本番前という感じです。すみません。
「……根本的なことを忘れてるわ、あなた」
呻くように言って渚がこめかみをかく。かと思うと水輝が額を押さえてうなだれる。辛うじて俯いていない多輝が困ったような顔をして隣に立つ水輝を指差した。
「こいつが奈月さんを殺させると思うか?」
他はともかく。そう続けて多輝が横目に水輝を見る。すると水輝は素早く手を振って多輝の後頭部を軽く叩いた。
「渚さんならやらねばならないとなったら絶対やるわ。でも、逆順だとだめなの。だからわたしは渚さんに殺されるわけにはいかない。おじさまの復活を阻止するためには、渚さんにわたしが殺される前に、罠を形成する存在を排除しなければならないの」
詳細に検討すればもっと人数は増えるかもしれないし。そう力説して佑は頷いた。
「殺す殺すと不穏なことを……」
しかめっ面で言って水輝が軽く佑の額を指で弾く。佑は弾かれたところを手で押さえて困惑した顔になった。
「別に誰も殺さなくてもいいだろう。そもそも、何でそういう話をしてるんだ。しかもおれのいないところで」
やれやれ、とため息を吐いて水輝が腕を伸ばす。驚きに身を竦めた佑の肩をしっかりと抱いて水輝は告げた。
「渚もいいかげんにしておけ。幾らおれでもそう何でも引き受ける訳にはいかないんだぞ」
呆れたような怒ったような口調で言って水輝は腕に軽く力をこめた。その分だけ佑の身体が水輝の身体とぴったりと密着する。
「だって、渚さんはやる時は徹底する人よ。おじさまの復活を阻止するためにわたしを殺すと言った以上、絶対そうするはずよ。わたしは水輝さんのために死ぬのはかまわない、でも無駄に死ぬのは嫌だったの。だから……」
声を震わせて言った佑の肩を水輝がしっかりと抱く。そんな水輝と佑を余所に頭の後ろで手を組んだ多輝がぼやくように言う。
「あーあ。女の嫉妬ってこええよなあ。おれも気をつけよっと」
のんびりと鼻歌でも歌うような素振りで言ってから多輝がにやにやと笑う。佑は目を見張って慌てて渚を見た。ばつの悪そうな顔をして渚が余所を向く。
「まさか、冗談だったとか、言わないわよね?」
うろんな眼差しで渚を見つめて佑は低い声で言った。すると渚が頬をかっと染めて慌てたように言い返す。
「じっ、冗談のつもりはないわ! 私、あなたが嫌いだもの!」
それを聞いた佑は眉を強く寄せて額に指をあてがった。渚のせりふをつらつらと思い出してみる。不穏ではあったが連発していた渚の言葉には確かに力があった。なのに不思議とその言葉にこもった力だけが霧散している。
「おじさまの復活を阻止するためにわたしを殺す。それでも阻止できないなら、復活を阻止できるまで殺しつづける。確かにそう言ったわよね? 冗談じゃ無いなら、本気ってことよね?」
次第に佑は落ち着き始めていた。訝りをこめて渚を見ながら顔をしかめる。すると渚は途端にふい、と目を逸らした。
「……くそ、だからお前の尻拭いは嫌なんだ」
不意に水輝が口の中でぼやいて片手で胸を押さえる。佑は驚きに息を飲んで水輝の手元を見た。傷跡の上に真新しい傷が出来ていく。渚の言葉にこもった力が時間差を置いて跳ね返ってきたらしい。どうやら水輝は渚の代わりに言葉の責をとっているようだ。そのことに気付いた佑は怒りを込めて渚を睨みつけた。
「忘れてたわ! ヒューマノイドだったころから、天邪鬼に嘘ばっかりついてたことを。待って、他の水輝さんの傷は、もしかして、わたしのせい? それに多輝も……」
熱いものがこみ上げてきて佑は目に涙を浮かべた。すると泣くな泣くなと水輝が笑う。かと思うと多輝も気軽に笑っている。何故、傷をつけられたというのにそんなに呑気にしていられるのだろう。
「喧嘩して怪我するくらい、別に日常茶飯事だったし、この程度のこと何ともない」
それに相手がお前だし。多輝が顔を赤くしてぼそぼそと言う。佑は涙の零れてきた目を指で拭った。
「おお、少しは成長したじゃないか」
皮肉な笑いを浮かべて水輝が片手で多輝の頭を乱暴に撫でる。うるせえ、と声を荒らげて多輝が水輝の手を払う。
「あと、正直に言うわ。わたし、水輝さんと、多輝と、どちらをより愛しているかわからないの。どちらも好きなの。どうしていいか、わからないの」
「別におれは構わないぞ」
当り前の顔で言って水輝が多輝と顔を見合わせる。互いになあ、と頷き合ってから二人は笑みを浮かべて佑を見た。そこでそれまで黙っていた渚が声を上げる。
「何でこうなるのよお! 違うわ! 私が望んでたのはっ」
「……お前はいいかげん、文句があるならおれに言えるようになれ」
「あなたにはいつも言ってるでしょ! それでも足りないのよ! あー、むかつく!」
声高に叫んで渚が地団駄を踏む。呆気に取られてそれを見てから佑は困惑した面持ちで水輝と多輝とを見比べた。
