※この作品はR-18です。

狩りの終焉 二部   作:伊駒辰葉

56 / 191
紫のことを外から見てる二人、という感じです。
エロシーンはありません。


外から観察してみたらこうなる

 分厚い硝子の窓の向こうの光景に水輝は目を細めた。広い空間に建っているのは一軒の小さな家だ。その家を含めたこの一帯をこの室内に作り出しているのだから、建物自体が驚くほど広いのだろう。

 

 観察室に設えられた幾つものモニタには克人と紫の交わる様が映されている。水輝は感慨のない目でモニタを振り返った。すると隣にいた順が声を殺して笑う。

 

「そんな珍しい? キミはいっつも紫ちゃん抱いてたんしょ?」

「別に」

 

 素気なく応えた水輝に順がまたまた、と笑う。水輝は煩い、と呟いて硝子窓の向こうの様子を見つめた。家のあるだだっ広い部屋の天井にはスクリーンが張られ、ご丁寧に星まで映写されている。家を囲む草原も本物で、どうやら室内全体には土が盛られているらしい。

 

 ここは紫の隔離室なのだと順は笑った。今はもう研究員の姿もない。水輝はぼんやりと窓の向こうを見つめた。紫が壊れてしまったのは判る。それをしたのは自分だ。

 

 順が広い窓にすがって小さく笑う。順は水輝が回復させた後、すぐにここに転移した。一緒においでよ、と言われて従ったのだが正直、いい気分ではない。水輝はため息を吐いてそれで、と呟いた。

 

「別に。ただ見せてあげたかっただけだよ」

 

 順は室内だというのにサングラスをかけている。潰れた目を隠すためだ。水輝はふうん、と呟いて手近の椅子を引っ張り寄せた。モニタの中では克人が事を終えててきぱきと後始末をしている。そのうちに克人は着替えて静かにあの家を出た。窓から覗いていた順が克人に手を振り返す。克人は嬉しそうに笑って家の裏手に回りこんだ。木の陰に隠れたドアを使って克人が慌ただしく観察室に上がってくる。

 

「順様! 沙耶さん!」

 

 嬉しそうに笑って克人が部屋に飛び込んでくる。おお、と応えた順が飛びついてきた克人の背を叩く。水輝はため息を吐いて腰を上げた。

 

「じゃあ、おれは行くぞ。あんまり無茶をするなよ」

 

 それだけ言って水輝は転移しようとした。その直前に順が待ってよ、と声をかける。水輝は訝りに眉を寄せて術を中断した。

 

「水輝ちゃん。その耳、どーすんのさ」

 

 笑って言ってから順が自分の左の耳を指差してみせる。ふん、と鼻を鳴らして水輝は順を睨んだ。

 

「お前だって片目がないだろ。似たようなもんだ」

「オレはいいのよ、オレは。何たってここに目があるしね」

 

 そう言って順が克人の頭を軽く叩く。水輝は眉を寄せて順と克人とを見比べた。克人には夢魔の力が移っている。だがまだ克人の左眼には順の力が宿っているらしい。それを克人は喜んで受け入れているようだ。

 

「水輝ちゃんって戦うヒトっしょ? 五感の欠落は痛いんじゃない?」

「他でカバーするからいい」

 

 どうやら克人は紫のことをそれなりに気に入っているらしい。が、何故か水輝を恨む気はないようだ。流れてくる克人の思惟を読んで水輝はしばし黙考した。それなら何故、克人は優一郎に憎しみに近い感情を抱いているのだろう。

 

「沙耶さん……耳が?」

 

 随分と遅れて克人が戸惑い気味に言う。水輝はずれた克人の反応に思わず苦笑した。頭をかいて煙草を咥えてから、ここが禁煙だったことを思い出す。水輝は火の点いていない煙草を唇の端にぶら下げて克人ににやりと笑ってみせた。

 

「あんまり暴れてるとおれが直々に斬りに行くからな。覚悟しとけよ」

「えっ。そ、それは嫌かも……」

 

 克人が複雑な顔をして順を見上げる。はいはい、と言った順と克人に手を上げて水輝はその場から転移した。




短くてすみません(汗)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。