※この作品はR-18です。

狩りの終焉 二部   作:伊駒辰葉

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一応、エピソードとしてはひとつなのですが、長いので切ってあります。
エロシーンはありません。


玩具なのは当然なんだけど、扱い方の問題

「玩具として扱われることに不満を感じたあたしが悪いんです。水輝さん、渚さん、ご迷惑をかけてごめんなさい」

 

 スカートの中を探りながら祐が小声で言う。渚はそんなことはない、と慌てて首を振ってから水輝をぎらりと睨んだ。だが水輝は知らん顔で短くなった煙草を灰皿にねじ込んでいる。渚は勢いよく立ち上がり、新しい煙草を咥えようとした水輝の胸倉をつかんだ。

 

「何だよ。今日は店の話をしに来たって言ってたろ」

「それもあるけど、他の用件もあるのよっ」

 

 抵抗せずに渚にシャツを引っ張られたまま、水輝が肩を竦めて指に挟んでいた煙草を唇に咥える。

 

「私、あれからちょっと考えたのよ。あなたが祐ちゃんにしたことを」

「ほーん」

 

 感慨のない声で答えてから水輝がやっと気付いたかのようにシャツをつかんでいた渚の手に触れる。その瞬間、渚の指は意識しないのに力が抜け、水輝のシャツから離れた。

 

「あなた、わざとあんな酷いことを言ったんじゃないの?」

 

 そうすれば祐はきっと渚に助けを求めるに違いない。そう思ったのではないか。渚は怒りを懸命に堪えつつそう言って大人しく腰掛け直した。ベッドに転がって自慰を続けていた祐が驚いたように目を見張る。

 

「渚さん、いいんです。佑が居る以上、あたしには玩具として以上の価値は有り得ないのはわかってました。だから、だからあたしは……」

「だから、そんなことないって言ってるのよ!」

 

 我慢出来ずに喚いて渚はまた立ち上がった。のんびりと煙草に火を点けた水輝が頭の後ろで手を組んでソファにもたれかかる。続いて渚が怒鳴ろうとしたところでふと部屋のドアがノックされた。水輝が返事するとドアが開いてメイドが入ってくる。ベッドに転がっていた祐に驚いた様子ではあったが、メイドは手早く三人分の茶をテーブルに置いて部屋を去っていった。その首についていた銀色の首輪は祐に嵌められているのと同じものだ。

 

「あなた、祐ちゃんが好きでしょう!?」

 

 メイドの槙花が部屋を出て行ったのを確認してから渚はびしりと水輝を指差した。カップを取り上げて唇から煙草を引き剥がした水輝は知らん顔をしている。

 

「あっ、んっ……」

 

 微かな声を漏らした祐をちらりと見てから渚は水輝に目を戻した。紅茶が相当熱いことに飲むのを諦めたのか、水輝が舌打ちをしてカップをテーブルに戻す。

 

「甲斐性なしだって言ってたのは誰だ。そんなおれが何人も同時に女を侍らせることが出来る訳ないだろ」

 

 まるで用意していたようにすらすらと言ってから水輝が煙草を唇に戻す。渚は反射的にこぶしを固めてテーブル越しに水輝に殴りかかろうとした。だがこぶしが届く前に水輝が渚の手を片手に受け止める。やんわりと押し返されて渚は渋々とソファに座り直した。

 

「否定はしないのね」

「する必要ないだろ。好きなのは事実だからな」

 

 ただ、望まれるような形で好意を抱くかどうかは別問題だ。低い声でそう続けて水輝は祐を見た。相当に水輝の言葉が意外だったのか、祐は目を見張って股間を弄っていた手を止めている。

 

「あたしは、水輝さんの望むような扱いには耐えられなかったから。もう、存在している価値さえないはずのモノだから」

 

 消え入りそうな声で言って祐が背を向ける。渚は怒りに震えながら膝の上で両手を握り締めた。

 

「だから、あなたは私のために居て頂戴と言っているでしょう! 水輝も水輝よ。どうしてわざと誤解を生む言い方をするの!」

 

 これじゃあ、いつまで経ってもすれ違いだわ。そう続けて渚は乱暴にテーブルのカップをさらった。まだ熱い紅茶を強引に半分ほど飲んでカップをテーブルに戻す。水輝はのんびりと煙草をくゆらせながら渚のカップの動きを目で追った。

 

「……お前、おれのことを買いかぶってるだろう」

 

 ため息混じりに言って水輝が横を向く。それを見た渚はふん、と鼻で笑った。

 

「あなた、嘘を吐くのが昔から下手だったわ」

 

 幼い頃から一緒に育った渚は水輝の嘘をいつの間にか見抜けるようになっていた。水輝は嘘を吐く時には必ず視線を逸らす癖があるのだ。やれやれとため息を吐いて水輝が頭をかく。

 

「危険は出来るだけ冒したくないんだ。紫の時で懲りたからな、おれは」

 

 呟くように言って水輝が顔をしかめる。それを聞いた渚は呆れた顔をした。要するに水輝は紫の時と同様に佑が周囲の誰かに嫉妬をするのを恐れているのだ。勿論、紫と佑は別人で器の大きさもまるで違う。だが絶対にあり得ないという話ではない。だからこそわざと周囲から女性を、それも自分の好いている相手を遠ざけているのではないだろうか。

 

 渚はそこまで考えて深々とため息を吐いた。祐が恐る恐る肩越しに振り返る。こちらを向いた祐は相変わらず股間を弄ってはいたが、目に宿っていた悲しみは幾分か和らいでいる。

 

「水輝さん、ありがとう。ほんの少しでも、佑の何百分の一でも、あたしのことを気にかけてくれて」

「何百分の一は大袈裟だろ」

 

 呻くように言った次の瞬間、水輝が慌てたように立ち上がる。何事かと驚いた渚は微かに聞こえてきた声に絶句した。真剣な顔で中空を見つめていた水輝がやがてため息を吐いてソファに沈む。渚は何度か瞬きをして伺うように水輝を見た。




祐が自分を卑下しているように見えるのは、渚視点だからです。
祐の中では辻褄があってる話なので……。
まあ、元凶はだいたい水輝!w
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