※この作品はR-18です。

異世界『TS出産』レビュワーズ ~産んでたらなぜか『聖女扱い』されてくんだが~   作:馬路まんじ……?

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トゥルーデが遠出しちゃったので、出産レビューは次回になります。


ツンツンツンツンツンエリカさん!(強い魔物を倒してやる!)

 

 

 ――やさぐれエリート女騎士・エリカに構ってやると決めてから一日目。街中にて。

 

 

「よ、エリカ。相変わらず黒髪が綺麗だな」

 

「は、はぁ!? いきなりなんですかアナタ!?」

 

「レーテだが」

 

「名前ではなく!」

 

 

 買い物帰り中、一人でメシ食ってるのを見かけたので話しかけてみた。

 

 

「っ……わかりました。昨日罵られた仕返しに嫌味を言っているのですね?」

 

「なんでだよ」

 

「黒髪といえば地味な女の象徴じゃないですか!」

 

「あー」

 

 

 そういえばこの世界はカラフルな髪色が多い。魔女トゥルーデなんてピンクだしな。人間じゃありえない。

 

 ピンクさん曰く、『この世界には物理法則を歪めるマナがあるゆえ、色素が変質しやすいのじゃ』とのこと。だからエリカの黒髪は珍しい。

 

 

「は。アナタは輝くような銀髪ですものね。マウント取れて満足でしたか?」

 

「いやちげーよ。普通に綺麗だろお前」

 

「な、なにを」

 

「俺の故郷では黒髪美人って言ってさ。おくゆかしさにこそ美を感じる、みたいな扱いだったんだよ。だから魅力的だし落ち着くよ」

 

「ふ――ふざけないでくださいっ!」

 

 

 エリカは立ち上がると去っていってしまう。んー怒らせちまったか?

 

 

「なんかごめんな。今晩トゥルーデや魔物と鍋やるんだが、お前も来ないか?」

 

「誰が行きますかッ!」

 

 

 コミュニケーション失敗みたいだ。ま、めげずに次を目指そう。

 

 

 ◆ ◇ ◆

 

 

 ――というわけで二日目。森の中にて。

 

 

「レレレっレーテさん! 今日はよろしくお願いしましゅっ……!」

 

「おーよろしくなー」

 

 

 さっき偶然出会った少年冒険者・ヌアザくんと行動を共にしていた。

 

 前に母乳ぶっかけちまった子だ。アレで気持ち悪がられたと思ったが、ずいぶん器が大きい子らしく、向こうから『一緒に狩りませんかっ!?』と誘ってくれた。

 

 

「ありがとうなヌアザくん。誰かと狩りするなんて初めてだよ。トゥルーデは見てるだけだし」

 

 

 ちなみに件のピンク魔女は別の街に遠出している。〝出産レビューばら撒いてくりゅ!♡〟とのこと。あいつ男に戻ったらマジで覚悟しておけよ……。

 

 

「は、はじめてですか……っ!? ぼぼぼぼ、ぼくが、ハジメテ……! 魔女さんを除けば、ぼくだけが……!」

 

「あ、ああ。……もしかしてヌアザくん、協力プレイ素人は嫌な感じか?」

 

「えっ!?」

 

 

 やたら初めての部分気にしてたからな~わかるよ。

 

 ゲームでも初心者にイラついちゃう人はいるもんな。ヌアザくんまだ十歳そこらっぽいししゃーない。

 

 

「連携とか難しいからな。もし気になるなら、別のヤツと経験積んでからにするぞ? 何人かの男冒険者たちに声掛けられてるし」

 

「えッ!!!?!?!?!?」

 

 

 最初はトゥルーデと同じ頭おかしい女扱いで遠巻きにされたんだけどな。

 

 でもシスターが妙な勘違いを流布してくれたおかげで、俺を気遣ってか話しかけてくれるヤツが多くなった。ご飯もおごるって言ってきてくれるしな。先輩冒険者がたは優しいや。

 

 ま、するとどこからともなくトゥルーデが飛んできて、みんな逃げちまうんだけどさ。まったく友達作る機会を潰しやがって。

 

 

「じゃ、今日は縁がなかったってことで……」

 

「っていやいやいやいやいやいやいやっ!? ぼぼぼ、ぼくは全然かまいませんからっ! むしろイイッていうか!」

 

「おーそうか? ヌアザくんは優しいなぁ。よしよし」

 

「はぅうっ……!」

 

 

 と、弟みたいに可愛がっていた時だ。茂みの奥から、ガッ、ザッと、土を蹴る音が聞こえてきた。

 

 なんだなんだと近づいてみると……、

 

 

「――ハァァァアアッッ!」

 

『シュァァアアアーーッ!』

 

