※この作品はR-18です。

狩りの終焉 二部   作:伊駒辰葉

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酷いサブタイが続きますw
エロシーンはありません。


桜と乳揉み 2

「もっと、やさしくっ!」

 

 目に涙を浮かべて佑が声を張る。桜は顔をしかめて乳房から手を離した。握っていた部分が赤くなっている。桜は顔をしかめたままで呉羽の手元を見た。同じように握っているにも関わらず、呉羽の触れている佑の乳房は赤くなってはいない。何故だろう、と考えを巡らせてから桜はぽん、と手を叩いた。

 

「判りました。手先だけに力をこめるからいけないのですね」

 

 納得した、という顔で告げて桜はもう一度、佑の乳房を握った。今度は手の全体に力をかけて乳房を擦る。すると佑がまた悲鳴を上げて身を捩ろうとした。桜は鋭く舌打ちをし、逃げようとした佑の肩を膝で押さえた。

 

「逃げないでください。動かれると手がずれます」

 

 淡々と言う桜を睨んでから佑が助けを求めるような視線を呉羽に流す。すると呉羽は何故かそこで笑い始めた。

 

「凝りを解してるみたいなもんだから多少は痛いさ。そんな、握った程度で千切れる訳じゃないんだから我慢しな」

 

 そうだ、と桜は同意をこめて頷いた。涙を浮かべた目で桜を見つめ、佑が何かを言いたそうに口を開閉する。だが桜はそれに気付かず、乳房を真面目に擦った。全体をマッサージするように、と指示されて桜は何度か手の位置を変えながら乳房を握った。

 

「んっ、くうぅっ!」

 

 呻きを漏らして佑が顔をしかめる。桜は淡々と作業を続けつつ、何気なく振り返った。奈月が不安そうにこちらを向いている。やがて奈月は翠を抱えてベッドに歩み寄った。

 

「しっかしまあ、あんたも容赦ないねえ。私でもそこまでしないわ」

 

 あはは、と気楽な調子で笑って呉羽が頷く。どうやら自分に言われたらしい、と気付いて桜は不機嫌な顔になった。人が真面目に指示通りにしているというのに、何故笑われなければならないのだろう。

 

「いえ、大丈夫ですから」

 

 そう言って佑がにっこりと笑う。桜は佑の表情を見て訝りを覚えて手を止めた。それならどうして歯を食いしばる必要があるのだ。それに何故かは判らないが佑は汗をかいている気がする。部屋は空調が効いていて程よく涼しいのだから暑くて汗をかいている訳ではないだろう。それなら何故、と桜は自問した。だが理由が皆目判らない。

 

「あの、呉羽さん、まだしなきゃいけませんか?」

 

 涙の浮かんだ目で助けを求めるように佑が呉羽を見る。桜は多少の怒りを覚えて無表情になって佑の乳房をつかんだ。すると佑が焦ったように桜を見る。

 

「出始めの母乳を初乳って言うんだけどね。やっぱり赤ちゃんには飲ませた方がいいもんだしね」

 

 笑い混じりに呉羽が言うのを余所に、桜は手全体で佑の乳房を揉み始めた。指の間に覗いた乳首を余った片手で擦る。

 

「何ですか。わたくしにされるのが不服とでも!?」

 

 苛々しながら言って桜はぎゅっ、と乳首をつねった。佑が悲鳴を上げて身を捩りかける。だが佑の動きは桜の膝に抑えられてしまった。

 

「いえ、続けてください」

 

 半泣きの態で佑が言う。そうでしょう、とおう揚に頷いて桜はまじまじと佑の乳房を見た。赤くなった乳房を握って乳首を乳輪の縁から先端に向かって擦る。すると唐突に桜の顔に生温かいものがかかった。驚きに目をしばたたいた桜の顔に再び乳白色のものが散る。

 

「おお、出た出た。やるじゃないの、あんた」

 

 呑気に言った呉羽を見やって桜は顔を上げた。

 

「あの、佑さん! さっそく翠さんに!」

 

 慌てたように言って奈月が佑に翠を差し出す。翠はまだ産着が届いていないためにバスタオルにくるまれている。佑はのろのろと身を起こすと腕に翠を抱いた。こうするんだよ、と呉羽に翠の抱き位置を調整されたところで佑がふと微笑む。翠は乳の匂いでもかぎ付けたのか、しきりに佑の左の乳房に顔を擦り付けている。小さな薄い唇が何かを探し求めるように動く。

