※この作品はR-18です。

狩りの終焉 二部   作:伊駒辰葉

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酷いエピタイですが相応しいかと……w
エロシーンはありません。


水輝って結局は甲斐性なしなのだろうかw 2

「わたしはもう、水輝さんだけを想っていればいい人形ではありません。それを教えてくださったのは茜さんや文さん、そして水輝さんのはずです」

 

 ぼそりと告げた佑の言葉に水輝はぴくりと眉を上げた。どうやら佑は奈月の発した言葉を時間差を置いて拾っているらしい。

 

「言葉は僕の管轄ですからね。本来ならプライバシーに関わりますからこんな真似はしないんですが」

 

 そう告げた佑は険しい顔をしていた。水輝は唇を引き結んで黙り込んだ。そんな水輝を睨むように佑が見る。

 

「これでおれは相当に我慢してきたつもりだ。だがそれでも迷いは残ってるんだろう。絶対に邪魔になると判っていても渚を殺せなかったりした訳だしな」

 

 まるで実際に見てきたかのように佑が水輝の言ったことを再現する。口調まで似せてみせた佑を見つめて水輝は目を細めた。確かにそう言った記憶はある。

 

「先ほどの奈月さんの言葉に対して、水輝さんは答えなかったんですね。そして、独り言をぽつりと洩らした。ただし、奈月さんに聞こえるような声で」

「愚痴だ」

 

 険しい顔で言った佑に水輝はぼそりと言葉を挟んだ。すると佑がゆらりと顔を動かして水輝を見据える。水輝はしかめ面をして頭をかいた。

 

「だから、愚痴だ」

「だから! 僕はわかっていますってば! だけど、奈月さんに知る術がありますか?」

「聞かせるつもりはなかったんだ」

 

 

 苛々とした佑の言葉に水輝は仏頂面で呟いた。

 

「ええ。水輝さんはそういうおつもりだったんでしょう? だけど、奈月さんには、そんなことは、わかりませんよね?」

 

 だけど、という言葉から妙に強調して佑が言う。今は黙れということだろうか。そう理解して水輝は頷いた。

 

「奈月さんは、自分に対する返答だと判断したんです。誤解した奈月さんが悪いのでしょうかね?」

 

 シーツを強く握りしめて佑が静かに問う。水輝はしばし黙ってから誤解、と呟いた。

 

「水輝さん。わたしを討ってください。わたしは水輝さんの枷になりたくはありません。それに、わたしの持つ力を全て使えば、世界の歪みを解くことができるはずです。夜が明ければ、朝が来るんです」

 

 何かを堪えるような表情で額を押さえつつ佑が言う。水輝は唇を引き結んで胸を手で押さえた。佑があの時の奈月の言葉を再現しているのだと判っても胸が痛む。

 

「水輝さんの一人言を自分への返答だと解した奈月さんは、水輝さんが自分に対して我慢を重ねてきている。そして、渚さんを引き合いに出して、水輝さんが自分を殺すべきかどうか迷っている。そう誤解されたんでしょうね」

 

 ため息を吐いて佑が言う。水輝は待て、と呟いて手を上げた。

 

「何でおれが奈月を殺したいと思うと思うんだ?」

 

 水輝は訝りに眉を寄せてそう言った。すると険しい顔で佑が水輝を睨む。

 

「水輝さんが、そう告げられたからじゃありませんか! まず、奈月さんの問いかけに答えなかった時点で認識がずれてるんです。そして、あの独り言。思いつめていた奈月さんが、誤解するのも無理はないと思いますが?」

 

 声を荒らげて言った佑を驚きの目で見つめて水輝は瞬きをした。確かにあの時、奈月の問には答えなかった。だがそれは深い意図があった訳ではなく、特に答えを必要としない言葉だと判断したからだ。返事の要らない言葉に何故返答しなければならないのだろう。水輝は考えを巡らせながら難しい顔をした。

 

「問題は返事をしなかった事ではなく、独り言を返事だと誤解させたことにあります」

「おれが悪いのか?」

 

