ミケラ「ローレッタに手紙届けてね♡」
褪せ人「おかのした」
頭の中で展開とか全部決まってたのに、なぜか出力できなかったのだ。
僕は首を傾げたけれど、まあ何とかなると思ってエルデンリングで遊んでいたのだ。
そしたらいつの間にか10日くらい経っていたのだ。
ヤバイのだ。これじゃあ僕が濃厚ホモセックス回に満足して、失踪したみたいに見られるのだ。
そんなことはないのだ。ただちょっと、数ヶ月くらい、筆が動かない時があるだけなのだ。
だから、読者の皆様に、お伝えしたいことがあるのだ。
耐えてください
聖樹の大舞台
ミケラからの手紙を届けるため、男は聖樹の大舞台へ移動した。
視界が開ければ、相変わらず腐りつつある聖樹が真っ先に目に飛び込んでくる。
どちらかと言うと不快なのは臭いであるが、まあその内慣れるだろう。男はローレッタを探した。
フッ、と男に影が落ちる。
ん? 訝しんで振り向く前に、振り下ろされた戦鎌が男を真っ二つに両断した。
「痴者が……存分に後悔するといい」
戦馬に跨ったローレッタは、祝福に戻る側から男を殺し続ける。
ふーん、
男は死んだ。
「くっ……何故、このような痴者に勝てぬのだ……」
数時間後。座り込む愛馬にもたれかかり、ローレッタは顔を覆って項垂れていた。
隣で膝を立てて座る男は、その辺に落ちていた葉っぱを丸めた物に火をつけて吸ってみたりする。クッソ不味い。毒!
そのまま吸い切って毒で死んだ男は、祝福から戻ると、頼まれていた手紙をローレッタに渡した。
「その、
胡乱げに視線を向けたローレッタは、手紙と一緒に差し出された編み髪に驚愕し、弾くように奪い取り、かと思えば壊れ物に触れるかのように慎重に取り扱う。
腕が折れたので聖杯瓶を呷って治した男は、何度も内容を検めるローレッタを暇そうに眺めていた。
「……まさか、ミケラ様がそのような禍害を被られているなど……いや、しかし、これは……」
難しい顔で手紙を見つめるローレッタは、チラッと男を見る。
喚び出した黒き刃の刺客たちを侍らせ、思うままに胸や尻を触ったり、せがまれてキスを繰り返す男。
「…………一体どうすれば……何か、手はないものか……」
呟いて、チラッチラッと男を見るローレッタ。
キャー、ヤダーと黄色い声が飛び交う中、男は股座をおっ勃てて事に至ろうとしていた。
「――こほんっ!」
わざとらしい咳払いの音が、大げさに響く。
きょとん、と反応した黒き刃たちは、顔を見合わせ、恥ずかしそうに楚々と身を引き、霊体となる。
不満そうに見送った男は、ガリガリと頭を掻いて立ち上がり、ああん!? とローレッタにメンチを切った。
「……ミケラ様、本当にこの男でよろしいのですか……?」
品性の欠片もない蛮族仕草にドン引きするローレッタは、頭痛を堪えるように額に手を当てて瞼を重く閉じる。
そして、嫌々、仕方無しと言わんばかりに、逡巡をたっぷり込めた口調で、話し始めた。
「……褪せ人よ、頼みがある。
永遠の都ノクステラに眠る、とある秘宝を探し出してほしい」
クドクドと長ったらしいローレッタの語りを要約すると、それはミケラが二本指の戒めを解くのに必要な物であるらしい。
たったそれだけを十分以上かけて説明された男は、欠伸を噛み殺しながら頷く。
>【依頼を引き受ける】
「…………恩に着る……」
まったく恩に着らない口調のローレッタを気にせず、男はさっさと歩き始めた。
目指すのはローレッタが守っていた大舞台、その先である。
「待て! 何処へ行く! ミケラ様たっての願いを叶えると約束しただろう!」
