休憩時間が始まって早々ひと悶着あったが、俺たちは無事に涼しそうな木陰で一息つけた。幸いまだ休憩時間は残っている。弁当を食べ終わった後でもしばらくはゆっくりできるだろう。
「じ、じゃあ一夏、口汚しにならなければいいのだが、、。」
「大丈夫だって!箒の料理だったら、例え白米しかなくても喜んで食べるぜ!」
「それは料理と言えるのでしょうか、、?」
失礼なチェルシー・ブランケットさん。白ご飯だって立派な料理ですよ?よく考えなくて炊飯器を動かしたら、ご飯が焦げ焦げにして親にこっぴどく られたやつだっているんですから。あれは怖かった、、。
「で、ではいくぞ。」
箒が緊張した様子で赤色の重箱を開けると、中には巻き寿司、玉子焼き、ウインナー、ブロッコリーなどがよく整理されて収められていた。見ただけでテンションが上がる弁当だ。やったぜ!
「ふふ、一夏様、目を輝かせていますね。」
「そりゃそうですよチェルシーさん!正直ショーケースのトレーディングカードを眺めているよりもテンション上がります!」
「なんかオタクみたいな感想ね、、。」
凰鈴音の呆れたセリフにグサッときていると、箒が箸で卵焼きをつかみ、こちらのほうへと持ってきた。
「い、一夏、あーん、だ。」
「!!?」
俺の脳内に動揺が走る。ま、まさか、これは伝説の「あーん」なのか!?恋人持ちの真の勝ち組しか許されないあの伝説の!?(二回目)
「い、一夏、早く口を開けろ。恥ずかしいから///」
幼馴染に真っ赤な顔でそう言われれば断らぬのが男というもの。俺も顔を赤くしながら卵焼きに食らいついた。
「ど、どうだ一夏?」
「凄い美味い、、なんて言えばいいのか分からないけど、安心する味がする。」
「そ、そうか、それはよか「はいはい、そこまで!一夏、次は私の酢豚をありがたく味わいなさい!」鈴音!?」
俺と箒のラブコメ空間ににゅっと入ってきたのはもう一人の幼馴染、凰鈴音。彼女も同じように酢豚を俺のほうへと持ってきた。
「ほ、ほら一夏、あーん///」
幼馴染に真っ赤な顔でそう言われれば断らぬのが男というもの(二回目)。差し出された酢豚を口に入れると、甘辛い味が口いっぱいに広がって、まさに中華って感じだ!
「ど、どう?一夏。」
「これはマジで美味いな!本職の人にも負けてないんじゃないか?」
「と、当然よ!何たってあたしが作ったんだからね!」
凰鈴音がドヤ顔を決め込む。若干照れているように見えるのはご愛嬌。
「い、一夏さん、私のも!」
そう言って一見普通のサンドイッチを見せてきたセシリア・オルコットさんだったが、俺は思わず顔が引きつった。読者の諸君なら言わなくても分かると思うが、見た感じ完璧美少女お嬢様のセシリア・オルコットさんだが、一つとんでもない属性を持っている。それはメシマズ属性。原作やアニメでは、見た目はまとも、中身は劇物な料理を数多く制作し、織斑一夏やヒロインズを撃沈させてきた。特に運動会編での激辛トムヤムクンは酷かった、、具材は伊勢海老などの高級食材だったから余計に酷さが極まっていた。あの巻を読んでからしばらく辛い物を食べられなかったからな。
「一夏さん、あ、あーん。」
端正な顔を赤くして(多分)サンドイッチを近づけてくるセシリア・オルコットさん。対照的に俺の顔は真っ青だった。いや、この世界で彼女の料理を食べたことないからメシマズだと決めつけるのは失礼だと思うのだが、何分、原作で彼女の料理が猛威を振るっている様を目の当たりにしたので尻込みしてしまうのだ。やたら甘いサンドイッチとか、激辛トムヤムクンとか、トムヤムクンとか。
「い、一夏さん、、。」
ああ、セシリア・オルコットさんが不安そうな顔になっている。親しい友達が自分の作ったサンドイッチを一向に食べようとしないのだ。無理もない。俺も同じようなことされたら一週間は寝込む自信がある。サンドイッチ作ったことないけど。サンドイッチぐらい作れるようになれよとかうるさいぞ。
(いや、この世界は原作とは違う、もしかしたら彼女の料理は普通かも、、!)
