姉、矢澤にこの嬌声が響く夜 作:悪夢
「えっと...」
電車に揺られる事1時間。実家から少し離れた郊外にて、俺はとある人物を訪ねていた。
「確か...805号室だったよな?」
スマホの通話アプリを開き、トーク履歴を探す。
その中で"矢澤にこ"と表示されている履歴を開く。
『部屋は805号室よ』
と、送られたメッセージの直ぐ後に―――
『車に気を付けて来なさいよ』
―――と、すかさず送られていた。
そんなどこまでも優しく、どこまでも面倒見の良いこの矢澤にこという女性は...俺の姉だ。
「ここか」
地図アプリを頼りに駅から歩くこと数十分。ようやく目的地のマンションに到着した。
しかし、約束の時間よりかなり早く到着してしまった。
一応、電話で確認しよう。姉ちゃんも準備があるだろうし。
「...」
そう思いながらアプリの通話ボタンをタップした。
姉ちゃんのアイコンはアイドルとして活躍していた頃のままだ。
今はたまに動画配信を行う程度で、アイドルとしては半分引退している。
「...出ない」
しばらくコールしているのだが、なかなか電話に出ない。
仕事中は出られない事はあるけれど、それ以外は基本的に電話に出るのが早いはずなのに...
珍しいこともあるモノだと思っていると、ようやく通話が繋がった。
『ちょっと...どうして―――も、もしもし...っ...?』
何故か慌てた様子だ。
「もしもし?姉ちゃん?」
『こ、虎太郎!?ど、どうしたの...?』
何故か少し息が荒い気がする。
...一体どうしたのだろうか?
「そうだよ。ちょっと早いけど、もうすぐ到着するから電話した」
連絡した理由を告げると、電話口で姉ちゃんは更に慌てた声を上げた。
『ええっ!?...ふっ...ぁ...きょ、今日来るの!?』
あれ?伝えていなかったかな...
そう思い日付を確認したけれど...間違いない。約束していたはずだ。
「今日泊まりに行くよってメッセージ送ったじゃん」
『あれっ!?あっ...そ、そうだった...ふあっ...か、勘違いしてたみたい...っ...ぁ...ご、ごめんね...っ』
かなり息が荒い。それに、何かギシギシと音が聞こえる。
「姉ちゃん?大丈夫?」
『だ、大丈夫...だから...っ...っ...っ...』
一定のリズムで息が漏れている。
「ひょっとして...筋トレしてた?」
『そ、そうなの!だから...また...っ...掛けなおすわね...?』
何かを我慢しているような、少し苦しそうな声。
もうアイドルは引退しているのに、相変わらず真面目だなぁ...
「わかった。もうすぐ到着するからね」
『う、うん...わかった...ああっ♡♡』
最後に色っぽい声を漏らし、電話は切れた。
「...」
本当に筋トレなのだろうか?
一瞬だけ違うことを想像したけれど、姉ちゃんにそんな相手は居ないはずだ。
ついこの前も母さんに『独り身で寂しい』と語っていたので間違いない。
...少しだけ波立つ心境を押さえつけながら、姉ちゃんから電話がかかってくるまでコンビニで時間を潰すことにした。
―――――――――――――――
「...あっ」
待つこと数十分。ようやく電話がかかってきた。ちなみに通話アプリではなく、普通の電話だ。
『もしもし?』
「はーい。もう大丈夫なの?」
電話口の姉ちゃんはいつも通りの声色...に思えた。
『はぁ...はぁ...ごめんね、虎太郎。さっきはちょっと手が離せなかったの』
まだ少し息が上がっている。しかし、先ほどに比べると普通だ。
「大丈夫だよ。もう行っても平気?」
『え、ええ。大丈夫よ、おいで』
いつも通りの優しい姉ちゃんだ。
...そう思うと少し安心した。
「わかった。近くに居るから直ぐに行くよ」
『車に気を付けるのよ』
まるで母親のような言い方であった。
...まあ実際に母さんは仕事で忙しいから、代わりに俺やここあ姉やこころ姉の面倒を見てくれたので、姉弟というより子供に近い心境なのかもしれない。
「わかったよ。じゃあまた後で」
『うん、また後で』
