前の続きなので呉羽は裸のままですけども、エロシーンはありません。
「本来、龍神は肉の器を失っても、宿体と呼ばれる器を力で構成することができます。しかし、龍神と成ったばかりのあなたにはまだ宿体を構成するだけの力が無かった」
「だからヒューマノイドの機体という訳ね」
意外とさばさばとした口調で言って呉羽は笑ってみせた。本当のことを話すだけでもしかしたら呉羽は全てを拒絶してしまうかも知れない。だがそんな佑の危惧を裏切って呉羽はあっけらかんとしている。
「はい。そこで呉羽さんにはふたつの選択肢があります」
「二つ、ねえ」
不思議そうに腕を動かしていた呉羽が呑気に言う。まるで他人事のような口調に困惑しつつも佑は続けた。
「ひとつは宿体を再構成できるだけの力を蓄えるまで、ヒューマノイドの器を仮宿として耐えることです。もう一つは」
そこまで言って佑は少しだけ声を落とした。
「ヒューマノイドの身体のまま、マスターを選ぶ道です」
「……困ったねえ」
本当に困っているのか怪しいくらいに軽い口調で呉羽が言う。佑は唇を引き結んで呉羽の返事を待った。しばし天井を見ながら頭をかいていた呉羽が苦笑を浮かべる。
「どうせ隠せやしないから言っちゃうけど、私はあんたが好きなのよ」
さらりと言ってから呉羽はにっこりと笑ってみせた。あまりにも気軽に言われたため、佑は一瞬、何を言われているのか理解出来なかった。その隙に、だけどねぇ、と呉羽が言葉を継ぐ。
「わたしゃ、あんたの恋人になりたい訳じゃない。私は出来る限り生きなければならないのよ。それが私とあんたにとってベストだと思うから」
淡々と言ってから呉羽はおもむろに身を起こした。まだ完全に出来ていない女性器部分を気遣ったのだろう。呉羽は下半身を出来るだけ動かさないように身を起こしたところで佑に笑ってみせた。
「僕も呉羽さんが好きです。でも、恋人にしたいわけではありません。僕が望むのは……」
「研究の上での最強のパートナー。それでいいんじゃないの? お互いどんな風になったって、それだけは変わんない事実よ」
肩を竦めて言ってから呉羽が手を伸ばす。佑の手をそっと取って呉羽は優しい微笑を浮かべた。その表情はあの頃とまるで変わっていない。
「パートナーというのは便利な言葉です。でも、あなたの気持ちを知ってしまった今、僕はあなたを父が宇田川さんを扱ったように、純粋にパートナーとしてだけ扱うことはできそうにありません」
「おやまあ」
佑の手を両手に優しく包み込んで呉羽はからからと笑ってみせた。暗い影のない笑いに佑は思わず緊張した面持ちを少しだけ緩めた。
「ちょっと見ない間に随分と成長したんだねえ」
感慨深げに呟いて呉羽が目を細める。ついこの間まではそれで納得してたのに、と言って呉羽は佑を見つめた。その目には暗いものはやはり一つもなく、まるで母親が幼い子供を見守るような慈愛がこもっていた。
「あなたを僕の所有物にして、僕に都合のいい道具にしてしまいたいんです。対等な存在、パートナーではありません。僕のために僕の研究を補助する道具。闇を志向する龍神としての力で僕を助ける武器。そして、僕の歪んだ性的な欲求を満たす玩具。僕はあなたにそういう存在であることを求めています」
淡々と語る佑を呉羽はじっと見つめていた。微かに首を傾げた呉羽の薄紅色の髪がさらりと胸に零れ落ちる。呉羽の瞳は髪と同じ、薄紅色だ。それは順の力の影響を受けた証だ。
ふと、呉羽が苦笑を浮かべる。
「本当に……少し見ない間にずっといい男になったわねえ」
そう言って呉羽がくすりと笑う。だが今の佑は少なくとも外見は紛れもなく女性だ。そのことを思い出したのだろう。ちょっと言い間違えたかな、と自分の言を笑ってから呉羽が佑を真っ直ぐに見つめる。
「私はあの時、優一郎に助けられた。まあ、優一郎は覚えちゃないだろうけど、荒んだ私の心に射し込んだ一筋の光があんただった。あんたは私にとって、たった一つの灯火だったんだよ」
静かに告げてから呉羽はそっと佑の手を握る手に力をこめた。目を落とした佑はそこで初めて呉羽が微かに手を震わせていることに気がついた。驚きに目を見張った佑を余所に呉羽が言葉を継ぐ。
「私は最初からあんたのものよ。あの時からずっと」
優一郎の命の続く限り、と呉羽が呟くように言う。真っ直ぐなその眼差しに嘘は感じられない。佑は顔を上げて呉羽の視線を受け止めた。
「これまで、ずっと気づかずに、ごめんなさい」
囁くように告げて佑は頬を染めて俯いた。すると呉羽が何てことないよ、と笑って佑の手を離す。
「それにあんたが年上の女に惚れ易いの、知ってたからねえ。こーんなおばさんに手間をかけさせるのは悪いけど、ひとつ頼むわ」
悪戯っぽい笑みを浮かべて言ってから呉羽が片目を閉じる。
「おばさんなんて! 呉羽さんはずっと綺麗で、それに」
佑は白衣のポケットから呉羽のために用意した伊達眼鏡を取り出した。それを自分にかけてみせる。すると呉羽はぷっ、と吹き出した。
「あんた、ご丁寧にそんなもんまで用意したの?」
楽しそうに笑いながら呉羽がひょいと手を伸ばして佑のかけていた眼鏡を抜く。感慨深げに眼鏡を見下ろしていた呉羽の表情がふと、曇る。怪訝に思った佑が訊ねると急に呉羽は怒りに目を吊り上げて眼鏡を握り締めた。
優一郎は何人たらし込むのか判りませんねw
あ、これは佑なのかなw 外見だけですが。
こまし具合が水輝と良い勝負なのではなかろうか、とちょっと思ったりします。