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「まず、質問よ。正直に答えなさい。あなたは水輝さんが好き?」
優一郎は目を見張って息を飲んだ。祐は真っ直ぐに優一郎を見つめている。怒りはまだありありと顔に出てはいるが、真剣な眼差しだ。
「嫌いなわけない」
「あたしは好きかどうか、聞いてるの! 返答は二択!」
即座に祐が怒鳴り返す。優一郎はしばし迷ってからため息を吐いた。
「好き、だけど」
一番は多輝だから。そう続けようとしたところで優一郎の頭にふと渚の言葉が過ぎった。思わず口を噤んだ優一郎を祐が厳しく睨む。
「好きなんでしょ? 愛してるんでしょ? はいかいいえで返事なさい」
「はっ、はい」
思わず答えてしまってから優一郎は慌てて口を手で覆った。ふん、と祐が優一郎のシャツから手を離す。優一郎は戸惑いながら口から手を離した。屈めていた腰を伸ばしてぼんやりと祐を見る。祐は横を向いて腕組みをしている。
「君だって、水輝さんのことが好きなんだろう? それも君は水輝さんだけを想ってる。そうだろう?」
それは間近に見ていた優一郎もよく判っている。祐はあの時までずっと自分の中にいたのだ。切り離されるまでのことを思い出して優一郎は思わず俯いた。
「そうよ。だけどそのことに何の意味があるの? 水輝さんが求めているのはあなたなのよ」
そう言って祐が横目に優一郎を見ながら嗤う。優一郎はのろのろと顔を上げてそんな祐を見つめた。
「水輝さんはあなたを求めてる。あなたも水輝さんを求めてる。躊躇うことは何もないわよね? そうよね?」
流れるような口調で言いながら祐が優一郎に向き直る。胸を逸らし気味に立つ祐につられて優一郎も背筋を伸ばした。
「水輝さんは君のことだって、気にかけているはずだ。だからこそ僕は君を封じようとあのベッドに君を捕えさせた。僕は君に償わなければならない」
祐の機体ならあのベッドに乗せられただけで逃げられなくなることは判っていた。渚がかつて使っていた機体は設定次第では自慰をずっと続けさせることも可能だ。そしてあのベッドがあれば、メンテナンス等の手間をわざわざかける必要がないことも優一郎は知っていたのだ。
「そうね。確かに償ってもらう必要があるわね。というわけで、あたしの言うとおりに、誓約を結んで欲しいの」
祐がくすりと笑う。優一郎はそっとため息を吐いて祐に向き直った。
「なんなりと。君のほうが水輝さんに相応しいと僕は思う。だから……」
尻すぼみに告げて優一郎は俯いた。何故か目の前に立つ祐の気配が一際強くなる。怪訝に思いながら顔を上げたところで優一郎は眉を寄せた。何故か祐が怒った顔をしているのだ。
「それでは、一つ目。水輝さんを使いこなしてみせなさい。パートナーとして、そして、恋人として、水輝さんを支えなさい。違約した場合のペナルティは、あたしの存在が消え去るということで」
不敵な表情で言った祐を優一郎は唖然として見つめた。何事かを優一郎が言う前に祐が再び口を開く。
「そして、もう一つ。まあ、たいして印象にも残っていないと思うけど、水輝さんの記憶からあたしに関することを消し去ってほしいの。というわけで、さっさと水輝さんの下に行きなさい!」
そう言って祐がびしりと部屋のドアを指差す。優一郎は慌ただしく祐と指差されたドアとを見比べた。うろたえる優一郎の背後に祐が素早く回る。何事かと身構えた優一郎の背中を祐が問答無用で蹴りつけた。つんのめって数歩出たところで優一郎は振り返った。
「二つ目の誓約を違えた時のペナルティも、あたしの存在の消失よ。もし、水輝さんがベッドでオナニーしてるあたしの傍に現れたら、違約だということで」
「君はどうして! 水輝さんが好きなんだろう? 僕よりもずっと君のほうが水輝さんを想っているし、現に、水輝さんの役にたっているじゃないか! 僕なんか、足手まといになるばかりで……」
そう言いながら優一郎は祐に向き直った。その瞬間、後頭部をめいっぱい何かに殴られる。何事かと焦って振り返った優一郎はそこに渚の姿を見つけてぎょっとした。一体、いつの間に入ってきたのだろう。しかも何故か渚の服はあちこちが血で汚れている。だが不思議と渚自身は怪我はしていないらしい。
「まだうじうじしてるの!? いいかげんにしないと今度から蛆虫って呼ぶわ!」
祐の怒りのオーラを上回るもの凄い威圧感を放ちながら渚が言う。
「水輝さんが求めているのはあなたであってあたしじゃないわ。何度、言わせる気?」
「あら、いいわよ別に。欲しくないんなら欲しくないでいいわよ?」
祐が言えば渚が怒りに目を吊り上げたままで冷ややかに言う。二人に責められる格好になった優一郎は自然と壁際に追い詰められた。
「わかった。誓おう」
真剣な表情で優一郎は祐に言った。するとそうだ、と渚が手を打つ。
祐は優一郎に対しては強いんですけどね……。