そう言って電話を切った。
「...」
普段通りだ。絶対に。
...別に姉ちゃんに彼氏が居たからといって嫉妬はしない。嫉妬なんてしない...はずだ。
でも...少し複雑ではある。
可愛くて、綺麗で、優しくて、料理が上手で...こころ姉やここあ姉も美人だけど、やっぱり姉ちゃんが一番だ。
シスコン気味だと仲の良い友人に冗談交じりで言ってみた事もあるけど、『あの矢澤にこが身内なら仕方ねえな』と言われる始末だ。
そんなことを考えていると、いつの間にか姉ちゃんのマンションの前に到着していた。
「えっと...805...と」
文字盤に入力し、呼び出しボタンを押した。
すると、直ぐに反応が返ってきた。
『はーい。どうぞー』
スピーカー越しでも分かる可愛らしい声。
もう20代後半だというのに衰えないその声は、毎日のケアとトレーニングの賜物だと以前に話していた。
「はーい」
直ぐに自動ドアが開いた。
そのまま玄関ホールを進み、エレベーターのボタンを押した。
しばらく誰も使用していなかったのか、エレベーターは1階で待機していた。
そのまま乗り込み、操作盤の『8』を押す。
「...」
音もなく上昇を始めるエレベーター。窓が付いているタイプではないので景色は見えない。
そして、直ぐに8階に到着した。
「おっ、と」
「あ、すみません」
扉が開くと、目の前に男の人が立っていた。
「いえいえ。...おや?」
身長は...僕より少し高いから170cmより少し大きいくらいだろうか?
肩幅が広く、がっしりとした体型だ。髪は短く切られており、さわやかだけど穏やかで優しそうな人だ。
「はい?」
男の人は俺を不思議そうな顔で見ていた。
「君は...なるほど、確かに。すみません、大したことじゃないので気にしないでください」
何か納得したらしい。
「はぁ」
こちらは分からない事だらけだ。
「では失礼」
「あ、はい」
男性は無地のTシャツにジーンズ姿で、その手には財布とスマホだけ持たれていた。随分と軽装だけど...恐らく住人の一人なのだろう。
どうせ知らない人だ。気にしたところで仕方ない。
俺はとにかく805号室を目指した。
「ここだ」
玄関横に805と刻まれている。
俺は部屋番号の下のインターホンの呼び出しボタンを押した。
「...」
ピンポンと聞こえると、直ぐに玄関のカギが開いた。
「いらっしゃい、虎太郎」
「うん。お邪魔します、姉ちゃん」
ふわりと微笑む姉ちゃん。
昔の...スクールアイドルをしていた頃から変わらない可憐な容姿。
身長はあまり高くなく、色白で全体的にスレンダーなスタイル。高校卒業後に少しは大きくなったけど、結局胸はあまり大きくならなかったらしい。
しかし、以前は可憐なアイドルであったけれど、今は更に色気が増した気がする。
「なにぼーっとしてるのよ。ほら、早く入りなさい」
...でも、やっぱり姉ちゃんは姉ちゃんだ。
「うん」
微笑む姉ちゃんの後に続いて部屋の中に入った。
「お邪魔します」
「ええ、いらっしゃい」
靴を揃えて部屋に上がった。
「よしよし。ちゃんと靴を揃えられたわね」
「子供じゃないんだから...当たり前でしょ」
相変わらず俺が子供に見えているらしい。
「高校生なんて子供の内よ。ほら、手洗いうがいをしてきなさい」
「はいはい」
...靴、少なかったな。多分靴箱の中にあるんだろうけど、姉ちゃんのヒールと少し大きいスリッパが一つだけ置いてあった。
おしゃれ好きな姉ちゃんにしては意外だ。
「引っ越してから初めて来るわよね?」
「あ、う、うん」
ぼんやりとそんなことを考えていると、姉ちゃんに声を掛けられていた。
...確かにこの部屋には初めて来る。
「そうよね。わからない事があったらすぐに聞きなさいよ」
「はーい」
まあ、別に聞くほどの事は無いだろう。
「...?」
しかし、直ぐに疑問が沸いた。
...歯ブラシが2つある。一体どうしてだろうか?
「虎太郎、夕ご飯は何が食べたい?」
「ぁ...な、何でも良いよ」
何も考えていなかった...
