※この作品はR-18です。

狩りの終焉 二部   作:伊駒辰葉

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ここのエピソードは長いので切りました。
エピタイ通りですw


マジカルプリンセスいちご! ただいま参上!(笑)

 右足を引いて手にした物を突き出して叫んだところで多輝は恐る恐る視線を動かした。部屋の隅に腰掛ける由梨佳が嬉しそうに拍手をする横で、蒼が渋い顔で首を横に振る。

 

「違います。右足はもっとこう! そして杖の角度はこう!」

 

 立ち上がった蒼が多輝の目の前に歩み寄ってポーズを取る。うう、と呻いて多輝は泣きそうな顔で由梨佳を見た。だが由梨佳はにこにこと嬉しそうな笑みを浮かべていて、とても助けてくれそうにない。

 

 多輝はピンク色の可愛らしい衣装を身につけていた。頭には赤いベレー帽を乗せ、フリルのたくさんついたエプロンをつけ、ピンクのワンピースを着ている。スカートは中に何枚もペチコートを重ねられているためにふんわりと広がっている。足には白いタイツ、靴は赤いエナメル、そして杖は衣装に合わせたピンク色。一昔前に流行った漫画の魔法少女の格好をした多輝は泣きたい気分で自分の格好を見下ろした。

 

「べ、別にさあ。名乗らなくてもさあ。それに、今時魔法少女もないと思うんだけど」

 

 多輝は恐々と蒼に訊ねた。すると蒼が厳しい顔をしてずい、と多輝に一歩迫る。

 

「いいですか、多輝様。何事もまずは形からと申しまして」

 

 それから蒼は三十分もかけて魔法少女の格好がいかに大事かを説明した。確かにこの格好をする時の多輝は限定的に魔法に見せかけた力を使うことが出来る。それは以前、水輝がわざわざそういう術をかけたからだ。それ故、ある条件を元に多輝は一瞬でこの格好に早変わりし、そして杖を持ってあらゆる問題を解決出来る。

 

 ……のだが、多輝は未だにそのことに納得していなかった。不服を唱えようとした多輝はだが、蒼の異様に熱心な目に圧される格好で黙り込んだ。

 

「それではもう一度参りましょう。いいですか、ここが肝心です!」

 

 右足を引いたところで蒼が両手に杖を握る格好をする。多輝はうんざりしつつも蒼の真似をした。

 

「みんなの夢と希望と明るい明日を護るため、マジカルプリンセスいちご! ただいま参上!」

「み、みんなの夢と……キボーと明るい明日を護るため……ま、ま、まじか」

 

 蒼が声高に叫んだ口上を繰り返そうとして多輝はそこで言葉に詰まった。

 

「マジカルプリンセスいちご!」

 

 言葉に詰まって真っ赤になった多輝に蒼が声を張る。多輝は杖を握る手を震わせて涙を浮かべた目で由梨佳を見た。目で助けてくれ、と訴えてみる。だが由梨佳は微笑みを浮かべているだけだ。

 

 ちなみにこの魔法は多輝が女性体の時でないと使えないという制限がある。先日、久しぶりに女性体に戻ってからというもの、多輝は毎日のようにこうして蒼にトレーニングらしきものを受けさせられているのだ。一度など、自室でこの格好をしているところでメイドが入ってきて目を丸くされてしまった。違うんだ、と焦って言い訳をしようとした多輝に判っていますから、と言ったときのあのメイドの顔が忘れられない。

 

「ま、まじかるぷ、ぷりんせす、いちご……ただいま、参上」

 

 どうにか口上を言い終えて多輝はやけくそ気味に杖をくるん、と一回転させた。だが違う! と蒼が叫ぶ。

 

「恥ずかしがっていては駄目なのです!」

「何でおれがこんな真似をせにゃならんのだ!」

 

 我慢が出来なくなって多輝は叫んだ。すると蒼がちっちっち、と軽く舌打ちをしつつ指を振る。一体、蒼はいつからこんな変な性格になってしまったのだろうか。

 

「多輝くん。照れて中途半端になるのが一番恥ずかしいわよ」

 

 優しい笑みを浮かべて由梨佳が言う。多輝は恥ずかしさに泣きたくなりながら唇を噛んだ。由梨佳が言うならやむを得ない、と覚悟を決める。

 

「みっ、みんなの夢と! 希望と! 明るい明日を護るため!」

 

 真っ赤な顔でそう叫んで多輝はくるりとその場で回転した。蒼が納得したように何度も頷く。

 

「マジカルプリンセスいちご! ただいま参上!」

 

 一気に叫んで多輝は持っていた杖をバトンのように回してみせた。

 

「そうです!」

 

 トレーニングとやらが開始されて初めて蒼は笑みを浮かべた。由梨佳と一緒に手を叩いて頷いている。多輝は情けない顔で杖を抱えて唇を引き結んだ。漸くいつもと同じような穏やかな表情に戻った蒼が苦笑する。

 

「何もお泣きにならなくても宜しいのでは。もしかして嬉しいのですか?」

「違う! 情けなくて泣けてくるんだ!」

 

 目尻から零れた涙を拭いながら多輝は全力で喚いた。仕方ありませんね、と呟いて蒼がポケットから何かを取り出す。てっきりハンカチだと思って受け取ったところで多輝は引きつった。苺模様のそれを握って震えていた多輝にこれは失礼、と淡々と告げて蒼が今度は反対側のポケットを探る。何食わぬ顔で手の中からそれを取り上げられた多輝は引っくり返った声で叫んだ。

 

「何でお前がおれのパンツなんぞ持ってるんだよ!」

「ちょっとした手違いです」

 

 しれっとした顔で言ってから蒼が今度はきちんと多輝の手にハンカチを押し付ける。多輝は訝りの顔で蒼を睨みつつハンカチで乱暴に顔を拭った。




マジカルプリンセスいちごが誕生しましたw
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