若干、エロっぽいですけど、エロシーンはありません。
「渚さん。ちょっと取り出せないので来てください」
佑は手招きをして降参の印に両手をあげてみせた。そこで漸く渚が鞭を握った手を下ろす。渚は鞭を手にしたまま、佑に歩み寄った。変なことをしたら承知しないわよ、という渚の脅しにため息を吐いて佑は自身の下腹部を手で示してみせた。
「ふたつありますから、間違えないでくださいね」
「判っているわよ」
不機嫌な顔で答えて渚がそっと佑の下腹部に触れる。渚は行くわよ、と小声で呟いてから左手を佑の下腹部に沈めた。器の一部が解けて渚の指を飲み込む。佑は震えて砕けそうになる膝に懸命に力を入れた。龍神同士の力が混ざり合っているからなのか、言いようのない心地の良さに襲われる。
「……これね」
呟いた渚が小さな珠に触れた瞬間、佑は思わず吐息をついた。自分で触れた時には特に何も感じなかったのに、渚が触れると下腹部が熱くなってくるのだ。神妙な顔で探る渚の指が珠の表面をそっとなぞる。
「んふっ……」
「あら。感じるの? 意外と淫猥なのね」
くすりと笑って渚が珠を指先で擦るようにして撫でる。佑は早くしてくれ、と言おうとして目を見張った。いつの間にか渚の顔から寂しげな表情が消えている。
こういうところまで似てるのはどうかと……。そう思いながら佑はため息を吐いた。すると渚がくすくすと笑い始める。
「同調してるのね。この珠、もの凄い勢いで力を吸っているわ」
まるで精を啜っているみたい。そう呟いて渚は唐突に指を抜いた。乱れた息を整えて顔を上げた佑はため息を吐いた。渚は意味ありげな笑みを浮かべたままだ。
「壊すんじゃなかったんですか?」
呆れた面持ちで言った佑に渚がにっこりと笑みかける。
「気が変わったわ。どちらにしろ、それは当分は出てこないのでしょう? 一つ目が出てからあなたごと斬れば手間が省けるもの」
あっさりとした口調で言ってから渚が軽く右腕を振るう。呆れた顔をしていた佑は唐突に飛んで来た鞭を避け損ねた。佑の身体に巻き付いた鞭の先端が唐突に動きを変えて天井に伸びる。まるで蛇のような動きで鞭は天井を貫いて佑の身体を持ち上げた。宙吊りにされた佑は慌てた声を上げて渚を見た。渚は上半身を束縛されて吊られた佑をまじまじと眺めている。
「あの、水輝さんが翠の剣を使ったことで、どうなったかを、本当の意味で、渚さんも理解してらっしゃいますか?」
「時を跳んだのでしょう?」
すらりと言って渚が佑を見上げる。佑のつま先から床までは五十センチほど離れている。佑は何とか鞭を解こうと身を捩りながら言葉を継いだ。
「だから、珠を壊そうが、僕を殺そうが、立城さんにダメージを与える事は不可能です。現時点では存在してないんですから」
「本当にそう思う?」
口許に嫌な嗤いを浮かべて渚が首を傾げる。それまで懸命にもがいていた佑は思わず動きを止めて渚を凝視した。
「違うんですか?」
「条件が揃わなければ幾ら彼でも戻ることは出来ないわ」
魂の欠片、それに注ぎ込まれる力、そして依代。渚は指折り数えながら歌うように告げた。それから改めて佑を見つめる。
「だから、条件はいつでも変更可能なんです。予定は未定ですから。掌の上から抜けられないのは、掌のほうが動くからだ、と言ったでしょう?」
「あなたの次にもしもまた誰かが条件に選ばれたら、その時はその誰かを殺すわ」
ためらいなく言ってから渚が手を伸ばす。頬を撫でられた佑は反射的に首を振って渚の手を避けた。だが渚は佑が余り動けないのをいいことに、執拗に指を這わせてくる。
「あなたって、本当に、正真正銘水輝さんの姉ですね……」
佑は深いため息をついた。佑の頬を指先で撫でていた渚がぴくりと眉を上げる。
「似ていると言いたいのね? でもだから何なの?」
そう言って渚が指を鳴らす。すると佑の上半身に巻きついていた鞭が蠢き始めた。それまでぶら下がって脱力していた佑の足に伸びてくる。蛇のような動きに本能的な嫌悪感を覚えて佑は避けるように足を動かした。だが金色の鞭はスカート越しに佑の腿を這い降りる。
「とりあえず、今は殺す気はないんですか?」
うんざりとした気分で佑は告げた。そうねえ、と考えるように渚が天井を仰いでいる間に鞭がするすると動いて佑の片足に絡みつく。否応なく片方の足を上げられたところで佑は不快感に眉を寄せた。
「あなたを犯したところでつまらないし、かと言ってこのまま帰すのも面白くないし」
そう言いながら渚が片手を伸ばす。大きく開かれた佑の股間を覆っていたショーツをあっさりと片手で引き裂き、渚はどうしようかしら、と露わにされた佑の股間を覗きこんだ。
「お茶、飲み終わったって判断していいですよね? 術のかけなおしさせてくださいね」
そう言って佑はさっさと斎姫をこの場に引き寄せた。転移してこの場に現れた斎姫は床に転がった格好で泣きながら自慰をしている。それを見止めた渚があらまあ、と困ったような顔で呟いた。
「人の城で随分と勝手な真似をしてくれるわね」
不機嫌そうに呟いた渚が斎姫と佑とを見比べる。
「優くん! 声が聞こえなくなって! わたし……、あっうぅうん!」
切ない顔で泣きじゃくりながら斎姫が懸命に佑を見上げる。そんな斎姫を見下ろして佑は微笑んでみせた。
「斎姫、いま、戻すから」
そう言って佑は器に溜まっていた微かな闇の気配を斎姫に注いだ。その直後、斎姫がその場から消え失せる。佑は再び清冽な気を纏って顔を上げた。渚がふうん、と呟いて横目に佑を見る。何の気紛れか、渚は唐突に城に入り込んだ斎姫には特に手を出す気にはならなかったらしい。
美味しそうなものがあったら食べるのが水輝と渚。