 納得出来ないものを感じて水輝は呻くように言った。すると途端に佑が眉を吊り上げる。

 

「水輝さんの考え方次第ですね。誤解した奈月さんが悪いと、そういう考え方も理不尽ではないですね」

 

 そう言って佑が笑ってみせる。だが目が笑っていない分、その笑みはとても冷たく見える。水輝は顔をしかめて目を逸らした。

 

「誰もそんなことは言ってないだろう」

 

 だがそもそも何故、そんな誤解が発生するのだろう。そう考えて水輝は首を傾げた。

 

「それに、僕にはさっき、奈月さんを殺すなんて考えることなど有り得ないとおっしゃいましたけど……」

 

 そう言って佑が深く息を吸う。

 

「断る。おれの力はおれが好きな時に好きなように使うためのものだ」

 

 あの時の水輝の言葉を再現した佑は厳しい表情をしていた。水輝はああ、と佑に頷いてみせた。確かにそう言った覚えはある。

 

「事実だろう」

 

 水輝は眉を寄せてきっぱりと言い切った。

 

「ええ。事実ですね。でも、おれが奈月を撃つなんてそんな事あるわけないとか、他にも言いようがあったと思うんですが。この言葉の選び方だと……」

 

 そこで一端、言葉を切って佑が言う。

 

「手をかける価値も無いから、自分の身は自分で始末しろって言っているように聞こえますよね?」

「斬れと言われて他に言いようがあるか?」

 

 しかめ面で水輝が言うと佑がうろんな眼差しをする。一体、何がいけないと言うのだろう。

 

「その後、水輝さんと奈月さんは主龍神のあり方について口論になりましたよね? 水輝さんは奈月さんが礎になろうとしていることに気付いてらっしゃいましたよね?」

「ああ」

 

 あの時の奈月の口ぶりから連想されるものはそれだけだった。その時のことを思い出して水輝は頷いた。だが礎になるということは、世界に食われるという意味に等しい。奈月にそんな真似をさせるくらいなら、せめて自分が先に礎になった方がいい。

 

「お前が選んだ道だ。おれが言うことは何もない」

 

 その時の水輝の答えを佑が口に乗せる。水輝は仏頂面でそっぽを向いた。

 

「……だから他に言いようがあるか?」

 

 止めたところで決心してしまったのなら止めようがない。それに奈月がそうすると決めたということは、自分も共に世界に食われるということだ。だがせめて奈月が滅んでいく様は見たくなかった。水輝は不快感に顔を歪めて唇を噛んだ。

 

「水輝さん、それでもわたしは、誰よりも、水輝さんを、愛しています」

 

 佑が静かにそう告げる。水輝はちらりと佑を見てからため息を吐いた。確かにあの時、奈月はそう口にした。その言葉にはとても大切な奈月の気持ちがこめられていることも判った。

 

「なのに、なぜ捨てられたのは自分だとか、そう思い込んでるんですか?」

「斬れと言われたから」

 

 ぽつりと呟いて水輝は力なく笑った。横目に見た佑は何かを堪えるように顔を強張らせている。

 

「だから、奈月さんは、水輝さんが奈月さんを殺したがってると、そう勘違いしたんです」

 

 呻くように言って佑が額とこめかみを押さえる。水輝はため息を吐いて肩を竦めた。

 

「要するに誤解だと言いたいんだな? おれの言葉が足りない故の誤解だって」

 

 だが間違った返答をしたつもりは全くない。水輝は仏頂面でそう答えた。

 

「その誤解で奈月さんが既に命を投げ出していたとしても、間違ってないと仰るおつもりですか?」

「だから」

 

 水輝は苛々と額を押さえて呻くように答えた。

 

「だからおれが先に礎になろうとしてるんだよ!」

 

 今のこの状態なら世界に食われるのも早いだろう。だが透に邪魔をされたお陰で随分と遅くなってしまった。




佑にかかれば交わした言葉は実は筒抜けですw
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