※この作品はR-18です。

山汐丸と吊り『縄』効果   作:delp001

1 / 2
※首絞めや根性焼きなどのハードSMを多分に含みます


戯れとその結果

横須賀第二航空基地、その執務室で私は微睡んでいた。使い古された安物の椅子は背中を預けるとギィギィと耳障りな声で鳴くものの、うたた寝をするには丁度よい熟れ具合だ。

今日もまた変わらず、朝からずっとそうして無為に過ごしている。空襲も無ければ出撃要請もない、ただただ暇な基地。

たまにはそれも悪くない…そう考えつつもまた椅子を鳴らしていると、ドアの小気味のいいノックがそれに重なった。

「山汐丸であります。入ってよろしいでしょうか、提督どの?」

彼女に聞かれないように小さくため息をつきながら、入れと命じた。

 

「お疲れ様であります、提督どの。陸上機の整備は午前中で滞りなく完了いたしました。」

そう報告するのは特2TL型、特設輸送空母の山汐丸。陸軍の艦娘。艶のある長い黒髪で作られた三編みと丸い小顔、可愛らしく垂れた細目が印象的な、古風な日本女性といった出で立ち。

立ち振舞から上品さ、気品さを感じさせながらも、どこか抜けた一面のある彼女。報告を終えてにこりと微笑み、褒めて欲しい子供のように私の出方を伺っている。

「…書類は?」

「あっ…失礼致しました!こちらにお名前を頂けますか?」

横に携えた雑多なファイルの中から書類が差し出される。私は内容をよく読むこともせず、名前を記入して彼女に返した。

「提督どの、やはり資料の確認もお早いですね…自分も見習わなければなりません。」

彼女は何を見ていたのだろうか。私は何もせず機械的に記入して返しただけだったのに、別のものを見ていたらしい。どうも最近気がついたのだが、ここの陸軍艦娘…特にこの山汐丸はどうも夢見がちな性格であるようだ。

海軍から出向してきた私を歴戦の軍人かなにかだと勘違いをしているのだ。私が黙ってやることなすこと全てに賛同し、それを褒め称えてくる。最初は手の込んだ嫌がらせだと思っていたが、彼女の目を見ると本気のように見える。

「提督どの。午後にお時間はありますでしょうか?またご教練を頂きたく…」

山汐丸は横に抱えていた書籍を机に置いて尋ねる。艦娘向けに発行されている教範や戦術書、技術書、地図、海図、その他数々。幾度も開かれ、擦り切れたページから付箋が大量にはみ出している年季ものばかりだ。

私はその一つを手に取った。艦娘に最初に配られる教範で、艤装の付け方、海上での進み方など基礎中の基礎しか書いていない本当に初心者向けのもの。そんな本にすら大量の付箋と書き込みが加えられている。

ペラペラとページを捲りながら山汐丸の方を見る。どこか心配そうな目で教範に目を落としながら、後ろ手で自分の髪を弄っている。沈黙に耐えきれなくなったのか、やや沈んだ声で再び私に話しかけた。

「提督どのがご多忙であれば、自分は下がります。ご迷惑をおかけしました…。」

そうして再び書籍を抱え込む山汐丸。心なしか小さな肩がより小さくなったようにも見える。そんな姿を見せられてしまうと良心が痛んでしまう。

「いいや、私も暇だ。よければ付き合おう。」

「…!本当ですか!?ありがとうございます!」

満面の笑みで、声を上擦らせながら頭を下げる山汐丸。いい事をしたはずなのに、それでもどこか私の良心は痛みを発している。教えを請われるほどの価値など、私にはない。そして彼女達にもまた、教えを請うほどの価値はない。

窓に映る広い海に目を移した。どこまでも広く青い海、広い丘を横断する灰色の滑走路。そこに埠頭や灯台といった海にまつわるものは何もない。扱いに困った艦娘と、扱いに困った提督に居場所を与え続けるためだけの存在。文字通りの陸の孤島。それがここ、横須賀第二航空基地だった。

 

「提督どの。こちらの状況下で選ぶべき陣形は―」

山汐丸は初対面のイメージ通りの艦娘だった。奥ゆかしく生真面目、自己評価がやや低い面はあるがそれも自覚しており、改善しようと日々精進を続けている。

しかし山汐丸…彼女に限らず、この基地の陸軍艦娘が出来るのはせいぜい教範を読み漁るぐらいのことだ。深海棲艦との戦いはまだ続いているが陸軍の出番は思う以上に少ない。

かつての大戦のように大陸での活動があれば別だったろうが、現代の戦いはほぼ全てが海上。水上戦で性能に劣る陸軍艦娘が冷遇されるのは自然なことだった。

離島の防衛と奪還に動員されている陸軍艦娘も居るには居るが、開戦初期から活躍し続けている精鋭が一握り存在するのみで、山汐丸のような新参者が入る余地はどこにもなかった。

そんな彼女達と私に与えられた任務は航空基地の整備と維持。日々の僅かな作業をこなせばもう何もすることはなくなってしまう。それでも彼女は滅気ずに、いつか海に出て活躍することを夢見ていた。

「提督どの?」

「ん、ああ。何の話だったか?」

「はい、こちらの陣形のお話です。…やはりお疲れでしょうか?」

「いや、こうして水上戦の話をしていると色々と思い出してな。つい考え込んでしまう。」

「最前線でのお話でしょうか!?南方の離島で戦われていたとお聞きしています!」

目をかっと見開いた山汐丸が両手を机に置いて乗り出してくる。言葉にはしていないが、明らかに武勇伝の類を期待している目。良心がキリキリと痛む。

私はゆっくりと、自分の経験した事を話し出す。叶うのなら、それが彼女を夢から覚ますと信じて。

「…ああ。最前線にいた。君たちから見れば栄誉ある務めかもしれないが、そういいものでもなかったよ。この基地の方が楽でいい。」

「そう…なのですか?」

「本土に空襲なんて滅多に来ないだろうが離島の前哨基地は違う。嫌というほど爆弾や銃弾が降ってきて夜も寝れやしない。地下壕にだって音が響いてくるんだ。」

「…自分はまだ敵機も数えた程しか見たことがないのであります。やはり深海棲艦は恐ろしいものなのでしょうか?」

「それは当然だが…私は味方が死ぬことの方が怖かったよ。敵はすぐ居なくなるが、傷ついた味方はずっとそばに居てその姿を見ることになる。正直…我慢の限界でね。」

「もしかして南方から異動されたのは…」

「ああ。着任して以来ずっと一緒だった艦娘が居たんだが、戦闘中に轟沈しかけてね。なんとか助かって今はピンピンしているが、あの時の弱りようは…その…今まで見たこともなかったような姿で、こう…言い表せないような気持ちになってしまったんだ。」

「その方は今どちらに?」

「別の鎮守府で元気にやっていると聞いたよ。今は後進に教えを説いているらしい。」

「ふふっ。では提督どのと同じですね。」

「そうだな…だが結局、彼女も私も生き残ったのは運が良かっただけだ。それなりに経験があったことは自負していたが、それでも死ぬのが戦場だ。君のような経験に乏しい艦娘にはひとたまりもない。」

そこまで答えて、再び山汐丸を見る。教範を見つめるその目は先程よりもやや暗く、叱られた子犬のように肩を落としていた。

これでいい。そう思っていたが、それでも彼女は諦めないようだった。一度目を瞑り、何か決心をしてから私に向き直る。

「それでも自分は、提督どの…皆さんのお役に立ちたいのであります。以前は何も出来ませんでしたが…今なら、提督どのが来た今なら何か出来る、そう思います。」

今の話を聞いて思う所が無いわけでは無かっただろう。それでも彼女は自分の知らない未知の世界、未知の恐怖があることを知りながらも、朗らかな笑みを浮かべてそう言った。

どうにか誘導するのには失敗したらしい。彼女への評価はまた改める必要がありそうだ。そう考えながら彼女の顔を見つめていると、どことなく顔が赤くなっている。

「ところで、その、提督どの。先程仰られたお付き合いの長い艦娘の方ですが、えっと…特別な関係でいらっしゃったり、とかは…?」

彼女は目を泳がせながら私の答えを待っている。数秒の沈黙で、私が何を察したのか、彼女もまた察したらしい。その証拠に顔はますます赤くなっている。プライベートな事だったので話すつもりはなかったが、この状態で何も言わないのは流石に酷だろう。

