※この作品はR-18です。

狩りの終焉 二部   作:伊駒辰葉

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由梨佳から渡されたビデオを観ながら悶絶w
エロシーンはありません。


優一郎の夢と現実

 慌ただしく学校の地下施設に戻ったところで優一郎は自分の部屋に駆け込んだ。急いで由梨佳から預かったビデオディスクを再生デッキに放り込む。大きなモニタ画面に最初に映し出されたのは真っ白な繭だった。これは恐らく、目覚めた時に半壊していたあの繭だろう。優一郎は苛々しつつビデオを早送りした。

 

 ふと、画面が変わる。そこで優一郎はビデオを通常再生に戻した。だがあくまでも画面は白い光に覆われている。が、その中に二人の人影が現れる。それを見止めた優一郎はぎょっとして目を見張った。椅子に力なく腰掛けて机に肘杖をつく。優一郎は恥ずかしさに赤くなりつつも画面からは目を逸らさなかった。どこにヒントが隠れているか判らないからだ。

 

 画面の中では優一郎が水輝に抱かれていた。飽きもせず睦み合う二人の姿を一分ほど眺めたところで優一郎は耐え切れなくなって頭をかきむしった。低く呻きながらビデオのリモコンを操作する。音声を絞ったところで優一郎は疲れたため息を吐いた。

 

 恥ずかしさに耐え切れず、優一郎はビデオを早送りにした。気になる画面が出たところで止めればいいのだ。そう自分に言い聞かせて優一郎は画面を睨むように見た。艶かしい格好で抱かれる自分の姿など、正直見ても恥ずかしいだけだ。優一郎は苛々しながら画面を送り続けた。裸で抱き合うならまだしも、途中で何故か自分が裸体にエプロン一枚着けた格好になっていた。優一郎は呻きながら敵のようにリモコンのボタンを押し続けた。

 

 不意に画面が切り替わる。そこで優一郎はリモコンを慌てて操作した。いつの間にか画面の中の優一郎が女性になっている。森の中に佇んでいる自分を優一郎はぼんやりと眺めた。通常再生に戻された画面の中で優一郎が木洩れ日に手を差し伸べている。優一郎はじっとそんな自分を見てから目を移した。

 

 白い光の褥に座った水輝が暗い顔をしている。その目はじっと画面の中の優一郎を追っている。見慣れない水輝の表情に優一郎は顔を曇らせた。

 

「水輝さん……」

 

 切ないものが胸にこみ上げてきて優一郎は思わずそう呟いた。不思議なことに同じタイミングで画面の中の優一郎が水輝を呼ぶ。

 

 唐突に切り替わった画面を見た優一郎は思わず椅子を蹴倒して立ち上がった。広々とした寝室のベッドで優一郎が水輝に馬乗りになっている。優一郎は慌ててビデオのボリュームを上げた。

 

『また、わたしをからかって遊んでるの? まあいいわ。わたしは吉良瀬佑。あなたのフィ、ア、ン、セよ』

 

 画面の中でにっこりと笑った優一郎……いや佑が言う。それを見ていた優一郎の手からリモコンが滑り落ちた。はしゃいだ声を上げる画面の中の自分を呆然と見つめる。

 

 画面の中には水輝と佑以外の誰もいない。家の一室らしいが、その部屋に優一郎自身は見覚えがなかった。柔らかな日の光の差し込む窓にはレースのカーテンがかけられている。窓辺に活けられているのはカーネーションだ。広いベッドの上では二人が交わり始めている。優一郎は呆然としたまま画面を見つめ、椅子にへたり込んだ。

 

 これは由梨佳が見た夢だと由梨佳自身は言っていた。多少の誤差はあるかも知れないが、恐らくこれは自分が見ていた夢なのではないだろうか。水輝と幸せな家庭を築いたという夢はやけにはっきりと覚えている。優一郎はのろのろと頭を上げて机に力なく伏せた。

 

 画面の中に多輝の姿はない。斎姫もいない。居るのは水輝と自分だけだ。楽しそうに笑う自分の姿を優一郎は横目に見た。自分が夢の中に囚われていたのは判る。だが本当にあれはただの夢だったのだろうか。もしかしたら自分の望みなのではないか。そんなことまで考えてしまう。

 

 画面の中の佑が本当に幸せそうに微笑んでいるからだ。優一郎はため息を吐いて身体を起こした。リモコンを操作して画面を早送りにする。目まぐるしく画面が動き、夜が更けては朝になる。それを何度か繰り返した後、画面に唐突に見知った姿が見えた。優一郎はそこでビデオを通常再生に戻した。

 

 家の玄関に順がいる。血だらけの格好をした順を優一郎は凝視した。画面の中の水輝と佑が何事かやり取りをし、水輝が順と共に玄関から出て行く。明るく手を振った佑がキッチンに戻る。優一郎は画面をじっと見つめて椅子に寄りかかった。

 

 キッチンでしばらくは佑は機嫌よく料理をしていた。だが空が曇り、雨が降り出す頃になると佑は不安そうに何度も玄関まで出てはまたキッチンに戻る。恐らく水輝の帰りが遅いことを心配しているのだろう。優一郎は聞かなくても佑の心境が理解出来る気がした。

 

 出来上がった冷製パスタをテーブルに乗せて佑が肘杖をついてため息をつく。椅子に置き去りにされたバイオリンを切なそうに見つめ、またテーブルに目を戻す。折角、冷やされていたパスタの器の表面に汗が浮かび、雫になって硝子の器を滑り落ちる。ぼんやりとそれを見つめて、佑が窓を振り返る。

 

 外は土砂降りになっている。雨と雷の音を聞きながら優一郎はそっと息を吐いた。恐らく水輝は戻ってこない。そんな気がした。何故なら、夢から覚めた自分がここにいるからだ。

 

 画面が切り替わる。優一郎は目を見張って慌てて立ち上がった。ビデオだと判っているのに思わずモニタに駆け寄ってしまう。紅の光に撃たれた水輝がどこかに落ちていく。その水輝を追いかけるように順が光の穴に身を躍らせる。順は光の空洞の中で水輝の胸倉をつかむと、力に乗せて空へと打ち上げた。脱力した水輝が今度は紅の光の中を凄まじい速度で昇っていく。その代わりに順は光の空洞を落ちていった。

 

 そこで唐突に画面は途切れた。真っ白になったモニタを見つめ、優一郎は愕然と目を見張った。

 

「何処だ!?」

 

 そう叫んで優一郎は慌ただしくビデオを巻き戻そうとした。だが何故か画面には何も映し出されない。どれだけ巻き戻しても真っ白なままだ。優一郎は驚愕に目を見開いてリモコンを握った手を机に叩きつけた。




待っても帰ってこない、というのがトラウマ化(するような気がする)
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