「失礼致しますわ。」
コンコンとドアをノックして、セシリアは室内に入る。
(ここに入るのも九月以来ですわね、、、)
立派な生徒会室の中には、楯無、簪、布仏姉妹、、、生徒会メンバーが勢揃いしていた。
「よく来たわねオルコットさん。」
『歓迎』と書かれた扇を広げて、大胆不敵な笑みを浮かべている楯無。簪はペコリと一例。メイド姉妹は深々と頭を下げる。
「どうしてあんなに自信満々なんでしょうかあの方?」
「生徒会長ですから。」
「アニメですの?」
そんなセリフがスルリと出てくる辺り、セシリアはだいぶ日本に染まっていた。最初はイギリス貴族である自分が極東の島国になんて!と思ったが、そのおかげで自分は大切な人や仲間に出会えた。渋々ながら両親に従った自分を褒めてあげたい。
(そういえば、、、なんであの方達はわたくしの日本留学を決めたのでしょう?)
そんな疑問がふと頭をよぎる。あの人達は生粋のイギリス人のはずだが。
いや、そんな事よりこの方達と話さなければならない事がある。自分達の今後について。
「まぁ座ってオルコットさん。飲み物は何がいいかしら?」
「ありがとうございますわ。でしたら紅茶を。」
「分かったわ。本音、午◯のミルクティーを。」
「あんなトンチキなものは飲みませんわよ???」
「冗談よ、冗談。」
楯無はケラケラと笑う。全くこの人は、とこの場の全員が思った。
「と、まぁ、冗談はここまでにして。」
不意に楯無が真剣な表情を浮かべた。セシリア達は自然と佇まいを正す。
楯無が運ばれてきた紅茶を一口口にしてから告げる。
「一夏君の事、、、どう思う?」
ちょっと場が乱れたが、集まったのは本来そういう目的だ。自分達が付き合っている織斑一夏が、実は他の世界から来た転生者だった、、、。まるでアニメかラノベの世界だ。そんな思考がスルリが出てくる辺り、セシリアはだいぶ日本に染まっていた、、、さっきも書いたなこんな文。
「わたくしもちょっと気持ちの整理が出来ていませんの、、、まさか一夏さんがーーーーー」
「ええ、、精神年齢が年上だったなんて、、!」
「そこは大した問題ではありませんわよ?」
何を言っているのかと言わんばかりの目を向けるチェルシーに対して、こちらも何を言っているのかという目を向けるセシリア。いや、確かにアイデンティティの問題とかあるかもしれないけど。
「確かに由々しき問題ですね。」
うんうんと頷く虚。その隣で妹が「えぇ、、」と言わんばかりの目線を向ける。
「ま、まぁ、それは置いておいて。」
楯無が空気で作った荷物を手に持って、脇に置くジェスチャーをした。古い、古いよ会長。
「更識さんは何をしていますの?」とセシリア。「言わないであげましょう」とチェルシー。
「まさかおりむ〜がてんせいしゃ?だったなんてね〜。」
「一応確認なのですが、"転生者"というのは一度死んで生まれ変わった?人間という認識で間違いないのでしょうか?」
「そう。現代日本人全ての憧れ。」
簪がフンス、と鼻息を荒くしながら熱弁する。それは人によるのではないか、とセシリアは思った。もし自分だったら100回死んで生まれ変わっても、100回自分に生まれ変わるだろう。そうしないと一夏に出会えないし。
「一夏さんの話では、「ガイちゃん」という女神様に生まれ変わらせてもらったと聞きましたわ。」
「ネーミングセンスが死んでるわね、、、。」
その時、楯無に壁のようなプレッシャーが!ち、違うんです女神様!この子は正直なだけなんです!
