「こんな姿で、来る日も来る日も虐められて……、はぁぁん……お父さぁん♡」
奴隷の格好で、タバサは粗末な床の上にごろんと転がる。
ただのボロ布とはいえ、さすがにタバサにはサイズがあっておらず、あちこちが余っており、服を着ているというよりも服にくるまっているというのが正確か。
自分の素肌に巻き付けては、その臭いを自分に染み付かせるように全身をくねくねとさせ擦り付ける。年頃の女の子とは思えない異様な行動だ。
「命令されて、鞭で叩かれて、蹴り飛ばされて、酷い目に遭わされて、あはぁぁ♡」
タバサが拗らせていたのは父親に対する愛情だけではなかった。
それこそ今よりも幼い頃、自分と同い年の兄が、勇者にしか扱えない天空の剣を易々と持ち上げたことから始まる。
自信に満ちて活発な兄と違い、一歩引いた引っ込み思案な妹は、親探しの旅は想像以上に過酷なものだった。
魔物には襲われるし、ダンジョンを歩くだけでも辛い。そんな中でタバサは、父親の残した奴隷時代の服の匂いを抱き締めて旅をしてきた。
冒険好きになった兄とは対称的に、妹は被虐に目覚めてしまったのだ。どんなに辛くても、苦しくても、めげずに成長していき、気付いたときには今のように拗れてしまった。
もちろん、そんなマゾヒストな一面など、タバサはずっと隠し通してきた。父にも母にも実の兄さえにも。
だが、世界が平和になってしまい、タバサは我慢が効かなくなっていたのだ。
魔物に噛みつかれる痛みも、炎に炙られて火傷するような熱さも、時には命を落とすような苦しみさえ今の世界の何処にもない。タバサの欲求は募る一方だった。
「はぅぅん……、お父さん、お父さん、痛かったの? 苦しかったの? 知りたい、知りたいよぉ……」
奴隷の服をまといながら思い耽る。奴隷時代の父親が魔物に虐待される光景を妄想し、また自身もなぶられているような錯覚にさえ陥っていた。
振り下ろされる鞭の音。
皮膚を裂くような鞭の痛み。
尊厳を踏みにじる罵声の数々。
奴隷たちの寝床に転がりながら、タバサは愉悦に浸るばかりだ。その小さな胸のうちに秘められた欲求は、解消されるどころかどんどん高まっていく。
「はぁ……、はぁん、お、お父さぁん……、んっ!」
くちゅり、にちゅりと、タバサの秘部に指先が走る。そこは既に湿り気をおびており、ねっとりといやらしい糸を引くほど。
父に対する想いと、被虐的な心が混じり合い、タバサはますます拗らせていく。
そこに転がっているのはグランバニア王女だったのか、それともボロ布を体に巻き付けた奴隷だったのか。何にしても、ここはセントベレス山の頂上。近寄ろうとしても容易に訪れることのできない光の教団の拠点。
彼女の妄想オナニーという奇行を止められるものが現れるはずもなく、あられもない喘ぎ声は誰の耳に届くこともなく響き渡り続ける。にっちゅ、くちゅと濡れそぼる幼い秘裂はとろとろに愛液を滴らせては淫臭も漂わせる。
タバサが我に返るまではまだしばらく時間を要し、気を失うまでプチ絶頂を繰り返しては「お父さん、お父さん」とうわ言のように呟き続けていた。
普段の彼女を知るものなら決して誰も想像だにしていなかったことだろう。
勇者の妹が、こんなにも浅ましい生き物だったなんて――……。
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セントベレス山から奴隷の服を持ち帰ったタバサはますます拗らせた。
誰にも見つからないように隠し持つようになり、こっそりと着てみたり、臭いを嗅ぎながらオナニーに耽るのも日課になってしまっていた。
グランバニア城でするだけに留まらず、時折外出してはこれまで父と旅してきた町やダンジョン、はたまたかつて父が歩んできた旅路を辿っては妄想オナニーに耽る。