俺がそう思っているとチェルシー・ブランケットさんの方から視線を感じた。彼女のほうを見ると、彼女はとても申し訳なさそうな顔をしている。彼女がメシマズだと確定した瞬間だった。慈悲はない。
「う、うう、、。」
ヤバい!セシリア・オルコットさんが泣きそうな顔になっている。このままだと俺は我が身可愛さに大切な友達(女子)を泣かせた最低な男になってしまう。もはや退路は断たれた。
(彼女の優しさを無下にするな!織斑一夏、いっきまぁぁぁあす!!)
俺は彼女のサンドイッチに(やさしく)かぶりついた。
「一夏様。紅茶です。」
「あ、ありがとうございますチェルシーさん、、。」
結論から言うと英国お嬢様のサンドイッチは信じられないぐらい甘かった。原作で織斑一夏が言ったように確かにバニラエッセンスが使われていると思う。だがそれを差し引いても具合が悪くなるぐらい甘かった。いったい何入れたんだ?砂糖か?いや、砂糖ではこんな殺人的な甘さを出せないだろう。まさか俺が知らないこの世界特有の調味料があるのだろうか?
「申し訳ございません。お嬢様には、料理を作ったら味見をするようにと再三言ったのですが、中々言うことを聞かなくて、、。」
「チェルシーさんも苦労されてたんですね、、。」
彼女はセシリア・オルコットさんの専属メイドだ。おそらく彼女の料理の脅威に晒されてきたのだろう。セシリア・オルコットさんのサンドイッチを見て、若干顔色を悪くしていたからな。涙を禁じ得ない。
「せ、セシリア、、これは流石に酷いぞ、、」
「何をどうしたらそんな殺人料理が作れるのよ、、うぷ」
三人娘の方を見ると箒と凰鈴音が顔を青くして手で口を抑えていた。何故二人があのケーキも裸足で逃げ出すようなサンドイッチを食べたかというと、サンドイッチを食べた俺があまりにも顔色を悪くしたため、「そこまで不味いのか?」と疑問に思ったためだ。まぁ、見た目はごく普通のサンドイッチだもんな。結果、箒たちは見ての通り普通に撃沈したというわけだ。「好奇心は身を亡ぼす」の典型的な例だな。
「ふ、二人共、人の料理を食べてそれは酷くなくて!?」
「これで分かったでしょうお嬢様。まずはちゃんとレシピ通りに作りましょう。後味見をしましょう。」
「う~~!い、一夏さんっ、私の料理は酷くなかったですわよね!?美味しかったですわよね!」
セシリア・オルコットさんが涙目でこちらを見てきた。え、なんでこっちに話をふるの!?もし馬鹿正直に言ったら俺の体を張った必死のフォローが無駄になるじゃん!
「え、あーと、、悪くはないと思うぜ、うん。」
「っっ!で、ですわよね!ごらんなさいチェルシー、分かる人には分かってくれるものですわ!おーほっほっほっほっ!!」
涙目から一転、ドヤ顔で高笑いするセシリア・オルコットさん。なんでそんなこと言っちゃったのかって?泣く子には勝てんよ、、。
「一夏、、。」
「ばーか。」
箒はこちらに向けて呆れたような視線を向け、凰鈴音はシンプルに暴言を吐いてきた。チェルシー・ブランケットさんは深いため息を吐いていた。
(何とか俺の命が持つ前にセシリア・オルコットさんに料理の手ほどきをしなければ、、。)
俺はこの遠足が終わったらセシリア・オルコットさんに料理本を渡す事を決意した。このままだと、俺たちの命に関わるからな。特にチェルシー・ブランケットさんの。
実は新しい小説の構想を練っています。テレビゲームがテーマでR15のファンタジー小説(多分)です。結構面白いという自信があるんですよね。
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作者の好きでいいと思う。