「なんでも良いが一番困るのよね...まあいいわ」
そう言いながら姉ちゃんはスマホを操作していた。
...レシピでも検索しているのかもしれない。
「...あ、寝室は散らかってるから開けないでね」
「う、うん」
まあ、女性の寝室を無断で開けるのは失礼だろう。
「...」
...しかし、困ったのは何処が寝室なのか分からないところだ。
部屋の扉はすべて似たようなデザインであり、どこが何処だか...
...まあいいか。
「姉ちゃん、トイレ借りて良い?」
「良いわよ~」
「ありがとー」
...早速困った。
何処がトイレだ...?
「ここかな...?」
目の前の扉を開いた。
するとそこには―――
「あ...」
カーテンが閉まっている薄暗い部屋。
大きなベッドが置かれており、床には衣類が散らばっていた。
ベッドのシーツは乱れており、部屋の中は何とも言えない濃い臭いが漂っており―――
「っ...!」
慌てて扉を閉めた。
...早速はずれだった。しかも、よりによって開けるなと言われていた寝室だ。
それに...アレは―――
「虎太郎」
「わぁっ!?」
いつの間にか姉ちゃんが隣に立っていた。
「ど、どうしたのよ?トイレはこっちよ?」
姉ちゃんは俺の声にビクンと身体を震わせていた。
「あ、ありがとう...」
ドクンドクンと早くなる鼓動を押さえながらトイレに入る。
...清掃が行き届いている綺麗なトイレだ。
こんなに綺麗なトイレを汚すわけにはいかないので、立って用を足すわけにはいかない。
俺は便座を降ろした後に座って事を済ませた。
「...」
姉ちゃんは家事が得意だ。それに綺麗好きなので部屋は何時でも綺麗だった。
そんな姉ちゃんが寝室を散らかったままにしているとは考えにくい。
それに...ベッドの上に散らばっていた正方形のアレは―――
「まあ、急いでいたのかも」
―――考えすぎか。電話口でも慌てた様子だったし。
だから仕方ないのかもしれない。
「トイレありがとう、姉ちゃん」
「いえいえ」
キッチンに立っている姉ちゃん。
どうやら飲み物を用意してくれているらしい。
「お水でも良い?コーヒーくらいなら有るけど」
「水で良いよ。ありがとう」
それなら良かった、と言いながらコップを3つ取り出す姉ちゃん。
...しかし、少し考えた後にコップを一つ片づけていた。
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
食卓に向かって腰かけ、改めて姉ちゃんと向き合った。
「ふぅ...」
勢いよく水を飲み干す姉ちゃん。
...余程喉が渇いていたらしい。
「ん...」
俺も姉ちゃんに倣って水を口に含んだ。
そして、ゆっくりと嚥下する。
「ごめんね、虎太郎。お姉ちゃん、日付を勘違いしていたみたい」
申し訳なさそうな様子の姉ちゃん。
...昔に比べて随分と穏やかな喋り方になった気がする。相変わらず優しいけど、前より母性的な気がする。
服も色合いが落ち着いたシンプルなデザインだし、髪型もツインテールではなく一つにまとめて軽く流している。
「大丈夫だよ。俺こそごめんね、急に遊びに来て」
「良いのよ。いつでも来なさい...あっ、でも...出来れば前もって連絡してもらった方が良いかも」
ほんのりと顔を赤くしながら恥ずかしそうに言う姉ちゃん。
まあ、女性の部屋に尋ねる際に行き成り行くのも失礼だろう。この辺りの気遣いは姉が3人もいると自然と身に付く。
「わかった。気を付けるよ」
...しかし、理由はそれだけではない気がする。
人の部屋をあまりジロジロと見回すというのも失礼な話だけど、どうしても気になってしまう。
流しに置かれた2つの茶碗と2枚のお皿。お揃いのマグカップ。2本の歯ブラシ。そして...枕が2つ並んだ乱れたベッド。
「虎太郎?」
ぼんやりと考え事をしていると、姉ちゃんが不思議そうな顔で覗き込んでいた。
「あ、いや...なんでもな―――え?」
テーブルに置かれた姉ちゃんの小さい手が目に入る。
色白で綺麗な手なのだが...気になったのは袖口から覗く細い手首だ。
「姉ちゃん...その手、どうしたの?」
姉ちゃんの細い手首には...何か巻き付いていたかのような赤い痕がくっきりと残っていた。
「え?...あっ、こ、これは...っ...な、何でもないのよ」
慌てて誤魔化しながら手首を隠す姉ちゃん。
...不自然すぎる。
「姉ちゃん...ひょっとして―――」
と言いかけたところで、玄関の扉が開く音が聞こえた。
「...え?」
「...」
気まずそうな姉ちゃん。玄関を開いた謎の人物。
姉ちゃんの様子を見るからに、知らない人ではないだろう。
「ただいま、にこ」
そこに立っていたのは...先ほどエレベーターですれ違った男性だった。
「おかえり。早かったわね」
「うん。道が空いてたからね」
買い物袋を片手にこちらに近寄ってきた。
「あ、やっぱり君が虎太郎君か」
「は、はい...」
この人は誰だ?姉ちゃんの何なんだ?