「つまり、、、あの一夏君は元からいた織斑一夏君を乗っ取ったって事?」
部屋が静まり返る。問題はそこなのだ。これから彼にどう接すればいいか、そもそもこれは放っておいていい問題なのか。ティーンエイジャーの少女達には荷が重い。
「あの、、思ったのですが、、、。」
チェルシーがスッと手を上げる。部屋中の視線が彼女に向けられた。
「一夏様は、もしかしてテレビ、の企画でああ言ったのではないでしょうか?冗談を行なって人を騙す番組が日本にあると聞きました。」
「そんなトンチキな番組がございますの????」
「あるのよねぇ。」
「会長ものすっっごく笑ってたもんね〜〜」
ああ、そういえば思い出した。確か鈴さんの家のテレビで放送されていた。その時は自分は「極東には変わった文化がございますのね」と冷めた視線で見ていたはずだ、、、え?今思ったけどわたくし普通に鈴さんの家に入ってる?そんなの親友じゃない。
「いえ、それはないわね」
「うん、ありえない」
更識姉妹は当然、とばかりに首を横にふる。
(まぁ、、そうですわよね)
織斑一夏は、、真摯な男性だ。例え頼まれたとしても、自分達恋人を騙すなんて真似はしない。そうじゃなきゃセシリア達が彼を好きになるはずがない。
それにセシリアには、あの時の一夏が冗談を言っているようには思えなかった。楯無達もそれはもちろん分かって、
「あの時軽く周りの気を探ってみたけど、校内にテレビ局の人らしき反応はなかったわ。数回やってみたから間違いないわね」
「念の為半径数十メートルをスキャンしてみたんだけど、怪しいカメラの類は検出されなかった。だからアレはドッキリじゃない。断言する」
先程の言葉を撤回しよう。とても力押しでそういう決断になったみたいだ。生徒の長ともなると校内の人の情報が全て分かるようになるのか。分かってたまるか。
あと妹。まだ高一なのにそんなスパイみたいな事が出来るの?祖国ではないが、セシリアはこの国の行末が不安になった。
「ではやはり一夏様の話は本当、という事でしょうか」
「そうだと思うわ。一夏君はそんなタチの悪い冗談を言う人じゃないし」
あ、そこはちゃんと分かってくれているんだ。良かった。セシリアは安心した。
「ところでセシリンはどう思ってるの〜〜?」
せ、セシリン、、?ま、まぁとにかくセシリアの脳内に思い浮かぶのは、あの幼馴染ズとドイツ軍人だった。
「わたくしは特に気にしてませんわ。わたくしは今の一夏さんを愛していますもの。だけど、、箒さん達が、、、」
「そうね、、、」
箒と鈴、そしてラウラは前の織斑一夏が好きだったのだ。それがガワが同じで全くの別人になってしまったのだ。三人とも混乱は必至だろう。てか言い方酷いぞセシリア。
「そこは箒ちゃん達を信じるしかないわね、、、いくらこの私でも経験がないもの、こんな事案」
「そうですわね、、」
流石の楯無会長でも、こんなオカルトの対処法はないみたいだ。あったら怖い。
「、、、わたしは大丈夫だと思う」
小さいながらもハッキリとした声でそう告げたのは、簪だった。顔をしっかりと上げると、そこにはキリリとした顔があった。
「例えあの一夏が箒達の知る一夏じゃなかったとしても、、全てが無意味なんてありえない。私たちの思い出が、、、全部無くなる訳じゃない」
楯無が潤んだ目で手を口に当てる。幼少期はいつも自分の後ろに隠れてオドオドしていた妹がいつのまにかこんなにも成長して感動していたのだ。原作を読んだ皆様なら分かると思うが、彼女は若干シスコンだった。
「ねぇ!わたしの妹、立派過ぎじゃない!?」
「そうですわね、、」
セシリアは力強く頷く。因みに同意したのは簪の言葉についてだった。一人っ子のセシリアには楯無の気持ちはよく分からなかった。後ろのメイドは何か同意するように頷いていたが。
(一夏さんとわたくし達の間には、確かに"絆"がありますわ。箒さん達だって、、それは分かっているはず)
そう、、消えたりはしないのだ。織斑一夏が自分達に向けてくれた愛は。箒達が彼に寄せた、想いは。
(きっと、、箒さん達なら大丈夫ですわ)
セシリアは同じ男性を好きになった、"仲間"に思いを馳せた。
「それはそれとして、おりむーが心配〜。きっと凄く落ち込んでいるんじゃない〜?」
「それは、、そうですね。」
もしかしたら織斑一夏は、箒達に見捨てられると思っているかもしれない。もしかしたら思い詰めて、、、数日前から連絡しているのだか、一向に返信がないのだ。いつもは数秒待たずに返信してくるのに、ありえない事だった。
「それについては私に策があるわ」
「策、、、ですか?」
「ええ、、もうすぐ"アレ"かあるじゃない?」
「うん、"アレ"だね」
「"アレ"ですね?」
「"アレ"だね〜」
「主語と述語を入れて喋ってくださいまし!」
ごめんごめんと舌を出したのち、楯無はバッと扇子を広げた。そこには、「聖夜」とデカデカと書かれていた。
「近々開かれる、生徒会主催のクリスマス会、、、そこで私たちの気持ちに決着をつけましょう!」
12月25日。日本、、、いや世界で一番聖なる日。街中にはクリスマスツリーが立ち並び、幸せそうな人達が歩いている。
そして、、、この「インフィニット•ストラトス学園」もクリスマスムード。体育館は煌びやかな飾りに覆われ、ドレスコートをした生徒達で賑わっていた。その中には我らが主人公、織斑一夏の姿が。
ーーーーークリスマス会が始まる。
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