色々と勘違いとかしているのですれ違いまくりです。
エロシーンはありません。
手を伸ばしてドアをノックしたところで水輝は顔を曇らせた。中から答えたのは佑だ。やはり佑には顔を見せておくべきだろう、と考えて部屋を訪ねてはみたものの、いざとなると決心が揺らぐ。再度、どうぞと促されて水輝は仕方なくドアを静かに開いた。
深夜を過ぎ、明け方近いというのに佑の部屋には明かりが灯っていた。部屋にいるのは佑だけだ。奈月の姿がないことにほっとしつつ水輝は佑の部屋に入った。ベッドに積んだ布団に寄りかかって本を読んでいた佑が目を上げて唖然とした顔になる。自分の姿に驚いているのだ、と自覚しつつ水輝は黙ってベッドに近づいた。
「悪かったな」
そっと佑から目を逸らして水輝はぼそりと呟くように詫びた。しばし唖然としたように水輝を見てから佑が静かに本を閉じる。
「水輝さん! どうして、そんな子供みたいな格好に!?」
咎めるような佑の口調に水輝は思わず顔をしかめた。ばつの悪さにそっぽを向いた水輝はぼそぼそと告げた。
「ちょっと力を消費しすぎて」
だから謝ってるだろう、と機嫌悪く言ってから水輝は俯いた。
「結界っていうものは馬鹿みたいに力を注ぎ込めば強くなるってものでは無いんです」
深々とため息を吐いた佑をちらりと見てから水輝は余所を向いた。判ってる、とぼそりと言ってから水輝は顔をしかめた。それ以前に力を消耗していた上、あんな無茶な力を使って結界を作ったのはわざとだ。だが水輝はその説明をしなかった。ごめん、と再度小声で詫びる。
「それから、奈月さんから話を聞きました。彼女に我慢してきたけど、もう限界だ、邪魔だ、みたいな発言をしたと言うのは本当ですか?」
ため息混じりに佑が告げる。水輝はぴくりと眉を上げて無言で佑を見た。佑は珍しく険しい顔をしている。もしかしたら佑は水輝を問い質すために起きていたのかも知れない。そうでなければ出産の後だ。ゆっくりと休んでいても不思議はないのだ。
「……それがお前に何か関係あるのか?」
奈月とどんな会話をしたのかを思い出しながら水輝は機嫌悪く言った。すると佑が水輝を睨むように見る。
「なるほど、僕には関係ないから何も言うなと、そうおっしゃりたいわけですか?」
そう言って佑は笑った。だがその目は少しも笑ってない。水輝はため息を吐いて呻くように答えた。
「いや、言うのは構わない。お前にはその権利があるからな」
水輝は深々とため息を吐いて頭をかいた。まさかここで問い詰められることになるとは思わなかった。
「それでは、その権利とやらを行使させていただきますね」
にっこりと微笑んで佑がさらりと言葉を継ぐ。
「水輝さんは言葉に対する配慮が、特に自らの気持ちを表現する場合に欠けていると思います」
「あぁ?」
不機嫌に応えて水輝は眉間に皺を寄せた。だが佑は真っ直ぐに水輝を見て微笑んでいる。水輝はしばし佑を見てから嫌そうに顔をしかめた。
「だからなんだ」
ぶっきらぼうに告げた水輝を佑は真っ直ぐに見つめている。その目で見られると何故か居たたまれなくなる。水輝は逃れるようにふい、と余所を向いた。
「発された言葉は感情までも伝えてくれる訳ではないんですよ? そのうえ、水輝さんは強固な障壁を築いていらっしゃいますから」
水輝さんが何を考えているか、言葉から予測するしかないわけです。そう続けた佑を見もせずに水輝はそっけなくふうん、と応えた。確かに思惟を他者に読ませないように慎重に防壁は築いているつもりだ。が、そうでなければ周囲に悪影響を及ぼしかねないと思うからだ。水輝は苛々しながらそれで、と佑を促した。
「もちろん言葉に想いを込める事も可能です。奈月さんが良く水輝さんに対して、愛してますとか仰ってますけどあの言葉には想いがつまっています」
僕が言うまで無くわかってると思いますけど。佑が少し声を落としてそう続ける。水輝はぴくりと眉を上げて腕組みをした。そっぽを向いているために表情は伺えないが、佑は恐らく変わらず見つめているのだろう。
「でもおれは要らないんだそうだ」
静かな声で水輝はそう告げた。だからこうしてせめて顔を出しているのだ。水輝は苛立ちを覚えつつゆらりと動いて佑を見た。
「前置きはこれくらいにしましょう。奈月さんは水輝さんの言い付け、独立した存在として自ら立つこと、を果たせなかったために、水輝さんから邪魔だと言われたと、思い込んでいます」
すらすらと告げた佑を見つめて水輝は絶句した。漸く先ほどの佑の質問の意味が理解出来た。水輝のあの呟きを奈月はしっかりと聞き取っていたのだろう。そのことに気付いて水輝は戸惑った。
「渚姉さまだけでたくさんだ。そう仰っていたと、だから、自分は礎になって、水輝さんに少しでも役にたちたいと奈月さんは笑って仰ってました」
「いや、渚が邪魔だったのは事実だ」
淡々と語る佑の言葉を遮って水輝はそう言葉を挟んだ。すると佑がひくりと頬を引きつらせて何かを堪えるようにシーツを握り締める。だが辛うじてまだ佑の顔には微笑みと呼べそうなものが浮かんではいる。
もしかして。水輝はそんな佑の様子を見つめて胸の奥で呟いた。
もしかしてこいつ、もの凄く怒ってるのか? そんな考えに水輝が至った時、佑は言葉を更に継いだ。
「奈月さんに、いったいなんて仰ったんですか?」
「別におれは……」
特に変わったことを言ったつもりはない。だが奈月が斬ってくれと頼んだ時に拒んだのは事実だ。結局、奈月も同じ事を言うのだと思ったのも確かだ。水輝はぼそぼそと答えて額を押さえた。嫌な記憶を意図的に胸の奥に沈める。
佑は考えるように目を閉じてしばし黙り込んだ。やがて目を開いた後、佑が真っ直ぐに水輝を見つめる。
ちなみにこの時点で水輝は子供の姿になってます。