機械的に操作とかしているだけなのですが、局部は出てきます。
「いいえ。僕にとって、あまりにも都合が良すぎる気がして……」
かつて作ったヒューマノイドの中には、優一郎に想いを寄せて壊れてしまった者もあった。当時の優一郎は斎姫を手に入れて自分のものにしようと懸命になっており、そのヒューマノイドのことを疎かにしてしまったのだ。壊れたヒューマノイドを修復したのは優一郎の姉の絵美佳……今の透だ。今でもそのヒューマノイドは透の傍にいるのだという。その時のことを思い出して佑は目を細めた。
「私が幾つだと思うの? 独占欲がない訳じゃないけど、折り合いをつける方法くらいは知ってるつもりよ」
佑が言葉を途切れさせた時、呉羽は優しい笑みを浮かべて言った。
「呉羽さんが、こうやって、僕の我がままを受け入れてくれることは、最もありえる展開として予測していました。だから、呉羽さんを完全に僕のモノにするための準備も整っています」
「マスター登録? あら、私はてっきり面倒になって放り出されるのかと思ったわ」
佑が言う前にそう言って呉羽はくすくすと笑った。予想もしていなかったことを言われ、佑は絶句して呉羽を凝視した。
「放り出すなんて、そんなこと! ただ、なんらかの事情で僕に放置されても、動作を続けられるような仕組みは組み込んでありますけど」
焦って言った佑を見つめて呉羽はああ、と苦笑してみせた。
「そういう意味じゃなくて……なるほどねぇ……そうか。歌のせいでもないのね」
妙なことを言ってから呉羽は天井を仰いだ。
「疑うつもりじゃなかったんだけどね。あの歌、ちょっと変わったメッセージが入ってたから、優一郎もその影響を受けてたらどうしようかとも思ってて」
佑の戸惑いの視線に気付いたのだろう。ばつが悪そうな顔をして呉羽が頭をかく。
「あの、どんなメッセージなんですか? 呉羽さんは影響を受けてるってことなんですよね?」
「ううん。私には聴こえたから影響力はないと思うのよ。多分、メッセージが聴こえない人の方が影響されるんじゃないかしら」
困ったような顔で言ってから呉羽はやれやれと肩を竦めてみせた。その顔には寂しそうな笑みが浮かんでいる。怪訝に思いつつも佑は呉羽に話の続きを促した。
「昔のことを思い出してって。あの馬鹿……ええと、執事だっけ? 無意識に働きかけようとしてたみたいね」
だから幼い頃の想いを喚起されて話してるんじゃないかと思ってね。呉羽はそう言ってからもう一度、ごめんねと詫びた。
「謝らないでください。あの歌を聞く以前に、僕は作業を終えていたんですから」
真剣な表情で言ってから佑は続けた。
「呉羽さんの意思はわかりました。マスター登録作業にかかっていいですか?」
「あ、ああ。それは構わないけど」
慌ただしく告げた佑に面食らったのか、呉羽が一瞬、戸惑ったような表情になる。実際、佑は嫌な予感を覚えていた。理由ははっきりとは判らないが、酷く嫌な感じがする。佑は振り返って台の上からマスター登録用のスティックを取り上げた。
「挿入します」
スティックを呉羽の膣口にあてがう。すると機械仕掛けの膣内に自動的にスティックが潜り込んだ。機械部分が剥き出しになっているからか、スティックを咥え込んだ膣の外周に取り付けられたモーターから大きな音が響く。へえ、と感心したように言った呉羽の目からふと意志の光が消える。
「精神パターン認識。マスター登録完了しました」
無感情に呉羽が告げる。機械的な報告を聞き取って佑は頷いた。これで呉羽は自分のものになったのだ。自動的にスティックを吐き出し始めた呉羽の女性器を覗き込んで佑は口許に笑みを浮かべた。意識を取り戻した呉羽が珍しそうに股間を覗きこんでいる。
「女性器ユニットは、ヒューマノイドの中枢です。ヒューマノイドを真にコントロールしているのは、脳では無く骨盤内に設えられた制御コンピュータなんです」
説明しつつ佑はモーターに押されて出てきたスティックを取り上げた。なるほどねぇ、と感心したように呟いて呉羽が頷く。呉羽はこれまで優一郎に力を貸してくれてはいたが、あくまでも外科系の医師としてだ。ヒューマノイドについては呉羽は詳しい知識を得てはいないのだ。
「他のヒューマノイドの場合は、あらかじめ知識をインプットしておくんですが、呉羽さんにはそういう処置はしていません。理由はふたつあります」
佑は振り返って台にマスター登録用のスティックを戻した。
「呉羽さんなら自分で学習されたほうが後々のことも考えれば手っ取り早いだろうというのがひとつ、もうひとつは別の視点からの意見が欲しかったからです」
「なるほど。だから私は以前のまま、と」
納得顔で頷いた呉羽に佑は頷き返した。マスター登録を無事に終えた安心からか、さっき感じた嫌な予感はなくなっている。そのことにほっとしつつ佑は呉羽に向き直った。ずれた眼鏡を指で押し上げながら呉羽が顔を上げる。
「呉羽さん。女性器ユニットにカバーを取り付けましょう」
紅いゴム製のパーツの入ったトレイを差し出しながら佑はそう告げた。へえ、と呟いて呉羽がそれを受け取る。
「意外だねえ。人体と構造は似てるのかと思ってたけど」
形が似ていると言っても中身の構造はまるきり違うんだね。そう言って呉羽はトレイの中のパーツをつまみあげた。
「感覚性能とコストとメンテナンスの簡易さを第一に設計してありますから。僕と呉羽さん自身以外に見る者は居ないんですからかまわないでしょう?」
にこりと笑みかけて佑は首を傾げてみせた。そりゃそうね、と苦笑して呉羽が頷く。だがふと呉羽が表情を曇らせる。
「つまり、これで優一郎はヒューマノイドを操作してるってことね?」
当然のことを今さらのように言われて佑は不思議に思いつつも頷いた。あー、と間延びした声を上げて呉羽が眉を寄せて渋い顔をする。
エピタイを変えたいのに変えられない!><
このままこの章は終わりそうな感じです。