一歩間違えれば人目につきそうな場所も選んだ。大声を出したら王女としても人としても終わるような場所でも構わず、タバサは妄想を捗らせた。
奴隷という過去を持ち、どんな気持ちで父は旅をしてきたのだろう。どんな辛い気持ちを束ねて生きてきたのだろう。苦しくはなかったのだろうか。ひょっとすると何度も虐待を受けた記憶を思い出していたのかもしれない。
そんな確証など何処にもないが、タバサの妄想はエスカレートする一方だ。
次第に、お忍びでこそこそ隠れて訪れるのではなく、王女の立場として訪問した際にまでこっそりと人の目を盗んでオナニーに耽るなど、大胆な行動もとるようになっていった。
声を聞かれたらバレるかもしれない。
スカートのすそをめくられたらバレるかもしれない。
もし自分が着ている服の下に奴隷の服を巻き付けていると知られたらどうなるか。
そんなギリギリのスリルまで求めてしまうほど悪化していた。
平和となったこの世界に、ここまで拗れて膨らんだタバサの情欲を満たせるものなどないに等しい。妄想オナニーはタバサにとって唯一の娯楽だったといってもいい。
まさか国の民も、世界を救ったグランバニア王女が不純な気持ちを抱いたまま世界中で妄想オナニーして回っているなどとは思うまい。
ほんのりと火照り赤くなった顔を見かけたとしても、少し疲れているのかと思う程度で、被虐的な妄想を拗らせて興奮しているとまで誰が気付けようか。
そんな爛れた日が続いたある日のことだ。
その日、タバサが訪れたのは妖精の城だった。
中央大陸に存在している聖なる湖のほとりにひっそりと存在しているその城は、霧が立ち込めており、普通の人の目には映らない。
妖精のホルンを持つ者だけがその存在を認知できるようになる神秘的な城。人の世とは少し隔絶された不思議な雰囲気を醸し出す、人智を超えた領域とも言える。
名目としては勿論、グランバニア王女という立場として。
しかし、本当の目的はこの城に飾られている不思議な絵だった。
はやる気持ちを押し殺しながら、タバサは階段を上っていき、その部屋を目指す。
この場所は立っているだけで夢の中にいるような心地にさせてくれるが、中でも不思議な雰囲気に包まれているのがこの絵だった。
それは人の心を映し出し、思い出の場所へと誘ってくれるのだという。
以前に、タバサの父はこの絵を通じて、ほんの少し過去を覗いてきたといっていたのを覚えていた。夢幻ではない、本当に不思議な力を持つ絵なのだ。
もし、今のタバサが求めるものがあるとするならば、平和になる前の世界。それは決して世界を救ったものが望んではいけない想い。
その部屋に誰もいないことを確認し、タバサは絵の前に立つ。
もう既に吐息は荒く、興奮を覚えていた。指先は自分の体をなぞり、秘所を弄る。
「はぁ……、はぁぁ……、本当に不思議な絵。吸い込まれそう……」
いつだったか、この城を治める妖精の女王は言っていた。妖精には時の流れを変える力はないと。だが、タバサの父はこの絵を通じて確かに過去を変えていた。
ひょっとしたら、何かを変えられるのかもしれない。変えてはいけない、何かを変えてしまえるのかもしれない。
想像するだけで興奮する。
妄想に固執したタバサの頭にあることは、父のことと、被虐的な想いがいっぱい詰まっているだけだったが、一番にあったことは勿論、奴隷時代の父のことだ。
どれだけ苛烈に痛めつけられていたことか、想像するだけでゾクゾクしてしまう。
「お父さん……、お父さん……うぅ」
くちゅ、にちゅぅとタバサの指先が濡れ、愛液は床にポタポタと零れる。
神聖な場所にあるまじき行為だが、今さらタバサには止められようもない。