するとローレッタが急に怒り出したので、面倒そうに男は質問した。
>【永遠の都へ向かう方法】
「そ、それは……済まないが、私には分からない……」
>【手がかりについて】
「……それも、分からない……確か、何処かの井戸が永遠の都に繋がっている、という噂を、聞いたような……」
ボソボソと声が小さくなるローレッタに、男は肩を竦めた。
何処にあるかも分からない場所を目指すことはできない。
それは放浪の末、偶然に辿り着くのと同じだ。
ならば狭間の地を探訪している内に、いずれ見つかるだろう。
依頼を果たすのは、それからでいい。
考えを述べた男は、絶句するローレッタを一瞥して、次の舞台に歩き出す。
この先に、どんな強敵が待ち受けているだろう。飢え渇く衝動のまま、男は笑った。
「……ま、待て!」
が、ローレッタがまたもや水を差してくる。苛立ちを露わにして、男は振り返った。
それ以上ガタガタ言うならブチ犯すぞ! 股座をおっ勃てて睨む男に、ローレッタはビクリと震えて頬を染める。
それを隠すように顔を背け、苦渋の判断を下すように、言葉を絞り出した。
「……ラニ様だ……ラニ様を、探せ……あの御方なら、永遠の都へ向かう方法を知っている筈だ……」
ローレッタはかつて、カーリア王家の親衛騎士だった。
しろがねの安住の地を探すため、職責を辞して旅立ち、聖樹の騎士となった今も、その誇りを忘れてはいない。
だからこそ、かつての主君を裏切るような真似は避けたかった。だが今の主君に報いるためには、それしかなかった。
騎士としての誇りを傷つけてまで、ミケラを選んだローレッタ。
それを眺める男は、ふーん、と一つ頷いて、目的地を変更する。
「……どうした? さっさと行くがいい……」
消沈するローレッタに近づく男は、自然な動作で彼女を押し倒す。
「なっ!? き、貴様、何を――!?」
手がかりは掴んだ。ならば寄り道も吝かではない。
しかし、それはそれ、これはこれだ。無駄に苛立たされた罪は、しっかり体で償ってもらう。
「や、あ、待って、ダメ……あ゛~~~っ!」
形ばかり抵抗する女騎士の淫らな声を背景に、満足するまで男は腰を振った。
円卓
移動した男は、早速ラニの研究室に向かう。
蝋燭の灯る小さな卓を蹴り壊してズカズカと上がり込む男を、執務机に座る少女人形は、剣呑な目つきで出迎えた。
「……忠告は、意味を為さなかったようだな。
我が不肖の弟と、随分仲良く過ごしたようじゃないか」
膝上に重ねた四つの手の内、二つを静かに合わせるラニは、やや隈の浮かんだ人形の顔を、凍りつくような笑みで彩る。
「ああ、言わずともいい。聞こえていたよ……愚弟の囚われた禁牢は、私の檻の真下だからなぁ」
プラプラと揺れる青白い肌の足は、床に届いていればカツカツ音を立てていただろう。
怒っている。それも激怒に近い度合いで。
はて、何かしただろうか? 首を傾げる男は、いつの間にか足元が氷で覆われていた。
驚く間もなく、凄まじい速度で上昇する氷の覆い。男が前を見ると、ゴミを見るような目でラニが鼻を鳴らしている。
「どうせ、お前は褪せ人だ。二本指に従順である限り、祝福が死を遠ざける。
ならば一度くらい死んで、反省しろ。まったく……女臭くて叶わん」
蔑みの視線を受けた直後、氷に覆われて即死する男。
大祝福に戻ると、そのままの勢いで再びラニの研究室に向かった。
「……いい加減にしろ。そろそろうんざりだ」
魔女ラニが片目を細め、冷たい魔力が立ち昇る。
