裸シーンはあります。百合……まではいきません。
「今存在している誰かが、力を使った形跡はないわ。でも、ビデオに録画された要さんの台詞まで変わってるの。不思議でしょう?」
嗤いを浮かべた佑が桜の正面に腰を下ろす。テーブルを挟んで向かい合った佑を静かに見つめて桜は新聞を畳んだ。
「記憶改ざんの術ですね。時間差をつけて発動するよう、仕組まれていたのだと思います。……あくまでわたくしの私見ですが」
畳んだ新聞をテーブルに乗せて桜はソファの背もたれに寄りかかった。
「もっと不思議なのはわたしの記憶。夢の中でわたしは立城さんに手ずから育てられたの。お料理も、勉強も、立城さん自ら教えてくれたわ」
「それは事実です」
きっぱりと桜は言い切った。佑はこの屋敷で立城の傍で育てられた。その様を桜は間近に見てきたのだ。
「やっぱり、桜ちゃんは、桜さんだったのね」
「はい」
納得したように言った佑に桜は平然と頷いた。例えその時々で力の差異はあっても、桜の名を頂く使い魔は自分一人しかいない。
佑は幼い頃はここで育てられていた。ある日を境にそんな佑と多輝を立城は入れ替えたのだ。二人の記憶もそっくり入れ替わっていた筈だ。だからこれまで佑と多輝は何を疑問に思うこともなく暮らせていたはずだ。
この記憶改ざんの術と、佑の記憶の封印が解けたことは繋がっている。桜は淡々とした口調で話した。
「立城さんって悪党なのよ。水輝さんのイメージを見せて、わたしは水輝さんの花嫁になるために生まれてきたんだって言うの。もう、あれは洗脳レベルね。水輝さん、かっこいいもの」
ため息混じりに言った佑に桜は小さく笑った。
「あの時代、青龍王は眠りについていましたから」
だから佑は水輝と会うことは出来なかった。水輝が眠っていたのは空間の狭間、この世界とは全く違う空間だ。そして狭間の檻の中で水輝は昏々と眠り続けていたのだ。消耗した力を少しずつ回復するため、という名目もあったが、眠りの理由はそれだけではない。
力を編んで術を使う際、大きなものになればなるほど、どうしても術の発動時間がかかる。その際に余計な力を使うと術者の命が危ぶまれる。立城はそれもあって水輝を空間の狭間に隠していたのだ。
ハンターの多くもあの頃は眠りについていた。世界の瞼の閉じている間に準備を終える必要があったのだ。
「その時奈月さんは、水輝さんの中に吸収されて匿われていたのね」
「そうです。青龍王の青宝珠と引き換えに、姫様はあの方の中に隠れることに成功しました。……尤も、それはあの方々の知るところではないのですが」
十数年の時を経て水輝が目覚めた時にはもう、全ての準備は終わっていた。そして仕掛けは一つずつ発動する。だが立城のシナリオには書かれていなかったこともあったらしい。それを発見するたびに立城はとても嬉しそうにそのことを桜に語っていた。ほんのささやかな意外性でもいいのだ。ある筈のなかったところに一輪の花が咲いていただけのことでもいい。それらの意外性が立城にとっては嬉しかったのだろう。
「立城さん、今のあなたを見たらきっと喜ぶわよ。桜ちゃんは桜さんを含んでいるけど、それだけじゃないもの」
微笑みを浮かべて佑が言ったことに桜は少しだけ顔を曇らせた。
「……わたくしは姫様をお護りしなければなりませんから」
だから必要があってこうなっているのだ。桜は感情のない声でそう語った。
「桜ちゃん。服を脱いで、裸になってもらえるかしら?」
にっこりと笑う佑に桜は少しだけ眉を寄せた。服を脱ぐのは特に問題はない。が、何故そう求められるのかが理解出来ない。桜は淡々と佑にそう言い返した。
「理由を明確にしてくださいませんか」
首を傾げた桜に佑がにこやかな笑みを向ける。
「ちょっとあなたの身体を調べてみたいのよ。水輝さんには抱かれたんでしょう?」
そう言われて桜はぴくりと眉を上げた。確かにそれは事実だ。桜はため息を吐いてその場に立った。ワンピースのファスナーを下げて服を落とす。落ちた服の環を越えて桜はテーブルの脇に立った。身に着けたビスチェはブラジャーとショーツが繋がっているタイプのものだ。淡い桜色のビスチェを着たままで桜はこれもですか、と佑に問い掛けた。
「当然よ。特に調べなきゃいけない部分が見えないじゃない」
くすりと笑う佑にため息を吐いてから桜は胸のリボンを解いた。左右のカップを支える形で結わえられていたリボンを徐々に解く。次いで、桜は腹の部分にある小さな留め具を外していった。緩んだビスチェの間に白い乳房が現れる。桜の身体はほっそりとしており、官能的というよりはしなやかさを思わせる体型をしている。無駄な肉はなく、乳房も大きいというほどにはない。桜は無言でビスチェを床に落とした。
「わたしより肌、白いんじゃないの? 奈月さんとため張るわね。乳首は可愛い桜色。そっか、桜色を活かすために肌を白くしたのね」
ねえさん、いえ透さんって安直だけどいい仕事はするのよね。そう続けた佑に桜は淡々と恐れ入ります、と答えた。佑はまじまじと桜の身体を見つめている。桜は特に何を思うこともなく身体の脇に腕を垂らしてぼんやりと突っ立っていた。佑は一体、何を考えているのだろう。
「下も見たいから、ベッドの上で足を開いてもらえるかしら?」
見てどうするのだろう。そうは思ったが桜は大人しく判りました、と返答した。促された通りに窓際のベッドに寄る。レースのカーテンのかかった窓の外には日暮れの様子が見える。桜は静かにベッドに上がって言われた通りに膝を曲げ、腿を左右に開いてみせた。そんな桜の足元に佑が回り込む。
「八重桜ね。松前愛染がモデルなのかしら。透さん、知らなかったのね。木龍の使い魔には性器が存在しないってことを」
そう言って佑が桜の股間を覗きこむ。桜の陰部は桜色に淡く色づいている。花びらのような薄い粘膜で出来た桜の陰唇は一重ではなく複数のひだを形成しており、その周囲には一切の翳りはない。無毛のつるりとした肌があるだけだ。恥丘も同様で桜には陰毛の類が一切ない。
桜の身体にはちょっとした秘密というか……。
作った誰かの趣味が反映されていたりしますね。