「そういう関係だったことは…ある。昔の話だがな。それがどうかしたか?」

「い、いえ!なんでもありません!午後の…午後の整備があるので失礼させて頂きます!」

慌ただしく書籍と資料を抱え、背中を向ける山汐丸。そのままドアまで駆け出したかと思うと、部屋を横切っていた電源ケーブルに足をひっかけた。

「あっ…きゃあああっ!?」

そのまま勢いよく床に倒れ込み、抱えたものをぶちまける。頭を床に擦りつけたまま痛みに呻いていた。短いスカートからは白いパンツも覗いている。

私が手を貸そうとして椅子から立ち上がる。山汐丸はよろけつつも体を起こして床に座り込むと、赤くなった自分の顔に手を当てて震えている。

その後姿、特徴的な三編みが目に入る。彼女の太ももほどまでもある長い長い後ろ髪が床に垂れ、埃を被っていた。その艶やかで美しい髪が汚れるのは惜しい。そう思って三編みを拾い上げ、埃を払う。

「うぅ…お見苦しい所をお見せして申し訳ありません…」

「いや構わないが…それよりこの髪、長すぎて邪魔じゃないのか?こうやって座るだけでも地面につくと思うのだが…」

「ああ、この髪ですか?普段は後ろに下げるだけですが、困った時はこうしています。」

そう言って山汐丸は私から三編みの先を受け取ると、それを首にまわし始める。マフラー、あるいは首輪のように一周させるとにこりと微笑んだ。

「こうして巻いてしまえば長さは調節出来ますから。それにこうやって結べば…ずれることもありませんし。」

三編みを首に一周させた後、作った輪の中に三編みの先を滑り込ませる。艶のある黒髪は光を反射し光っている。その艶やかさは皮を連想させた。黒い皮で出来た首輪と、そこから伸びる黒いロープ。そのロープの先は彼女の手に握られている。

そのどこか妖艶な光景に目を奪われる。目の前の男が邪な想像をしているとも知らず、彼女はきょとんとした顔で私を見つめていた。

「…提督どの?」

「え?ああ、いや、それ、首輪みたいだなと。」

私は動揺した。いや、既にしていてそんな発言をしてしまった。心臓が脈打ち、肌が汗でじわりと湿っていく。確かにそう思いはしたが、どう考えても部下の女性に言っていいセリフではない。

「首輪…?ふふっ、そうかもしれませんね?寒い時はマフラーみたいにもっとグルグル巻きにしたりするのですが…」

彼女はそれをただの冗談と捉えたようだ。ほっと胸を撫で下ろす。私の緊張が解けて緩やかな表情になったのを見て、山汐丸は自らの三編みの先を私に向け、またにこりと笑う。

「首輪、ですか。 …て、提督どのになら、飼われても…いいかもしれない…です。」

ぎこちなく、そして顔を再び赤くして冗談を飛ばす山汐丸。彼女からすれば上司の冗談に冗談で答えただけだっただろう。しかし私にとっては違った。

普段はおしとやかで真面目な小柄の美人が、戯れに自らの黒髪で首輪を作って男を誘惑している。例えそれが冗談であったとしても、男の欲望を抉る凶器としては十分な威力だった。

私は黙って差し出された三編みを受け取る。彼女は私が受け取るとは思わなかったようで、驚いたような、少し怯えたような表情に染まっていく。

「提督どの…?えっと、冗談、ですよね?」

どんな顔をしていたのかはわからないが、怯えさせるには十分らしかった。床にへたり込んだまま這いずって後ろに下がる彼女をゆっくりと追いかける。

「提督どの?じ、自分、何かしましたでしょうか?何か粗相でも!?」

山汐丸の目に涙が浮かぶ。顔から血の気が引き、表情が恐怖に染まっていく。彼女が怯え、震えるのとは逆に、私の心は熱く高ぶっている。

怯えた彼女の顔と、青くなっていく肌を見て、南方時代の記憶がフラッシュバックする。瀕死のあの子。助けを求めるあの子。普段は私を寄せ付けず拒絶の言葉を投げかけていたその口で、そばに居て欲しいとか弱く囁いたあの子。

あの時の顔が忘れられず、完治した後でも私に首を締められ、同じ弱々しい顔を見せるあの子。私の手を、責めを、全てを受け入れてくれたあの子。破滅がやってきて私と分かたれた日、あの時と同じように泣いてくれたあの子。

私はあの子の事を愛していると思っていた。そしてあの子も私を愛していた。だからあんな事が出来ていた。しかしそうであれば、この昂りはなんなのだろう。そこでようやく気が付いた。

私は、誰でもよかったのだ。

切っ掛けがあの子というだけだった。

そして今、あの子と同じように、目の前に少女がいる。とても可愛らしく、妖艶な少女。

私はその黒髪を強く握りしめた。良心はもう痛まない。

 

 

 

山汐丸は目の前の光景が理解できなかった。自らが慕っていた男は今、自らの髪を握りしめてこちらへと迫っている。何も言わず、息を荒くしながら。

「提督どの…?」

彼女が問いかけても反応はない。まるで何かに取り憑かれたかのように、彼女を無表情でまっすぐ見据えていた。

ゆっくりと差し出された男の手が山汐丸の頬を捉える。恐怖でびくりと震えた彼女だったが、頬を撫でる優しい手付きに安堵して口が緩んだ。

緩んだ瞬間、男は彼女の顔を掴んで強引に引き寄せる。そのまま唇を奪ったかと思うとその舌で彼女を犯し始めた。

山汐丸にそういった事への期待がなかったわけではない。恋い焦がれ、密かに思いを寄せるだけだった相手にこうやって迫られた瞬間、恐れのなかにどこか期待が混じっていたのは確かである。しかし、彼女が望んでいたのはこのような強引な関係ではなかった。

「んっ…!嫌ッ!」

反射的に手のひらを男にぶつける。男の手から力が抜けた一瞬のうちにその指を引き剥がし、逃げ出そうとした。

恐怖、焦り、高揚、困惑、羞恥、そして罪悪感。自らの心に渦巻く様々な感情を処理できず、走り出した瞬間、首に大きな衝撃が走る。

「かっ………ぁ………?」

山汐丸は叫ぼうとしても声が出なかった。彼女の細い首には黒髪が食い込み、呼吸も声も血の流れもそこで途切れている。

「……っ!?…………?」

自らの三編みが首に絡み付いている事も忘れ、わけもわからず声の出ないまま助けを求める少女。執務室のドアへと向けられた手は虚しく空を切っている。

彼女の首から後ろへと伸びる、黒く長く、そして艶やかなリード。その先を握るのは男だった。逃げようともがく山汐丸を後ろへと引っ張り続ける。彼女が苦しみと酸欠でふらりと体を揺らした瞬間、男は力を込めた。

「っ! ………あ゛っ!…はぁっ!はぁ…はぁ…」

男の胸板に頭を叩きつけられた彼女だったが、痛みは感じなかった。鬱血して麻痺した彼女の頭から熱く滾った血が下へと降り、新鮮で冷たい血が入ってくる。除々に体の感覚を取り戻すと同時に、再び思考が巡ってくる。

「て、提督どの、も、申し訳ありませんでした。じ、自分は…」

山汐丸は何故謝っているのかもわからなかった。先程男の頬を叩きはしたが、そんな事はとうに頭から抜けている。山汐丸は男を信頼しており、この状況下でもそれが揺れることはなかった。しかしその男の前で、全身が本能的な恐怖を発している。その相反する事実が彼女の判断を鈍らせた。

男への信頼と自らの恐怖が両立する状況。自分は何かしらの粗相をしたためにこんな罰を受けているのだという現実逃避。それが彼女が出した結論だった。しかし現実はそこまで甘くなかった。

