※この作品はR-18です。

エルデンリングとはエロゲーである   作:鷲羽ユスラ

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ギリギリ今日投稿したかった。推敲色々明日やります。


聖別雪原
聖別雪原→典礼街オルディナ


 聖別雪原

 

 右も左も分からない吹雪を彷徨(さまよ)い、真っ赤な花を咲かせること三桁回。

 祝福に戻った男はしばらく呆然と突っ立っていたと思うと、突然武器を振り回す奇行に走っていた。

 岩や雪を殴り続けるその姿は、とうに正気を失っている。

 

 視界が悪い、(すこぶ)る悪い、確かに聖別もされるだろう。

 選ばれぬ者は凍えるまま、眠るように打ち棄てられる。

 実に優しく、残酷な所業だ。試練を添えて、自発的に、民の選別を強いている。

 不条理な仕打ちに耐えられぬのなら、自ら足掻く苦難に耐えさせる。

 優しく抱く希望を示し、せめて終わりに救いを与える。

 世界がとうに壊れていると、気づかせぬまま。

 

 脳裏に過ぎるのは賢人の言葉か、つまらぬ皮肉屋の嘲弄か。

 発狂状態の男の脳に、天啓にも似た、だが到底理解などできぬ高次元雑音が乱舞する。

 

 やっぱり律の砕け()くない! 生命は祝福と幸福を謳歌すべき!

 通信まだ繋がんない!? 現場判断、現場判断でどうにか! いい感じに導きつつ後は流れで!

 勝手に次代の神候補選んだり祝福ばらまいてるけど、我々の努力は間違いなく大いなる意志に沿ってますよね!

 あっあっあっ、困ります神人様! あー困りますあー! ちょっ、影従くん君も説得して! やくめでしょ!

 なんで褪せ人くん来ないのー!? もう円卓に誰もいなくて寂しいよー! これじゃ律の修復できないよー!

 有限への分かたれは過ちだ! すべては焼き溶かされ、大きなひとつに戻さなくてはならない!

 聞こえますかー、聞こえますかー! 私は頑張ってますよー! 貴方の輝ける娘はここにいますよー!

 

 宇宙的毒電波を受診する男は、意味もなく野蛮な咆哮を上げて暴れ回る。

 騒音に釣られ集まってくる、皮と骨だけの窶れ果てた市民。

 男が正気を取り戻す前に、ガタガタの剣群が振り下ろされ。

 

 男は死んだ。

 

 

 

 

 脳に響く多重通信を掻き消すように、何度か頭を叩き壊した男は、悟りを得る。

 独力での踏破は不可能だ。何でもいい、指針となる導きが必要だ。

 決意を固めた男はとりあえず、よく分からん幻影の言葉に従い、光を追ってみることにした。

 

 光を探す。光を目指す。辿り着き、また一つ、光を見つける。

 凄まじい吹雪、視界不良のせいで遅々として進まないが、男はどうにか死なずにいた。

 どうやらこの光は正しい道筋であり、そこから外れた時、自然の猛威は処刑人となる。

 遮二無二走ったところで、自然を超えられる筈がないのだ。人に山は砕けない。

 自然を舐めてはいけない、そう気を引き締める男は、全裸に武器一つで光を辿る。

 

 ちょっ、ゴラァ!! ナニ光持って歩いてんだてめぇ!!

 光の道横切るのやめてください! やめてください! 野郎その大事に運んでる物ぶん盗ってやらぁ!!

 ヤバイヤバイ追い込まれちゃう……崖ゥ! 危ないゥ! 落ちたら死ぬゥ!

 来いやぁ! 来いやぁああ!! ペッ、落ちやがって雑魚が、二度と逆らうな!!

