「もぉぉぉ〜……」
机に並べられた雑誌の数々。
私はその上で突っ伏している。少しむくれてカレンダーを覗くともうすぐソラちゃんの誕生日。期限が迫っているのに一向に渡すプレゼントが決まらずさっきからずっと一人で唸っていた。
「もぉ〜……牛になっちゃいそうだよ〜!」
頭をグジャグジャ掻き毟る。色んな雑誌のページが忌々しく目に映る。女性雑誌に流行雑誌、洋服関連、化粧品関連。プリホリはお店に行っちゃうと私がいろいろ見回っちゃうからアレだけど、とにかく何も決まらない。
ソラちゃんはきっと優しいから、何をあげても喜んでくれる。それをわかってるから悩んでる。喜んでくれるならちゃんと良い物を渡してあげたい。そう心が決めている。
「ましろ〜ん。そんなに雑誌広げてどしたん〜? 話聞こか?」
「あげはちゃん……」
ちょっと泣きそうになったところに片手にエナジードリンクを持ったあげはちゃんが来てくれた。目の下のクマが凄いけど私の相談に乗ってる場合なのかな?
「大体察するけど、ソラちゃんの誕プレ?」
「うん。全然決まらなくて」
エナドリをすすりながら、あげはちゃんも雑誌を覗く。
「だよね〜。私も全然キマッてないや」
「それどっちの意味?」
「ソラちゃんめっちゃ優しい子だから、何あげても絶対素直に喜んでくれるんだもんね〜。分かるよ〜分かる分かる」
「うん……でも……なんかこう、ちゃんとしたものあげたいっていうか、なんかこう思い出に残るものをあげたいんだ」
「それな〜。ましろんからのプレゼント。ソラちゃんは一番喜んでくれるだろうな〜」
「あ、あげはちゃんっ……!」
「んなはは! じょ〜だんじょ〜だんっ」
ヒラヒラ手を振りおどけるあげはちゃんにからかわれて顔が熱くなる。
そりゃぁ、好きな人にあげるプレゼントなんだから……ちゃんとしたものにしたいのは誰だって同じだもん。そんなのはあげはちゃんもツバサくんも分かってる。
「んえ〜? そんなに迷ってるんだったら、もう全身にリボン巻いて『私がプレゼントだよ? ソラちゃん♡』とかやったら?」
「あげはちゃん昨日寝た?」
「2徹」
「あぁ…………」
やっぱりあげはちゃんも最近忙しいだよね。ビックリすぐらい寝てないのはあんまり触れないでおこう。
「本人には直接聞いたりしたの?」
「それは……その……」
『ましろさんから貰えるものならなんでも嬉しいですよっ!』
「って……」
「あ〜ね。ソラちゃんらしいっちゃらしいね」
「そんな単純でいいのかなって……」
「ん〜確かにね……」
会話が止まってしまった。ちょっと本気で泣きそうになってきた。大切な人の誕生日プレゼントでこんなに悩むなんて思ってなかったから、悔しいな。
ソラちゃん。今何やってるのかな……。
「ふふっ」
「むぅ?」
あげはちゃんが不意に笑った。
「何?」
「いやいや。二人とも熱々だな〜って思ってさ」
「茶化さないでよ」
「うんうん。思い悩むは好きの証。思い応えるは愛の証。命短し恋せよ乙女。ってね」
「何それ……?」
「ん? 今考えた」
にへら、と笑うあげはちゃんの顔はいつも通りの保育士らしい笑顔だった。
「なにそれっ」
つられて笑った私の顔もきっと変わらぬいつもの顔に戻れたと思う。
「愛……か」
…………
「ぅぅぅぅ〜……」
「あの〜……ソラさん? もうそろそろいいですか?」
「ぅぅぅぅ〜……」
「…………ダメだこりゃ。どうしよう。ベリィベリーさんに頼むしかないかな……」
ましろさんとの会話でぜっっっったい失敗してしまった部分がある事をここ最近ずっと思い悩んでいるわたしは、仕事もまともに手がつかずにいた。
絶対失敗した。
『ソラちゃん……誕生日に……何が欲しいとか……ある?』、とか聞かれるなんて思ってなかったからつい無難な受け答えをしてしまった。ましろさんに負担をかけたくないと思ってしまったばっかりに! これじゃあ逆だってあげはさんから学んだでしょう! ソラ・ハレワタール! ましろさんはちゃんと考えてくれる人だって教えてもらったでしょう! やってしまった。失敗した。今頃絶対ましろさんは悩んでる! しかも真剣に!