余波だけで周囲を凍りつかせる力を前に、男は飄々と声を発した。
>【永遠の都について】
「……なぜ、お前からそんな言葉が出る」
ピタリと、魔力の発散を止めたラニは、訝しげに男を見る。
全裸の男だ。恥部隠しさえ纏わず、卑欲の化身を股座で屹立させ、少女人形への下劣を誤魔化しもしない。
かと思えば、飢え渇いた瞳の奥に、星の瞬きのような知性を押し殺している。ひどく忌み嫌うように、だが確かな武器として。
奇人だ。千年先をも見通す賢人が、衣服も、知性すら棄てて蛮族の真似事をしているなら、そう言い表す他にない。
「ふむ……」
故に、だろうか。怒りよりも興味が湧いたラニは、男の運命がどのように動くのか見てみたいと思った。
「……良かろう。好き好んで物乞いに施す趣味はないが、お前の運命には興味がある」
漂う冷気を消失させるラニは、静かに首を動かして部屋の隅にある転送門を見る。
沈黙する輪の石碑に魔力が灯り、起動。視線を戻したラニは、鷹揚に告げた。
「その転送門の先に、永遠の都がある。尤も、都は二つあり、今は必要としていない方にしか通じていないがな。
さあ、行くがいい。お前が何を知り、何を得るのか……見定めさせてもらおう」
手を膝に揃えるラニは、話は終わりだと言わんばかりに沈黙する。
眠るようなその美貌を暫し眺めていた男は、頭を掻き、転送門から別の場所へ移動した。
エインセル河
いやー、「ノクステラの竜人兵」は強敵でしたね。
塵と化していく老いた竜擬きを、男は渇き切った目で傍観していた。
正直何も感想が浮かんでこない。険しい道中も待ち受ける強敵も、聖樹で調教された男にとって大した障害にならなかったからだ。
別に苦難がなかった訳ではない。未だルーンを力に変えていない男は、狭間の地カースト堂々の最下位を突っ走っている。
だがそれが何だ。動きのトロい泥人と聖樹よりも弱い大蟻なんぞ、今更相手したところで微塵も心が昂らない。
一応、天井からぶら下がったムカデのようなよく分からない何かも居たが、大量の礫を飛ばしてきたので拾って投げ返したらいつの間にか死んでいた。
一応の礼儀として探索した範囲の敵は皆殺しにしたものの、男は途中から、いや序盤も序盤から飽き果てていた。
試行錯誤もなく、死を積み重ねるまでもなく、殴れば死ぬ。そんな獲物で満足できるなら、男は狩猟者となって一生を終えている。
面倒臭くなった男は、適当に黒き刃の刺客たちを召喚し、強敵を探させた。元は暗殺者の集団らしいので、斥候程度はお手の物だろう。
結果、竜人兵が見つかったので、ソワソワする刺客たちをたっぷり可愛がったあと、男は戦いを挑んだのだ。
それがこの様である。はっきり言って出来損ないも良い所だった。ペッ、竜の面汚しが。
飢えと渇きを募らせる男は、ミイラ化した大母の遺体を見上げ、その足元に安置された宝箱を開ける。
そして奇妙に捻くれた、まだ何者も傷つけていない無垢なる武器を手に入れた。
運命無き者には決して振るえぬ、大逆の刃を。
胡乱げに眺め、懐にしまった男は、祝福に触れて休息する。
満たされぬ飢え、掻き毟り、血も出ぬような渇き。
体外へ暴発しそうな不満を抑えるには、今少しの時間が必要だった。
円卓、ミケラの祈祷室
「騎士様、いらしてくれたのですね」
無垢金のヴェールに覆われた寝台の上で、足を崩すミケラは男を歓迎した。
可憐に微笑む少年は、薄く開かれた黄金の瞳で男の股座を見下ろすと、唇に指を当てて頬を染める。
「フフッ……また、私を慰めてくれるのですか?
