異世界『TS出産』レビュワーズ ~産んでたらなぜか『聖女扱い』されてくんだが~ 作:馬路まんじ……?
「ついたぞー。ここが魔物研究所じゃ」
「はえ~」
魔女トゥルーデに連れられ、俺と子ゴブリン+寂しいからついてきた女騎士エリカは、白い建物の前にいた。
「魔女トゥルーデッ、なぜわたしに声を掛けてくださらなかったのです!?」
「や。だって貴様、レーテと違って宿暮らしではないか。わざわざ誘いに行くのめんどいじゃろ」
「っ、だったらわたしも屋敷に住みます! は、恥ずかしいですけど、『出産レビュワーズ』の仲間ですしっ!?」
「恥ずかしいなら仲間に入らんでもよいぞ~?」
「そんなっ!?」
エリカは相変わらずピンク魔女に振り回されているようだ。トゥルーデのほうは楽しそうだな。新しいおもちゃゲット、ってところか。
「仲がいいってことでいいのかぁこれ?」
と、二人の様子を見守っていた時だ。
「――やぁ~みなさん元気ですねェ~」
のんびりとした口調と共に、研究所より一人の少女が現れた。
「って、アンタは」
「どもどもですー。私が本日みなさんをお呼びした、魔物研究家のキャシー博士ですよ~」
そう名乗ったのは、オレンジ色の髪からぴょこんと猫耳を生やした、小柄な白衣の女の子だった。
「あ、こう見えて大人ですからね~? 小型の猫系魔物『ケットシー』の血を引く獣人族でして」
「そ、そっか」
ダボついた白衣の袖を振るキャシー博士。どう見ても小学生くらいに思えてしまうんだが。
これが亜人種の特性ってやつか。まだまだこの世界、驚きが多いな。
「ああ、俺はレーテだ。で、魔女にいじられてるのはエリカ。よろしくな」
「おぉ~アナタが例のレーテさ~ん! どれどれどれぇ」
と言って彼女は思いっきり乳を揉んできた。ってふぁあああ!?
「ぬあぁあぁっ!? おい博士っ、なにをっ!?」
「うっふっふ~! おっぱいこそはメスの象徴! おっぱいを揉めば全てが分かるのですよぉ~!」
何言ってんだこの人!?
「肌の張り。肉質。クーパー靭帯の強度。乳腺の硬さ。乳首の大きさ。感度。あと……くんくんっ、匂いもチェックっ♡」
「ってかぐなー!?」
「それら全てのデータを得れば、肉体年齢・性体験の度合い・出産経験・現在のホルモンバランスがまるっとわかりますからねぇ~♪ はい、終わりっと。最後におっぱいと握手! ギュッギュッギュ~!」
「んぁあっ!?」
なぜかラストに搾る動きで握られた後、キャシー博士はちっちゃい手をパッと乳から離した。
「ふ、ふぐぐぐぐぐぐ……! いきなり何すんだ変態学者っ!?」
「趣味兼データ集めですよぉ~♪ はいレーテさんの分析完了。肉体年齢は人間族基準で十四歳ほど、性体験は一月程度前からですが、だいぶ高密度なご様子。エッチな一か月でしたね~♪」
「うるせえ!」
「出産経験はレビューの通りだいぶ豊富に思えますが、肉体の劣化はまったく感じられませんねぇ! 霊薬や何らかの天技などで即座に回復しているのでしょうが、むしろ生娘より張りを感じるくらいですよ~! これは注目に値しますね! 私が考察するに、これもマナの影響ではないでしょうが? 通常、物理法則を歪めるマナは取り込むと人体に疲弊感を与えます。なので魔物の仔を孕んだ人間は、栄養を持って行かれるだけでなく魔物を構成していくマナが子宮内に集まるため、非常に危険な状態に置かれると思っておりました。ですが出産レビューでの元気なやり取りを見る限り、どうやら普通に活き活きしてらっしゃる様子。ここから察するに、胎内の赤子が取り込んだマナを人体に吸収可能な窒素・炭素・ミネラルに変え、へその緒を通して逆に活力をあげているのではないでしょうか?」
な、なんかめっちゃ語り始めたっっっ!?