 

 道中アクシデントがありつつも、何とか進んでいく男。

 疲弊し、聖杯瓶も使い切り、また最初からやり直しかと諦めかけた、その矢先。

 吹雪の中に、仄かに漂う、祝福の光をついに見つけた。

 (しお)れていた男の顔に急速に生気が戻り、老人のようだった足取りは風の如く速くなる。

 進路中の目についた市民を黄金のハルバード(能力不足)で殴りながら走る男。

 調子に乗って雪に埋まった無様な市民三人を殴った、その瞬間。

 バァン!! 突然現れた灰色塗りの巨大生物に追突し、跳ね飛ばされる男。

 突然の不幸に動転しつつ、深雪にぶっ刺さった体を引き抜いた、男の眼前で。

 爪を、牙を、獣性を剥き出しに、巨大生物はビリビリと、空気を震わせる咆哮を轟かせた。

 

 クソァ!! おそらく犬!!(※熊)

 

 男は死んだ。

 

 

 

 

 聖別雪原、奥地

 

 あれから何百回のリトライを経て、男はようやく夢にまで見た祝福に辿り着いた。

 ゼーゼーと荒い息を繰り返しながら、束の間の休息を謳歌する。

 何気に「忌み鬼、マルギット」よりも死亡回数を重ねている気がするが、どうでもいい些事だ。

 祝福という名の、円卓の強力な呪縛は、男を死から遠ざけ続けている。

 心折れぬ限り、ずっと戦える。疲労の色濃い相貌に、満たされぬ飢えを男は刻んでいた。

 

 十分に休んだところで、男は辺りを見渡す。

 やはり、雪原である。しかし道中のように視界は悪くない。

 聳える巨大樹、血のような花の絨毯と石柱群、腹に響く大いなる鐘の音。

 ちらほらと興味を引く景色を前に、男は立ち上がり、行先を決めた。

 とりあえず、北にある街っぽい所に行ってみよう。

 聖別を抜け、怖いものなし。ルンルン気分で男は歩いた。

 

 

 

 

 典礼街、オルディナ

 

 クソァ!! 階段前に揺らめく祝福で手足をつき、男は大いに憤っていた。

 

 何だここの連中! どいつもこいつも殺意が高すぎる! 人の心とかないんか!!

 

 思い返せば、トロルが引っ張る護送車に轢殺され、周囲の旗振り市民どもに嬲り殺しにされ。

 夜にコソコソと移動していれば、漆黒馬に乗った漆黒騎兵に追い回される(しかも二体!!)

 キルゾーンを抜け出したかと思えば、そこは狼に乗った弓兵たちのキルゾーンでしかなく。

 何度も何度もハリネズミになりながら、男はようやく祝福まで辿り着いたのだった。

 

 沸々と湧き出る怒りを抑え込み、気を取り直して男は探索する。

 なんか住民は透けてるし、街のいたる所に封印っぽいもので通れない。

 実質一本道を歩いていけば、地面に備え付けられた光る蓋を見つけた。

 男が首を傾げていると、隣のインプ像に何やら書かれている。

 

「封牢の四像に火を灯せ」

 

 ふーん、成程ね、完全に理解したわ。

 火をつけるなんて楽勝だと笑いながら、男は封牢に立ち入った。

 

 

 

 

 そろそろ、我慢の限界が近づいている。

 殺されては走り、殺されては走り……祝福から封牢まで何百回とマラソンする男は、怒り狂うのを必死で我慢していた。

 

 最初は良かった。誰もいないなと思いながら、目立つ像に火をつけた。

 瞬間、掴まれ、背中に致命の一撃を叩き込まれる男。訳も分からず殺された。

 警戒した、殺された。壁を背にカニ歩きした、殺された。逐次武器を振った、殺された。

 封牢内には、見えない敵が居た。それも一人ではない、おそらく四人。

 連携し、取り囲み、男を翻弄する。そして両腕を絡め上げ、背中に死を刻み込む。

 

 火をつけられた像は一つだけだ。残りの三つは屋根上にある。

 男は見えない敵を無視して、火をつけることだけに集中した。

 斬り裂かれても走り、勘で避け、梯子を必死で登る。

 そうすれば今度は、屋根上に陣取る、三人の弓兵に撃ち殺される。

 男の移動を付け狙い、ゆったりとその場に座し、ひたすら矢を放つ。

 三本の、それも追尾する矢に貫かれ、男は何度も死を体験した。

 

 だから、男の憤怒は、頂点に達しつつある。

 死ぬのは構わない。有利を取られようと知ったことじゃない。苦境に飛び込むのは大歓迎だ。

 だが、だが、まともに戦わせて貰えない。これだけは駄目だ。

 それだけは耐えられない。苦難とは、真正面から立ち向かい、打ち砕くもの。

 罠にかかるしかない状況で、背中から斬られ続ける。そんな卑劣は、男の好みではなかった。

 

