「そうですけど……。あの、意見があったら仰って下さい」
もしかしたら呉羽は何か気に入らないのではないだろうか。そんな心配をしつつ佑は訊ねた。すると呉羽が困ったような顔をしてため息を吐く。
「あんた、周りにヒューマノイドばっかりだと操作することに慣れて、生身の女の子とちゃんとセックス出来なくならない?」
どうやら呉羽は不満があった訳ではなく、佑を心配していたらしい。
「生身と言ってもセックスの相手になり得るのは龍神か使い魔ですし、正直、ヒューマノイドのほうが、人間よりも龍神や使い魔に近いんです」
「へえ……そうなの?」
納得したのか、呉羽の表情が晴れる。そのことに内心でほっとしつつ佑はにっこりと笑ってみせた。
「実際、多輝なんかは、生身の宿体の時とヒューマノイドの宿体の時、両方で抱いたことがありますし」
「ふうん。やっぱり違うもの? 感覚とかはどうなの?」
興味ありそうな顔で呉羽が問う。素直に答えようとしたところで佑はふと気付いた。どうも呉羽は抱かれた側の多輝のことを知りたがっているのではなく、抱いた佑の側のことを訊いているようだ。そのことに気付いて佑は思わず苦笑した。あくまでも呉羽が興味を抱くのは佑の方らしい。
「知っているから気づくのであろう些細な差異を覗けば、ほとんど差はありませんでした。多輝の機体はもともと龍神の宿体の再現を狙って作ったものですから。かなり自信になりました」
そう説明しつつ佑は照れくささに頬を染めた。なるほど、と頷いて呉羽がつまんでいた部品に目を落とす。
「じゃあ、私のこの身体は……って、機体って言うんだっけ? この機体は何を狙って作られたの?」
建前はともかく。そう続けて呉羽がにやりと笑う。そんな笑い方をすると呉羽は普段に佑に見せているものとはがらりと違う雰囲気を纏う。
「その……最初に言ったように、玩具です。比喩ではなく、そうするつもりで作りました」
「玩具にすると感じるの?」
にやにやと笑いながら呉羽が佑の顔を覗き込む。佑は赤くなって言葉に詰まった。そんな佑をしばし見てから呉羽がごめんごめんと笑う。
「私も困った性癖よねぇ」
そう言いながら呉羽は手にしていた部品を股間に運んだ。
「あと、自慰行動とそれに関連するメンテナンスがスムースに行えるように工夫してあります。一日十数時間以上の自慰行動を行いながら研究やその他、必要な行動を行えるように最新の自慰制御回路が組み込んであります」
呉羽に部品のはめ込み方を説明する。ふむ、と呟いて呉羽は初めての割には器用に一度で部品をはめ込んだ。
「十時間以上の自慰ねえ……。あんた、私の仕事なんだと思ってるの?」
そう言いつつも呉羽は苦笑を浮かべている。
「あの、ヒューマノイドの記憶ギャップによるストレスや、それを解消する手段については、呉羽さんもご存知ですよね?」
不安を覚えて佑は恐る恐る訊ねた。部品をはめ込まれた呉羽の女性器は内臓を思わせる人の女性器とは形が違う。見た目にも安物の玩具のようだ。
「あー、判ってる判ってる。ただね、自慰しつつ執刀するところを想像しちゃったらちょっとね」
苦笑して軽く手を振ってから呉羽はよいしょ、と広げていた足を戻した。台の上を移動して膝を曲げて座り直す。
「呉羽さん、あの……」
小声で呼びかけて佑は口ごもった。なに、と呉羽が不思議そうに問う。戸惑いつつも佑は言葉を継いだ。
「あの、ヒューマノイドの股間は、外部から命令を入力するためのインターフェースになっています。指示がない限り、晒したままにしてください」
言いながら佑は真っ赤になった。別に呉羽だけがヒューマノイドな訳ではない。他にもヒューマノイドは多く居る。なのに何故か呉羽に説明をすると妙な気恥ずかしさを覚えるのだ。
「あっ、ごめんごめん。こうだっけ?」
軽い口調で詫びて呉羽が元の通りに踵を小さな台にかけ、両足を開く。その動きに恥じらいやためらいは一切感じられない。そのことが佑の感じる気恥ずかしさを増長した。
「はい。股間部にはマイクロフォンやスピーカーも取り付けられています。指で耳に栓をしてみてください」
恥ずかしさを懸命に堪えて佑は呉羽の股間に顔を寄せた。呉羽が耳を手で塞いだのを見て取ってから股間に向かって話し掛ける。
「耳を封じても、聞こえますよね?」
「うん、聞こえるね。ちょっと聞こえ方は違うけど」
耳から入る音よりは多少、エコーがかかってるかな。そう言いながら呉羽は口許に笑みを浮かべた。
「また、龍神の力の波を電波の代わりに使った、盗聴不可能な通信機としても機能します。こうやって、僕の持つ端末から呉羽さんに直接通信回線を開く事もできますし」
そう言ってから佑は白衣のポケットから携帯端末を取り出した。あらかじめ指定しておいたボタンを押すと、僅かな間を置いて呉羽の股間から愛らしい電子音のメロディが鳴る。おお、と笑って呉羽は自分の股間を物珍しそうに覗き込んだ。
「クリトリスが受信スイッチです。押してください」
呉羽が頷いてクリトリスを指先で押す。呉羽は背中を丸めて股間に向かって話し掛けた。
「優一郎。そこから半歩ほど下がって」
呉羽の生の声と端末から聞こえる声が重なる。突然、言われたことに首を傾げつつも佑は半歩ほど後ろに下がった。呉羽がよいしょ、と膝をいっぱいに曲げて足を上げる。その瞬間、二人の間を何かがもの凄い勢いで過ぎた。続けざまに何かが壁から抜けてきて二人の間を凄まじい勢いで過ぎる。佑は唖然とした顔で二人の間を行きすぎたものを見送った。だが佑が目をやった時にはもう、それは影も形もなくなっていた。
呉羽が根性を見せているのでエロシーンらしいエロシーンになりません!!(汗)