"ただいま"と言いながら部屋に入ってくる人物がただの知り合いや友達であるはずがない。
「こんにちは、虎太郎君。突然ごめんね。俺はにこの―――」
「私の...婚約者よ」
やっぱり...そうなんだ...
「そ、そうなんだ...」
激しく乱れる心を悟られないように必死だった。
「うん。ごめんね、なかなか言うタイミングが無くて...ママには伝えてるんだけど」
母さんと姉ちゃんが時々電話で話しているのは知っていた。でも...まさか結婚間際の彼氏が居るなんて。
「さっきはごめんね、すれ違ったのに何も言わなくて。なんとなく、君がにこの弟さんじゃないかとは思ったんだけど...にこから紹介される前に声をかけても不審がられると思ったんだ」
申し訳なさそうな顔で謝罪する婚約者さん。
どうやら第一印象のままの良い人のようだ。
「い、いえ...別に...」
しかし、俺の方が動揺が収まらない。
姉ちゃんに恋人...それも婚約までしているという...
「...」
別に何も不思議な事は無い。
アイドルとして10代20代を駆け抜けた姉ちゃんだけど、今はもう結婚適齢期と呼ばれる年齢だ。何もおかしい事は無い。
でも...
「そ、そうだ...虎太郎君はにこのハンバーグが好きって聞いたから...その材料を買ってきたんだ。食べていくでしょ?」
「違うわよ。虎太郎は夕飯だけじゃなくて泊っていくのよ」
「そうなの?それじゃあ布団の準備もしないと...」
あたふたと辺りを見渡してる婚約者さん。
そんな彼の様子を見ていた姉ちゃんは...穏やかに微笑んでいた。すごく...幸せそうに。
「もう...布団なんか準備しなくても良いでしょ?来客用にソファベッドにしたじゃない。ほら、良いから食材を冷蔵庫に入れてきて」
あたふたとしていた彼の腕にそっと触れて、広い背中を優しく撫でていた。
「あ...そうだった。虎太郎くん、ソファベッドでも平気?」
「あ、はい...大丈夫です」
割と何処でも寝れる方だ。
「それなら良かったよ。うちはベッドが一つしかないからね。それに...今は人様には見せられないし」
「そ、そんなこと言うんじゃないわよっ」
顔を真っ赤にしている姉ちゃん。
...そんな言い方をしなければ邪推する事は無かったというのに、そのリアクションで色々と察してしまう。
「(そ、それに...虎太郎に手首を見られたのよ?あなたがあんなに強く縛るから...っ)」
「(強く縛って欲しいって言ったのはにこの方でしょ?そっちの方が興奮するからって...)」
「(なっ...!そ、そう...だけど...)」
何やらキッチンにてひそひそと話し合う二人。
会話の内容は聞き取れないけれど、姉ちゃんは顔を真っ赤にしている。
「...」
同棲している妙齢の男女なのだ。当然"そういう行為"もするだろう。
何も不思議な事は無い。
「っ...」
何も....不思議ではないのだ。
―――――――――――――――――――――
その後、久しぶりの姉ちゃんの手料理を堪能し、お酒が入った二人と楽しく過ごした。
自然に笑えていた...と思う。
そして今。深夜に差し掛かる頃だが、不意に目が覚めてしまった。
「ん...」
別に寝心地が悪いという事ではない。ただただ何となく、目が覚めてしまったのだ。原因は分からない。
「トイレ...」
ぼんやりとした頭のままリビングを出てトイレに向かう。
場所は覚えている。もう間違えたりしない。
「ふぅ...」
便座を降ろした後、座って用を足す。
...今思えば、姉ちゃんが一人で住んでいると仮定すると便座が上がっているというのは不自然な話だ。
考えられるとすれば、姉ちゃんが男を定期的に連れ込んでいるか、同居人が異性であるかの2択だが...結果として後者であった。
「...」
洗面所で手を洗い、再びリビングに戻ろうとした。