 だから男は、一旦切り上げようとしていた。

 他にも行先はあるのだ、敢えてここに拘る必要はない。

 敵前逃亡のようで業腹だが、同じ過ちを繰り返すのはただの愚者である。

 見えない敵を見る方法、そして遠距離に対応する手段。

 その二つを手に入れ、必ずや再挑戦を。

 殺される寸前、力尽くで自らを納得させる、憤懣遣る方ない男。

 

 その時。

 耳を引っ張られ、囁かれるように。

 聞こえてきた音に、男は完全停止した。

 

 見えない敵が、いつでもトドメを刺せる状況で、男を見下ろしている。

 近くの屋根上、身を寄せ合う三人の弓兵が、口元を隠し、男を指差している。

 

 フフフ。

 クスクス。

 アハハ。

 

 笑っていた。

 見えない敵どもが、笑っていた。

 蒼銀の弓兵どもが、笑っていた。

 小さく、確かに、嘲笑していた。

 

 停止したまま、殺される男。祝福に戻り、立ち上がる。

 

 男の中で、何かが切れた。

 

 

 

 

 彼女たちは、黒き刃の刺客と呼ばれている。

 陰謀の夜、死のルーンを盗み、黄金のゴッドウィンを弑した実行犯。

 その後、破れかぶれに逃走し、今はそれぞれの目的で動いている。

 彼女たち四人もその一つであり、安息の地として聖樹を目指し、そしてミケラに魅了された。

 今やただ、オルディナの侵入者を狩る門番と化している。

 

 黒き刃の四人は、ずっと続いていた侵入が途絶えたので、それぞれの持ち場に戻っていた。

 一人は、聖樹へ続く転送門、その橋下に身を潜めている。

 手慰みに黒き刃を回す彼女は、先の侵入者を思い出し、忍び笑いを零す。

 どうやって聖別雪原を踏破したかも分からない、か弱い褪せ人。

 諦めの悪さに辟易しながらも、一向に学ばぬ愚かさは、実に道化らしい。

 退屈な門番にとって、それなりに面白い娯楽であった。

 

 その笑みも、緩みも、すぐに消える。

 また、封牢内に誰かが侵入した。感じ取った彼女は、仲間に合図を出すために橋下から動く。

 意識が仲間へ向いた、その刹那。

 頭上に躍り出た男は、落下攻撃を叩きつけた。

 

「っ!?」

 

 頭部への、著しい強打。脳が揺れ、反応が遅れる間にも、殴打は止まらない。

 殴られ、殴られ、殴られ。黒き刃の刺客はついに崩れ、雪に体を投げ出した。

 意識が朦朧とする、体に力が入らない。

 獲物を生きたまま捕まえる、原始的な狩りの手法。

 その術中に嵌った彼女は、せめて、襲撃者を睨みつけた。

 

 そして、ひゅっ、と息を呑む。

 

 男が立っていた。

 光を背に、影の中、見下ろしていた。

 真円の如く開かれた目、塗り潰された真黒の瞳。

 敵ではなく、有象無象ではなく。

 蹂躙すべき物を見つめる、絶対的捕食者の顔。

 食われると、原始的恐怖に彼女が震えた瞬間。

 男は憤怒で赤く染まった腕を伸ばし。

 黒き刃、その股座の布を、力任せに破り捨てた。

 

「――っ!?」

 

 言葉なき悲鳴が刺客から漏れる。

 音を立てぬ、暗殺の鎧として、防御よりも隠密を優先した構造。

 肌に直接纏うそれは、剥がされれば衣服としての機能も失う。

 まろびでる、彼女の秘部。暗殺者たるを誓い、女を捨てた未経験のそれ。

 

 刺客の反射的な抵抗は、不発に終わった。

 馬鹿みたいに脳を揺らされた結果、体を動かすこともままならない。

 羞恥よりも、殺意に滲む黒き刃。せめて男を睨むベールの奥の顔を、男は鷲掴みにする。

 そして、どろりとした蜜を秘部と棒に塗りたくり、のし掛かって破瓜を散らした。

 

「~~~っ!?」

 

 強姦される刺客は、力の入らない体を震わせ、艶やかに反応した。

 男の塗った蜜の出所は、「ミケラのスイレン」。

 誘惑のデミゴッドが、幼少期に愛でたとされる幻の花。

 典礼街の各所に咲くそれを集め、抽出し、愛液代わりの蜜としたのだ。

 