山汐丸が振り返ると、そこに男の顔があった。その横顔には先程彼女がつけた爪の跡が引っかき傷として残っている。それでも男は笑みをたたえていた。その笑みが普段から見せている優しさによるものではなく、愉悦によるものであることに彼女は気が付いていない。

「申し訳ありません提督どの、今手当を―」

彼女は罰の理由がその傷であると認識した。平手は罰に対する反射的な行為で、前後関係が完全に破綻しているにも関わらず、彼女はそれを信じようとした。

男は謝罪も意に介さず、両手を彼女の首に向ける。大きく震えた彼女だったがなんとか耐え、その場に留まった。

何をされるのかもわからなかったが、彼女は男を信頼して首を上に向けた。それが今出来るただ一つの事だった。

男はその無骨な手で山汐丸の襟を掴むと、力任せに大きく左右に開いた。銀色のボタンが弾け飛び、黒い肌着が曝け出される。

次々とボタンが弾き出され、薄茶色の上着が剥がされてゆく。その光景を見て再び山汐丸は困惑の表情を浮かべた。

これは懲罰ではないのか。自分は普段そういう目で見られていたのか。何故今になって手を出されたのか。疑問が次々と湧いてくるが、答えは一つも浮かばない。

「あ、あの、提督どの、自分は、こういうのは、その。」

答えを求めて男に声をかけるものの、問いかけることは出来なかった。具体的な問いを投げかけて、具体的な答えとして帰ってくるのが怖かった。男が自分に何かを求めるような答えを出した時、自分はそれを受け入れられるだろうか。自分はそれを拒絶できるだろうか。

山汐丸は自分がそうしてまごまごしている内に、男が今の行為を止めてくれるように願った。しかし男は彼女の声にも、訴えかける目にも、何も答えずに纏った上着を剥がしていく。

全てのボタンが剥がされ、そのまま乱暴に上着が剥ぎ取られる。男はインナーに手をかけて勢いよく捲る。そこに現れたのは小ぶりなもののしっかりと主張のある起伏と、それを包む純白のブラジャー。

男は黒いインナーを手に握ったままブラジャーも上にどかした。色白な素肌に浮かぶ桃色の乳首が顔を出す。ほんのりと色づき、乳房のサイズ相応の慎ましい乳頭は花の蕾を思わせる。

「ま、待ってください提督どの!その…自分、ぬ、脱ぎますから…!」

山汐丸が、男を受け入れると決めた瞬間だった。このまま乱暴されて何もかもがめちゃくちゃになるよりも、すぐに終わらせて元に戻って欲しい。それが彼女の願いだった。

提案を受け入れた男の手がぴたりと止まる。男の手が下がると彼女はゆっくりと残った服を脱ぎ始めた。

「し、失礼するので、あります…」

わけもわからず、そう前置きしながらスカートに手をかける山汐丸。白い肌の下では心臓が大きく蠢いて彼女の胸を揺らしていた。なぜ自分は脱いでいるのだろう。なぜ自分は逆らえないのだろう。なぜ自分の心はこんなにも脈打っているのだろう。

本能的に味わっている恐怖と、惚れた男の前で脱いでいるという興奮が混じり合う。それがどのような比率だったかは彼女自身判然としない。

黒い肌着、黒と茶のツートンカラーのスカート、ブーツとソックスを脱ぎ捨て、真っ白なブラジャーとショーツに身を包んだ姿で立ち尽くす。執務室の真ん中で、彼女は行儀よく手を後ろにやり姿勢を正していた。

「て、提督どの。せめて、せめて自分を、山汐丸を…好いていると、そう仰ってくれれば、自分は、自分は。」

体を捧げてもいい。そう言い終えるまでに彼女の勇気は持たなかった。理不尽な行為であっても、そこに愛さえあれば、愛が理由であれば、そこに縋るしか道はなかった。

しかし、その行為は悪手であった。今まさに山汐丸を陵辱せんとする男は、彼女の拠り所を、彼女に対して最も効果的な武器がなんであるかを知ってしまった。

男の口が釣り上がり歪む。その笑みの理由を山汐丸が知ることはない。

 

男は山汐丸の首に巻かれたままの長髪を引いた。

「かっ…はっ…」

彼女はよろけ、前の男に倒れ込む。男は純白のブラジャーに手をかけると強引に引きちぎった。そのままその柔らかな布に包まれた白い乳房を指でひねり上げる。

「痛ッ…!提督どの、痛いです…ううぅっ!」

乳首に加えられたそれは愛撫などではなく、拷問のそれに近い。本当に千切れてしまうのではないかと山汐丸が錯覚するほどに暴力的だった。

男の指が乳首を挟み、万力のようにグリグリとそれを押しつぶしながら上へ下へと強引に伸ばしていく。身を屈めて痛みに耐えようとするが、その度に乳首を握りつぶされながら、上に持ち上げられる。

「痛いっ!ああ…あああああああっ!」

痛みに耐えかねて男の手を取るが、恐怖に震える彼女にそれを止めるだけの力はなかった。むしろ乳首につられて弱々しく身を捩る中で、段々とその腕に縋るようになっていく。

ここでようやく、山汐丸の目から涙が零れ落ちた。慕っていた男の暴挙。自分が想像していたのとは違う初めての契り。理想と現実のギャップに頭が追いつかない。

「うっ…ううっ…ぐすっ…うううううぅ…」

ぽたぽたとこぼれ落ちる涙。その涙は乳首を嬲る男の両腕にも零れ落ちていた。男の手が涙へと吸い付いていき、山汐丸の頬を捉える。そして、その指が涙を掬った。

「提督、どの…?」

元の男へと戻ってくれた。一瞬そんな事を考えた彼女だったが、それが誤りであるとすぐに知る。男は涙に濡れた指を胸に戻すと、再び乳首を擦り上げた。

「う゛あっ…痛っ!染み、染みるっ!」

その乳首は真っ赤に腫れ上がっていた。乾燥した指で嫌というほど擦られたデリケートな器官に、汗が塗り込まれていく。

「うう…ううううううぅぅぅ…!」

泣けば泣くほど彼女は追い詰められていく。しかしそれでも涙を止めることは出来なかった。男に頬を掬われる度に、それが終わりであって欲しいと、顔を上げて自分を見つめてくれると願っては裏切りられる。

男が乳房への興味を失ったのはいつ頃だろうか。両手が胸から離れると、そこには真っ赤に染まり、見るからにサイズの大きくなった彼女の乳首があった。

頭を下げて男を見ないようにしていた山汐丸。嫌でも厭らしく腫れ上がった自分の乳首が目に焼き付いてしまう。とはいえ顔を上げて男の顔を見る勇気もなく、そのまま目を瞑る。

白い肌をするりと下にすべり落ちていく無骨な手、すぐに腰のショーツにも指がかけられ下へとずり下げられた。肌でそれを感じ取っていた彼女だったが、絹のショーツが股を離れる瞬間、張り付くような感触を覚える。

ふと目を開いて確かめると、引き下げられたショーツが目に入る。その中心部分は僅かに濡れており、自分の股からも雫が垂れ、太ももに滴っている。彼女の体が赤く紅潮し、頭の中に羞恥の感情が流れ込む。

「じ、自分は、こんな、こんな女では、提督どの、違うのであります。これは…これは…」

ここへ来ても山汐丸にはまだプライドがあった。男が好むであろう貞淑な女性、皆から愛されるような愛嬌のいい女性として振る舞ってきたつもりだった。そのプライドは今、自分が乳首をねじり切られそうになるほどに痛めつけられ、性的興奮を覚える女であるという事実によって打ち砕かれつつある。

「これは、相手が提督どのだから、そう、きっとそうなのであります。だから―」

誰かに操を立てたわけでもないのに。誰かに誓いを立てたわけでもないのに弁解を始める山汐丸。彼女の言う通り、相手がそこらの悪漢ではなく自分が信頼を置いた男であることも多少の影響はあるだろう。それでも、そのような経験がない彼女にとって、それが肉欲から来るものなのか愛情から来るものなのか定かではない。