いいですよ……こちらへ、いらしてくださいな」
手を差し伸べ、寝台の奥へ招くミケラ。神人の誘惑が見えない針となり、男に突き刺さる。
>【「指殺しの刃」を渡す】
が、全く動じない男は、情欲を隠しもしない顔で、ミケラにそれを差し出した。
少年は驚いたように息を呑み、おずおずと受け取る。
「そう、ですか。貴方が、手に入れたのですね」
両手で胸に抱えるミケラは俯き、黄金の髪の中で呟く。そのまま、男を伺った。
冷たく光る、黄金の瞳。悲しみ、迷い、叶わぬ愛を秘めた視線。
誰に見せる事もなく、瞼を下ろしたミケラは、幼く純真な笑みを繕い、顔を上げる。
「ありがとうございます、騎士様。けれど今は、貴方がお持ちになってください」
ミケラは渡されたその刃を、微笑みと共に男へ捧げ返した。
「これがあれば、私は二本指の戒めから解かれるでしょう。
けれどそれは、今ではない。再びの虜囚とならぬよう、準備をしなくてはなりません。
その時までは、どうか貴方の手に。
>【誰の手からも、守って、くださいますよね?】
ああ、ありがとうございます、騎士様! どうか、お願いしますね」
誘惑されるまま刃を受け取った男に、ミケラは極上の笑みを手向ける。
そして事の経緯を聞き出したあと、考え込んだ少年は、傅く男に褒賞を下賜した。
>【無垢金のタリスマンを手に入れる】
「騎士様、お礼を差し上げます。どうか受け取ってくださいな。
無垢金は、外なる神の干渉を退けるため、私が紡いだものです。
けれどそれは、本来の権能を捻じ曲げたもの……その本質は、すべてを受け入れるため、あらゆる干渉を捧げることにあるのです」
膝をつく男の耳に、甘やかな蜜を垂らすように、そっと囁く。
「それがあれば、騎士様は実体無きものに触れることができるでしょう。
……たとえ人形のお体に宿る、デミゴッドだとしても、例外ではありません」
姿なき思惑を言葉に沈めたミケラは、邪気など全くない満面の笑顔を咲かせた。
「騎士様、お役に立ててくださいな。
……決して、悪用してはいけませんよ?」
念を押すようなミケラの戒告を聞き届け、男は祈祷室を後にする。
脳に満ちる不快な霧。鬱陶しいそれを無視しながら歩いていると、ふと扉が開いている事に気づいた。
あの時もそうだった。開けたのではなく、開いている。
招かれていると感じた男は、二本指がいると思われているその部屋へ立ち寄った。
「来たか、褪せ人よ。少しは成長したようだが、まだまだ子犬よな」
黄金の閨に横たわった姿で、不遜に笑う永遠の女王は、玉体に触れる栄誉を授けるように、男へ美しい手のひらを向ける。
「末息子から受け取った物があるだろう。貸したまえ」
有無を言わさぬ命令口調。だが他者に強制させる黄金律の幻視。
すべての生命、すべての魂を圧倒し、平服させる、流れる星をすら律する力。
エルデンリング。その輝きを前に、男は頭を掻き、何処からか無垢金のタリスマンを取り出した。
「クックッ、実に素直で愛い男よ……ふむ、
やり方は悪くないが、無自覚の悪意にも限界がある。世界を優しくしたいなどと、まこと稚児の夢想であろうよ」
受け取ったマリカは、光に透かすようにタリスマンを掲げる。
そしてゆったりとした動作で口づけし、黄金の祝福にて無垢金の権能を書き換えた。
無垢なる黄金に宿る、約束された豊穣。口紅の痕を色濃く残すタリスマンを、下げ渡すように男へ返す。
「ミケラのいたらぬ裏切りもこれで跳ね除けられよう。せいぜい、役に立てるが良い」
拝領する男は全裸の何処かにタリスマンを仕舞う。そして用件は終わったと直感的に判断し、退室のため背を向けた。
「破砕戦争の雄、最強と謳われるデミゴッドは、二人いる」
マリカはその背に、面白がるように言葉を投げる。
「ミケラの刃、不敗のマレニア。
