※この作品はR-18です。

狩りの終焉 二部   作:伊駒辰葉

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ここから終章です。
最後の部分が1,000字切っているので、エピソードのラストにくっつけます。
エロシーンはありません。


海辺でみんなと一緒に 1

「うははははは! 海ー!」

 

 アロハシャツにサングラス、水着という格好でパラソルを肩に担いだ順が嬉しげに叫んで駆け出す。真っ先に海水浴場に駆け出した順を呆れた顔で見送ってから桜はため息を吐いた。

 

 あの男は、とぼやいた呉羽が仕方なさそうに置き去りにされた車の運転席に乗り込む。駐車場に入れてくださいよ、という困り顔の男にごめんなさいと詫びているのは佑と奈月だ。呉羽が車を駐車場に入れ始めたところで皆は揃って歩き出した。

 

 海水浴に行こうよ。そう言い出した張本人の順は明るい日差しの降り注ぐ砂浜に早速パラソルを立てている。遠くからのおーい、という呼び声に手を振り返した佑が困ったように笑う。

 

「どうでもいいが、ヒューマノイドは海に浸かって大丈夫なのか?」

 

 不機嫌極まりない顔で水輝がぼそぼそと言う。奈月の手が翠で塞がっているために、今日もまた水輝は佑に手を引かれている。周囲の海水浴客に聞こえない程度に声を落とした水輝の質問に、傍を歩いていた多輝と由梨佳がどうなんだろうと顔を見合わせる。

 

「呉羽さんと宇田川さんは控えてください」

「えっ、私もかい?」

 

 車を駐車場に入れて後ろから追いついてきた呉羽が驚いたように言う。ちなみに呉羽は従者の犬を常に従えているためにやたらと目立つ。冥界の犬もそうだが、この呉羽という女はやはり龍神の例に漏れず、かなりの美人なのだ。

 

「うわ! よせ、阿呆!」

 

 水輝の金切り声に桜は我に返った。いつの間にか呉羽が水輝を肩車している。嫌だ下ろせと喚く水輝を呆れた顔で見上げてから桜はため息を吐いた。相変わらずの阿呆ぶりですね、と思ったままに言うと水輝が桜を睨む。

 

 克人の襲撃を受けたあの一件の後、水輝は屋敷に戻ってきた。ちゃっかりと佑に仲介をしてもらった水輝はどうやら奈月と上手く仲直りしたらしい。いや、元々仲違いにすらなっていない、ばかばかしい誤解から発生したすれ違いだったのだ。眠っていた桜が目を覚ました朝、水輝はまんまと奈月の胸に抱かれてすやすやと眠っていた。あんまりむかついたのでベッドから水輝だけ蹴り落としてやったのだが、それでも桜の気は晴れなかった。

 

「それにしてもよくこんなところ見つけたなあ」

 

 呉羽のサングラスを奪い取って頭に乗せた水輝がのんびりと言う。呉羽はサングラスを奪われたにも関わらず妙に機嫌がいい。

 

「この周辺の地域は少し前までは瘴気で使い物になりませんでしたから」

 

 にっこりと笑って佑が言う。すると呉羽に肩車された水輝はうっ、と詰まった。翠を抱く奈月はにこにこと微笑んでいる。

 

「しっかしよぉ。こんなに遠いなら、何もわざわざ車で来なくてもさあ」

 

 不服そうにぼやいたのは多輝だ。確かにこのメンバーなら転移した方が断然速かっただろう。同意をこめて桜はうんうん、と頷いてみせた。何しろ順が唐突に海に行こうと言い出してから随分と騒いだのだ。全員が乗れる車、となるとマイクロバスしかなく、それをわざわざ佑はこの日のために買ってしまったのだ。

 

「安全宣言とかそのあたりのことも関係していますからね。午後から二時間ほどテレビクルーも入りますから注意してください」

「げー。またテレビかよ」

 

 うんざりした顔でうなだれて水輝がぼやく。相当、前回の婚約発表の件で懲りているらしい。たかが人の世の慣わしなど、と桜はやっぱり前回と同じように呟いた。すると水輝はこれだからお子様は、と嫌そうに言う。桜はつん、と横を向いてどちらがですかときっちり応酬した。

 

 海水浴場の客はさほど多くはない。恐らく口伝えの噂か何かでこの海岸のことを知った連中が遊びに来ているのだろう。心地のいい木立を抜けると真っ白な砂浜が目の前に広がる。海は驚くほど透き通っていて、ここがついこの間まで瘴気に満たされていた場所だとは到底思えないほどすがすがしい景色だ。

 

「桜さん、わたしたちも行きましょう」

 

 嬉しそうな笑みを浮かべて奈月が翠を佑に手渡す。駆け出した奈月を慌てて桜は追い始めた。早くきなよ、と笑う順のいる場所に駆け寄って桜は抱えていた荷物を降ろした。何しろただの海水浴の筈が途中でキャンプになってしまったため、やたらと荷物が多いのだ。桜が持ちきれなかった分は多輝や由梨佳、それに冥界の犬たちが分けて持っている。

 

 後ろから歩いて連中が揃った所で順がうーん、と唇に手を当てて天を仰ぐ。それから順は嬉しそうな笑いを浮かべてぱちん、と指を鳴らした。

 

「女性陣の着替え用!」

「あー!」

 

 一斉に声を上げた残りのメンバーを桜は訝りをこめて見回した。順が力を使ってあっさりと小さなテントを砂浜に建ててしまったのだ。瞬く間に立ったテントを指差していた水輝が呉羽の肩から飛び降りて砂浜を蹴る。高く飛び上がった水輝に頭を叩かれて順は情けない声を上げた。

 

「痛いよう!」

「ばっか、てめえ! 何てことしやがる!」

 

 桜は眉を寄せて周囲を見回した。一体、彼らは何を気にしているのだろう。

 

「茜さん、一般の方もいらっしゃいますから、気をつけてくださいね」

 

 にっこりと笑みを浮かべて佑が言う。すると順は唇を尖らせて水輝に殴られたところを撫でた。

 

「そりゃあさあ。オレだってオンナノコが目の前で着替えてくれる方が嬉しいよ? だけどさあ。やっぱさあ。まずいっしょ、それは」

「論点がずれてる!」

 

 水輝が叫べば奈月がまあまあ、と宥めに入る。呉羽が呆れたような顔で順を睨みつけ、多輝と由梨佳は困った奴、とでも言いたそうに順を見る。




仲良さげなラストになりましたw
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