男は弁解する山汐丸を床に組み伏せると、足を上げさせて引っかかったショーツを剥ぎ取る。一糸まとわぬ女体が仰向けで床に転がった。表情は恐怖と羞恥で怯え、両腕は震えて男に縋り付くのみ。体は全体的に薄く細く、官能的とは言えない体であるが、女としての起伏は確かに存在する。お椀程度に膨らんだ双丘の頂点は真っ赤に腫れ上がり、今にも血が出そうなほど。

上半身の肉付きの乏しさに反し、下半身、とくに腰回りはそれなりにしっかりと成長している。正面からでも尻の肉が見え、骨盤も発達しているのか腰のくびれは安産型のそれである。陰毛は見られず、生えていないのか剃っているのかは判別できないが、肌の白さが損なわれていないことを見るに、元から薄い質なのだろう。

男は細くまとまりつつも肉付きの良い両太ももの間に目を向ける。床に転がる女の秘所は、彼女の清らかな人格を反映したかのように、美しく閉じて貞操を守っていた。しかしその表面はしっとりと濡れており、白い肌と桃色の粘膜の煌めきをより一層際立たせている。

それを見た男は手を自らの下半身へと持っていく。慣れた手付きでその滾った肉棒を取り出すと、その切っ先を無防備な女体へと向けた。彼女は力なく男を蹴り上げているが、その足は簡単に組み伏せられ、大きく開脚させられ正常位のポーズで固められる。

「嫌で…嫌であります。こんな場所で、こんな、初めてはもっと、ずっと…」

小さく震える夢見がちな少女。その願いを砕くかのように、強引に肉棒が彼女へと挿入される。山汐丸の愛液と男の先走りが結合し、彼女の膣内へと染み込んでいくが、その量は初めて男を受け入れるには全く足りなかった。

「あ゛ぁっ……!」

山汐丸の全身に、痛みと悪寒、そして熱が駆け巡っていく。慕っていた男と繋がれた悦びではなく、暴力的に自分の体内をえぐられた痛み。内蔵が押し上げられていく感覚。それでも男の肉棒はまだ収まりきっていない。接合部には愛液ではなく、破瓜の血が滴っていた。

痛みと苦しみ、そして驚愕で声が出ない山汐丸。細い体に肉棒をねじ込まれ、そのまま肺まで押し潰されたかのように、ひゅうひゅうとか細い息だけを上げている。彼女は思わず自分の首に手をやったが、巻き付いた自分の髪は緩く、苦しみの原因がそれでないことを理解する。

次に彼女は男を引き剥がす事を試みた。その結果はただ男の体にぺたりぺたりと手足をぶつけるだけの可愛らしい抵抗にしかならず、むしろ男はその行為に心地よさすら感じている風だった。

未開の膣に挿入された肉棒はそれ以上進む事が出来ず、男は仕方なく腰を引く。しかしその行為ですら、つい今しがた処女を失ったばかりの彼女には強すぎる刺激だった。

「うっ…痛いで…あります…熱いぃ…」

破瓜の血に濡れた肉棒がずるずると引き出されていく。山汐丸の割れ目は未だに固く閉ざされており、肉棒が擦れると共に血の色が濃くなり、溢れる悲鳴は鋭く、高く響いていた。

そして男の動きが反転する。血という新たな潤滑液を得た肉棒はさらに強く、深く彼女の秘所を抉っていく。

「ぅ……っ!ぅぅ………」

悲鳴は最早金切り声に変わっている。鋭い痛みが筋肉を硬直させて、肺の動きすら阻害する。男に組み伏せられ貫かれた中、心臓が必死に体を動かそうとバクバクと動いている。

体感時間でどれほど立っただろうか。山汐丸が痛みに耐えている間に、ようやく男は彼女の最深部まで自分の肉棒を進めていた。もはや拘束する必要もなくなった両足から手を退けて、彼女の胸と、そして首へと手をかける。

巻き付いた黒髪が解かれ、代わりに男の手のひらが首に貼り付いた。頸動脈に流れる血が男の肌を叩く。これから何が起きるのか山汐丸は想像がついていた。ただ、信じたくないだけで。その焦りが更に鼓動を早くする。

「提督ど、ぉっ………」

男の腕にゆっくりと力がかけられる。小さな首が歪み、路が閉ざされていく。山汐丸の呼吸は断ち切られ、声をあげる事すら出来なくなってしまった。

それでも、彼女を生かすために血液は周り続ける。首に流れる血は狭くなった血管を強く太く押し上げるが、その試みは男の手のひらを叩くだけに終わった。

山汐丸の脈動が両手を伝わり男に届く。ドッドッドッと血管が激しく鼓動する。彼女の可愛らしい無意識の抵抗を感じ、男の口が歪む。一方で山汐丸の口は開きっぱなしである。酸素を求めて口を開き、なにかを吸い込もうとするがぱくぱくと唇が動くのみ。

男はそのまま再び腰を振り始めた。首を握りながら、道具でも扱うように山汐丸を責め立てる。しかし責め立てると言っても、彼女が今感じているのは首の圧迫感と窒息の苦しみのみ。首から下の感覚は切り離されたように薄くなりつつあり、代わりにフワフワとした浮遊感が全身を支配していく。

そうして首の感覚すらも消失し始める。薄れる視界の中で山汐丸は男の姿を見た。男はなにかを口走っているように見えるが、今の彼女には何も聞こえていない。男が腰を自分に叩きつける度に頭と視界が揺れ、ぼやけていく。

「…………っ!…………!」

霞がかった無音の世界で、山汐丸は想いを巡らせる。あれほど恋い焦がれた男の手。無骨だが、優しかった手。それが今自分の首に巻き付いている。彼女はどうしてか愛おしくなって、自分の手を男に重ねる。

不思議なことに苦しみはもう無くなっていた。あれだけ痛みと苦しみを発していた体の重みは感じられず、全身から熱が引いていく。そんな中でも男の腕は温かいままで、彼女はその両手に縋って男の体温を感じている。

瞬間、山汐丸は男だけを見ていた。光が失われていく中で、彼女が唯一求めたもの。縋ったもの。

静かな彼女の瞳とは打って変わって、男は獣のような目つきで彼女を睨み、腰を打ち付けてる。力なく投げ出され、弛緩仕切った体がびくりと痙攣した瞬間、男は絶頂した。

自分の体の痙攣も、男の射精も、今の山汐丸にとっては関係のないことだった。首にかけられた男の腕が震え、男が満足そうな顔を見せたのを見て、それが終わったのだと理解する。

 

「………かはっ!はぁっ!はぁっ!はぁ…はぁ…………ぁぁ……」

男の手が緩んだ瞬間、山汐丸が息を吹き返す。永遠に続くかと思われた虚無の世界から帰還した彼女は、生まれたばかりの赤ん坊のようにおぼつかない呼吸で胸を上下させている。

「ぇぃ…てぃ……ていとく…どの…」

呼吸の合間に、なんとか声を絞り出して男を呼ぶ山汐丸。先程まで恐怖と苦痛にまみれていたはずの感情はどこかへ行ってしまっていた。酸欠の中、次々と失われていく感覚と感情。ありとあらゆる物がこそぎ落とされて、最後に残ったのが男への想いだった。

なぜ、最後に残ったものがそれだったのか。なぜ、自分はそうまでして男に想いを寄せていたのか。それはもう彼女自身も覚えていない。ともかく、再び自分の唇を奪った男を拒絶する理由がなかったのは確かだ。

弱々しく息をする山汐丸に食らいつく男。何もできずただ息をするだけの彼女はそれを受け入れ、舌を差し出した。弱々しく吐いた息が吸い込まれ、代わりに二人の混じり合った唾液が注ぎ込まれる。床に力なく頭を預ける彼女には唾液を飲み込む余裕すらなく、次第に呼吸が阻害されていく。

山汐丸の意識が再び遠のいていく。しかし先程とは異なり、頭の中にはぼうっと温かい感情が芽生えていた。それは男の体温が接吻を通して彼女の頭に届いていただけであり、麻痺した思考が感覚と感情とを混同したものだったが、それでも彼女はどこか幸せな気分になっていた。

