※この作品はR-18です。

狩りの終焉 二部   作:伊駒辰葉

61 / 191
エロシーンはありません。
この話で13章は終わりです。


佑と水輝で抱くか抱かれるか 5

「判った。力を増せばいいのか?」

 

 静かに言いながら水輝は右手の指を佑の肛門から抜いた。

 

「何かあっても、独りで、動かないで、わたしや、奈月さんに相談して! わたしたちにできることは、わたしたちにまかせてっ!」

 

 懸命な面持ちで言った佑が身体を捻って水輝を見る。動きに合わせて自然と水輝のペニスは佑の膣から抜けた。水輝はぼんやりと佑を見つめ、小声で判ったと答えた。その場に腰を下ろした水輝を真剣な目で佑が見つめる。乱れた息を整えながら佑は続けた。

 

「水輝さんは独りじゃないわ! 命令なんだから……背いちゃだめよっ!」

「判った」

 

 水輝は呟くように答えた。その時にはもう、水輝は佑を見ていなかった。俯いた水輝の手を佑が取る。水輝は自分の手を握る佑の白い手をぼんやりと見下ろした。

 

「水輝さん……?」

 

 不安そうな佑の声に水輝は慌てて顔を上げた。何でもない、と苦笑する。だが佑からは不安に彩られた思惟が流れてくる。水輝は小さくため息を吐いて何でもないのだともう一度告げた。

 

「気になることがあるなら言って、わたしには聞く権利があるはずよ? ……それとも、わたしに話すのは嫌?」

「そうじゃない」

 

 すぐに否定してから水輝は大きく息を吐いた。

 

「ちょっと懐かしかっただけだ」

 

 いつだったか同じように立城に言われたことがある。

 

 君は独りじゃない。僕が傍にいるよ。

 

 優しい微笑みを浮かべて言われたことを水輝はまざまざと思い出していた。口で説明するよりも早いだろう、と水輝は自分の額をそっと佑の額と合わせた。懐かしく思い出した光景をそっくりそのまま佑に見せる。

 

「おじさま……」

 

 水輝と額を合わせたまま、佑がそっと呟く。水輝は苦笑して額を離した。ベッドにぺたんと座り込んだ佑が戸惑いの表情で水輝を見る。水輝はそんな佑の頭を軽く叩いた。

 

「命令は受理した。おれの呼び方の件と、子供のこと、力のこと、それから」

 

 指折り数えて水輝は目を上げた。

 

「独断で行動しないこと、でいいのか?」

 

 最後の命令については慣れていないからミスもするかも知れないが。そう付け足して水輝は頭をかいた。

 

「ごめんなさい。わたしはおじさまじゃないから。水輝さんを掌の上で転がすように、使うことはできないから」

「別にいい。どんな形でも命令は命令だろ?」

 

 そう言って水輝は何気なく目を落とした。快楽がまだ冷め切っていないようだ。ペニスは痛いくらいに張りつめている。水輝はため息を吐いて股間にそそり立ったペニスを軽く指で突いた。すると見る間にペニスが萎える。

 

「水輝さんっ! あの、わたし、まだまだ大丈夫よ!」

 

 焦ったように佑が言う。水輝は苦笑して佑の頭をくしゃりと撫でた。

 

「嘘吐け」

 

 水輝は佑の肩を軽く突いた。すると佑が焦った声を上げて身体を傾ける。佑は交わりによって得た力の殆どを水輝に移してしまっているのだ。これでは続けるのは無理だ。

 

「それなら、奈月さんを抱いてあげて。彼女、混乱しているわ。奈月さんは奈月さんとして欠けている部分は欠けたまま補いようがないもの。奈月さんは結局、水輝さんと同じ鏡で、あくまで道具だから」

「それ、命令か?」

 

 佑をきちんと寝かせてから水輝はするりとベッドを降りた。クローゼットに寄って下着とシャツとズボンを出す。着替えを一まとめにしてから水輝はベッドに戻った。佑は大人しくベッドに納まっている。

 

「ええ。命令よ。本来の座位とかのことを考えれば、距離を置こうと水輝さんが考えるのは当然のことよ。でも、彼女にはおじさまの作為が加わっていることを忘れないで」

 

 身体の汚れを指を鳴らして飛ばしてから水輝は服を身につけ始めた。命令なら聞かない訳にはいかないか、と笑って手早く服を着込む。

 

「でも奈月は今日は学校、今は眠っているんだ。やるのは学校が終わってからでいいか?」

 

 言いながら水輝は手の中に煙草を引き寄せた。

 

「……なんだか凄く嬉しそうね」

 

 佑の声が少しだけ低くなる。そのせりふの中に微かな怒りのようなものを感じ取って水輝は軽く笑った。煙草を咥えて火を点ける。

 

「別に」

 

 細身のライターをポケットに戻しかけて水輝はふと動きを止めた。銀色の細身のライターはいつだったか紫に貰ったものだ。水輝は無意識に手の中のライターをじっと見つめていた。

 

「水輝さん……」

「あ、ああ。悪い。何か言ったか?」

 

 佑の声に顔を上げて水輝はそう言った。ライターをさりげなくシャツのポケットに戻す。見上げる佑の目に何か言いたげなものを感じて水輝は苦笑した。

 

「そのライター、おじさまからのプレゼント?」

「いいや。紫から貰ったんだ。土産だからってわざわざ旅館名を入れてるんだから笑うよな」

 

 洒落たライターの表面には堂々と旅館の名前が刻まれているのだ。そう説明しながら水輝はポケットからライターを抜いて佑に放り投げた。片手で受け止めた佑が眉を寄せてライターを見る。

 

「紫さん……」

 

 なんとも言い難い複雑な表情をする佑に水輝は小さく笑ってみせた。欲しいならやるよ、というと佑が首を横に振る。水輝はそうかと笑って佑の手からライターを取り上げた。元の通りにシャツのポケットに入れる。

 

「それじゃあ水輝さん、約束、守ってね。わたし、そろそろ眠くなっちゃった……」

 

 おやすみなさい。そう言って佑が目を閉じる。水輝はいつもの調子でちょっと出かけてくる、と言いかけて口を噤んだ。佑が閉じていた目を片方だけ開ける。水輝はしばし迷ってから正直に言った。

 

「物足りないから外で女を抱いてくる」

 

 素直に言って水輝は煙を天井に向かって細く吐いた。目を戻すと何故か佑が両目を開けて眉を寄せている。

 

「力の回復には必要だものね。いってらっしゃい」

 

 にっこりと笑いつつも佑の目は一切、笑っていない。水輝は渋い顔をして佑を見下ろした。ベッドに納まった佑は口許までを薄い毛布で覆っている。

 

「何でそこで怒るんだよ」

 

 別にいつものことだろ。そう言いながら水輝は頭をかいた。

 

「だって……」

 

 笑みを消した佑が恨めしそうに水輝を見つめて頬を膨らませる。水輝はあー、と低く呻いてちらりと窓の外を見た。すっかり夜は明けている。だがまだ朝も早い。こんな時間に街で女を拾うのは難しいだろう。だとすると転がり込むのは面識のある女性のところ、ということになる。水輝は素早く頭の中に知り合いの女性のことを引っ張り出した。

 

「どんなだったか、後で教えてね」

 

 ふと、佑に声をかけられて水輝は眉を寄せた。

 

「何だ。栄子に興味があるのか?」

 

 真顔で訊ねた水輝を佑がもの凄い目で見る。水輝はじゃあ行ってくる、と片手を上げてその場から転移した。




この後、とーぜん水輝は栄子のところに行ってますw
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。