「ソラ、居るのか? ……って、なんだ居るじゃないか」
「あ! ベリィベリーさん!」
「ん? あぁ、プリンセスの。どうした?」
「すみません。こちらにサインを……」
「あぁ、すまないな。この手のものは私に回してくれ。代わりに片付けるよ。見ての通り、我が隊の長は使い物にならなくてな」
だからと言って本当に欲しいものなんてある訳でもないし、むしろ、ましろさんと居られるならそれで良いし、だからって、そんなことを直球に言ってもいつもの常套句みたいに終わってしまうのもな〜って思ってしまうし、いやいやでもでも、好きな人には思いを直球に伝えるのが一番ですから! それは変わらないと思います! ねぇ! スカイランドの皆さん! ソラシド市の皆さん! 初恋が叶った時の気持ちの昂りなんて絶対に忘れられない思い出ですよ! いやだからって、そんな欲しいものを図々しく頼むなんておこがまし…………
「ゔぅ゙ぅ゙〜〜!!!!!」
「段々、狼みたいになってきましたよ。髪の毛ってほんとに逆立つんですね」
「ダークエナジーが入ってない事を祈るしかないな。目がギラついてる」
「ツバサくん!」
ガタン、と思い立ち立ち上がる。答えが出ないのなら他の人に助言を貰いましょう! 私はそう学びました!
「はい。今からの会話で一回でも『ましろさん』って単語を出した瞬間僕は怒りますからね」
「ましろさんとの会話に失敗したかも知れません! たすけてくださ〜い!」
助けを乞うと何故か青筋を浮かべたツバサくんは拳を振り上げ、何故かいつの間にか後ろに居たベリィベリーさんがそれを止める。
「はい出てきた! もうキレました! ブッチしました! 僕がここに来て貴方の『少し待ってください!』から1時間も放置されていたことに今! 僕の心は怒りに燃えています!」
「ま、待てっ! 落ち着け! 1時間も放置されていたのはアレだが、コイツは真剣に悩んでしまうのが長所で短所だ! 何かあったんじゃないのか!? 話は聞いたんだろう!?」
「聞きましたよ! さっきから唸ってたからずっと! そしたら待ってくださいの一言ですまされましたよ! ブン殴ります!」
な、なんでツバサくんは怒っているのでしょう? わたしは確かに待ってくださいと伝えたのに……。
数分ジタバタ暴れたツバサくんは呆れたようにわたしの顔を見て振り上げた拳を下ろしました。
「っ───はぁ……分かりました。分かりましたよ。で? 何が何ですって?」
「はい……ましろさんとの会話にミスがあったというか……受け答えが曖昧だったと言いますか……」
「なんだ? 惚気か?」
「でしょうね。僕も聞きたくないです」
「真面目に聞いてくださいよ〜!」
「真面目に聞きたいんですよコッチは」
わたしが事の経緯を説明すると、ツバサくんとベリィベリーさんはまた呆れた顔をした。まるで、何度も同じ話を聞かされているかのような。
「別にいいんじゃないのか? それで」
「欲しいものがないのに無理やり思い浮かべようとしても仕方ないでしょう?」
「で、でもでもっ! その手の答えた方はダメだ、って……あげはさんから教えてもらったんです……」
恋愛相談の相手として、よくあげはさんに頼っているのには理由がある。それは、ましろさんの幼馴染だということと、亀の甲より年の功。歳が近い上にそういう相談も進んで乗ってくれる優しさに甘えているという点があるからだ。ちゃんと相談には乗って解決まで導いてもらったこともあるし、実際にあげはさんのアドバイスが効いたときもあった。
だから今回の話も全部信じてしまっているわけで。
「あのね? ソラさん。あげはさんの話が必ずしも正しい訳じゃないですよ」
「え?」
「あの人の話はあくまで間を取り持った場合の話です。でも、今回はあなたとましろさんの話なんです。僕達が口出し出来るような事ではありません」
