんませんね、レーテさん。あの人、ウチのギルドの問題児なんすよ」

 

 

 ハルピさんは羽根をいじりながら「王都から来た人でして」と語り出す。

 

 

「代々、強い【天職】を得やすい騎士家の娘さんで、念願かなって【聖騎士】の職を得たそうなんすけどね。初任務の魔物との戦闘で油断し、右手の神経を深く切って不具の身に。んで王国騎士団最速の電撃引退。家からは恥さらしと扱われ、この辺境地に飛び出してきたわけっす」

 

 

 そ、そうなのか。それであんなにやさぐれていると。

 

 

「片腕になっても強力な【聖騎士】っすからねぇ。それでハンパに強いもんだから、周囲を見下しまくって今の状態すわ。もう他の冒険者さんたちと関係修復は無理っすよ……」

 

 

 先ほどエリカを怒鳴っていた者たちは、出ていく背中を苛立たしげに睨んでいた。

 

 慰み者を容赦なく穢れ扱いする子だからな。ヒトの地雷を踏みまくってきたことは容易に想像できる。

 

 

「ん、それなら俺が気にかけておくわ」

 

「って、マジっすか……!? レーテさんも相当酷いこと言われたでしょうに。ウチ、聞いててキレる寸前でしたよ?」

 

「そうなのか。俺とは初対面なのに、ハルピさんは優しいなぁ」

 

「そそっ、そんなこと……!」

 

 

 さっきも言ったが俺はあまり気にしちゃいない。

 

 そこまで深刻に考えてないからな、魔物を産んだこと。なにせ無駄に騒がしい頭ピンク魔女がいつも側にいてくれたからよ。悲惨な気なんて全然なれねーっつの。

 

 その点、

 

 

「エリカは一人で悩んでるんだろ? じゃあ俺くらいは近づいてやらないとな」

 

「レーテさん……!」

 

 

 よぉしサブ目標が決まったな。戦って金稼いで男に戻るついでに、エリカにちょくちょく話しかけるとしよう。

 

 突っぱねられそうだがそのうちなんとかなるだろ。同じ街に住んでるんだしよ。

 

 

「今日は登録と換金ありがとな。じゃあトゥルーデ、帰ろうぜ~」

 

 

 そうしてピンク魔女の袖をくいくい引いた時だ。何やら彼女は、真顔で俺のことを見つめてきて……、

 

 

「おんし、本当に聖女かもな」

 

「はぁ!?」

 

 

 って何言ってんだコイツはー!?





・次回、レビュー回。エリカさんが負けます。


◇↓皆様からのご感想&評価と、活動報告にて『エリカの相手役になってほしい魔物』、待っておるぞ!(トゥルーデ)
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=314698&uid=151111
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