 

 エリカが戦っていた。敵はスライム十匹ほどだ。

 

 魔女から聞いたが、魔物にも等級があり、スライムは一匹E級相当。Eランク冒険者が一人で対処できる強さとされる。

 

 が、しかし。雑魚でも十匹を超えれば十分脅威だろう。エリカは左手でしか剣を振るえないしな。小さな核を斬らねば復活してしまうスライム相手には大変だ。

 

 そう思っていたが、

 

 

「第弐級天技【聖火顕来】!」

 

 

 エリカは刃に火を纏うと、スライムを次々と斬り裂いていった。

 

 敵は復活しない。核を直接斬られずとも、熱により損傷したようだ。スライムたちは水風船のように破裂した。

 

 

「ふぅ……」

 

「すごいなぁ、エリカ」

 

「っ!? あ、アナタは……!」

 

 

 戦いが終わったところで声を掛ける。すると彼女は驚いた後、すごく嫌そうな表情を浮かべた。

 

 

「またレーテさんですか……。アナタ、わたしのストーカーですか? やめてくださいよ気持ち悪い」

 

「いやいや偶然だっつの。いくらお前が可愛いからってそんな真似しねーよ」

 

「かっ、可愛い……!?」

 

 

 そんなことよりこの子、ちょいちょい怪我してるじゃねえか。

 

 

「お前、一人で連戦してるんじゃないか? かすり傷多いぞ」

 

「ふん、だからなんですか? 『それに比べてコッチは綺麗な白肌だぞ~』とでも言いたいのですか? 最悪ですね」

 

「んなわけあるか。ちょっと触るぞ」

 

「えっ」

 

 

 俺はポーチから水筒を取り出し、ハンカチをたっぷり濡らして彼女の患部を拭っていった。

 

 

「ひゃっっ!? い、いきなり何をっ!?」

 

「治療だよ。まずは汚れを取らないとな。次に……」

 

 

 続けて『回復霊薬』の小瓶を取り出した。霊草という、薬効の極めて高い植物から作られた薬液だ。

 

 持ち歩いているガーゼにそれを沁み込ませ、エリカの傷に塗っていく。

 

 

「あっ、傷が治って……って!? アナタまさか霊薬を塗ってるんですか!? それ高いでしょ!」

 

「まーな」

 

 

 一瓶で三十万ゴールド近くしたかな。武器を買った後、残った金を使って購入したものだ。

 

 

「な……何を考えてるんですか、レーテさん……!? もしやわたしに恩を売って、王国騎士団に紹介状を書いてもらいたいとでも? ならば残念でしたねっ。わたしはもう何の縁も……」

 

「違うよ。ただ、お前に傷が残ってほしくなかっただけだ」

 

「っ!?」

 

 

 やさぐれてっからなぁこの子。どーせ軽傷なんてそのまま放っておいて、傷跡を残すに決まってる。男としてほっとけるかよ。

 

 

「いっ、いッ、意味が分かりませんッ! このっ慰み者女ッ! 魔物の情婦! アナタ頭おかしいんじゃないですか!?」

 

「トゥルーデと一緒にすんなっての。じゃあなエリカー」

 

 

 放置しちゃってごめんなヌアザくん。気を悪くしただろ。って、え、『そんなことないです』? 『おぉ女神よ……』? お前なに天に向かって手を合わせてほわほわしてるんだよ。面白い子だなぁヌアザくん。

 

 

「あ、そうだ」

 

 

 最後にエリカの方を振り向いた。そして笑顔で、

 

 

「俺のこと、名前で呼んでくれてありがとな!」

 

「っっっ~!?」

 

 

 じゃあさらばだ。はぁ、今日もエリカとのコミュニケーション失敗しちまったなぁ。

 

 ま、今は狩りに集中だな。さぁーいくぞヌアザくん。……って何お前、白眼向いてるんだ?

 

 

 ◆ ◇ ◆

 

 

 ――というわけで三日目。ギルドにて。

 

 

「おめでとうございますっす、レーテさん! D級冒険者に昇格っす~!」

 

「おーマジか!」

 

『レーテちゃんおめでとぉ~~~~!』

 

 

 換金に来たらまさかの出世だ。受付嬢のハルピさんに他の冒険者たちが称えてくれた。

 

 

「っていいのかよハルピさん、俺登録から三日目だぞ?」

 

「いいっすいいっす。レーテさん、毎度魔晶石じゃらじゃら持ってくるんで。D級の実力は十分あるっすよ」

 

 

 そうか、そりゃ嬉しいな。でも俺の成果なんて微々たるものだよ。

 

 

「子ゴブリンと子スライムが頑張ってくれたからなー。賞賛ならこいつらに送ってくれ」

 

