若干、グロかも知れません?
出産シーンが苦手な人はにげてー!
「奈月さん、礎とかどーとかの判断は後回しにしてください。どうやら、奈月さんを水輝さんが僕の傍に寄越した判断は、感情論を抜きにすれば正しかったようですから」
きっと血管が何本か切れているに違いない。そう思いつつ佑は出来るだけ平静を保ってそう告げた。すると奈月が不思議そうな顔をする。佑は苦しさに顔を歪めて両手でしっかりと腹を押さえた。
「産まれ、そうです。珠が膨張して……。くあっ!」
何で怒りながらこんなに苦しい思いをしなければならないのだ。当たり所のないことを思いつつ佑は懸命に苦しさを堪えた。そのうちに手の下で腹が少しずつ膨れ始める。
「くぅっ」
歯軋りをして苦しさを堪える佑の額に汗が滲む。さすがに慌てたのか奈月が立ち上がって佑の腹をさする。異変を感じ取ったのだろう。犬が焦ったように呉羽を揺り起こす。不機嫌そうな顔をした呉羽がのろのろと身を起こし、佑の異変を察知して慌てて立ち上がる。
「湯とタオル! 大量に持ってきな!」
鋭い声で命じた呉羽に従って犬が慌ただしく部屋を駆け出す。奈月は床に置いてあったたらいからガーゼを一枚取り上げ、佑の汗を拭き始めた。
「奈月さん、水輝さんとの話し合いの件については判断を早まらないように、わかりましたね」
苦しさが一気に痛みに変じる。それを堪えつつ佑は凄絶な笑みを浮かべた。歯を食いしばっているために奥歯が軋る。
「あ、はいっ! あの、えっと、喋らないで、楽にしてください!」
おろおろとしつつ奈月が懸命な表情で頷く。その間に呉羽は手際よく佑の服を解いていった。スカートを取られて下着を抜かれた佑は足を開くように言われた。呉羽が佑の膣に無造作に指を入れる。
「さっきまで何ともなかったのにこれかい……。そこのお嬢さん。悪いけど優一郎の身体、押さえて」
ちょっと痛いよ、と言って呉羽が厳しい顔で佑の足を押さえる。慌てたように奈月が佑の肩をしっかりとベッドに押し付ける。そんなことをしなくても暴れるつもりはない、と言おうとした佑は唐突に襲ってきた痛みに目を見張って仰け反った。呉羽が指を膣内で動かしたのだ。
「くっ、うわあああああっ!」
たまらず叫んだ佑を奈月が泣きそうな顔で見る。だが呉羽は厳しい顔でしばし佑の膣内を指で探った。
「便はないから問題ないね。腹が膨れるのと陣痛が同時かい……凶悪だねえ」
眉を寄せて言ってから呉羽は指を抜いた。駆け込んできた犬が差し出したタオルで手を拭ってから呉羽は佑の尻の下に何枚もタオルを敷いた。
「だい、じょうぶ、です」
痛みを必死で堪えて佑はにっこりと笑った。だがその笑みは引きつっている。呉羽は佑に阿呆、と言い放った。
「痛いに決まってんだろ。普通、分娩って言ったら陣痛が起こるもんだけど、あんたの場合は腹が一気に膨らんでるんだ。その分、痛みは倍増だよ」
厳しい顔で言ってから呉羽は急に優しい笑みを浮かべた。
「痛いなら痛いって喚いても叫んでもいいから。その方が楽ならそうしなさい」
そう言ってから呉羽は犬に湯! と命じた。慌てたように飛んで来た犬が差し出したたらいで呉羽は丁寧に指を洗い流した。
「カテーテル持ってきな!」
「はっ、はい!」
犬のうちの一人が慌ただしくその場から跳ぼうとする。だが犬は展開する寸前に転移の術を取りやめた。
「あ、あの。結界がありますので結界外に転移は……」
「ちっ。使えないねえ」
苛立たしそうに舌打ちをしてから呉羽は周囲を見回した。佑は痛みを堪えつつ大丈夫ですから、と呉羽に言おうとした。だが痛みが強すぎて声が言葉にならない。
不意に慌ただしい足音が聞こえてくる。激しい音を立ててドアを開いたのは桜だった。
「姫様! ご無事ですか!」
ものすごい勢いで奈月に駆け寄った桜がそう喚く。急に桜に手を取られた奈月は目を白黒させて頷いた。
「えっと、あの……! 桜さん、おかえりなさい」
「ただいま戻りました! 姫様、ご無事で何よりです!」
奈月の手を上下に振りながら桜が声高に言う。そこで漸く周囲の状況に気付いたのだろう。桜が怪訝そうに佑を見下ろす。
「……何事ですか? 一体」
「あの、産まれそうなんです! この方の指示に従ってください!」
そう言って奈月が呉羽を指差す。桜はそちらを向いてからもの凄い顔で呉羽を指差した。
「この女は!」
「乱闘なら後で引き受けるわ。とりあえずここで暴れるのはやめて頂戴」
白衣のポケットに手を突っ込んだ呉羽が嫌そうな顔をして言う。だが桜も奈月の言うことを無視する気はなかったのだろう。判りました、と大人しく呉羽に頷く。
「しかし困ったね。カテーテルどうするかね」
難しい顔をして呉羽が頭をかく。佑は度々襲い掛かる痛みを懸命に堪えつつ呉羽を見つめた。
「……カテーテルなら、試験的に腹部内に実装……してあります」
途切れがちに言った佑にああ、と呉羽が頷く。呉羽は白衣を開いてへそに指を入れると腹部の蓋を開けた。中を覗きこんであったあった、と笑う。呉羽はカテーテルを取り出して蓋をきっちりと閉め、佑に近づいた。透明な細い管を指先につまんで周囲に声を飛ばす。
「しっかり押さえてな!」
呉羽の号令に従って三人の犬と奈月、それに桜が佑の身体を押さえつける。佑は何事かと目を見張って慌てて周囲を見た。
実は出産シーンを小説で書いたのは初めてでしたw