ここの防衛はどうなっているのかw
エロシーンはありません。
「水輝の夢なんて見ていなかった癖に!」
「なぎ!」
焼け爛れた手を触れさせないように腕だけで佑を抱えた水輝が怒声を張る。佑は水輝の胸にすがりつきながら目を見張った。
「だってそうじゃないの!」
「いいかげんに黙れ。おれがどれだけお前のやることを見逃してきたと思うんだ」
低い声で言って水輝が渚を振り返る。それから水輝は静かに佑から手を離した。
「水輝さん、待って! 渚さんに聞いたの。水輝さんはおじさまの復活を望んでいないって、逆に立城さんを封じようとしているって、それは本当?」
帰るぞ、と言った水輝に佑は懸命な面持ちで訴えかけた。水輝が微かに眉を上げて無言になる。
「答えて。本当なら、わたしの行動は間違っていたことになるから。それに、水輝さんがおじさまを本気で封じたいなら方法はあるわ」
水輝のシャツをつかんで佑は真剣な顔で訊ねた。水輝はほんの少しだけ目を細めてからため息を吐いた。渚は腕組みをして佑を睨んだままだ。
「……結局のところ、おれが何をどう思っても無意味だろ。それにあいつが戻りたいって思うなら、おれが止めるのは筋違いだ」
もういいだろ、と呻くように言ってから水輝は手の甲で佑の手をやんわりと退けた。その手のひらは真っ赤に焼けている。泣きそうな顔で水輝の手を見つめた佑ははっとして目を見張った。白いシャツの襟ぐりに隠れるかどうかというところに、真新しい切り傷がある。それもかなり深い。
「無意味じゃないわ。わたしは水輝さんの意思を知りたいの。それに、その傷はどうしたの?」
泣きそうになるのを懸命に堪えて佑は厳しい顔で訊ねた。水輝が眉を寄せてため息を吐く。手首で傷をシャツ越しに押さえてから水輝はもう一度、ため息を吐いた。
「お前に負担をかけるつもりはなかった。この傷は好きで作ったものだ。気にするな」
これまでになく酷く他人行儀な口調で水輝が説明する。佑は唇を噛んで水輝のシャツをつかんだ。おい、と制止の声を上げる水輝を余所に慌ただしくシャツのボタンを外す。シャツを開いて水輝の身体を見た佑は目を見張った。
肌にまるで絵のように描かれていた鎖が消えかけている。変化はそれだけではない。水輝の身体には元から色んな傷があったが、それが異様に増えているのだ。
「水輝さんは、わたしのものよ! それを阻むものは誰であろうと阻止するわ。おじさまの復活が邪魔なら、わたしはそれを封じる」
そうすれば……。そう呟いた佑の耳に唐突に笑い声が入ってくる。驚きに息を飲んだ佑はいきなり笑い出した渚に目を向けた。
「言ったでしょう。水輝は誰のものでもないのだと。あなた自身が」
ああ、おかしい。そう言って渚が歩き出す。二人に近づいた渚は水輝のシャツをつかんでいた佑の手を叩き落した。止めろ、という水輝の制止を無視して渚が佑を押し退ける。
「中途半端に想うなら離れろと言ったのはあなたよ! わたしに、水輝さんの本心を教えてくれたのもあなた。そして、わたしは他の誰かでなく、水輝さんを一番愛してる」
「嘘ね」
嘲笑を浮かべて佑を見やってから渚が水輝の胸に抱きつく。その途端に水輝は目を見張って硬直した。
「あなた、多輝さんが一番だと私に明言したじゃない。まさか都合のいい時だけ別人格だ、なんて言うつもりかしら」
くすくすと笑いながら渚が水輝の胸に手を這わせる。止せ、と小声で言って水輝が渚を押しのけようとする。だが何故か渚はびくとも動かない。
「わかったわ。水輝さんが一番だって、今から証明してくる」
口許に嗤いを浮かべて佑はその場から転移しようとした。だが何故か転移のために集めた力が発動しない。驚きに息を飲む佑を肩越しに見ながら渚はくすくすと笑っている。
「あなた、ここがどこだと思っているの」
「いいかげんにしろ、渚」
疲れたようなため息を吐いて水輝が言う。だが渚はそんな水輝を見つめて囁くように告げた。
「結界を越えるのは大変だったでしょう? 彼、まるで犬のようにあなたを呼びつけるんですもの」
優しい声音で言いながら渚が水輝の頬を撫でる。水輝は嫌そうに顔を歪めて渚から目を逸らした。佑はそんな二人から目を背けて呟いた。
「こっちも無理かな……」
転移して外に出るのが無理なら対象を引き寄せることは出来ないだろうか。そう思いながら佑は力を放とうとした。だがやはり引き寄せの術も発動しない。
「あら。お生憎様ね。私、あなたは信用していないと言ったでしょう」
「渚、いい加減に悪ふざけは止せ。度が過ぎるぞ」
そう言いながら水輝が渚の肩を腕で押そうとする。だがそんな水輝の手を渚は逆に取った。すると見る間に水輝の手の傷が消える。
「証明しようとすれば妨害するわけ? あなたもたいがい卑怯者ね」
「卑怯? どっちがかしら。あなた、自分が紫さんにどう言ったかを覚えていないの?」
呆れたように言ってから渚がまた水輝に抱きつく。おい、と渚に言って水輝が佑に手を伸ばそうとする。だがその手を渚はやんわりと押さえた。
「ねえ。子供なら私が生んであげるわ。天空の翠が生まれればいいのでしょう?」
私なら裏切らないわよ。甘い声で言って渚がするりと水輝の首に腕を回す。止める間もなく渚は水輝の唇を奪った。その隙に佑は再び引き寄せの術を使った。すると今度は結界を越えて術が発動する。その場に唐突に現れた多輝は手に耳掻きを持ったまま目を見開いて周辺を慌ただしく見回した。
渚が珍しく水輝にしなだれかかってる訳ですが……。
どこまで本気なのかw