「魔物は雄しかいません。ゆえに他種のメスを孕ませることで繁殖する生態を持ち、とりわけ人間の女性に産ませた子は強くたくましく成長する特徴を持ちます。そんな稀なる母体を危険に晒すわけにはいきませんからね。ゆえにこのような性質を持つようになったのでしょう。例えるならば寄生虫ですね。宿主が死んでしまえば自身も死んでしまうため、宿主にメリットをもたらす寄生虫もいます。腸管寄生線虫がいい例でしょう。宿主の免疫系を調整し、過剰な免疫反応を抑えることで、炎症性腸疾患やアレルギーの治療を行えることが判明しています。つまりッッッ!」
ほ、ほとんど聞き流してたけど、つまり!?
「魔物を孕みまくれば健康になっていくということです~~~~~~~!」
「ってンなわけあるかぁーーーーーッ!?」
なんだその異次元の健康法は!? このオレンジ色の猫耳ロリ、倫理観どこに捨ててきたッ!?
「でもデータは揃ってますよ~? たとえばレーテさんとトゥルーデさんはスライムに精液ばかり飲まされてきましたが、それでビタミン欠乏症の症状が出ることはなかったですよね?」
「そ、それは」
「はい答えが出ましたッッッ! 魔物妊娠出産健康法ッ、確立ですッ!」
「取りやめだよっっっ!」
たとえ正しくてもダメすぎるわっ!
「さ、流石はトゥルーデの知り合いって学者だな……。いや、もしかして魔物学者はみんなおかしいのか? アンタって普通の扱いだったりする?」
「いえ、イカレオレンジって呼ばれてます」
「納得の扱いッッッ!」
協会の倫理観が正しくてよかったよチクショウ! てかまるっきりトゥルーデと同じじゃねえか……!
「いやぁ本日はレーテさんとたくさん話せて光栄ですよぉ~」
「たくさん話してるのはアンタだけだが……」
「もっと話しましょ~! レーテさんは興味深い研究対象ですからねぇ!」
研究対象!?
「ずっと興味深かったですからねぇ~。トゥルーデさん曰く、アナタは異界からの転生者だとか。頭の紋様のような光輪はその証だと」
その話に、エリカが驚いてこちらを見てきた。
「て、転生者って本当ですかレーテさん!? 主神の妻『女神ゼヒレーテ』と同じく……!」
「あ、あぁまぁな。信じられない話だと思うから、わざわざ広めてはこなかったが」
「ふむ……その判断は正解かと」
エリカが難しそうに頷いた。そして語る。「これまでも、転生者を名乗る者はいました」と。
「ってマジかよ!?」
「ですが全員詐欺師でした。女神と同じ出自を騙って人望を得ようとしたり、異界の商品だとか言ってガラクタを売ろうとしたり。そして最後はゼヒレーテ教にしょっ引かれ、宗教裁判で縛り首です。これまで、全員、例外なく」
「ってマジかよー……」
あ、あぶねぇ~~! もしも俺が気軽に転生者ですと名乗ってたら、殺されてたのかもしれないのかよ!?
