※この作品はR-18です。

狩りの終焉 二部   作:伊駒辰葉

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エピタイは作者のもの!
エロシーンはありません。


呉羽の機械化と昔の話 1

 あの日から四日が過ぎた。機体は既に完成し、あとは起動するだけとなっている。佑は疲れた肩を片手で揉みながらため息を吐いた。地下の実験室には自分の他には呉羽に用意した機体しかない。

 

 脳の移植をし、魂の移動を行うのには一日もかからなかった。だが問題は呉羽に用意した機体だった。一応は由梨佳の予備用の機体として保管していたものだったのだが、何しろかなり以前に作成した上に何かと事件や事故が重なったために保存状態が良くなかったのだ。そのため、機体の表面的な部分は殆ど作り変える必要があった。

 

「まあ、なんにしても容姿にあわせて作り変えなきゃならないのは変わらないし」

 

 しかし、呉羽さんが僕に特別な感情を持ってるって本当かなあ。そう呟きながら佑は台に横たわる呉羽を見た。由梨佳の予備の機体は呉羽の容姿に合わせて作り変えてあり、ぱっと見る分には元の身体とそう変わりはしない。服を脱いで裸体を晒すようなことさえなければ問題はないだろう。多少、女性器の部分が機械的なのはこの際我慢してもらうしかない。

 

 問題はあの順の発言だ。呉羽は優一郎に想いを寄せていたのだと言う。だが、これまで優一郎は呉羽と対した際にそんな素振りをされたことはない。呉羽はあくまでも優一郎の信頼出来るパートナーとしての立場を求めていたし、優一郎も呉羽にそうあってくれることを願っていた。そして呉羽の全面的な協力により、ヒューマノイドは増えて行ったのだ。

 

 呉羽の勤務先である清陵中央病院には連絡は入れてある。常日頃から勤務態度が良好だったために、呉羽が休みを取ることに関して文句は一切、言われなかった。逆にたまには休んだ方がいいよと心配されたくらいだ。

 

「こうして見ると、呉羽さんって今の僕に似てるよね」

 

 いや逆か。佑はそう続けて苦笑した。呉羽はいつも病院にいる時にも外で会う時にも眼鏡をかけ、頭が痛くなるのではないかというくらいにきつく髪をひっつめていた。だが今は眼鏡もかけていないし髪を下ろしていて、本来の年齢にとても見えないほどに若く見える。下手をすると青年の姿を取った水輝よりも若く見えてしまうのだ。

 

 優一郎は幼い頃から呉羽のことを知っていた。親戚一同が集う中の末席、本当に隅の方に呉羽は控え目な態度で座っていたことを覚えている。吉良家の当主である優一郎の祖父の実の娘であるにも関わらず、呉羽は親戚たちから随分と酷い扱いを受けていた。それもその筈だ。呉羽は総一郎とは片親しか同じではない、所謂妾腹の子だったのだ。

 

 だが総一郎はだからといって呉羽を特別に邪険にするようなことはなかった。いや、それ以前に総一郎は親戚の誰とも特に仲良くはしていなかった。総一郎にとって血縁などどうでも良かったらしく、呉羽だけではなく実の父や母についてもさして興味を抱いてはいなかったらしい。

 

 そのことを思い出して佑は苦笑した。優一郎の幼い頃の思い出の多くは多輝のものとすりかえられている。だがそんな曖昧な思い出の中でもはっきりと覚えていることもある。ある時、親戚が集まる席上に呼ばれた……確かあれは正月だ。遊び相手もおらず、姉の絵美佳がお年玉を貰いに大人たちの間を巡っていたために優一郎は一人、庭に置き去りにされた。砂利の美しい線の描かれた広々とした庭で優一郎はどうしていいか判らず半泣きになっていた。

 

 そこに現れたのが呉羽だった。あの頃の呉羽は二十歳過ぎだったろうか。寂しさにべそをかきそうになっていた優一郎に優しい声をかけ、一緒に遊んでくれたのが呉羽だった。

 

「もしかして、初恋だったのかな?」

 

 そう呟いて佑は頭をかいた。呉羽はあの頃からとても美しかった。あの頃はまだこの国には飛び級の制度がなかった。もしそうでなければ早いうちから医師として活躍していたのではないだろうか。美しく聡明な叔母であった呉羽に優一郎は憧憬の念を少なからず抱いていたのだ。

 

だが、呉羽とはあまり会うことはなかった。それもその筈だ。呉羽は医師になるために大学に通ってはいたが、その大学は優一郎の住む街から随分と遠く、呉羽は大学の傍に一人で暮らしていたのだ。妾腹の子ということもあり、祖父は呉羽を本家に呼び戻すことは殆どなかった。親類一同が集まる席にだけ呉羽は姿を現していたのだ。

 

「地味に装ってたのは男避けだったのかな。ことさら、僕に気のある素振りは見せなかったけど」

 

 やがて呉羽は大学を卒業し、この街に戻ってきた。だが呉羽は本家に近づくでもなく、勤め先の病院の近くにアパートを間借りしてそこに暮らしていた。勤めていたのは今と同じ清陵中央病院だ。

 

 そしてあの事件が起こる。優一郎はある意味では絵美佳に嵌められ、欲情した由梨佳を夢中で抱いた。だが衝撃ゆえにかその記憶は封じられ、その代わりに優一郎はヒューマノイドに興味を抱くようになった。それまで全く関心のなかったヒューマノイドの研究に打ち込むようになった優一郎は、ある日、総一郎の書いた論文に注釈をつけたものを持って呉羽の許を訪ねた。

 

 呉羽は突然に訪ねた優一郎を快く迎え入れてくれた。そこで優一郎は自己のジレンマについて打ち明けた。確かにヒューマノイドには興味がある。だが、自分には作れないのではないか。決して思いの核心には触れずに語った優一郎に呉羽は笑って言ったのだ。




呉羽って後で出てきたキャラクターだったからなのか、設定がなかったんですよ。
ですので、ここで一気に出てきた感があります。
設定は後から出てくるものー!w
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