 

「んっ」

 

 翠が佑の乳首を探し当てて夢中で吸い付く。それまでの何かを堪えるような表情が嘘のように佑は穏やかな顔で微笑んだ。桜は顔にかかった母乳をタオルで拭き取りつつ翠に見入っていた。

 

 龍神にはかつて母親など存在せず、世界が自然に生み出すと言われていた。だがこうして目の前で翠は佑の乳に吸い付いている。その様は時代の変遷を何よりもはっきりと物語っているように思えた。

 

 ふと、桜は隣に立つ奈月に目をやった。奈月は嬉しそうに翠の乳を吸う様を見てはいるが、その目は何故か寂しそうに見える。

 

「桜さん、お疲れさまでした」

「いえ。わたくしは別に」

 

 奈月の声にそう応えて桜は顔を曇らせた。まだ水輝は屋敷に戻ってはいない。奈月は先の礎の件は保留にしてはいるが、きっと今も気が気ではないだろう。早く解決すればいいが、と心の中で呟いて桜は歩き出した。顔を洗ってきます、と断って部屋を出る。

 

「夕食の準備が整いました。いかがなさいますか」

 

 部屋を出たところでふと声をかけられる。どうやら報せに来ようとしていたらしい。いつもながら行儀のいい執事の声に頷いて桜は食事は佑の部屋に人数分運ぶように、と頼んだ。すると執事が承りました、と深々と頭を下げる。

 

 桜は踵を返した執事をふと呼び止めた。不思議そうに執事が振り返る。

 

「ちょうどいいですね。少しあなたに話があります」

「わたくしに、ですか?」

 

 どのようなご用件でしょう。決まり文句のように行儀よく応えた執事についてくるように言って桜は歩き出した。執事は大人しく桜についてくる。途中、執事は桜に断りをいれてメイドを一人呼び止めた。食事の用意の件をメイドに伝えた執事が失礼しました、と桜に言う。桜は気にせず自分の部屋に向かった。

 

 桜は部屋に入ってドアを閉めたところで振り返った。年の頃は二十そこそこといったところだろう。まだ年若い執事は困惑顔で佇んでいる。

 

「万が一のことがありますから」

 

 どうしてそんな気になったのかは桜自身も判らなかった。だが桜はそう告げて手の中に力を呼んだ。屋敷に龍神や使い魔の類が多くいるからだろう。執事は桜の人を超えた能力を見ても驚いたりはしない。桜は手の中に呼んだ力を一瞬で形に変えた。

 

「これを」

 

 扇を一揃い現した桜はそれを執事に差し出した。戸惑ったような顔をして執事が桜と扇とを見比べる。

 

「あの、これは?」

「扇です。見て判りませんか」

 

 執事の質問に愛想の欠片もなく応えて桜は早く取りなさい、と命じた。曖昧な返事をして執事が扇を受け取る。

 

 破邪の緋扇と呼ばれる一対の扇は、ただの人間が持ったところで何の力も持たないものだ。とある一族に伝えられていたその扇は、結局は継ぎ手が居なくなってしまった。使い手のいない道具はやがて立城の許に流れた。立城はそれを桜に託し、桜は大切な預かり物としてずっと扇を隠し持っていたのだ。

 

 いま、魔の力は日に日に強くなり、力の大小を問わず多くの魔が生まれてきている。もしかしたらまたこの扇も日の目を見ることがあるかも知れない、と桜は隠し場所から扇を持ち出したのだ。

 

「それは大切な品ですが一時あなたに預けます」

 

 この執事が順に接触したのはわかっている。執事の纏う気の中に、ごく僅かにではあるが紅の色が混ざっていることを読み取って桜はそう告げた。戸惑いの表情で扇を受け取った執事がはあ、と曖昧に返答する。

 

「あなたがあの紅の王とどんな関係にあるのかは存じませんし、わたくしには興味もありません。ですが関わった以上、己の身程度は守ってみせなさい」

 

 ぴくりと執事が眉を動かす。だが桜は素知らぬ顔で歩き出した。




書いたのがかなり昔なので、今は違うかも知れません。
違ってたらごめんなさい。
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