エロシーンの続きではあるのですが、生身じゃないのでエロには見えないかも知れません。
「劣化してたのかしら? 今のうちに直してしまったほうがいいわね」
由梨佳がスティックと多輝の股間を見比べてため息を吐く。どうやらスティックの先端が人工粘膜を破損しただけではなく、引っ掛けたところから千切れてしまったらしい。その説明を聞いた多輝は真っ青になって由梨佳を見つめた。
「ゆ、由梨佳あ。おれ、気絶していい?」
泣きそうな顔で言って多輝は自分の股間を出来るだけ見ないように横を向いた。
「とりあえず、今日のところは構わないわよ。でも、ヒューマノイド技師になるなら、この程度で気絶されたら困るわね」
苦笑して由梨佳が目を上げる。うっ、と言葉に詰まってから多輝は怖さと痛さを堪えて顔を引き締めた。
「が、がんばる」
由梨佳と一緒に大学に行くのだ。そのためにはまだまだ学ばなければならないこともある。こんなことでへこたれていては話にならない。そう自分に言い聞かせて多輝は恐々と自分の股間を改めて見つめた。
「人工筋肉が劣化してたのね。多輝くん、この身体になってからセックスした?」
「今回ってことか? それとも初めてこの機体になった時からのことか?」
多輝は度々その性が入れ替わる。男性の時は力で生身の身体を構成出来るのだが、女性の時は大抵はヒューマノイドの機体になる。多輝は由梨佳にそう説明した。
「宿体って、いちいち再構成してるのか、それとも、どこか異次元の引き出しのようなものが存在して、そこにしまってるのか、わかる?」
「あー……ええと」
多輝は記憶を引っ張り出して考えてみた。よく考えれば多輝は女性の機体をまとう時、前回に着ていた物と同じ物を身につけている。それから考えても女性になるたびに纏う機体は同一の物と考えて間違いないだろう。多輝は慎重に言葉を選びながらそう伝えた。
「近頃は……その、優一郎も忙しそうで……」
佑のことを思い出しながら多輝は小声で言った。
「ちゃんとメンテナンスを受けてないのね?」
険しい顔で由梨佳がじっと多輝を上目遣いに見る。多輝は唇を尖らせて渋々と頷いた。実際、このところの佑は何かしら急がしそうで、顔を合わせることそのものが少ないのだ。それに佑はあくまでも女性でとても多輝を抱けるとも思えない。多輝は俯いてぼそぼそと言った。
「そんなこと、メンテナンスを行わない理由にならないわ」
厳しい顔で言って由梨佳がため息を吐く。余りにその表情が険しくて多輝は反射的にごめん、と詫びた。確かにこの機体をまとっている間も多輝は由梨佳の機体にはしょっちゅう触れるし、交わることもある。が、多輝の機体の方は誰かに激しく弄られたりといったことはない。あくまでも由梨佳は多輝にとって抱く対象で、抱かれる相手ではないのだ。
「あなたが謝る必要はないわ。悪いのは優一郎さん。いえ、いまは佑さんとおっしゃるんだったかしら?」
「い、いや、あの! 優一郎は今はほんとに……その、忙しいんだよ。何か、知り合いが身体の具合が悪くて、その、ヒューマノイドを新しく一体作らなきゃならなくて」
由梨佳の怒る様子に怯えて多輝は慌ててそう言った。すると由梨佳が眉を寄せて多輝を見上げる。多輝も詳しくは知らないのだが、佑は今現在、そちらのヒューマノイドにほぼかかりきりなのだ。何でも元の身体が相当にまずい状況になっていたらしい。
「そういう事情なら仕方ないわね。わたしのほうこそ気づかなくてごめんなさい。龍神の宿体なら、力で再構成とかしてるものだとばっかり……」
「いや、それはおれが単に不器用なだけかもだし……待てよ」
ふと気付いて多輝は自身の股間に目をやった。この機体の時も例えばどこかのフレームが折れたりした時には力で修復出来るのだ。もしかしたらこれも修復が可能かも知れない。そう思いながら多輝は下腹部に手をあてがった。意識を集中して力を導き出す。だが、多輝が思うようには機体は修復出来なかった。どうやらフレームが折れたり、肌が切れたりと言った傷とは異なり、内部の損傷は直しにくいらしい。うう、と呻いて多輝は額を押さえた。
「ヒューマノイドの女性器ユニットはとても繊細なパーツよ。人工筋肉式のほうは、機械式のものよりまだ丈夫だけど、それでも故障しやすいことには違いないわ」
淡々と言いながら由梨佳が腰を上げる。だがここには多輝の機体を修理出来る道具も部品もない。多輝の機体は優一郎の作製した中でも特殊なもので、素材は全て最高級品が使われているのだ。
「やっぱ、優一郎に頼むしかないのかなあ」
恐怖と痛みを何とか堪えて多輝ははみ出していた赤いものを強引に膣内にねじ込んだ。
「緊急で作業しているなら邪魔をしては悪いわ。学校の地下に転移はできないかしら? 向こうなら修理できると思うんだけど……」
「そのくらいなら出来るかな」
多輝は頷いて由梨佳の手を取った。一瞬で視界がぶれてあっという間に暗い部屋に出る。由梨佳が灯りを点けると見慣れた部屋の様子が目に映った。使い慣れた自分の部屋を見回して多輝はこれでいいか、と由梨佳に訊ねた。
「いつもながら凄いわ……」
感心したように呟いてから由梨佳が周囲を見回す。
「交換パーツはどこかしら?」
「メンテ室だと思うんだけど」
そう言いながら多輝は痛みを堪えて歩き出した。よろけた多輝を由梨佳が横から支えて並んで歩く。ゆっくりと部屋を出たところで多輝は廊下に見えた人影に呼びかけた。キッチンで何かをしていたのだろうか。廊下を歩いていた斎姫が呼びかけに答えて振り返る。多輝は手を上げて挨拶してから自分の機体が壊れたことを手短に説明した。
「手伝うわ。多輝さんのタイプのパーツなら、優くんの部屋にあるはずよ」
頷いて斎姫が多輝の身体を由梨佳とは反対側から支える。
「こっちかしら?」
由梨佳がそう言って肩越しに振り返る。多輝は頷いてからありがたく二人の肩につかまって来たのとは反対に向かって歩き始めた。
「何だ。メンテ室かと思った」
多輝はそう呟いて苦笑した。幸い、感じる痛みは気絶するほどに強くはない。三人で優一郎の部屋に入ったところで斎姫が灯りを点ける。広々とした優一郎の部屋の奥には机と端末、それにメンテナンス用の台がある。多輝は二人に支えられながら台に乗った。足を開いて踵を置く台に踵を乗せ、足を左右に開く。まるで先に打ち合わせでもしていたかのように由梨佳が手際よく端末の電源を入れ、斎姫が必要な部品をトレイに集めていく。そんな二人の様を多輝は感心しながら見守った。
「とりあえず、ユニット全部を交換するわよ。その後、検査して、必要なら全身をオーバーホールするわ」
「判った」
由梨佳に頷いて多輝は天井を見た。これなら自分でわざわざ股間を覗きこむこともない。台の足元に設えられたカメラが作業現場である多輝の股間を映しているのだ。モニタはメンテナンス台の上方に画面を下に向けた形で設置してある。
これなら楽に作業を見られる。この時の多輝はそう考えて呑気に笑っていた。二人が交換作業を開始した矢先、モニタ画面に映りこんだ機体の腹の中を見て、余りの光景に卒倒する羽目になるのだがこの時の多輝は気付かなかった。
11/11はポッキーの日らしいですね。