「…………」
(凄いな……真面目に聞いてる人初めて見た)
ツバサくんの言う通り、これはわたしとましろさんの問題だ。むしろ一方的に押し付けてしまったわたしの問題。解決策なんてましろさんに会わないと何も始まらないものばかりだ。
「でも……だとしたら、どんな顔をして会えば良いのか……」
「だから、いつも通りでいいんですよ。そして、申し訳ないと思ったのならいつも通りに謝ればいいじゃないですか。あなた達はそういう人達でしょう?」
「ツバサくん……」
(へぇ……こうやって対処してるのか)
「分かりました……わたし、やってみせます……!」
「まったく……何に悩んでるのかと思えば……」
「ツバサくんのおかげで少しは楽になりました」
「これからはちゃんと仕事してくださいね。頼みますからマジで」
まだ少し青筋を浮かべたツバサくんはなぜだか笑顔だったのを覚えています。そして、少しの不安を抱きながら、手渡された書類を片付け始めた。
…………
そうしてやってきたわたしの誕生日。
なぜだか少し胃が痛い。いつも通りにする、と鏡の前で何回か唱えてきたはいいのだが、いざソラシド市へ続くトンネルをくぐり家の前に立つとどうしてもその覚悟が揺らいでしまう。
「ただいま戻りました」
なるべく平常心で玄関を開ける。
「おかえりだよ。ソラちゃん。ひさしぶり」
ふわり、と優しい笑顔で迎えてくれたましろさんは本当にいつも通りでわたしの心を安心させてくれる。
「皆と予定合わなくて残念だったね〜」
「っ……はい、そうですね……」
今日はわたしとましろさんの二人だけなのに、作っていた料理を並べているましろさんの話が頭に入ってこない。
こんな事をしているよりも先にやる事があるんじゃないのか? こんなに淡々と時間が過ぎて良いのか? 鼓動が異常に早くなり、冷や汗まで少し出てきた。
「それでね。あげはちゃんがさ〜」
「あ……はは……」
食事の会話も頭に入ってこない。早く、話題を切り出して謝らないといけないのに何も出てこない。きっと迷惑をかけたんだ。早く謝ってしまわないとこの気持ちを抱いたまま、祝福なんてされたくない。ましろさんにだけは絶対に負の感情を───
「……ソラちゃん」
「っ……は、はい!」
「ご飯。美味しくなかったかな?」
「え───」
劈くような声じゃないのに、耳が一瞬聞こえなくなった。刺されたわけじゃないのに、心臓が一瞬止まった。終ぞその感覚が止まることはなく、ましろさんの顔は普段通りだけれど、普段通りのましろさんからは想像もできない言葉が飛んできたから焦りに焦りが重なった。
『言わせてしまった』。
その感覚だけが、わたしの中を駆け巡った。
「そ、そんなことありません! そんなわけないです! ましろさんが作ったご飯なんですから世界一……いいや、宇宙一美味しいです! だから……」
「っ……っっ……そっか……」
ましろさんは下を向いて悲しんだ。
きっと悲しんでいる。下を向いているから表情は見えないが、嗚咽が混じった声を出している。
やってしまった。ついに、やってしまった。
まともに答えることも出来ずに、ましろさんにだけ押付けてしまって、自分はのうのうと暮らしていた。
きっとこの料理だって、ずっとずっと考えてくれていたろうに。今日の事だって、ずっとずっと考えてくれていたろうに。わたしは全部蔑ろにしてしまった。
最低だ。最低な人間だ。何がヒーローだ。誰かを悲しませるヒーローがあるか。こんな、1番大切な人をこんな…………
「っ……ふふっ……あっははははは!」
そして、ましろさんは顔を上げると、とびきりの笑顔で笑っていました。
「え───?」
「ソラちゃん……ふふっ、焦り過ぎだよ。何気にしてるかわかんないけど、別に私は怒ってないよ?」
「え? ……あ、そうなんですか!? いや、あのえっと……」