『ゴキャキャッ! ママァ~!』

 

『マ~!』

 

 

 足元の子ゴブと肩に乗った子スラがすりついてきた。ってママじゃないっつの。

 

 

「わぁお、相変わらず懐いてますねぇ魔物さんたち……! そんな穏やかな魔物たち初めて見るっすよ。他の【テイマー】さんが引き連れてる魔物はみんなギラギラしてるし」

 

「そうなのか。こいつらは人から生まれたからかな?」

 

「いやいや。逆に人が生んだ魔物こそ、群れを率いる凶悪なリーダーになりやすいもんすよ? 強い上に、執拗に人間の町や村を襲って回るんすよね。手が付けられないっす」

 

「へー」

 

 

 どうしてそうなるのかは知らんが怖いな。俺の子たちはいい魔物に育てねば。

 

 

「ともかくD級昇格おめでとうございまっす!」

 

「おうよ!」

 

 

 と、ハルピさんや周囲から祝福されていた時だ。「――はぁ!?」と、ギルドの入口から声が響いた。

 

 

「もうD級に昇格したですって!? わたしでさえ半月かけて認めてもらったのに……!」

 

 

 エリカだった。彼女は相変わらずの鋭い足取りで、ハルピさんのほうに近づいてくる。

 

 

「おい、有翼種……!」

 

「っ!? ウチは翼人族っす! その呼び方は失礼すぎますよ!?」

 

 

 ハルピさんが怒鳴った。他の冒険者たちも一気に殺気立つ。

 

 

「…………そーいえばトゥルーデから聞いたな。この世界の亜人種は元々、人と魔物の合いの子であるとか…………」

 

 

 魔物の遺伝子は強い。なので最初は子ゴブリンらのように魔物だが、それがさらに人と交わり、その子がまた交わって人の血を強くさせていくことで、やがてハルピさんのような中身は人間な亜人種になったという。

 

 だが、そんな魔物まがいの連中を人と認めない考え方があり、二百年ほど前までは、純潔の人族と亜人種はバチバチだったとか。

 

 語句に『人』が入らない有翼種という呼び方は、その時代の翼人族を指す言葉だったはずだ。要は穢多非人と同じか。

 

 

「おいエリカ、流石にそれは」

 

「この有翼種ッ! アナタの目玉は鳥目ですか!?」

 

 

 エリカは止まらない。周囲の敵意を無視して叫ぶ。

 

 

「わたしのほうが、どう考えてもこの人より強いでしょう!? こんな魔物穴より優れてるでしょう!?」

 

 

 俺を指さしながら怒鳴った。誰かに負けることが、そんなに屈辱的なのか。

 

 

「冒険者登録から一か月経ちました! わたしより強い人は滅多に見かけませんッ! 連日、大量の魔晶石を持ってきています! なのにずっとD級で……これはどういうことなんですか!? なぜ慰み者に追いつかれているのです!? 答えなさい受付嬢っ!」

 

 

 好き勝手に叫ぶエリカ。そんな彼女に、ハルピさんは奥歯を噛みしめながら言った。「そういうところっすよ」と。

 

 

「は、はぁ!?」

 

「アンタ馬鹿じゃないっすか?」

 

「馬鹿ッ!?」

 

「冒険者になぜランク分けがあるか知ってます? それは、街の有力者や貴族が、依頼を出すときの指標にするためっすよ」

 

 

 つまり高ランクになれば、名家の者と顔合わせしなければいけないわけで。

 

 

「エリカさん。アンタみたいな馬鹿女、いくら強かろうが客に紹介できるわけないでしょ。店(ギルド)の商品としちゃ産廃なんすよ」

 

「さ、産廃ですって……!?」

 

 

 冷たいくらいに当たり前の話だった。

 

 いくら仕事が出来ようが、取引相手にどんな無礼を働くかわからないような社員、とても出世なんてさせられないわな。

 

 

「そんな……わたしが、そんな……っ!」

 

「それに比べてレーテさんはどうっすか。難しいテイマー職でありながら成果は上々。アンタみたいにトラブル起こすどころか、明るくて周囲に受け入れられてるっす」

 

「それは、でも」

 

「なによりレーテさんは、この街の『ゼヒレーテ教』司教であるエルダー様が後見人なんすよ?」

 

「なっ、嘘でしょう!?」

 

 

 えっ、あのエルフ糸目シスターのエルダーさんって司教だったの!? バチバチ偉い人じゃねえか!

 

 

「そりゃウチだって喜んで昇級させるっすよ。頭おかしかった出産レビューも、世の女性たちのためだとわかれば評価項目っす」

 

 

 いやそれは勘違いだから!?