不完全な欠けた身体、外なる宿痾を抱えながら、熾烈なる意志によって高みへと昇り至った、類稀なる技巧の女傑。
……お前の辿り着きし聖樹、その最下層にて、ただ一人を待っている」
立ち止まる男に、畳み掛けるように、黄金の言の葉は紡がれていく。
「星砕きの英雄、将軍ラダーン。
流れる星に挑み、砕き、壮大なる星の運河、その運命すら封じた、膂力と重力を極めし英傑。
マレニアの腐敗に侵され、なおも死に切れず、戦場跡を彷徨っている。
故に、足りぬと感じたなら、ケイリッドに向かうがいい。
それまでお前が、折れていなければの話だがな」
好きに語り、好きに唇を閉じて、マリカは喜悦を浮かべる。
男は何も言葉を返さず、大股歩きで部屋から出ていった。
筋肉の盛り上がるその背に、隠し切れない、隠そうともしない、渇望と戦意を滾らせて。
「クックッ……実に良い。私好みに調教してやってもいいが、まだ、まだ。
誰の思惑であろうと跳ね除け、ただ自らの意志で進みたまえ。
それだけが、人を王にするのだから」
静かに閉じる、マリカの閨。
開かずの扉は、誤認させるだろう。その奥で、壊れた二本指が震えていると。
円卓、ラニの研究室
「ふぅん、随分と戻るのが早いな。よもや、諦めでもしたのか」
相変わらず積まれた本を蹴散らしながら侵入する男に、ラニは冷たい口調で言い放った。
閉じた右目を共有する、実体と幻想の
「期待するだけ間違いであった、か。運命など、余人に宿るものではない――」
諦観を滲ませるラニの声は、率然と途切れる。
男が見せつけるその刃に、少女人形は、必要のない筈の息を呑んだ。
「お前……」
表情を驚愕に彩ったまま、無意識に伸ばされる罅割れた腕。
だが、届かない。物理的な距離においても、その運命の道筋においても。
魔女ラニは、男の持つ刃を手にする運命にない。それを悟る雪魔女の人形は、静かに指を合わせ、男を見る。
「……ミケラの運命、だけではないな。姉上もそうだろうが、お前には、幾多の運命が絡んでいる。
成程、私もその一人というわけか。笑える話だ……だが、それでこそ、相応しいのだろう」
眉を下げ、くだらなそうに笑うラニは、重く目を閉じ、そして開いた。
暗い月を宿す瞳が、真っ直ぐに、男を貫く。
「私は魔女ラニ。かつて死を盗み、今も暗き路を探している。
そしていつか、すべてを裏切り、すべてを棄てるだろう。
……興味が出てきたか? よもや、仕えたいなどとは思うまいな。
私のような、裏切りの魔女などに」
試すように、ラニは言葉を紡ぐ。端々の刺は、拒む内心の発露だろうか。
>【魔女ラニに仕える】
だが、男には関係ない。獲物を追い立てる機を逃すほど、男は愚鈍でも阿呆でもなかった。
「……そうか。分かった、受け入れよう。
運命に身を委ねよう。その先に、私の暗き路があるのなら」
不承不承に頷くラニは、耐え忍ぶように眉間を絞る。
二本指の傀儡たるを拒絶した、高潔なる矜持。それを棄てると、断決した。
「……それでは、早速動いてもらおうか。
お前の持つその刃は、永遠の都、ノクステラの秘宝だ。
もう一つの都、ノクローンにも、同じ秘宝が存在する。
お前には、それを見つけて欲しい。我が刃となり、路を斬り開きたまえ」
最低限の命令を投げ、ラニは瞑目する。
口も利きたくないという、分かりやすい嫌厭。
拒絶の意図を踏み散らして、男はズケズケと言い放った。
>【ラニを抱きたい】
「……お前、何を言っているのか、理解しているのか」
片目を開け、眉を跳ね上げるラニは、不愉快そうに男を睨む。
「働きもせず礼を強請るなど、恥知らずにも程がある。
勘違いしないでもらおう。お前など、私の特別ではない。
ただの臣下、ただの刃だ。刃の慰撫に、身体など、許す筈もなかろうが」
冷たい怒りを滲ませる少女人形に、尚も男は要求する。