意識が失われる前に男は顔を上げて再び彼女を解放した。涎に塗れ、所々に泡を作っている酷い表情のまま、むせ返るような雄の匂いと共に新鮮な空気を吸い込んでいる。

彼女はぐったりとした手を自らの股に差し込み、その手のひらを見る。血と精液がべっとりと付着したその腕を眺めると、今までの行為を再認識し始める。恐怖、苦痛、愛情。目の前にある紅白のまだら模様と同じように、彼女の中でその三つが混濁し混じり合っていく。

息を大きく吸う度に、胸は大きく鼓動を打ち、体の中で感情が昂り出す。全身が熱くなり、肌と粘膜の感覚が研ぎ澄まされていく。山汐丸にはそれが恐怖からくるものなのか、男への想いからくるなのかもう判断はつかなかった。

「あっ……!」

山汐丸は下半身のちくりとした痛みと、臀部へと滴る液体のようなものを感じた。再び手をやると、半個体の混合液が自らの秘所から流れ、尻を伝って床へと流れ落ちている。

彼女は自分の体への心配から、つまり秘所がどうなってしまったかの確認のために、自らの指を割れ目へと埋めた。中は焼けるように熱く、そして腫れ上がっているように感じた。痺れたような痛みを発する膣壁を擦ると、その痺れが更に深いものになっていく。

「うぐっ…痛いぃ…」

それでもなぜか、手を止めることは出来なかった。もう一度確かめるように指で探ると、血と精液よりも粘度の低い、さらさらとした液体が滴り始める。もう片方の手が自分の下腹部に伸びた所で彼女は自分を見下ろす両眼に気が付いた。

山汐丸に消えない傷をつけたその男は、先程と変わらない硬度と角度を維持した肉棒を滾らせながらただその行為を見ていた。男は怯えた両眼が自分に向くのを見ると、そのまましゃがんで顔を近づける。

「気持ちよかったか?」

久しぶりに聞く男の声だった。普段と同じように自分を気遣い、心配してくれる男の声。同じ声のはずなのに、彼女には別の声に聞こえていた。

「いえ、あの、自分は………」

重い体をなんとか起こして、その問いに答えようとする。しかし、首を締め付けられているわけでもないのに次の声が出ない。

山汐丸は肯定も出来なかったが、否定も出来なかった。男の暴力的な責め、いや、暴力そのものを味わった彼女には恐怖が染み付いているが、それと混じり合うように男への想いも染み付いている。

もしこれがただの男女の交わりであったなら、彼女は多少強引でも受け入れただろう。もしこれがただの暴力であったなら、彼女はそれを拒絶して男への想いは失われただろう。肯定と否定、白と赤が交わり合う。

長い沈黙。男はそれを肯定と捉えた。床に打ち捨てられた彼女の三編みを拾うと、くるりと首にまわしてから再び引き上げた。立ち上がり、執務室のドアへと向かって歩き出す。

「で…ぐぅっ!てい、提督、どのっ……!」

そのままリードのように髪を引っ張られ、よたよたと這いつくばりながら男へ追い縋る。強く引っ張られる度に髪が首を締め付け、恐怖と苦痛がその身に湧き上がる。体は反射的にその恐怖から逃げようとするが、リードを付けられた彼女が男から逃げることは許されなかった。

苦痛から逃れるために、その苦痛の源へと這っていなかければならないその状況が山汐丸の心を蝕んでいく。裸のまま四つん這いで這う彼女に目もくれず、執務室の扉を開く男。何事もなかったかのように廊下へと歩みを進める。

「待ってください。提督どの…お゛っ!ぉ……ぅ……」

歩みを止めた山汐丸だったが、男は気にせずそのままの速度で手に持ったリードを前へと突き出す。彼女はなんとか抵抗しようとその場に留まるがそれは逆効果で、文字通り自分の首を締める結果に終わった。

散歩のコースが気に入らない駄犬がその場に留まって抗議するかの如く、手足を伏して必死に耐えるものの、長く続くことはなかった。酸欠で意識が飛びそうになると腕の力が抜け、前へ倒れ込む。

それと同時にリードが緩んで呼吸が出来るようになるが、男は間髪入れずに再びリードを引く。結果、彼女は僅かな呼吸しか許されずに意識が朦朧とした状態で、全裸のまま四つん這いで廊下を引き回されていた。

「て…え゛っ!?」

口答えも許されず、なにか鳴き声を上げる度にリードは絞まった。羞恥、酸欠、恐怖、苦痛。極限状態の最中、山汐丸は全身が熱くなるのを感じる。しかし窓から流れて廊下に吹き抜ける涼しげな風がその熱を奪い、その度に得も言われぬ感覚が肌を駆け巡っている。

しばらく歩いた後、急に立ち止まった男。顔をあげるとそこは男の自室だった。以前何度か扉の前までは来た事があるが、中に入ったことはなかった。理由もなく中を見てみたいだとか、入ってみたいと考えていた頃もあったが、今はそれがより強固なものになっている。

この部屋に入ってしまえば誰にも見られず、邪魔が入る事もない。彼女はそう考えてしまっていたが、それが異常な思考であるということには自分でも気が付いていなかった。

男が扉を開けると、山汐丸は促されてもいないのに四つん這いで部屋へと入っていく。彼女自身は気が付いていないものの、その後ろ脚には透明な液体が滴り僅かに床を濡らしている。その後ろ姿を見た男は微笑んだ。

 

初めて見る男の部屋。士官用に飾り立てられてはいるものの、その内容はビジネスホテルの内装のようにシンプルなものだった。様々な感情を頭で沸騰させている山汐丸に、それ以上の認識能力はない。

ふと、一人用にしてはやや大きなベッドを見つけると、そのままフラフラと歩いてベッドに倒れ込んだ。男に握られたリードが少し軋むが、シーツのふわふわした肌触りと、初めて嗅ぐ男のベッドの匂いによる多幸感が苦痛を打ち消している。

固く冷たかった床とは異なる至福の感覚にまどろんでいると、後ろから快音が響く。

「…っあぁ!?」

男の手が、ベッドに寝転んだ山汐丸の尻を叩いていた。そのまま何度も、左右から大きく振りかぶった手が打ち付けられる。

「痛っ!提督どの、痛いのでっ、あります…!」

山汐丸は悲鳴を上げるが、執務室で上げていた声よりも軽いものだった。今までの苦痛に比べれば男の平手など大したものではなかったし、熱くなった尻がじりじりと痺れに似た快感を生み出している。

白かった臀部が赤く染まる度に、彼女はベッドへと自分を擦りつけていた。刺すような鋭い痛みと、柔らかく自分を包むシーツの感触のギャップの間で悶えている。

「あっ!くぅっ!……んんっ♡」

散々弄ばれ赤く腫れた乳首がシーツに擦れると、山汐丸は思わず声をあげてしまった。痛みに喘ぐ悲鳴ではなく、快感に喘ぐ嬌声。その声を男が聞き逃すはずはなかった。

男は手に持ったリードを引き絞り、うつ伏せの彼女の首を締め上げる。そのまま首を引っ張り上げられた上体が持ち上がり、海老反りの状態で男に首を絞められる。

山汐丸は両手を首にやるが、深く食い込んだ自身の三編みには指一本すら入り込む余地はなかった。背骨が軋み、首が圧迫され、すぐに意識が遠のいていく。

意識が途切れるかと思った瞬間、再び男の平手が彼女の尻を叩いた。下半身の感覚は三編みによって断ち切られているものの、鈍い痛みと鋭い快感が脳へと伝わっていく。

「……………ッ!…………ッ♡」

二度、三度、その度にほろ苦く甘い感覚が全身を支配する。立て続けに手を打ち込まれて気絶する暇もなかった。山汐丸の脳に届くのは次第に快楽だけになっていった。

このままどうなってもいい。諦めではなく、多幸感によって全てを投げ出した彼女だったが、急に頭に衝撃を受けて現実に引き戻された。殴られた、と最初に感じたがそれは逆で、彼女の頭が重力に引かれベッドに勢いよく打ち付けられたのだった。