...しかし、姉ちゃんの寝室の扉の前で聞いてしまった。
『ふぁ...あっ♡ま、まって...ああっ♡♡こ、虎太郎も居るのにっ...』
『最初に我慢できなかったのはにこの方だろ?昼間は中途半端に終わったからって』
『で、でも...ああっ♡♡』
廊下まで響く姉ちゃんの甘い声。
それが男女の営みによるものだと一瞬で気が付いた。
『ん...やっぱり、にこはここが好きなんだな』
『そ、そうだけど...ま、まって...ダメダメダメ...っ...あああっ♡♡』
『ほら、我慢せずにイって良いんだよ。いつもみたいにイってごらん』
『だめっ...本当にイっちゃ―――ああっ♡♡ごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ...♡♡♡』
『大丈夫、大丈夫だよ。思い切りイって良いから』
「...」
甘ったるい恋人同士の睦言。
シスコン気味であった俺には辛いはずなのに、それでも足が動かない。
『ごめんなさいごめんなさいっ...あああああっっ♡♡♡♡♡♡』
ギシギシと激しく軋むベッドの音。
姉ちゃんが...イった。
『はぁ...はぁ...』
『よしよし。良い子だ。謝らなくて良いからね?』
『でも...』
『大丈夫。俺は君がイってもいじめないから』
『そう...そうよね...ねえ、キスして?』
『うん。んっ...』
『んっ...♡』
ぴちゃぴちゃとかすかに水音が聞こえる。
それほど濃厚なディープキスなのだろう。
『ん...ねえ、そろそろ...』
何か懇願するような口調の姉ちゃん。
『うん。どうする?今日も縛ったままにする?』
『それも興奮するけど...ううん、今日はほどいて欲しい』
『分かった。じゃあ解くよ』
今日も...という事は、いつも縛ったままセックスをしているのか...?
『これで...よし。痛くない?』
『ううん、ちょっと痺れてるけど平気...』
『よしよし。それじゃあ...そろそろ
遂に...その瞬間が訪れようとしている。
...これ以上は駄目だ。これ以上聞くと...
『あ、待って...』
『うん?』
『今日は...その...ナマでシて欲しい...』
『...良いの?』
『...うん。たくさん...
懇願するような甘ったるい声。
...婚約するような仲なのだ。それに姉ちゃんの年齢を考えると何も不思議な事は無い。
でも...それを聞いてしまうと...本当に...
『...わかった。じゃあ...いくよ』
『うん...』
そして―――
『っ...』
『あっ...あああっ♡♡』
....そこからは良く覚えていない。
しかし、最後に...姉ちゃんが婚約者さんと一緒に絶頂を迎える瞬間の言葉は覚えている。
それは―――
『ああああっっ♡♡♡♡好きっ...大好きっ...ああっ♡♡だめだめだめぇぇ♡♡♡♡』
『ぐっ...にこ...そろそろっ...!!』
『
そして...その瞬間が訪れた。
『ぐっ...ああっ』
『あああああっ♡♡♡♡♡♡』
ギシギシとベッドが軋む音が鳴りやみ、しばらくの静寂の後に...囁くような声が聞こえてきたのだ。
『はぁ...はぁ...にこ...愛してる...』
『わたしも...愛してる。...ねえ...あなた...?』
『うん...?』
『赤ちゃん...出来るかな...』
『それは...』
『あなたは...赤ちゃん...欲しい...?』
『...当然だ。にこの子供だろ?きっと可愛いに決まってる』
『えへへ...ねえ、それなら...』
『ああ...そうだな。まだ...』
『うん...もっと...
そして...その夜はずっと姉ちゃんの嬌声が遠くから聞こえ続けていたのであった....
その後、姉ちゃんは直ぐに結婚式を挙げた。
俺の姪っ子が産まれたのは...あの日から十月十日が過ぎた頃であった。