「あー……まぁそうなるよなぁ。前世風に言えば、キリスト教の勢力圏で神の子名乗るようなもんか」
しかも中世で、だ。魔物溢れるこの世界は命の重さが軽そうだからなぁ。
「ゼヒレーテ様の壁画にあるような頭の輪も、転生者の証だったのですね」
「まぁな。これまでエリカはなんだと思ってたんだ? 俺の輪っか」
思えば誰にも突っ込まれたことなかったが。
「あー……わたしが言うのもなんですが、身体的特徴に触れるのはタブーですからね」
「そりゃ前世でも同じだったが……って、あぁ」
そういうことか。
「この世界、亜人種が多いもんな。キャシーさんみたいにちっちゃい猫耳の人がいれば、トゥルーデみたいにいつまでも美人なヒツジ角のヤツもいる。だからいちいち変だと指摘するのはヤボってことか」
「ですね。ゆえにその光輪も何かの種族の特徴かと思っていました」
ふむふむ納得。思えばマナの影響で髪色もカラフルな世界だしな。多様性は前世よりも寛容なのかもだ。
「やぃやぃレーテよ! わらわのこと、シレッと美人と言ったかえぇ~!?」
「うぜぇ~」
なんかトゥルーデがニチャニチャ絡んできた。こら抱き着いてくるな、頬つつくな!
「お仲がいいですねェ~。ではレーテさんにトゥルーデさん。それと、アナタたちの産んだゴブリンさんたちにお話があります」
『――ママァ~!』
研究所の奥から小さいゴブリンがやってきた。トゥルーデが産んで預けてた子だな。
『ゴァア、マ~!』
「こっ、これっ、甘えるでないわ……!」
抱き着いてくる息子ゴブリンに、トゥルーデはなんとも困った様子だ。その光景にキャシー博士は微笑んだ。
「なんだかんだでたびたび来ては遊んであげてますもんね~、トゥルーデさん。お引き取りしてもよいのですよぉ~?」
「アホ言えキャシーよ。わらわに母親ごっこなどできるかえ。自分の放蕩さはこれでもわかっとるからのぉ」
まぁ出産レビューなんてして回ってる女だしな。その関係で半月ほど囚われることもある。俺みたいに子供を亜空間に送っておくことも出来ないため、エリカと同じく研究所に預けておくのがベターだろう。
「そうですかぁー。では引き続き、研究のためにもウチで預かるということで。エリカさんもたまにはオークちゃんに会いに来てくださいね?」
「うぅ、はい……」
エリカのほうは自分の産んだ魔物と会うのに抵抗があるようだ。でもいいえとは言わないあたり、いつかは向き合うつもりなのだろう。どうするにせよ俺は応援するだけだ。
「では二つお話を~。まず一つ。知っての通り私は、〝人から産まれた魔物を一から育てたらどうなるか〟を調べていました。もし穏やかに育成できたなら色んな未来が拓けますからね」
「たしかにな」
生活を助けてもらったり、普通の【テイマー】のように調教せずとも一緒に戦ってもらったりとかな。あとは野生の魔物とヒトの架け橋になれるかもしれない。
「これについては図らずも、私が預かって育てるパターンと、母親であるレーテさんがつきっきりで育てるパターンの二種を知ることが出来ました。レーテさんには本当に助けられてますよ」
キャシー博士は俺の足元を見て笑った。そこには『ゴキャァ?』と首を捻る、足に引っ付いた子ゴブリンが。
「レーテさんのゴブリンちゃんはとても穏やかに過ごしているようですね。街でトラブルを起こしたという話も聞きませんし」
「まぁな。すごくいい子だよ」
これまで苦労したことがない。最初から知性があって最低限の言葉も話せるため、食事のマナーやトイレの仕方もすぐに覚えた。
困ってることは寝てる間に乳を吸ってくることくらいか。ま、その程度は赤ちゃんだからしゃーないわな。
「いいことですねぇ。研究所で育てているゴブリンちゃんも、おおむねは問題ありませんよ~」
「ん、おおむね?」
「はい。魔物らしく人を害する、ということはありませんが、トゥルーデさんがしばらくやってこないままだと、夜泣きやおもらしが酷かったりしますねぇ~」