「っ! っっ! ~っ!」

 

 黒き刃の刺客である彼女は混乱する。

 感じたことのない激情、男に貪られる逢瀬の快楽に翻弄されている。

 「ミケラの蜜」には力の名残が宿っている。それは魅了、愛するを強いる力。

 秘め事に用いれば、無条件に虜とする。強者でなければ、逆らえやしない。

 

 血管の浮かぶ手に押さえつけられる彼女の口から、甘い吐息が溶け始めた。

 力強い腰使いに乱暴されるばかりだった秘裂は、愛液を零し、勝手に男を受け入れる。

 朦朧とした意識に叩きつけられる、快楽、無力感、男の激情。

 それら全てが、ミケラの蜜によって、愛へと昇華されていった。

 

 暴力を振るわれているのに、胸が高まる。

 強姦されているのに、快楽に打ち震える。

 矜持も、尊厳も、粉々に蹂躙されながら。

 どうしようもなく女が疼き、男への愛情を錯覚してしまう。

 

 男に潰され、揺さぶられる体。鎧を剥がされ、外気に晒され、揺れる乳房。

 顔を押さえつけられたまま、僅かな自由は、己を犯す男への愛情を示す手段に成り下がる。

 徐々に加速していく男の情動が、ついに限界に達した時。

 子宮を犯す灼熱の濁流を感じながら、黒き刃の刺客は果てた。

 

 甘い余韻が、静謐に残る。

 弱々しい力で男を掻き抱く彼女は、愛に染まった瞳で男を見上げる。

 そして、ひゅっ、と息を呑んだ。

 男の怒り、著しい猛りは、まったく、微塵も、衰えていない。

 影の中から見下す男へ、縁取られた恐怖が浮かび。

 その内側は、甘く爛れた、快楽への期待で一杯で。

 愛ゆえに、彼女は、男の乱暴を受け入れる。

 

 その後。

 大逆の暗殺者として、地に落ちようとも、手放さなかった矜持は壊れ。

 残ったのは、白濁の欲望に塗れ切った、ただの女に成り下がった彼女の痴態だけだった。

 

 

 

 

 まず一人目を処理した男は、ギンギンに股座をおっ勃てたまま、血走った目で次を探した。

 街外れの建物をうろつく刺客を足跡だけで発見し、病的な観察眼で一瞬の油断、その隙をつく。

 気が逸れた瞬間を狙い、路地裏へ。掴んだ頭を壁に叩きつけ、まず抵抗の余地を奪う。

 二度、三度、四度五度。殺さない程度に痛めつけた男は、ズルズルと力なく崩れる彼女の鎧を剥がした。

 

 男ならば、一対一の場に持ち込み、殺すまで挑んだだろう。

 だが女ならば、怒りと屈辱が綯い交ぜになった欲望を、一滴残さず叩きつける。

 

 鎧の内側から現れる、滑らかな肢体、くびれ、女の色香。

 一介の暗殺者にしておくにはもったいない体を、男は意のままに貪った。

 

 長い脚をガニ股にさせ、頭を壁に押しつけながら、何度も腰を振り続ける。

 蜜の効果を加味しても、彼女たちの体は実に具合が良い。

 死のルーンに近しく接した結果、体はむしろ、生を求めて男を誘う淫靡に特化したのだろう。

 だが今は、そんなくだらない品評などどうでもよかった。

 

 厳正なる戦いに敗れるのは許容しよう。

 卑怯、卑劣、全力を出させない、狡猾の刃も、まあ許そう。

 だが、侮辱だけは、絶対に駄目だ。嘲弄を、男は死んでも許容しない。

 ましてそれが、敵であろうと、女から零れ落ちようものなら――

 こうなるのは、必然である。侮辱の代償は、必ずや、体で支払わねばならぬのだ。

 

 珠のような汗が流れる柔尻を叩きながら射精する男。

 壁に寄りかかり尻を掲げ、甘い息を漏らしながら凌辱の痕を見せつける女を放置し、次を狙う。

 