足元から凍り、肌が剥がれ、ただの一歩すら引かない男。
股座で猛々しく
「……本当に、奇人だな、お前は。
礼儀もなく、思慮もない。ただ欲のままに振る舞う、野卑の獣。
だが、決して機を逃さない、運命の意味を知る獣だ。
ならばお前は、さしずめ、蛮狼と称するのが似合いであろう」
夜の帳、星の天蓋を設えた寝台に、そっと横たわったラニは。
「さあ、来るがいい。蛮狼よ、好きにしたまえ。
お前は人形の体だろうと好き好む、酔狂な奇人であるのだろう?」
雪魔女帽子を顔に乗せ、隙間から冷たく眺めながら、人差し指を折り曲げた。
ギシリと音を立てて寝台に上がった男は、真っ先にラニの頬に触れる。
魔女帽子に隠された、少女人形の小さな顔。手触りは良いが硬い感触は、無機物でしかないことを如実に伝えてくる。
「……」
ラニは微塵も反応せず、吐息すら漏らさなかった。
元より呼吸などしていないが、輪を掛けて無反応を貫いている。
矜持は棄てよう。貞操も、ただ一人を往く裏切りの魔女には、必要ない。
だから、犬に食われても構わない。心を凍てつかせるラニは、半ば自棄になっていた。
それを察せない男ではない。むしろその機微を見抜いたからこそ、この場は実現できている。
だが、反応のない人形に欲情し続けられるほど、倒錯していないのも確かだった。
だから、仕方ない。無垢金のタリスマンを装備した男は、いそいそと添い寝する。
そして当然のように、ラニの幻想の顔に触れた。
「……?」
僅かな違和感。逆に言えば、神人にそれしか感じさせない、無垢金の妙。
違和感を疑念に昇華されない内に、男は顎に指をかけて振り向かせ、幻想の唇に口づけした。
「……――なっ!?」
人形の顔が声を上げる。構わず、驚きに染まる幻想の顔にキスを続ける。
感触は、まあ悪くない。だが肉体のそれには遠く及ばず、何十もの層で遮られているように感じる。
同時に、生身では決して味わえない、魂に響く火傷のような余韻が、幾重もの波紋となって広がっていく。
「お、お前、何をしているっ!?」
ラニの反応は顕著だった。生来の身体を棄て、少女人形に宿っている都合、まともな肉欲など感じないと思っていたのだろう。
だが、無垢金の力が、込められた黄金の祝福が、デミゴッドの魂にすら接触・干渉を強制する。
「んっ、くっ!? この、やめろっ……!」
制止も聞かず接吻を重ねる男に、ラニは憤りながら迫り上がる吐息を噛み殺した。
たかが口づけ、たかが粘膜の交合。本来ならば、斯様に心乱される理由などない。
如何に穢れを知らぬ乙女だろうと、心の通わない接触が、神人たるラニの精神を揺らがす筈がないのだ。
「んっ、んっ……! くっ、んぅっ、ミ、ミケラめっ……!」
だがその背後に、同格の思惑が潜んでいるなら話は別だ。
幻想である魂に触れる男の燐光、無垢金の幽幻には覚えがある。
裏切りの魔女とは違う路を往く、誘惑の魔性。その差し金が、確かにラニの魂に干渉し、変化を強いている。
それが腹立たしく、言いなりになる男にも苛立ちが募る。
それでも、唇から漏れ出るのは、吐息に混じる甘い切なさだった。
「ふっ、くぅっ……んっ、ひっ……」
人形のラニは必死に耐えていた。罵倒の一つも零さず、じっと過ぎ去るまで我慢している。
反対に、少女人形からズレた幻想の顔は、唇を塞がれ、舌を吸われ、繰り返す内に蕩けていた。
外面なら、いくらでも繕える。只人にもできる嘘の仮面を、デミゴッドが被れぬ道理はない。
だが露出した魂が、如何なる虚構を纏えようか。剥き出しの心情そのものは、言葉よりも雄弁に物を語る。
唇を噛んで耐え忍ぶ人形の横で、ラニの魂は絶え間ない接吻に絆されていた。
星屑のような光の輪郭は、朱が差すように濃く揺らいでいる。
開かれた片目はとろりと濡れて、引っ張られた舌先が自発的に絡みつく。
