※この作品はR-18です。

狩りの終焉 二部   作:伊駒辰葉

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エピタイ通りです!!www
エロシーンはありません。


初恋みたいな感じで砂糖を吐きそう(作者が) 2

「あ、あのっ! わたし、水輝さんを好きになって、いいですか?」

「好きになるのは自由だしな」

 

 水輝はそう答えて思わず吹き出した。声を上げて笑い出した水輝を奈月が戸惑いの目で見る。だがすぐに奈月は両手をこぶしの形に握って声を張り上げた。

 

「わたし、水輝さんのこと好きです。ずっと、ずっと大好きです!」

「絶叫するな、絶叫を」

 

 水輝は遠慮なく奈月を笑い飛ばして腹を押さえた。この天然ぶりに最初に見た時から惹かれていたのだ。面白いなあ、と笑って水輝は奈月の頭をいつものように撫でた。

 

「あの、それからえっと。その、あの」

 

 急に口ごもって奈月がスカートの裾を指の間にもてあそぶ。真っ赤になってちらちらと水輝を見ては遠慮がちに目を逸らす。水輝はにやにやと笑いながら黙ってそんな奈月を眺めていた。

 

「その、これからも、あの……」

 

 耳まで赤くなって奈月が顔を伏せる。水輝は笑って言いたいことがあるなら言えよ、と奈月を促した。何事かを奈月が口の中で言う。だが水輝は聞こえないぞ、とくすくすと笑った。……事実、聞こえなかったのだ。

 

 優一郎の無くした聴力の補完はした。が、幾ら治療の力を用いても完全に欠けたものを取り戻すことは出来ない。水輝の聴力はほぼ半分以下にまで落ちているのだ。しかも左の耳の方は全く聞こえない。

 

「水輝さん……!?」

 

 驚いたように奈月が顔を上げる。

 

「こら。言いたいことがあるんじゃないのか」

 

 水輝は笑いながら奈月を促した。リンクは切っていても奈月には標としての力がある。どうやらこちらの状態を読まれたらしい。そう理解してはいても水輝は知らん顔を通した。

 

「水輝さん、わたしを抱いてくださいっ!」

 

 それまでの照れを払拭し、勢いよく奈月が言う。水輝は身を乗り出した奈月を困ったように笑って見た。

 

「抱いても治らないぞ、これは。それに……頼む。誰にも言わないでくれ」

 

 そう言って水輝は頭を下げた。すると奈月が慌てたように腕を振り回す。気配で奈月の動きを読んで水輝は苦笑しつつ頭を上げた。

 

「いえ。治せます。澱みとからまった糸が見えますから。複雑ですけどわたしになら解けます。それとも」

 

 治療するとまずいのだろうか。そう考えているのだろう。奈月が眉を寄せて少し俯く。そのうちに奈月の顔が歪み、次第に悲しみを帯びる。流れてきた奈月の思考を読んで水輝は思わず吹き出した。どうやら奈月特有の論法で、治すのがまずいのかという考えから、交わるのが嫌なのかもという考えに進展し、さらに他にも手段があるのにどうして交わることを提案したのだろう、という考えに陥ったらしい。

 

「戦いにおいて五感を無くすのはよくあるケースなんだ。今回のは違うが、下手に奈月に力を乱発させる訳にはいかないんだよ」

 

 笑いを堪えて水輝は子供に言い聞かせるようにゆっくりと言葉を紡いだ。俯きかけていた奈月がのろのろと顔を上げる。

 

「わたしに解決できるとしても、すべきでない状況があるということですか?」

「奈月は世界中の病人を一人一人治療して回るつもりなのか?」

 

 水輝は笑いの衝動が漸くおさまったことにほっとしつつそう切り返した。すると奈月が困ったような顔で口を噤む。

 

「それは無理ですね。それにことわりに反します」

「おれのこれがそれとどう違う?」

 

 そう言いながら水輝は自分の左の耳を指差してみせた。元はといえばこれは自分の罪が引き寄せたことだ。主の優一郎に転写してしまったことを、元の位置に戻しただけだ。水輝は出来るだけ理解し易いように奈月にそう話した。これまで殆ど一切の情報を奈月に与えていなかったのだ。これからは少しずつでもこうして話していく必要があるのだろう。

 

「水輝さんと自分を分けて考えることに慣れなくて。ごめんなさい」

 

 涙ぐんだ奈月の頭を撫でて水輝は優しく微笑んで見せた。奈月が涙を指で拭って顔を上げる。

 

「出来ないこととやらないことは明確に違う。出来るからと言って全てのことをしていいか、といえばそれも違う。力ってのは結局、バランスなんだよ」

 

 だがこうして奈月と話せる時間にも恐らく限りがあるだろう。だがそんな思いを外には一切出さず、水輝はゆっくりと奈月に話してきかせた。奈月はベッドに正座したまま真剣に水輝の話に頷いている。

 

「わかります。バランスが崩れたら、全ては零れ落ちてしまいますから」

 

 そうだな、と水輝は奈月の言葉に頷いた。奈月はこれからもたくさんのことを学んでいくのだろう。その内容の調節は桜がするだろうが、それでも完璧とは言えない。足りない部分を補うのが渚であり、水輝であり、そして優一郎やその他多くの者たちなのだ。

 

「それでだな。結局、奈月は」

 

 そこまで言って水輝はにやりと笑った。

 

「これからも抱いてくれって言いたかったのか? せりふの繋がり具合を考えるとそうとしか思えなかったんだが」

 

 からかい混じりに水輝が言うと途端に奈月の顔がまた真っ赤に染まる。

 

「はい。あの、治療とか、関係ありませんけど、わたしを……抱いてください」

 

 スカートの裾を指でもじもじともてあそんで奈月が小声で言う。今度はだが、水輝の耳にもしっかりと奈月の声は届いた。そうだなあ、と言葉を濁した水輝を奈月が泣きそうな顔でみる。つくづく、奈月は表情がころころと変わって楽しい。

 

「保護者がなあ……清い交際をしろとか言いそうだしなあ」

 

 わざと困ったような顔で水輝は腕組みをしてみせた。

 

「保護者さんですか?」

 

 どうやら言われた意味が判らなかったらしい。奈月が不思議そうに目を丸くする。思わず笑い声を上げて水輝はまあいいか、と奈月の腕をつかんだ。抱き寄せると奈月が小さな悲鳴を上げる。

 

「普通さ。出会っていきなり性交渉ってのはないんじゃないか?」

 

 まずは清い交際だろう。そう続けて水輝は胸に奈月を抱えた。戸惑った顔をした奈月の髪に唇を落とす。

 

「あの、いきなりではなかったですけど、出会ってすぐだったと思います!」

 

 どうやら水輝と奈月が出会ったばかりのことを言っているらしい。あーあもう、と苦笑して水輝は降参の意をこめて両手を軽く上げてみせた。

 

「判った判った。それじゃ、お言葉に甘えて押し倒します」

 

 くすくすと笑いながら言って水輝はその場に奈月を押し倒した。小さな声を上げた奈月に圧し掛かって頬を両手に包み、唇を塞ぐ。水輝は目を閉じた奈月に深く口づけながらちらりと視線を横にやった。シーツに転がされた青い宝珠は光を照り返している。その様をしばし見つめてから水輝は奈月の首筋に顔を埋めた。




奈月は水輝の耳が片方聞こえなくなったことに気付いています。
祐も気付いていますが、それ以前におもちゃにされたのでどーにもこーにも(汗)
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