「男の性を纏っているときは、確かに多輝のほうが好ましいと思えるの。でも、水輝さんだって嫌いじゃないわ。逆に女性を纏っているときは、水輝さんのほうにより惹かれてるって感じるの。でも多輝だって嫌いじゃないわ」
「まあ元が同じだしなあ……」
ごくごくささやかな声で呟いてから水輝が苦笑する。その声は肩を抱かれた佑の耳にしか届かなかったらしく、多輝は渚を呆れた顔で見つめ、渚はまだ何事かを喚いている。
「多輝あと、さっき、あなたを殺そうとしたのは、渚さんに殺されるくらいなら、わたしが殺したいって思ったから。渚さんが本気になったら、今のあなたには勝ち目はないから」
勝手な判断でごめんなさい。泣きそうな顔で詫びる佑に多輝がいいってば、と笑う。それから呆れたように渚を見つめ、嫉妬ってこええ、と呟く。
ふと、水輝が佑の肩を強く抱く。水輝は口許に手をあてがって佑の耳に囁いた。
「実はちょっと渚にも興味があるだろ?」
心地のいい声にうっとりしかけていた佑は思わず目を見張った。
「ずっと、わたしは嫌いじゃないわ。ずっと嫌われてるみたいだけど」
少し哀しい気持ちで佑は小声で返した。すると水輝がまた佑の耳に囁きかける。
「あいつも佑のことを嫌いじゃないと思うぞ。だからむきになるんだよ」
だからな、と呟いて水輝が佑の耳に囁く。甘い囁き声にうっとりしかけていた佑は言われた内容に仰天して慌てて水輝を見た。な? と笑って水輝が片目を閉じる。
「わかったわ。それくらいやってもバチはあたらないわよね」
薄く頬を染めつつも佑は笑みを浮かべて頷いた。まだ天井を仰いでいる渚を水輝が呼ぶ。すると渚は鋭い目で水輝を睨みつけた。
「なに!? まだ文句は言い足りてないのよっ!」
「佑が相手してくれるってさ。同時に三人まとめて」
けろりとした顔で水輝が言った後、僅かな間を置いて多輝と渚が驚きの声を上げる。佑はひくりと頬を引きつらせて隣の水輝をこっそりと伺った。水輝は嫌に嬉しそうにしている。
「水輝さんっ! 言ってることが違うじゃない! 三人で渚さんをやるって!」
「マジか!? やった!」
「いいわっ、気合入れないとね!」
佑の叫びをかき消す勢いで二人が声を張り上げる。佑は焦って水輝を見上げた。だが水輝はにやにやと人の悪い笑いを浮かべている。
「ちょっと、やっ! そこはっ! あんっ!」
文句を言おうとした佑の胸に水輝が手を這わせる。そのまま羽交い絞めにされた佑は水輝に抱え上げられた。渚が嫌に楽しそうに佑の服を解いていく。かと思うと多輝がさっさとスカートをめくり上げる。
「うわ、濡れてるぞ」
「こっちも凄く勃ってるわ」
二人がそれぞれに言い、剥き出しにされた乳房と股間を弄り始める。急に二箇所を同時に愛撫された佑は掠れた声を上げて身を捩ろうとした。だがそんな佑を後ろから腕にしっかりと抱いている水輝が首筋に唇を落とす。
「あっ、やっ! んっ! だめ、あああんっ! そこ、ちがっ! やあんっ!」
「凄く感じてるだろ、佑。身体が火照ってるぞ」
小さく笑って水輝が佑の耳朶を舐める。その瞬間にぞくりとしたものが背を這う。その一方で多輝は巧みに指先で佑の股間を探り、官能を引き出していく。渚は渚で手慣れた調子で乳房を揉み、乳首を舌と唇で愛撫する。
「んっ、くうぅっ! だめっ! おかしく、なっちゃ……ああんぅっ!」
仰け反った佑の耳を舐めつつ水輝がくすりと笑う。
「今までずっと我慢してきたんだろ? でももう我慢する必要もないし、隠すこともない。乱れちまえ」
呪文のような囁きに触発されて佑は腰を震わせた。龍神にとっての性交は食事と大差ないと水輝が佑に囁きかける。だから存分に味わってもいいのだという言葉が佑の耳ではなく頭の中に響いた。
「んふっ! だから……龍神とヒューマノイドは……んっ、相性がいいのね……ああんっ!」
掠れた声で呟いた佑の陰部を多輝の舌と指が這い回る。勃起したクリトリスを唇で吸われ、舐められる。渚は佑の乳房を愛撫しつつ、時折強く乳首をつまむ。指先で強く捏ねられた後は舌で優しく嬲られる。堪らない快感に震えながら佑は無意識に足を開いた。お、と嬉しそうな声で笑った多輝が膣への愛撫を始める。
「佑が乱れれば乱れた分、おれたちの快感も上がるからな。力と力の交わりっていうのはそういうもんなんだよ」
まるで子供に言い聞かせるかのごとく、優しく囁きつつ水輝は佑の頭を片手につかんだ。首を傾けた佑に水輝が深く口づける。二人分の手と舌が身体を這い回り、水輝には口の中を舌で弄られる。佑は堪えていたものを徐々に解き始めた。
「うわっ、凄い溢れてきた」
どこか楽しそうな響きのある声で言って多輝が佑の陰部をしゃぶる。
「水輝さんっ! 渚、さぁんっ! 多輝っ! いいっ! いいのぉっ!」
はしたない嬌声を上げて佑は仰け反った。
何分割したのか……(汗)
佑視点がずっと続いてまして、かなり長かったので強引に切りました。
あ、数えたら9分割してました(泣)