 残り二人は、近しい場所を巡回している。やるなら手早く、そして一気にだ。

 三度目の、慣れた手順で、男は一人を建物に引っ張り込んだ。

 当然、もう一人はすぐに気づく。だが救援は間に合わない。

 鍵のかけられた扉をどうにかこじ開けようとする刺客は、内側から鳴り響く甘い悲鳴に動きを止める。

 仲間が何をされているのか。理解した刺客は怒りを露わにする。

 だが暗殺者ゆえの非力は、扉を破るに至らない。

 彼女は黒き刃を握り締めたまま、仲間の悲鳴を聞くことしかできなかった。

 

 甘やかに、段々と艶を帯びて、男に媚びる言葉を繰り返す、仲間の嬌声を。

 

 固まっていた彼女は、不意に開いた扉にビクリと震え、隙間から漏れる淫臭に内股になる。

 扉の隙間の暗がりで、ドサリと倒れる仲間の姿。快楽に濡れて気絶した、あられもない女の顔。

 ゴクリと、喉を鳴らす刺客は、招くように隙間を広げる扉に、息を呑んだ。

 逡巡し、おそるおそる、内部へ踏み込む黒き刃。

 瞬間、扉は閉じられ、激しい物音と悲鳴が響き。

 やがてそれは、混じり合う女二人の嬌声となり、一際強く響いた後、静かになった。

 

 

 

 

 屋根上で警戒するしろがねの射手は、すぐにそれを見つけた。

 互いに声を上げ、街の中央を指差す射手たち。

 そこには、同じ門番である黒き刃の刺客たちが、重なるように倒れている。

 鎧を剥がされ、白濁に汚れ、明らかな凌辱の痕が見て取れた。

 

 悲鳴、動揺、哀咽。同志の無惨な姿に、しろがねの射手たちは憤る。

 誰が、なぜ、こんなことを。怒れる射手たちは千里を射抜く眼を以て警戒するも、敵の姿は見えない。

 時間が過ぎる。焦りが募る。できることなら、まずは犯された彼女たちを介抱したかった。

 けれど街の防衛こそ、最優先。涙を呑んで周囲を睨む射手たちは、ふと気づく。

 

 臭いが、漂っている。獣の臭みに似て、どこか甘い、主たるミケラを想起させる臭い。

 困惑する射手たちは、段々と強くなる臭いに知らず震える。それは本能的危機感の表れで、だが無意味だった。

 がくりと、射手の一人が体勢を崩す。驚く仲間たちの声に、崩れた射手は、震える指で一点を指差す。

 

 それは犯され、積まれた、黒き刃の刺客たち。

 時折震える彼女たちは、舌を垂れ下げ、頬を淫欲に染め、熱い呼気を繰り返している。

 湯立つように、ぶちまけられた白濁から、滴る汗と愛液から、白い靄が立ち上っている。

 いつの間にかそれは、閉ざされた封牢内を、霧のように満たしていた。

 

 慌てて口を塞ぐしろがねの射手たち。だが遅い、もう手遅れだ。

 ミケラの蜜と混じった体液は、性を誘発する媚毒となっていた。

 それは霧となり、気づかれぬまま立ち上り、しろがねの射手たちを犯している。

 呼吸が粗くなる。顔が熱い、震える体に力が入らない。

 下腹部の奥で疼き、湧き上がる情動に、困惑しながら射手たちは耐える。

 

 ケダモノは、その瞬間を見逃さなかった。

 

 犯された女たちの媚毒溜まりに最も近かった射手の前に、堂々と男は姿を現す。

 咄嗟に弓を構える射手。けれど腕が震え、弦を引くも覚束ない。

 そうこうする内に、男は梯子を登り、射手の蹲る屋根に飛び乗り。

 屋根の上で、堂々と、射手に覆い被さり、犯し始めた。

 

 その光景に、他の二人の射手は、怒りで己を奮い立たせようとした。

 仲間を強姦される怒り。弓矢を前に隠れもしない、侮りに対する怒り。

 番えた弦を、どうにか引き絞り。二人の射手は、魔法を込めた矢を発射する。

 けれど、ヒョロヒョロと。全く力の籠もっていない矢は、男に届きすらせず、地面に落ちた。

 息を荒げる二人は、男を罵倒しながら矢を番える。

 強姦される仲間を助けるために、入らない力を振り絞る。

 

 無意味だった。どんなに矢を番えても、弦を引っ張っても、男にまるで届かない。

 その間も仲間は、男に犯され続け、悲鳴を上げている。

 艷やかに、たっぷりと色気の乗った、男を求める淫靡な悲鳴を。

 

