最後に出歯亀的なのが登場w
エロシーンはありません。裸ですけど。
「今のは? いったい?」
「さあ、何だろうねえ。私も判らないけど」
困惑に問いかけた佑に呉羽も困ったような顔で答える。どうやら呉羽は何かが来るという事は判ったらしいのだが、その正体については判らなかったらしい。
佑は目を閉じて周囲を伺い、舌打ちをした。
「なるほど、送り狼がしかけてあったってことか」
どうやら今のは呉羽を追ってきた者らしい。佑は目を開いて自分の胸に手をつきたてた。驚きの声を上げる呉羽に大丈夫だから、と目で合図してから佑は自身の紫宝珠を取り出した。
「盾よ! 我等を外界から完全に遮断せよ」
声を張った瞬間、紫宝珠が鮮やかな光を帯びる。佑に導き出された力は結界の形で部屋の内側に張り巡らされた。その瞬間にけたたましい音が壁越しに聞こえてくる。どうやら追加分の仕掛けが発動し、呉羽目掛けて跳んで来たようだ。が、全て佑の展開した結界に弾かれている。
「僕の力に反応するようになっていたみたいですね。お返ししておきましょう」
穏やかな笑みを浮かべて佑はそう告げた。感心したように呉羽が佑を見つめる。だが呉羽はその顔に少し寂しそうな笑みを浮かべた。
「わたしゃ、あんたに手間をかけさせる気はなかったんだけどねえ……」
どうやら呉羽は何も言わなくても先ほどの攻撃が自分を狙ったものだと気付いたようだ。申し訳なさそうな顔で言う呉羽はどことなく消沈して見える。
「いえ。そう、見せかけているだけです。あれは僕を狙ったものですよ」
嗤いを浮かべて佑は静かに告げた。ふと、背後を振り返る。気配を感じた通り、佑の背後には水輝が姿を現した。悪い、と真っ先に詫びて水輝がくるりと背を向ける。唐突に水輝が出てきたことに驚いた顔をしていた呉羽が悲鳴を上げて自分の身体を腕で隠そうとする。
「だから見ないようにしてるだろうが」
不機嫌そうに言って水輝がため息を吐く。呉羽にそっと自分の着ていた白衣をかけてから佑は水輝を振り返った。
「水輝さん、お気づきだと思いますけど、僕に放たれたモノには紫さんの痕跡が色濃く浮かんでいました」
これは、と呟いて佑は唇を引き結んだ。水輝が肩越しにちらりと佑を見てから振り返る。
「ちょっと気付くのが遅れたな。一応、防御結界は強化しておいたが」
悪い、と詫びて水輝が顔をしかめる。そこで呉羽があら、と呟いた。
「もしかしてこの人が優一郎の旦那様?」
白衣で肌が隠れたことに安堵したのだろう。いつものようにさばけた口調で呉羽が言う。水輝は無事で何より、と呉羽に片手を上げてみせた。しばし水輝をじっと見ていた呉羽が佑をつついていい男じゃない、と囁く。
「えっと、あのっ、そのっ」
嫉妬なのか照れなのか判らない複雑な感情がわいて佑は慌てたように二人を見比べた。水輝がやれやれと言いながら肩を手で揉み解し、ポケットから煙草を取り出す。
「悪戯が過ぎたら直に斬るって脅しておいたんだがな」
機嫌の悪い顔でぼやくように言って水輝は煙草に火を点けた。軽く指を鳴らすとどこからともなく新鮮な空気が部屋に入ってくる。どうやら水輝が換気のために部屋の空間の一部と外のどこかを繋げたらしい。
「すいません。咄嗟に紫さんに返してしまいましたけど、操っていたのは彼、ですね?」
「ああ。……まあ、紫に返したところで別に問題ないだろう。奴は一応あれでもまだ龍神だからな」
咥え煙草で不機嫌に言ってから水輝がやっと気付いたように呉羽ににっこりと笑みかける。呉羽は笑みを受けてあら、と嬉しそうに笑ってみせた。
「とりあえず、僕からも警告送っておきましょう。これあたりが適切かな」
佑は呉羽の着ている白衣のポケットから名刺入れを取り出した。かつて順が優一郎に手渡した名刺を名刺入れから出す。それは順が以前の事件の折り、偽名で用いていた名刺だ。小さな四角い紙には木村総研という会社名と木崎順という名前が記されている。
「順どの、木崎順どの、刺を通じ、支援を求めん。蘇芳克人が我に対し敵対行動を取りしとき、木崎順どのは我に加勢せん。また、その旨を蘇芳克人に伝えん」
指に挟んだ名刺が輝きを帯び、一瞬でその場から消える。佑が名刺に乗せて放った術は真っ直ぐに克人の元へと飛んで行った。じっと佑の手元を見つめていた水輝が苦笑して頭をかく。
「逆効果のような気もするが、少しは抑えられるかな」
のんびりと言って水輝がふと天井を仰ぐ。それから水輝はゆらりと歩き出した。驚いたような顔をする呉羽の傍に近づき、水輝がにっこりと笑う。
「あんた、医者だろ? それなら子供を取り上げたり出来るか?」
「は?」
唐突に水輝が言ったことが理解出来なかったのか、呉羽が怪訝そうな顔で声を返す。水輝は腕を伸ばして急に佑の肩を抱いた。それから手で佑の下腹部を指し示す。
「子供が出るんだ、そろそろ」
「は!?」
今度はもっと大きな声を上げて呉羽は驚いたように佑を凝視した。佑は慌てて隣に立つ水輝を見上げた。
「えっ!? あのっ、本当ですか!?」
「おう。間に合わなかったらどうしようかと思ったぞ。あんまりちんたらしてるからどこで声かけようかと考えてたんだが」
意味ありげな笑いを浮かべて水輝が佑の頭を軽く小突く。佑は驚きに目を見張ったまま、下腹部に手をあてがった。胎に子が居るとは言っても、佑の下腹部は妊婦のように張り出してはいない。
「あの、僕はどうすれば?」
驚きや不安をこめて告げた佑を水輝がひょい、と軽々と抱え上げる。それから水輝は台の上で唖然としている呉羽に声をかけた。
「良かったら手伝ってくれ」
「ちょ、ちょっと待って。私は外科医で」
「こういうのは見ておいて損はないぜ」
人の悪い笑いを浮かべ、水輝が歩き出す。その後を呉羽が慌てたように追い、三人は地下の部屋から出た。
急にバトルが入ったりするのは、この話の仕様です。