へぇ。まさに赤ちゃんの駄々って感じだな。元が殺人凌辱上等の魔物であることを考えれば、小さすぎる程度の問題だが。
「ただ、癇癪の頻度はトゥルーデさんがやってこない期間だけ長くなることがわかってます。つまり~、もしも人間の母親がずっとやってこなければ……」
「普通の魔物みたいに、大暴れを始めるってことか」
キャシー博士は頷いた。
そういえば受付嬢のハルピさんから聞いたな。〝ヒトから生まれた魔物は、強いだけでなく凶悪で、執拗に人里を襲うようになる〟と。
そりゃもしかしたら……。
「母親を、求めての行動なのか」
「ですねぇ~。どうやら人と魔物の仔にとって、母という存在はよほど大切なのかと」
なるほど。母親がこいつらの理性の鍵になるわけか。
「だからレーテさん、死んじゃダメですよ~? 魔物が成体になるまでは側にいてあげてください。それまで穏やかに過ごさせることが出来たなら、たとえ母と別れたとしても、人の世界で生きていけるだけの理性が身に付くかもしれませんからね~」
「わかったよ。てか元々死ぬつもりはないっつの」
金を稼いで男に戻って、普通に美人な嫁さんもらいたいからな。いいぜ、それまでは。
「喜んでやってやるよ、母親業くらいはな」
足元の子ゴブを抱き上げてやった。お~らよしよしっと。
『ゴッ、ゴキャァ~ッ!』
「おん?」
喜ぶと思いきや、子ゴブは嫌そうにばたばた暴れて、腕から抜け出して縮こまってしまった。
ど、どうしたんだ。昨日あたりから様子がおかしいぞ!?
「お、俺なにか嫌われることしちまったか……!?」
「ふっふっふ~。逆ですよぉレーテさん。ソレについては、これからアナタたちにする二つ目のお話に関係しますねー」
博士は、俺、トゥルーデ、それぞれの産んだ子ゴブリンを見渡してニッコリ笑った。
な、なんだよ猫耳オレンジ。ちょっと怖いぞ。
「二つ目の話ってなんだよ」
「はい。単刀直入に言うと――お宅の息子さんたち、発情しています」
………………えっ!?
「い、いまなんつった!?」
「発情していると言ったのですよ~。聞いたことありません? ゴブリンは性欲旺盛な種族で、生まれてから一か月ほどで子作りが可能になると」
うっ……!? そーいえばトゥルーデがそんな話してた気がする。
「……子ゴブが変な態度をするのはそういうことか。年頃の男子みたく、『反応』しちゃって恥じらってたと……」
って、待て待て待て。よく考えたらちょっとおかしいぞ。
「子ゴブは、俺を見て恥ずかしがってたんだぞ? それじゃまるで、
「はいそうですっ♪ 息子さんはアナタに恋しちゃってるみたいですねぇ~♪」
「ふぁっ!?」
は、はあああああああーーーーーーーーッ!? ななななっ、なんだそりゃぁ!?
「トゥルーデさんのお子さんも同じですよ。トゥルーデさん、よくおもちゃを買ってプレゼントしてあげてるのですが、最近はおもちゃで遊ぶでなく匂いを嗅いだり舐めたりしてるんですよねぇ。まさに、わずかに付いたお母さんの気配に懸想するように~」
「……ふっ。それはなんとも、こそばゆいのぉ……」
トゥルーデはまんざらでもない笑みを浮かべた。ってまんざらしちゃダメだろピンク魔女!?
「ん~……まぁ事態はわかったよ博士。トゥルーデはめっちゃスタイルいい美人だからな、子供が恋しちゃうのもわかるよ。俺と違って」
「嫌味ですかぁ?」
って博士ちょっとキレた!? な、なんかごめん!?
「ともかく二匹ともアナタたちに発情しているということです。さて、それに当たってアナタたちには~」
「アナタたちには?」
「息子ゴブリンさんに、正しいセックスを教えてあげてくださぁ~い♪」
…………はぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!?
次回になります!
◇↓皆様からのご感想&評価&オススメと、活動報告にて『相手役になってほしい魔物』、待っておるぞ!(トゥルーデ)
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