 

 

「あのあのハルピさんそれは……」

 

「冒険者ギルド上層部も、辱めを受けた女性冒険者たちのために何か出来ないか手をこまねいてたっすからね。見舞金を出すことがせいぜいで、心の傷までは癒せなかった。そんな我々にとって、被害者と同じ立場に立って活動するレーテさんのやり方は、目から鱗でした。上層部は大いに期待してるっす」

 

「じょ、上層部ぅぅ……!」

 

 

 デカい単語が出てきたら黙るしかない俺である。ぶええ、元ヒキニートメンタルが厭(いと)わしい……!

 

 

「んで、エリカさん」

 

「っ」

 

「アンタはそのへんどうっすか。ハンパな力にかまけて冒険者間の空気を悪くした挙句、被害者女性を罵る始末。しかもアンタ……ウチの人種を、差別したっすよね……?」

 

 

 ハルピさんはエリカのように怒鳴らない。代わりに、もう、そんな領域は超えてしまったかのように、声が低くなっていた。

 

 

「アンタ――こ(・)こ(・)の(・)ギ(・)ル(・)ド(・)マ(・)ス(・)タ(・)ー(・)が(・)翼(・)人(・)族(・)だ(・)と(・)し(・)た(・)ら(・)、同じこと言えました?」

 

「なっ……それはまさか……!?」

 

 

 ハルピさんは答えない。数秒ほどエリカを見据えた後、「忠告は以上っす」と言い切った。

 

 

「ようは実力以外も大切ってことっすよ。残念ながら今のアンタは、Dランク以上に出来ないっす」

 

「……わかり、ました……」

 

 

 エリカは静かに頷いた。

 

 あれだけ言われりゃ理解するわな。どうやら一件落着のようだ。

 

 そう思ったが、しかし。

 

 

「ならば――評価せざるを得ないほど、実力を示せばいいんですね?」

 

「は!?」

 

 

 エリカは踵を返すと、ギルドの出口に向かっていった。

 

 

「ならばB級以上の魔物を倒してきますよ。それでは」

 

「ちょっ!?」

 

 

 何を馬鹿なッと叫ぶハルピさん。当たり前だ。強酸液を吐くスライムでさえ単体評価はE級なのだから、B級クラスの力は計り知れないだろう。

 

 そんな魔物を片腕しか使えない身で倒してくるだと? 自殺行為だ。そもそも、

 

 

「マジでアホっすかアンタ!? 性格を改めろって言ってんですよ! そうしたらっ」

 

「うるさいっ!」

 

 

 振り返ったエリカの目は、ほとんど血走っていた。

 

 

「性格? 知ったことですが! いくら人がよかろうが、弱ければなんの意味もないでしょうがッ!」

 

 

 そう叫ぶと、今度こそ一目散に建物から出ていった。

 

 

「っ、すーー……行っちゃったっすわ……」

 

 

 ハルピさんは呆然とするばかりだ。言葉を尽くして結果がアレだからな。

 

 他の冒険者たちも呆気に取られた後、「なんだ、あの女」「もう放っておこうぜ」「頭おかしいわ」とエリカのことを諦めた。

 

 ……終わりだ。ついに嫌悪が無関心になってしまった瞬間だ。もう、あの少女騎士に目を向ける者はいない。

 

 ならば、

 

 

「じゃあなハルピさん。今日はもう帰って寝るわ」

 

「あっ、はい……!」

 

 

 俺もさっさと立ち去ることにした。

 

 

「レーテさん、色々あったけどDランク昇格おめでとうございますっす! これからも頑張ってくださいっ!」

 

「おーう」

 

 

 建物から出る。するとちょうどいいところに、他の街から帰ってきたピンク魔女がいた。

 

 

「うぉーーレーテよっ! 一日ぶりに見てもガチ美少女じゃのぉ!」

 

「俺は男だっつの」

 

「冗談は出産歴だけにしておけ。それよりも『出産レビュー』、他の街でも好評だったぞ~! 待ってましたって感じじゃ。どうやらエルダーとかいうボッキンシスターが、先んじて噂を広めていたようで」

 

「そんなことより」

 

 

 俺はトゥルーデの手を取った。

 

 

「ふぉっ、デートの誘いか!?」

 

「ある意味そうだよ」

 

 

 お前の実力は信じてるからな。戦ってくれずとも、側にいてくれるだけでいい。

 

 

「エリカを助けたい。このへんで、強い魔物が出る場所はどこだ?」

 

 

 





トゥルーデ(別の女の話しおった……)



◇がんばトゥルーデさん!
↓皆様からのご感想&評価と、活動報告にて『相手役になってほしい魔物』、お待ちしてます!
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=314698&uid=151111
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