爽やかな朝空の住宅街で、若い男女が性行為を楽しんでいるという衝撃的な光景に頭がパニックになっていた俺に、篠ノ之箒が呆れ混じりに説明してくれた。それによると、どうやらこの世界では性行為に対する考えが俺が元居た世界とはまるっきり違うらしく、セックスが食事や運動と同じくごく普通の自然な行為という扱いらしい。それどころか、ショッピングモールにも大人の玩具専門店があったり、学校で生徒たちがセックスしても誰も咎められないらしい。もちろん双方合意の上という前提ありきだが。
そんな説明にパニックになっていた頭がさらにパニックになってしまった。そんな俺に篠ノ之箒が何とも言えない目線を送っていた。
なんで知らんのと。
あの目は間違いなくそう告げていた。
(冗談じゃねぇ、頭の悪いエロCG集かよ、、)
今日から俺が通うことになるらしい高校「インフィニット・ストラトス学園」の体育館で他の生徒達の列に並びながら俺はそう思っていた。
「インフィニット・ストラトス学園」は白をベースとした3階建ての校舎でグラウンドに体育館、プールや部室棟など高校にありそうな施設は一通りそろっていた。
これからまた地獄の高校生活が始まるのかと俺が憂鬱になっていると壇上の演説台に一人の女子生徒が立った。その女子生徒は水色の髪の毛で赤い猫のような目をしていた。
(おお、、)
その女子生徒を見た俺は感動を隠せなかった。なぜならその女子生徒は「インフィニット・ストラトス」のヒロインの一人で、IS学園で生徒会長をつとめ、学園最強と呼ばれている、「更識楯無」だったからだ。
「みなさん、この度は本校「インフィニット・ストラトス学園」へのご入学誠におめでとうございます。この学園の生徒会長を務めている「更識楯無」です。」
更識楯無は凛とした声で話し始めた。
「私はこの学園をみなさんが勉学や運動、恋愛や新しい事への挑戦に気兼ねなく打ち込める、そんな場所にしていきたいと思います。あなたたちにはこれから自分自身を見直す機会がたくさんあります。どうか恐れずに新しいことに果敢に挑戦してください。」
更識楯無の言葉に新入生たちは静かにうなづいていた。どうやら彼女の言葉は彼らの心に響いたらしい。
「最後に、みなさんがこの学園で素晴らしい思い出を作れることを心から願っています。共に頑張りましょう!」
更識楯無の挨拶が終わると、講堂は大きな拍手に包まれた。新入生達はこれから始まる学園生活が心から楽しみにしているような顔つきだった。
(けっ、高校生になっただけで素晴らしい思い出を作れるなら誰でも苦労しないっての、、)
暗澹とした高校生活を送った経験がある俺はついそんなことを考えていた。
入学式を終えた俺たちは自分たちの教室に戻ってきた。ちなみに俺のクラスは「1年1組」で、篠ノ之箒も同じクラスだった。
(幼馴染(後付け)が同じクラスなのはありがてぇ、これでこの一年、ぼっちなのは回避できそうだぜ、、)
そんなことを考えながら俺は自分の席についた。奇しくもそこは原作での織斑一夏と同じ位置の席だった。しばらく待機していると教室のドアが開き、担任らしき人物が入ってきた。
「みなさん、おはようございます。私はこのクラスを担当する「山田真耶(やまだ まや)」といいます。皆さんこれから1年間よろしくお願いしますね。」
教壇に立ったその女性はそうクラスメイトに挨拶をした。ちなみに彼女も「インフィニット・ストラトス」の登場人物である。
(マジかよ、山ぴーまで登場してくるのか、、まぁ織斑千冬もいるみたいだし、いるだろうなとは思ってたけど、実際会ってみるとマジで背伸び感半端ないな、、)
「じゃあ、自己紹介をお願いします。えーと、出席番号順で。」
(てかおっ〇いデカすぎるだろ、篠ノ之箒に匹敵するかもしれん、、メロン、、いやスイカまでいけるかも、、)
「あのー織斑一夏くん、あなたの番ですよ、自己紹介を、、」
(天然ボケの爆乳眼鏡っ娘とか天然記念物だろ、インフィニット・ストラトス一生ついていくぜ、、)
「、、、くん。織斑一夏くんっ。」
「うはぁあい!?」
いきなり名前を呼ばれて俺はつい変な声を出してしまった。クラスメイトの視線が痛い。
「お、大声出しちゃってごめんなさい。お、怒ってる?怒ってるかな?ゴメンね、ゴメンね?でもね、クラスの自己紹介、「あ」から始まって「お」の織斑くんなんだよね。だからね。自己紹介してくれるかな?だ、ダメかな?」
山田先生が心底申し訳なさそうにぺこぺこと頭を下げていた。年下に対する態度じゃない。
「わかりました、わかりましたからそんなに頭下げないでください。」
「ほ、本当?じゃ、じゃあ自己紹介してくれますよね?」
「はい、ちゃんと自己紹介しますよ。」
「や、約束ですよ。絶対ですよ!」
まるで子供のような態度をとる山田先生。本当に年上なのか疑った織斑一夏の気持ちがよく分かった。
ともあれ高校生活を経験した自分はこの一番最初のホームルームの自己紹介が物凄く重要だとよく分かっている。一度目の高校生活のとき、高校デビューを目論んでいた自分は自己紹介の時にはっちゃけて、一年間ぼっちを送ったブラックコーヒーよりも苦い記憶がある。もっとも高校時代、友達がいた経験はなかったが、
(深呼吸しろ、普通の自己紹介でいい、、あの時の過ちは繰り返さない、、)
俺は深呼吸をし、クラスメイトが注目する中で口を開いた。
「織斑一夏です、よろしくお願いします。」
そう(個人的には)無難に言ったつもりだったが、周りのクラスメイトは『これで終わりじゃないよね?』という雰囲気を出してきた。ふざけんな。
そんなプレッシャーに晒されながら俺はふたたび口を開いた。
「以上です。」
がたたっ!
クラスメイトが十数人ずっこけた。
いや仕方ないだろう。俺が「織斑一夏」になって数時間しかたってないのだ。今の自分のことを何も紹介できないで当然だろう。だが、そんなことは知らない周りのクラスメイトはきっと俺に「暗いやつ」というレッテルを貼っただろう。
(お、終わった、、俺の二度目の高校生活も終わった、、)
俺の心の中で絶望の嵐が吹き荒れた。
本当はこの話であの令嬢とセカンド幼馴染を出そうと思ってたのですが、話が長くなったので次話で出したいと思います。
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