細首に添えられた無骨な手を受け入れて、ずっと続けられる口づけの逢瀬にラニの魂は甘く震える。
その羞恥に、少女人形は気づかない。干渉された魂が、肉体と違う反応を示すなんて、想定さえしていなかった。
「ふぅっ、ふぅっ……あっ、んっ……」
だから。完全勃起していた肉棒が、少女人形の股の間を擦っていたのにも気づかず。
「んぁっ、はっ……――くっ、あっ……?」
巨大過ぎる肉欲の塊が、穴のない人形ではなく、ラニの魂を直接貫いたのも、はっきりと認識できなかった。
「あ゛~~~っ……?」
人形の喉が、状況を理解しないまま、艶めく声を響かせる。
屹立した肉棒による、魂の強姦。肉体を介さないだけに、それは
感じるのは、そっと撫でられた身体に残る、ひどく熱っぽい余韻だけだ。
貫かれた自覚もないまま、ラニは幻想の唇を貪られ、甘く濡れていく音を人形の喉から大気へ溶かす。
彼我の境界線を失うような、ゆっくりと重なっていく交合。
裏切りの魔女は最後まで、その危うさに気づけなかった。
「あ゛~~~……」
びくりと、少女人形が大きく震える。
胸を反らし、足先が伸びて、シーツを掴む嫋やかな指。
下腹部を中心に、じんわりと広がっていく温かな心地良さが、やがて全身を包んでいき。
「はぁ、ん……ん、ぁ……」
深く、ゆっくりと、何処までも沈んでいくような錯覚の中、ラニは意識を手放した。
くったりと力の抜けた少女人形を綺麗に寝かせ、男は音もなく寝台から降りる。
不満そうに頭を掻く、渇いた男の股座では、女の柔肉を求める雄が猛々しく主張していた。
男の味どころか匂いも知らぬラニからすれば、魂の交合は夢心地のような快楽であったろう。
だが女の味をよく知る男からすれば、勃起の維持にも至らない、分厚い
肉体ばかりを求めても味気ないが、魂だけでも片手落ちだ。この方法は役に立たないと、男は無造作に判断する。
そして次こそは、神人の肉体を蹂躙し、魂に刻み込んでやろう。
人形の身でも忘れ得ぬような、夜が訪れる度に疼き思い出す、甘やかに痛む
性欲を持て余す苛立ち混じりに、男は決意し、部屋を後にする。
この一夜が後に、墓穴としか言いようがない選択をラニに強いることを、男はまだ知る由もなかった。
エルデンリングにはカップリングが成立してる魅力的な女性キャラが多いですよね。
特にカーリア王家の女性ってとっても愛情深くて、レナラはラダゴン好きすぎて心壊しちゃってますし、レラーナは王族の地位を捨てて影の地までメスメル追っかけるくらい愛してるわけですよ。
ラニ様は言わずもがなですよね。伊達に選ばれたエンディング率最高位のヒロインじゃない(おかしいメリ……)
ところで私ってNTRあんまり好きじゃないんですよ(唐突)
純愛を好むと言うとまた違うんですけど、間男になびく女性を見ると冷めるというか、萎えちゃうんですよね。
「あっ、このキャラにとって男って特別でも何でもなくて、簡単に乗り換えられるものなんだ……」って感想が湧いてきて、じゃあお幸せにーみたいな感じで欲情の対象から外れちゃうんですよね。
でもハーレム目指すならレナラもレラーナも対象にしたいじゃないですか。けれど彼女たちの愛情深さをNTRで軽々しく扱いたくないわけですよ。
そこで作者は思いつきました。
NTRがダメなら百合ップルにして竿役が挟まればいいじゃない。
という訳で本作のカップリングは
レナラ⇒マリカ(ラダゴンの姿)
レラーナ⇒メリナ(メスメルは義兄として見ている)
という形で進めていきます。
自分を振った男(マリカ)に刺々しく接するけど未練たらたらで急に壁ドンで迫られると顔真っ赤にしながら口ばっかりの抵抗でなし崩し的にセックスに持ち込まれる母親(レナラ)を眺めるラニ様の心境を刮目して見るがいい……!(いつか来たる予告)