とりあえずエロシーンはありません。ということで。
「これは……大丈夫なのですか?」
不安顔で文がシーツの上で蠢く精液を見つめる。学は笑って大丈夫よ、と言って再び克人を揺すり始めた。
「ほぉら、あなたは誰のものかな?」
そう囁きながら学は乱暴に克人を揺すった。
「ボクは……ボクはっ!」
泣きながら克人が首を振る。そうねぇ、と笑って学は克人を抱えたまま歩き出した。横たわる順の顔の真横に立つ。そのまま学は容赦なく克人を揺さぶり始めた。
「ボクはっボクのものだっ! 誰のものでも無いっ!」
克人が叫んだ瞬間、学はぴたりと手を止めた。肩で荒く息を吐いている克人を苦笑して見つめる。克人は学に抱えられたまま、泣きじゃくっていた。
「いや……もう、苛めないでやってくんないかな」
殆ど聞き取れない声が聞こえる。まあ、と笑って学はベッドに横たわる順を見た。順は左だけ残った目を薄く開けていた。慌てたように克人が学の手を振り切って床に飛び降りる。
「順様!」
克人がわんわんと泣きながら順にすがりつく。学はやれやれと笑ってめくれていたスカートを戻した。
「いやねぇ。イジメじゃないわよぉ。愛の交わりよぉ」
身をくねらせて学は順に片目を閉じてみせた。すると順が少しだけ目を細めてから息を吐く。どうやら動けないらしい。それはそうだろう。順の状態を考えると喋ることも難しかったはずだ。
「その者の真意を探るために行った事です。その者は、根から腐りきっていると思われますが?」
きっぱりと言い切った文に学はまあまあ、と苦笑してみせた。順が目を動かして文を見てから学を見る。そこで学は目を見張った。順が震える手を布団から出して克人の頭を撫でたのだ。
「も……い、じゃん」
浅く早い呼吸をしつつ順がそう言う。だがその声は注意しなければ聞き取れないほど小さい。学はそんな順をしばし見つめてからシーツに目をやった。蠢いていた克人の精液が消えている。それを見てあぁ、と学は納得した。アメーバのように動いた克人の精液は恐らく順の器に溶け込んだのだ。だから順は辛うじて意識を取り戻し、ほんの僅かでも喋ることが出来るようになったのだろう。
「よくありません。あなたを助けるために、私はつきっきりで看病しました。今更、死んでしまわれたら、私の苦労が無駄になります」
きっぱりと言った文に学は苦笑した。順がありがと、と掠れた声で言う。
「まぁ、とにかく。耐えられそうだから送るわね。もう、来ないでね」
憎まれ口を叩いて学は順と克人に力を放った。ベッドの上に放り出されていた克人の鞄や服ごと、彼らを転移させる。空になったベッドを見下ろして学は肩を鳴らした。
「大丈夫なのですか?」
不安そうに文が言う。学は苦笑して肩を竦めた。
「ダイジョブでしょ。木村の本邸に送ったから、人間用の手当てはしてもらえるし、透くんの気が向けば治療もしてくれるかしらね」
そう言って学は小さな客間を出た。ダイニングキッチンに入って残っていた冷めた紅茶を飲み干す。文は出しっぱなしになっていた林檎をジャムにし始めた。
「いえ、私が言っているのはあの者です。あの者からは詭計と裏切りの匂いがします」
キッチンに林檎の煮える甘い香りが広がる。学はしゃもじを片手に振り返った文に笑みかけた。
「……あのコね。アタシたちに全部は説明していないのよ」
煮上がった林檎を容器に移して文が運んでくる。スコーンを沿えてもらった学は歓声を上げた。紅茶をいれなおした文が学のカップに注ぎいれる。
「わかりました。私の危惧は確かに私怨かもしれませんから。もうしわけありません」
怒りの色を少し見せて文が言う。まあまあ、と苦笑して学は温かいスコーンを二つに割った。出来たての林檎のジャムを乗せて口に入れる。
「ああ、あのコは赤いヒトを見限ったんじゃないわよ。徒労に終わったことは一切省いて喋っていただけ」
そう言って学は小さく笑った。そしていきなり現れた自分達のことを疑っていたのだろう。学はそう続けた。すると文が眉を寄せて複雑な顔をする。
「少なくとも無能なのは確かですね。今現在、彼の力は私たちの眷属の中では学さまに次ぐはずです。それに、目も節穴です!」
つん、と文がそっぽを向く。それを見て学は思わず吹き出した。まあ、いいじゃない、と文に言葉を向ける。学の隣に腰掛けた文は唇を尖らせて頬を膨らませていた。
「ほら、このジャムも美味しいわよ、文ちゃん」
にこにこと笑いながら言って学は残っていたスコーンにたっぷりとジャムを乗せた。美味しい、と素直に言いながらスコーンを口に運ぶ。
「ですけど、あれだけは許せません! 私が彼のペニスを含んだ時に思惟が流れ込んできました。彼がいったいどんなことを考えていたと思います?」
ふて腐れた顔で文が言う。興味を覚えて学はなあに、と訊いた。
「彼は、よりにもよって、私が、桜さんに似てるなどという世迷言を考えていたのですっ! 私のどこがあんな自分勝手使い魔もどきに似てるというのですか!」
紅茶を飲もうとしていた学は文の言葉に思わず吹き出しかけた。慌てて口許を押さえて笑いの衝動を堪える。むくれて文はそっぽを向いてしまっている。カワイイ、と微笑んで学は文の頭を撫でた。
順がなんとか復活? したぽいです。