※この作品はR-18です。

狩りの終焉 二部   作:伊駒辰葉

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エロシーンの欠片があるようなないような。
人格が変化していたりするので、話が混乱してきます。


白い繭が紡ぐ夢 2

 不意に周囲の白い景色が消える。現れた光景に優一郎は目を見張った。あー、と力ない声を漏らして水輝が眉を寄せる。優一郎の膣内に入っていた卵管が一気に引っ込み、優一郎の胸や宝珠を伝って縮んでいく。驚きに目を見開いた優一郎は水輝に抱き上げられたところで、慌てて水輝の首にしがみついた。抜けかけていた水輝のペニスが少しだけ腸内に戻る。

 

「どうしたの?」

 

 不安を押し隠して優一郎はそう訊ねた。ぼんやりと周囲の景色を見つめていた水輝が何でもない、と首を振る。二人の周囲に広がっているのは優一郎には見覚えのない森の様子だった。人の手が殆ど入っていないのだろう。木洩れ日が差し込む森の中には小鳥の声が響いている。風が通り抜けるたびに木々の葉を揺らし、下草の上に落ちた白い光がそのたびに揺れる。二人の下にある白い光の褥とはまた別の明かりだ。

 

 優一郎は水輝の首から腕を解き、自分から身をずらした。腰を上げた優一郎の肛門から水輝のペニスがずるりと音を立てて抜ける。優一郎はそのまま静かに立ち上がって光の褥を降りた。木洩れ日の柔らかな光に手のひらを差し出してみる。暖かさを感じとった優一郎はしばらくぼんやりと木洩れ日の中に立っていた。光の褥の上に座っていた水輝が所在なげに視線を彷徨わせる。

 

「水輝さんも来ない?」

 

 にっこりと笑みかけて優一郎はそう告げた。が、水輝がいや、と首を横に振る。さっきまで共に快楽に耽っていたのに水輝の顔はやけに暗い。

 

「水輝さん、どうしたの?」

「別に何でもない」

 

 低い聞き取りにくい声でそう呟いた水輝に優一郎は戸惑いながら近づいた。褥の外から手を伸ばす。だが何故か水輝は伸ばした優一郎の手をさりげなく避けた。驚いた優一郎は何度か瞬きをして自分の手を見下ろした。特に変わったところはどこにもない。ごく当り前に自分の手があるだけだ。

 

「水輝さん?」

 

 不安をこめて呼びかけた優一郎の腕を水輝が無造作につかむ。強く引かれた優一郎は小さな悲鳴を上げて水輝の胸に倒れこんだ。困惑に表情を曇らせた優一郎を水輝が強く抱きしめる。

 

「もう、ひっどーい」

 

 不服を零して優一郎は拗ねて頬を膨らませた。腕の力を抜いた水輝が苦笑してごめん、と詫びる。

 

「ここはどこなの?」

「お前の夢の中だろ」

 

 疑問を口にした優一郎に水輝があっさりと応える。優一郎は眉を寄せて周囲を見回した。さっきまで断片的に見えていた景色とは異なり、この森はやけに身近に感じられる。光の温度やこずえの音、風や小鳥のさえずりも本物としか思えない。

 

「わたしの夢? こんなところ知らないわ。水輝さんのほうの夢の中じゃないの?」

 

 くすりと笑った優一郎に水輝が無言で首を横に振る。優一郎は笑みを納めて改めて森の中に視線を向けた。裸で抱き合う二人だけが褥の光に包まれている。それ以外は現実の森としか思えない。

 

 優一郎は水輝の肩に額を乗せて瞼を閉じた。目を閉じると森の音がいっそうよく聞こえてくる。風の音に耳を澄ましていた優一郎は、ふと違和感のある音に目を開けた。慌てて優一郎が顔を上げた瞬間、木々に止まっていた鳥が一斉に飛び立った。大きく揺れた枝についた葉の隙間を通った日の光が地面の上で忙しく揺れる。

 

 不意に物音が聞こえてくる。優一郎は不安から水輝にしがみついていた。水輝はそんな優一郎の背を抱いてじっとしている。草木をかき分けて走っている誰かの足音が徐々に近づいてくる。

 

「水輝さん。あれは誰? ここにはわたしたちだけじゃないの?」

「夢の中だろ? お前の」

 

 答えた水輝の声は酷く冷たい。優一郎は眉を寄せて音のしている方を向いた。足音はどんどん近くなっている。

 

 不意に優一郎の視界に見知らぬ少年が現れる。木々の間から現れた少年は優一郎と同じくらいの年頃に見えた。どこかの学生服を着ている。そんな少年が肩を押さえて二人のいる場所に走ってくる。反射的に避けようとした優一郎を水輝が両腕に捕まえる。悲鳴を上げかけた優一郎は突進してくる少年を避けることが出来なかった。

 

 まるでそこに何もないかのように少年が優一郎の身体をすり抜けて走り去る。仰天した優一郎は小さくなる少年の後姿を呆然と見送った。

 

「いったい、どういうこと?」

「さあな」

 

 水輝の顔には表情がない。素気なく答えた水輝を優一郎は睨むように見た。身を捩るが水輝の両腕はしっかりと優一郎の身体に回っていて動けない。もがこうとしていた優一郎は今度は複数の人の足音を耳に捉えて息を飲んだ。少年が現れた辺りから今度は何人もの男が現れる。今度もやはり優一郎に覚えのない相手だった。だがさっきの少年と違い、今度の男たちは手に物騒なものを持っている。あれは猟銃ではないだろうか。それに拳銃を手にしている者もある。男たちは互いに合図をして優一郎と水輝を完全に無視してどこかに走り去っていった。数人の男が少年が消えた方に向かって走っていく。

 

「あの人達からわたしたちは見えないのね」

「夢の住人には主の姿は見えないんだ」

 

 まるで台本を読んでいるかのように棒読みに水輝が言う。優一郎は苛立ちを覚えて水輝の頬を両手につかんだ。真正面から見据えると水輝が途端にばつの悪そうな顔をする。

 

「水輝さん、わたしのこと嫌い?」

「好きだって言わなかったか? おれは」

 

 淡々とした声で答えて水輝がやんわりと優一郎の手を解く。

 

「えっと、それならいいのよ」

 

 照れ隠しに微笑んで優一郎は目を伏せた。

 

 唐突に地面が揺れる。数瞬遅れて凄まじい音が周囲に響いた。突風に悲鳴を上げた優一郎を水輝が無言で抱き寄せる。

 

「森が死ぬ」

 

 ぽつりと呟いた水輝の言葉に驚いて優一郎は慌てて顔を上げた。立て続けに凄まじい振動と音が響く。森の木々が乱雑に揺れ、まだ緑色をした元気だった筈の葉が衝撃に散る。

 

 ほどなく優一郎はいやに生温かい風を感じて身を竦めた。何かが燃える匂いが鼻をつく。水輝の胸に抱きすくめられて優一郎はかたく目を閉じた。水輝の言った通り、森の木々が燃えているのだ。

 

「どうして!?」

「おれに訊くな」

 

 低い声で答えた水輝が背中の羽根を動かす。水輝が羽ばたきした瞬間、辺りの景色は一瞬で消し飛んだ。再び白い光の空間が現れる。急に物音が消えたことに安堵して優一郎は顔を上げた。

 

「変な羽」

「そうか?」

 

 気に入らないなら消すか。水輝が気軽に言いながら自分の背中を肩越しに見る。優一郎は慌てて首を横に振って水輝に抱きついた。




とうとう出たな、という感じの……(汗)
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