※この作品はR-18です。

狩りの終焉 二部   作:伊駒辰葉

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このエピソードで13章は終わりです。
ここにはエロシーンはないです。


佑と水輝で抱くか抱かれるか 1

 屋敷は静まり返っている。水輝は夜の闇に包まれた自分の部屋の中に現れた。窓から入る月明かりを眺めてから机に寄る。暗がりの中で水輝は煙草に火を点けた。とりあえず順の容態については問題はない。万全とまではいかないが、出来るだけの治癒術はかけておいた。最悪の場合は克人から精気を多少なりとも吸えば回復出来るだろう。

 

 あとは、と呟いて水輝は煙を細く吐き出した。他にやることはなかったか考えながら水輝は煙草をくゆらせた。学はあれでしっかりしているから、克人の動向からは目を離さないだろう。巫女を連れているようだから放っておいても問題はない。奈月はかなり寂しい思いをしているかも知れないが、桜がいれば大丈夫だろう。多輝については蒼をつけてあるし、由梨佳がどうやら力に覚醒しつつあるようだから多少のことは耐えられるだろう。次々に気になっていた点を心の中で列挙してから水輝はため息をついた。

 

 妙に身体がだるい。水輝はため息をついて吸いかけの煙草を灰皿に乗せた。端末を立ち上げてメールを受信して、必要のあるものだけ返信する。どうやらインタビューの類はしばらくは控えてくれるつもりらしい。そのことにほっと息を吐いて水輝は煙草を取り上げた。唇に挟んでベッドまで移動する。端に腰掛けたところで水輝は深々と息を吐いてうなだれた。

 

 不意に部屋のドアが小さく鳴る。水輝は目を細めて返答した。どうぞ、と言うとドアが控え目に開く。顔を覗かせたのは佑だ。水輝はため息を吐いて入れば、と言った。頷いた佑が暗いままの部屋に入ってくる。

 

「……水輝さん、おかえりなさい」

 

 ベッドに腰掛ける水輝に近づいて佑が小声で言う。その目は真っ赤になっていた。どうやら泣いていたらしい。そのことに気付いた水輝は悪い、と小声で詫びた。悲しませるつもりはなかったのだ。

 

「急にいなくなったからか?」

 

 水輝は灰皿を手の中に引き寄せて煙草を唇から剥がした。灰を落として目を上げる。佑は寝るつもりだったのかパジャマを着ている。ちらりと時計を見ると既に午前二時を回っていた。

 

「あの時のことを思い出して……」

 

 言われた意味を少しの間、考えてから水輝は納得した。恐らく夢魔として紡いだ夢の中、自分が消えた後も佑はずっと待っていたのだ。が、水輝は結局、夢の中には戻らなかった。そのことを思い出したのだろう。水輝はごめん、と詫びて手を伸ばした。俯く佑の頭をそっと撫でる。

 

 佑が身を傾けて水輝に抱きつく。水輝は煙草の火が佑に触れないように気をつけながら、佑の腰に片腕を回した。間近に佑の存在を感じているだけで抱きたいという欲求が抑えられなくなりそうだ。水輝はぽんぽん、と背を軽く叩いて佑をやんわりと引き剥がした。煙草を咥え直して前髪をかき上げる。

 

「明日、学校だろ? もう寝ろよ」

 

 そう言って水輝は立ち上がった。灰皿を手に机に向かう。短くなった煙草をねじ込んでから水輝は灰皿を机に戻した。それから佑を見る。佑はベッドの横に立ったまま首を横に振る。水輝は怪訝に思いながらベッドに戻った。シャツのボタンを外して手早く脱ぐ。続いて水輝はジーンズのベルトに手をかけた。手早く緩めてジーンズを脱いで床に放る。下着一枚になったところで水輝はベッドに腰掛けた。佑は所在なげにベッド脇に佇んだままだ。

 

「学校、辞めたから」

「やっ、辞めた!?」

 

 水輝は慌てた声を返した。すると佑が無言で頷く。水輝は驚きに目を見張ったまま息を殺した。しばし迷ってから恐る恐る訊ねる。

 

「……もしかして紫の振りをするつもりだからか?」

 

 だが優一郎は順当に行けば首席で卒業し、大学に行く筈だったのではないか。そう考えた水輝は混乱していた。

 

「正確には、早期卒業制度を利用したことになっているの。吉良優一郎は、吉良瀬と関係の深い国際組織に属する大学に留学したことになったの」

 

 佑が静かな口調で説明するのを水輝は呆然と聞いた。それまで俯いていた佑が顔を上げる。水輝はため息を吐いて額を押さえた。

 

「まあ、お前の人生だからおれはとやかく言わないが……」

 

 だが本当に辞めて良かったのか? 水輝は眉を寄せてそう訊ねた。

 

「だって、わたしは水輝さんの妻だから」

 

 真っ赤になって佑が小声で言う。それを聞いた水輝は眉を寄せたまま低く呻いた。

 

「いや、あのな? 別にだからって四六時中一緒にいなきゃならんって訳でもないんだぞ? 学校に行きたければ行けばいいし、したいことがあるならすればいい」

 

 そう言いながら水輝は額から手を離して佑の顔を覗き込んだ。束縛したいと願った訳ではないのだ。そう付け足してみる。

 

「あのっ、わたしは水輝さんを束縛する気はないわ。だけど今は……」

 

 顔を赤くしたまま佑が言う。それを聞いた水輝はああ、と呟いて自分の胸に手を当てた。頼りない月明かりの下でも良く判る。水輝の身体にはたくさんの古い傷と、言霊の鎖が焼き付いているのだ。水輝は身体に巻きつく形で焼きついた鎖を指でたどってみた。

 

「おれは道具だからな。誰かが所有しないと意味がないし」

 

 そう言って水輝は欠伸をしつつ布団に入った。戸惑ったような顔をする佑をベッドの中から見上げる。白い月明かりの下で見ると、佑の髪は深い紫色に見える。




所有というところに水輝は拘っているのですか、佑は意味がちょっと判ってないかもw
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