 どうして、と。二人の射手はそれぞれに、堪え切れない思いを抱く。

 どうして、抵抗しないの。どうして、助けを呼ばないの。

 どうしてそんなに、気持ちよさそうに啼いているの。

 私たちは、苦しんでいるのに。

 体の奥が、疼いて、疼いて、仕方なくて。

 切ないくらいに熱くなって、動けなくなっているのに。

 

 一際高らかな悲鳴が鳴り響き、犯されたしろがねの射手は足先を伸ばした。

 抱き潰さんばかりに女を抱える男。射手たちの鷹目は、肉棒が突き刺さった秘裂から溢れる、凄まじく濃い白濁が見える。

 長く、長く、時が止まったかのように、男の射精は続いていた。

 やがて、男は女から離れた。意識を手放したしろがねの射手からは、湯気のように淫臭が広がる。

 

 愛液に濡れ、白濁に汚れた、雄の象徴。

 目を離せない射手たちに、見せつけるように堂々と、男は移動を開始した。

 次の獲物に選ばれた射手が、反射的に矢を番える。

 けれどもう、弦を引く力も残っていない。矢を取り落とし、か細い悲鳴が漏れる。

 震える手で、次の矢を、取り出そうとして何度も失敗。

 目に涙を浮かべるしろがねの射手に影が落ち、男はすでに、眼前まで迫っていた。

 

 そのまま覆い被さられ、熱に浮かされた甘い悲鳴を上げる射手。

 ただ一人残ったしろがねの射手は、耳まで赤くして様子を見ることしかできない。

 犯され、啼いて、精を注がれる、仲間の姿。

 ずっとそれを見ていた射手を目掛け、男はゆっくりと接近し。

 男が眼前に立った時。射手の手はもう、弓も矢も握っていなかった。

 

 一際高く、熱に浮かされ切った、蕩けた嬌声が響き渡る。

 一人だったそれは、やがて七重奏となり、雪降る夜空に消えていく。

 その後、門番を失ったオルディナに、四つの火が灯り。

 侵入者を拒み続けた封牢は、その役割を終えた。

 

 

 

 

 階段に腰掛けた男は頭を掻き、広げた地図を眺めていた。

 地図断片:聖別雪原。選ばれなかった者たちの道。

 その道の先に、ミケラの聖樹とやらがあるらしい。

 黄金樹に換わる、聖樹。ミケラの優しい律が掲げられる、安住の地であると。

 

 はて、ミケラは円卓に囚われている筈だが、代替わりはもう終わったのだろうか。

 首を傾げる男だったが、やがて思考を放棄し、背後に寄りかかった。

 どうでもいいことだ。男が求めるのは、艱難辛苦の地獄である。

 

 ミケラの聖樹。果たして、満足し得る強敵はいるだろうか。

 期待を膨らませ、笑う男。

 ワキワキと、右手を動かす。柔らかな感触がビクリと震える。

 モミモミと、左手を動かす。手触りの良いハリ艶が艶かしく動く。

 

 階段に座る男は、黒き刃の刺客四人、しろがねの射手三人、計七人の美女に囲まれていた。

 顔を赤くし、俯く彼女たちに、言葉はない。

 ただ潤んだその瞳だけが、期待するように男を見つめている。

 

 当然気づく。その上で無視する。

 無遠慮に立ち上がった男は、全裸で彼女たちに向き合い、告げた。

 

 >【命令する】

 

 反応は顕著だった。彼女たちは一様に驚き、逡巡を見せる。

 が、そんなことは関係ない。男はズイッと一歩踏み出し、彼女たちに寄る。

 ビクリを身を引く美女たち。けれど視線は、男の股座に固定されている。

 暫しの後、諦めたように、彼女たちは頷いた。

 霊体となってなお典礼街を守っていた門番たちは、その使命を捨て、男の一助となる。

 

 >【黒き刃たちの遺灰】【射手たちの遺灰】

 

 遺灰をしまい込む男。気が向いたら使ってやろう。

 その程度の関心を払い、男は階段を登り、転送門に触れた。




頑張ったけどやっぱ喋らないってエロくできないな。モブ姦の時だけハートマーク解禁するか検討中。
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