「落ち着いて、落ち着いて。顔、やっと見せてくれたね。ソラちゃん」
「あ……」
相変わらずだね、ましろさんははにかんで呟いた。なんだかその笑顔にわたしも思わずつられてしまった。
勢いで立ち上がってしまったわたしはとりあえず座り直して、ましろさんを見つめ返した。
「さっきからずっと上の空だったから何かあったのかなって思ってさ」
「それは……その……」
「私、ソラちゃんのお話は全部受け止めるよ?」
「っ……」
そうだ。この人はそういう人なんだ。
そして、そういう所にわたしは惹かれたんだ。
思い出し、躓いて、またわたしは立ち上がった。立ち上がったと言うよりは、顔を上げた。
「わたしは、ましろさんに謝らないといけないです」
「謝る……? なんで?」
「た……誕生日プレゼントの事を聞かれた時に、『なんでもいい』なんて言ってしまったから」
「うん」
「それで……ましろさんに全部押し付けてしまったような感じになってしまって、それをずっと最近悩んでて……」
「うん」
「だから……もっと良い答え方があったんじゃないかって思って、それで……」
曖昧で、情けない、言葉も綴れないわたしの声を、ましろさんは優しく聞いてくれる。大切な人が用意してくれた日に答えてあげられなくて今、本当に泣きそうになっている。
「そっかそっか。でも、それを考えてる間も楽しかったよ?」
「楽しかっ……た? ですか?」
「うん。ソラちゃんがどうしたら喜んでくれるかな? とか、どうしたら驚いてくれるかな? とか、どんな事をしたら笑顔を見せてくれるかな? とか、今日という日を待ち望んでたのはソラちゃんだけじゃないよ。私もずっと待ってた」
「ましろさん……」
「だから、今日はソラちゃんのしたい事も、して欲しい事も、全部聞くよ? プレゼントは明日二人で買いに行こうって言おうとしてたんだ」
ごめんね、と少し困ったような笑顔を作って肩をすくめるましろさん。なんだか許されてしまったような気がして、わたしは椅子にへたり込むように座った。
「だから、ありがとうソラちゃん。私に素敵な時間をくれて」
「…………ましろさん」
本当にこの人は眩し過ぎる。何もかも全部。こんなわたしにも笑顔を向けてくれるあなたが、わたし自身には勿体ないほどに。
「何言っても良いんですか? 本当に?」
「うん。私に出来ることならね」
わたしの顔はきっと赤い。恥ずかしいとかじゃなくて、邪な事ばかりで頭がいっぱいだから。
「二人きりに……なりたいです」
「? 、それって、どういう……?」
「えと……正確にはましろさんの部屋に……行きたいですっ……」
…………
そうして、食事の途中だったのにわたしとましろさんは部屋の中で二人きりの空間を作り出した。
「え……と……」
「っ……」
二人きりの空間なんてもう慣れているものだと思っていたのに、今日はやたらと緊張する。ベッドに座った微妙な距離を保った私達がそれを物語っている。
そして、わたしはここである違和感に気づいた。どうして、ましろさんの方まで緊張しているのか? 、と。何かおかしいと思いましろさんの方をむくとなんだかしきりに服の中を確認しているように見えた。
「ましろさん?」
「え、あぁっ! うんっ! えと……なんだっけ!?」
ましろさんの方もわたしみたいに緊張しているのか、呼びかけるとひっくり返った亀のように手足をバタつかせている。
「な、なんでましろさんまでそんな感じなんですか……?」
「っ……えぁ……その……」
落ち着かない様子のわたし達は互いに何故か探り合いを入れていく。
「きょ、今日は多分一緒に寝るだろうし、そういう事もするんだろうなって思って、その……し、下着……新しくしたから……」
「っ……!?」
『下着を新しくした』。