「え、あの、じ、自分は…?」

目の前にある白いシーツを見た瞬間、彼女は今まで見たものが全て夢ではなかったのかと錯覚した。しかし、その錯覚は起き上がって後ろを向いた瞬間に打ち破られる。

見慣れない部屋の中で、いつの間にか裸になった男がタバコを咥えていた。その股にぶらさがった肉棒は上を向いており、男は笑みを浮かべている。

「あれだけ締められてもあんなによがり狂えるとはな。いい意味で誤算だったよ。」

山汐丸の顔が途端に赤くなった。

「いえ、自分はあんな…ひ、酷い事をされて喜ぶような女では…!」

男は再び笑い、彼女の下半身へと目線を移した。山汐丸がそれにつられて下を見ると、シーツには染みが深く広がっていた。流した汗によるものでも、男につけられた血や精液の痕でもない。透明な液体が白いシーツを灰色に染めている。

自分の淫らな肉体がつけた染みを見つめたまま、言葉を失った彼女に男が音もなく這い寄る。そして心の隙間へと甘言を流し込んだ。

ボソボソと響く男の声。思考停止した彼女の頭にはそれがよく馴染んだ。彼女の持つありとあらゆる肉欲を肯定する言葉。痛みを快楽へと捻じ曲げる論理。男への変わらぬ忠誠と信頼を誓わせる愛の囁き。

男が耳元から顔を離す。山汐丸はぼうっとしたまま、男の姿を眺めていた。糸の切れた人形のように、男の次の動作を待っている。火のついたタバコを目の前で揺らしても、その両眼は男を見据えている。

赤く揺れるタバコの先端が、白く細い胸へと埋まる。

「あ゛ぁ…あつ…熱いのであります…ああ…ああぁ…」

山汐丸は肌が赤くなるのにも構わず、そこから一歩も動かなかった。痛みを感じなくなったわけではない。だらりと垂れ下がった腕の先では力強くシーツが握られ、肩は震えて背中には汗が滴り、両目からは涙も覗かせている。

それでも、痛みと共に胸の高鳴りを感じる。男への強い感情を感じる。それは恋愛感情などではなく、危機にあたり増加した心拍数と痛みを和らげる脳内物質がもたらした結果だった。しかし、山汐丸の中にあった一欠片の男への想い。それが因果を逆転させている。恐怖ではなく、男への想いが自らの心を叩いているのだと。

「自分は、自分は、提督どのの事を…お慕いしていたので…あります…。」

その告白は過去形だった。今の彼女の中で男がどのような存在であるかは複雑に絡み合った感情の奥底にあり、誰にもわからない。ただ、男の前で自らの体が反応し、心地よい陶酔を味わえる。それだけで最早十分だった。

 

狭い室内に、嬌声と悲鳴が混じり合っている。その相反する二つの声は一つの口から発せられていた。

白いベッドの上で、体に痣を作り、尻を真っ赤に腫らし、今なお平手で全身を叩かれながら四つん這いで男の肉棒を受け入れている山汐丸。それが声の持ち主だった。

肉棒を付き入れられると嬌声が、男の両手が叩きつけられると悲鳴が上がる。男の責めは乱暴で、まだ熟れていない女性器や、爪を立てて握りしめた腰には血が滲んでいる。しかしそれらの刺激も彼女にとっては男から与えられた大切なものだった。

「うぁっ!?あ゛っ♡ぐぅっ!はっ♡あっ!はぁっ♡」

痛みと快楽のスイッチがオンオフを繰り返し、山汐丸の脳が混乱していく。肌にめりこんだ鋭い痛みは甘い快楽に変わり、肉棒によって擦られる膣壁の甘い快楽が鋭い痛みに変わる。

その肉体は目に見えてボロボロだった。尻や背中は男の付けた手形に塗れ、所々にタバコの痕が残る。肘や膝は幾度もの責めと摩擦によって青く内出血を始めている。しかし彼女の脳は今までにないほどに活発化し全身の感覚を鋭敏なものにしていた。

肌にめりこむ男の指紋、自分の子宮を責める男の亀頭、今まで聞いたこともない声で唸り、息を荒くする男の口。生命の危機に瀕しながらも彼女は自らに刻まれる男の一挙一動を感じ取っている。

あまりの責めに上半身が力を失い、ベッドに倒れ込もうとしても男が許さない。彼女がベッドに伏せようと動きを見せれば、男はたちまち彼女の後ろ髪を勢いよく引いた。首に絡まったままのそれは彼女の首を顔を嫌でも持ち上げ、呼吸の自由を奪う。

「かっ………!はっ………♡」

彼女に出来るのは首を締める縄に手をかけることでも、その手で自由を求めることでもなかった。ただベッドの上に這いつくばり、男の責めを受け入れること。

「はぁー、はぁー、はっ、はっ、はっ、て、ていとく、どのぉっ…!」

男を呼ぶ山汐丸。何を請うたのかははっきりしないが、男への懇願であることは確かだった。男はそれを御強請りと解釈し、再び背中にタバコを押し付ける。

「あああぁぁ…あつぃ…あづいぃ……♡」

山汐丸の肌が焦げ付くと共に、彼女の下半身がびくびくと痙攣する。男はそのままタバコをずるずると下まで擦りつけ、仙骨まで赤黒い線を引いていく。

「あ゛っ!あ゛っ♡あ゛あ゛あ゛ああぁっ!」

悲鳴とも嬌声ともつかない声で鳴くと、背中と尻をぶるりと揺らす。彼女の頭の中で星が弾け、痛みと快楽の雷が全身を打つ。接合部からは恵みの雨が巻き散らかされ、太ももに付けられたタバコの焼き痕に染み込んでいく。

「あー♡あーっ!あ゛っ!?あー…」

山汐丸は意味のある言葉を発することも難しくなっていた。普段はおしとやかに小さく開かれた上品な口元は開ききり、涎を真下に垂れ流しながら鳴き声のみを発している。細く薄く開かれていた色気のある瞼は完全に開ききり、目がグルグルとあられもなく動いて彼女の心の様相を写す。

やがて彼女の両腕に力が入らなくなっていく。疲労と痛み、快感で震える両腕は彼女の細い上半身すら支えられず、ベッドの上でその肘を曲げた。目の前に広がる白い海に顔を突っ伏してくぐもった声を上げ始める。

涙と鼻水、涎で真っ白なシーツを汚しながらも、身を捩り顔を押し付ける。力の限りシートを握りしめグシャグシャにして手繰り寄せる。汚され、引き裂かれ、ボロボロになっていくシーツと山汐丸の姿が重なる。

やや静かになった彼女とは異なり、男の唸り声はより一層大きくなっていた。真っ赤になった彼女の尻に爪を立てながら握り、荒々しく腰をぶつけている。平手をその背中に叩き込んでもベッドに向かって呻くだけで、部屋には何も響かない。

そんな彼女の姿に業を煮やしたのか、男は首に巻かれたリードを勢いよく引っ張り上げた。彼女の首がどうなろうともお構いなしに力強く。

「あ゛…!!!!…っ!!!!……ぁっ!!!!」

声すら上げられず、男の前で首を揺らす山汐丸。両手でなんとか自らの首を締める髪に手をかけようとしたが、そんな力は残されておらず二本の腕は目の前の空を切っている。

男は腰を振りながらもその腕に更に力を込める。山汐丸の首がどんどん上へと登っていき、天を向いた彼女の瞳が男の顔を捉えた。赤く充血した片方の瞳には絶望が、そしてもう片方の瞳には男が映っている。そんな彼女の両目を覗いて、男は笑みを浮かべた。

その瞬間、山汐丸は何かが弾ける音が聞こえた。幻聴でも比喩でもないそれは、彼女の血管が弾ける音だった。静脈という逃げ場を封じられ、性的興奮で激しくなった血流が毛細血管を破り、彼女の鼻からだらりと一筋の赤い液体を零す。

液体は彼女の口にも流れ込み、叫び続けて乾ききった喉を潤す。鉄臭さと塩気が強く、喉に絡みつく濃度の高い液体。それでも、今の彼女にとっては甘美な蜜に等しかった。

「っ…!!!!かっ……!!!!!ぐっ………!!!!っ♡♡」

山汐丸は残り少ない酸素で抵抗するのを諦め、両手をだらんと伸ばした。男の全てを受け入れ、苦痛を感受しながら、快楽だけを求めて下半身に意識を集中させる。

声も呼吸も発する事はできないが、ほんのわずかに体を震わせ、フェロモンを放出している。時折絶頂したかのように指先を痙攣させ、自分の太ももを強く握った。

今日何度目かもわからない絶頂が山汐丸を襲った瞬間、男もまた絶頂した。腰を深く突き入れ、一番奥で肉棒を爆発させる。引き締まった彼女の下半身は肉棒を締め付け離さず、濃度の高い精液を受け入れ、代わりに血の混じった愛液をベッドへと垂れ流す。

「っ…♡♡♡ぁ…♡♡♡♡♡ぁ゛…♡♡♡♡」

酸欠であらゆる感覚が鈍った山汐丸の頭に、射精の感覚がダイレクトに流れ込む。充血と苦痛で赤く染まった脳内に白い快楽が混ざり合い、紅白のイメージが彼女を支配していく。

壊れた人形のように全身を震わせ、腫れ上がった秘部から愛液を放出する。男がリードから手を離した瞬間、彼女は自分の出した愛液の水たまりに体を落とした。

「ぁ゛……うぶっ……うぅ…♡」

あまりに長い拘束は彼女に息の仕方すら忘れさせたのか、びしょ濡れになったシーツに鼻と口を押し付けたまま、必死に胸を上下させている。息を吐く度に鼻血をシーツに吹き出し、息を吸う度にシーツに染み込んだ愛液が音を立てて吸い上げられた。

山汐丸の全身に血が巡り、感覚が再び戻ってきた。男の手のひらの感覚、タバコの感覚、叩きつけられた腰と肉棒の感覚、そして首周りにめぐるひりつく感覚。それら全てを再び追体験し、彼女はまた愛液を吹き出した。

 

「うううぅぅ…いぃ、痛い゛ぃ……」

快楽の波の次は痛みの波だった。男につけられた傷跡が快感ではなく痛みを発し、じりじりと彼女の興奮を削っていく。

山汐丸は、このまま気絶していたかった。男への陶酔のまま、全身に広がっているのが快感のまま眠りにつきたかった。痛みも苦痛からも逃げ、そのまま男の慕情へと縋っていたかった。

しかしそんな事は男が許さなかった。彼女がベッドの上で静かに藻掻いていた間、男はどこからか酒瓶を探し出し、震える彼女の後ろに立っている。

男が何をしようとしているのかにも気が付かず、呻きながら体を揺らす彼女の尻穴に、男は逆さにした酒瓶をねじ込んだ。

「うっ…!?……あっ!?熱い…熱い…っ!?てぇとくどの、なにを…っ!?」

まだ中身の入った酒瓶を上下に揺り動かし、山汐丸の尻穴を穿つ男。水音と共に中身が腸内へと流れ込み、アルコールが粘膜を焦がしていく。

「あづっ…あぁ…やめ…やめてください…がっ!?」

残った力を振り絞り、ベッドを這いずって逃げようとするが、首に絡まったままの髪を再び引かれてしまう。ギシギシと背骨が悲鳴を上げ、その場で止まる。

「ていとくどの…熱い…熱いのであります…うぅ…お尻が…焼けて…あぁぁ…」

そう自分で口にしながら、山汐丸は自分が喋れている事に気が付いた。動きを止めた山汐丸を見て、男がリードを緩めたのだ。逃げさえしなければ首は絞められない、そう学習した彼女はそこで止まり、男の献杯を受け入れた。

「熱い…ああああああ…ぁぁぁ…♡」

思わず手近にあった枕を拾い、抱きしめる。全身へ回っていく酔いと熱、どうしようもない体の昂りを抑えるため、枕を愛おしそうに抱えそれに耐える山汐丸。

「あああ…♡あー…♡ていとく、どの…♡♡」

彼女はこう見えて酒は大の好物だった。特に男と呑む酒ではすっかり昂ぶってしまい、普段の愚痴やら鬱憤やらを男に向けてぶつけていた。そうして酔いが覚めてから後悔を繰り返すものの、普段の自分とは違う自分になれるのが好きだった。

そんな酒が、自分の肛門を貫いて直腸に流れ込んでいる。粘膜が焼かれながらもアルコールが回っていき、窒息とは異なる高揚感と浮遊感に支配されていく。

泥酔した彼女の顔は真っ赤になり、鼻からは再び鼻血がボトボトと流れ枕を汚していく。火照った体が思考を溶かし、眠りへと誘われていく。そうして頭が枕に落ちた瞬間、彼女の首が再び締まる。

「かっ………はぁっ!はぁっ…はぁ…♡」

我に帰り、再び首を上に向ける山汐丸。男は絶妙な位置でリードを握っており、彼女が頭を上げている内は問題ないが、意識を失って頭を下げれば一気に締まる程度の位置をキープしている。

気絶することも許されず、肛門で酒を飲ませ続けられ、どうしようもなく火照り昂ぶっていく。じっとしていられない彼女は、自ら体を前後させ始めた。

「う……あぁ……♡あぁ…あー…♡」

酒瓶が揺れ、中の水面がどんどん下がっていく。肛門から零れ落ちた酒が彼女の秘部へと流れ落ち、性器を快感で焼いていく。

「あぁー…♡ていとく、どのぉ…♡自分に…山汐丸に…くださいっ…♡」

普段と違う自分、淫らに腰を振り男を誘う自分。山汐丸は酒によって本能を曝け出していた。だらしなく開いた口を枕で押さえつけながらも、甘く熱い嬌声を男へ投げかける。

そうして男は体でそれに答える。彼女の尻穴に酒瓶をねじ込んだまま、酒と愛液に濡れる膣に熱く滾った肉棒を差し込んだ。

「あ゛っ!ああっ…!あぁ…♡」

酒の絡み付いた肉棒が再び彼女の膣を蹂躙する。こびり付いた精液が掻き出され、代わりに酒が染み入っていく。男はさらに容赦なく酒瓶をぐりぐりと回し、膣だけではなく腸内も犯し始めた。

「あぁ…♡うっ!うぅっ!?ひっ…♡」

快楽の狭間で喘ぐ山汐丸の口からしゃっくりが何度も飛び出す。アルコールの過剰な摂取と性的興奮が横隔膜までをも麻痺させている。しかし、そんな体の微細な痙攣すら、今は心地よく感じてしまっている。

膣からは肉棒が、腸からは酒瓶を突き入れられ、下半身をぐちゃぐちゃに犯されている彼女にとって、アルコールによるものなのか性感によるものなのかは判断がつかない。ただひらすらに痙攣する自分の下半身に溺れていた。

「れぇとく…ほの…ぉっ♡おぉ…♡ お゛ぉ゛っ!?」

呂律すら回らなくなった彼女を見て、男はリードを引く。酔いと快感で弛緩しきった両穴が引き締まり、二人に快楽を与える。

男によって首を絞められながら、前後に揺らされ犯されながらも、山汐丸は枕を抱きしめていた。手を伸ばせば届くはずのベッドにも手をつこうとはしなかった。頭がそこまで働かなかったものあるだろうが、結局彼女は再び快楽を求めて自分から飛び込んだのだった。

自分の首が締まる音、空になった酒瓶が男の胸にぶつかり、腸壁を擦る音、いきり立った肉棒が子宮を叩く音。酔いによって活発になった血管が、締まる頸動脈をも無理に動かして彼女の頭に快楽を与えている。