その言葉を聞いた瞬間、わたしの理性は飛びそうになる。しかし、崩れ落ちそうな理性を何とか保ちながら、わたしはましろさんの手を取った。
「それは、今日の為に用意してくれたんですか?」
「……っ」
ましろさんは俯きながらも頷いてくれた。
ゆっくりと、ましろさんをベッドに倒して上へ被さるわたしはどんな顔をしているのだろう。そんなのは目の前にいるましろさんの表情を見れば分かる。
「ごめんね……ソラちゃんの誕生日なのに。こんなものばっかりで……」
「謝らないで下さい。それなら……わたしも一つ良いですか?」
「え? うん」
わたしの下で拗ねる貴方の顔はさっきよりも不安そうで。わたしまで同じ顔になってしまう。だからと言って、ここまでしてくれたましろさんに無下になんて出来ない。むしろ、望んでいたものがそこにあるのならわたしはずっと嬉しいから。
「わたしも、今日はこうなってしまいたいと望んでいました」
自分の顔が見えないから今どんな顔をしているのかは分からない。上手く笑えていますか? 取り繕うことなく向き合えていますか? 誰の、どんなものよりも、貴方との一瞬の方が欲しい。そう願うようになったのは手を繋ぐよりも先の事を覚えてから。
「他の人のどんなものよりも、あなたが欲しかった」
「っ……」
言ってしまったわたしも、聞いてしまったあなたも、分かりやすいぐらいに顔を赤くしてしまった。巡り会った月明かりの部屋の中でもひと目でわかる程に、熱が浮かんだその顔に惹き込まれそうで怖かった。
「そんなの、ストレート過ぎだよぉ……」
恥ずかしさのあまりに目に雫を浮かばせるあなたの瞳に触れて、その雫を拭う。
「少しでも躊躇ってしまったらもう触れられないと思ってしまって」
どうしようもなくアンダークとの戦いの日々は奪い合う日々だったから。守りたいものとか、大切なものが出来た時に、近くに置いておかないとずっと不安になってしまう。そんなふうになってしまったのも、貴方の温もりを知ってから。
恥ずかしがる貴方の頬に手を添えて子供をあやすような笑顔を零してしまった。
「ましろさん。綺麗ですよ」
ここにいる貴方の確かめるように。言葉を染み込ませる。見えない心を表す言葉。見えない心を顕す体。巡り会った心が呼び合うように見つめ合う。通じあっているわけじゃないけれど、胸の鼓動がまた速くなっているのは分かる。
「今更なんだけど……やっばり恥ずかしくなってきた……」
「なら、それよりもめいっぱい愛させてください。恥ずかしさなんて消えるくらい」
繋ぎ止める手のひらはしっかりと握られていて離そうにも離れない。暖かくて、優しくて、柔らかなその手のひらに絆されて。望んでいたものが手に入る感覚はいつの時代も変わらないもので。自分が卑しい女に思えてきてイヤになる。
「それって、今私が想像してるより凄いことする?」
明日を照らす歌を聞きに来たはずなのに、わたしはこうして貴方のナカに手を入れている。それでも、すれ違いを起こしてしまっていたわたし達はまだ慰めを謳っている。
「さぁ、どうでしょう」
ましろさんのセリフを半分流して、わたしはましろさんの足を持ち上げその綺麗な太ももに口付ける。
「やっ……ちょっ……とそんな所っ……!」
口を離すと、そこにはもちろん赤い痕。ここならスカートで隠れるぐらいの位置のハズ。
「もちろん、全部頂いてもいいんですよね?」
「うん……ソラちゃんにならっ……全部」
口が小さく嘲笑うように動いてしまう。わたしはきっと悪い顔をしている。でも、良いと言われた。だから、据え膳食わぬはヒーローの恥です。
「嬉しいです。じっくり堪能させてもらいますね。ましろさん」
「っ……うんっ」
じっと見つめるその顔はきっと何かを期待して。
解いた髪が視界をあなただけにする。
明日のことを願いながら、わたしは真白の光に溶け込んだ。