「っ…♡♡♡♡♡っ~~~♡♡♡♡♡♡」

全ての抵抗を止め、与えられる快楽をそのままに受け止める。このまま男の手にかかってもいい。体も心も酔いきった彼女はそう考えていた。

そんな彼女を見た男は、リードを握っていた片手とは別の手を酒瓶にかけた。肛門括約筋の耐久力など考えず、今自分が突いている女の奥底、子宮へと向けて体重をかける。

酒瓶の口がずしりと腸壁側から子宮を押しつぶした瞬間、山汐丸の脳内が白く弾ける。許容量を超えたその快楽について、後に彼女が思い出せることはなかった。

しかし、男の目が限界を超え乱れ、壊れていく彼女の後ろ姿を目に焼き付けていた。男がリードで引っ張るよりも高く体を反らせ、痙攣する山汐丸。聞いたこともない絶叫で悦びを吐き出し、下半身からは愛液と、肛門に溜まっていた酒をぶちまけて男の体を汚し、ついには失禁もしていた。

「あアアアあああっ♡♡♡♡♡あああアアア゛ッ♡♡♡♡♡♡」

その間にも彼女の性感帯は鳴動を続け、激しく流れる血液が粘膜を震えさせ男の肉棒から精子を絞り出す。熱く滾ったその体は吐き出した精子すら凝固させるほどで、弛緩を始めた彼女の膣はそれらを全て飲み込み、肚を膨らませている。

「アアアああアァッ…♡♡♡♡あああぁ……♡ていとく、ど…の…♡うぅっ♡」

男が肉棒を引き抜いた後、彼女の膣から精液が漏れることはなかった。未だに痙攣を続け硬直した筋肉が、凝固した精液を留め、快感に打ち震えている。

「うぅ…♡ぐっ!ふぅ…♡ぅぅぅ♡」

山汐丸の背中から力が抜け、再びリードの絞めを受ける。彼女が一通り唸るのを聞いて満足した男は手を放し、彼女は枕と共にベッドへ優しく落下した。

「あ゛っ…み、みないで…くださ…ああぁ…♡」

落下の衝撃で叩きつけられた肚から、固まった精子がびゅるびゅると漏れ出す。さらに限界を迎えて広がった肛門からも酒が吹き出し、ゼリーのような精液と混じっていく。

汚れたシーツの上で、肋の浮いた細い胸を膨らませてぜぇぜぇと息を立てる彼女の横顔に、男の肉棒が突きつけられた。三度にも渡る射精で硬さは失われ下を向いているものの、興奮で膨張したサイズは彼女の膣を犯していた時のままだ。

「綺麗にしなさい。」

男がそう言い放つと、山汐丸は力なく手をついて男の肉棒を咥えた。愛液、精液、血、酒。混じり合いこびり付いたものをペロペロと舐め始める。

犬が飼い主の指を舐めるかのような可愛い愛撫だったが、男はそれに満足せず、彼女の頭を掴んで腰へと押し付けた。

「んぐっ…!んうううぅ…!」

山汐丸はそれでも反抗せず、自らの喉で肉棒を洗い始める。今までの責め苦からすれば彼女にとって大した事ではなかった。自分が与えられるだけではなく、自分からも与えることが出来る悦び。これは一方的な陵辱ではなく、愛し合った結果の行為だと自分に言い聞かせるかのように喉を動かした。

喉からこみ上げる嗚咽を飲み込み、涙を流しながら必死に奉仕する。先程まで首を絞められ、窒息に耐性が出来てしまった彼女は容易に肉棒を喉に飲み込み、息もつかずに肉棒を締め続けた。

しかし全身の力と熱を失い、ぐったりとした体での奉仕は男には全く伝わっていない。ただ柔らかい口内を肉棒が出入りしているだけで、そこに先程のような興奮はなかった。

男は山汐丸の余った長髪のリードをさらに彼女の首に二重三重に回しかける。目を瞑り夢中で奉仕している彼女は気が付いてない。

リードの先を自分の開いた股にくぐらせると、男は後ろ手でそれを引き絞った。山汐丸の首が締り、頭がさらに男の股間へと押し付けられる。

「ッ!!!!????~~~~~~ッ!!!!????」

顔が男の下腹部へとめりこみ、逆に肉棒が喉奥を超え食道まで犯し始めた。山汐丸は可愛らしい吐息を鼻から男の肌へと2、3度吹きかけた後、再び窒息する。

そんな彼女の苦しみも気にせず、男は腰を振り始める。密着した彼女の口を道具でも扱うかのように揺らし、締まった喉奥で快感を貪っていく。

山汐丸は抵抗が出来なかった。外からは自分の髪が締め付け、内からは男の肉棒が締め付けている。呼吸はおろか血流すら止まり、ただただ男の玩具として性欲をぶつけられていた。

可愛らしい舌で男の肉棒を押し出そうとしても到底出来るはずもなく、ただ男の肉棒を悦ばせるだけ。その気になれば噛み付けたかもしれないが、彼女はそうしなかった。どれだけ暴力的でも、どれだけ強引でも、男の愛が受け止められればそれでよかった。

削りに削られ残った彼女の思考にそれ以上の考えはなく、ひたすら涙と胃液を垂れ流して男が満足するのを待っていた。全身の力を抜き、より長く自分が保てるように努力した。

「………っ♡♡♡♡………♡♡♡♡ッ!♡♡!!♡♡!」

自分から道具の立場を選んだ山汐丸についに最後の射精が叩きつけられる。喉の奥底で解き放たれたそれは一直線に食道へと飛び、彼女は無言のまま痙攣を始める。奉仕の中で粗相をしてはいけない。男のものを受け止めなければいけない。そんな強迫観念が喉を動かし、放出された精液とカウパーをひたすら飲み干そうとする。

しかし、今の彼女には喉を動かす力も、えづいて吐き出す力も残っていなかった。首から下の感覚はもう無く、喉を内外から締めるモノの感触だけが彼女を支配している。

山汐丸は最後に一筋の涙を流し、びくりと痙攣した。それが絶頂であったのか、気絶に伴う筋肉の痙攣だったのかはわからないが、彼女の下半身は中に残された精液、尿、酒を吹き出して力を失った。

男はぐったりとした彼女の頭から肉棒を引き出す。強く締め付けていた喉奥は男の精液を尿道に食い留めており、抜いた瞬間に残りの精液が吹き出し、目から光を失った彼女の顔を汚す。

だらしなく開いた口からは精液と涎が零れ落ち、微かにひゅうひゅうと空気の音が漏れ出ている。男はそのまま、ゆっくりと枕に彼女の頭を乗せた。

食道に放出された精液を飲み込むことすら出来ず、息を吐く度に白濁した泡を吹いて音を鳴らす山汐丸。男がその汚れきった唇を指でぬぐっても、再び泡を吹き出した。

彼女の口からはこの世とも思えぬすえた匂いが広がっている。唾液、血液、精液の混合物。肉欲そのものの臭気。彼女が目覚めたらその匂いにどんな反応をするだろうか。

可愛らしく微笑む普段の山汐丸。細く見開かれた色気のある目、庇護欲と嗜虐心をかきたてるか細い声を発する上品な唇。丸くまとまった可愛らしい小顔。その全てが汚れ、苦痛と快楽に歪んだ姿を男の目の前で晒している。

男はまた別の酒瓶を持ち出して、手近にあった椅子に座りそれをラッパ飲みし始めた。山汐丸の姿を見ながら喉を鳴らして酒を注ぎ込む。彼女が再び目覚めた時にどんな反応をしてくれるか、そんな想像をしながら再び肉棒を滾らせている。

壊れた男によって壊された女。彼女が男から逃げることはもう無いだろう。逃げれば再び彼女は自身の髪によって首を絞められ、男の元へと連れ戻される。

しかし、目覚めてからも、翌日もその次の日も、彼女は逃げ続けた。そうすれば、男が責めてくれるから。男が愛してくれるから。苦痛と快感の壁は取り払われ、男に何かされることが愛情の発露であると直感するようになってしまった。

精神ではそれを否定する。常人としての心が苦痛を拒絶する。しかしそれでも、彼女の肉体はそれを否定できなかった。男に責められる度、叩きつけられる度、締め付けられる度に悦びを感じる。

山汐丸の首に未だに絡みつく三編み、男につけられた首輪。その絡み合った髪が示すように、彼女の肉体では快感、苦痛、恐怖が複雑に同居していた。彼女の虚ろな目は、未だ男を映し出している。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。