因習村でハブられたので、美少女全員嫁にする 作:CloudWagon
・朧月(投与)
「本当にあった」
「ありましたねぇ」
ところ変わって我が家。命に言われたことを信じて、君恵さんを連れて探索した先。長い渡り廊下と二十八の灯籠の先に、真四角の建造物があった。
それは、確かに神社の裏の本殿と同じ形をしていて、中に入ると、長く触れていなかったはずの空間なのに埃一つ無かった。
「浩太君、すごいですよ、天井」
天蓋がぽっかりと開いていて、夜なら月がよく見えるだろう。さすがに時間感覚は変わらないようで、昼過ぎの太陽が傾いて見えた。
部屋の中には畳が敷かれ、中央に丸い布団が敷かれている。どんなに汚しても、翌日には元通り……という霊術が施されているのだとか。
「今晩はここで過ごされるのですか?」
「そうだよ。昨日と同じ
「そうですか。では、私は母屋で帰りをお待ちしていますね」
「ああ……ありがとう、君恵さん」
君恵さんと並んで、一度母屋に戻る。装束姿は楽だが、普段着にしたいと思えるほど簡単に着用できない。今は、グレーの七分丈パンツに黒いタンクトップという適当な格好だ。
君恵さんは涼しげな水色の小袖を着ていて、今日も可愛らしい。君恵さんと並んで居間にまで戻ると、君恵さんはお茶を用意してくれた。
「今日は紅茶ですよ」
「へぇ、珍しいな」
「はい。蒸らすのに時間が掛かりますので、その間にミルクの用意を致しましょう」
「あー、なるほど。よろしくお願いします」
君恵さんは俺の隣に座ると、ズボン越しにちんこを撫でる。俺もなんというか、パブロフの犬とは思いたくないが、君恵さんにアプローチされると条件反射で元気になってしまう。恥ずかしいな、これ。
「大きくなりましたね」
「君恵さんがえっちだからさ」
「否定は致しません。さ、出すモノを出して下さいな」
「こわい婦警さんだ」
「浩太君のおちんちんを逮捕します」
君恵さんに促されるまま、ちんこを取り出す。既にフル勃起のそれを、君恵さんは手で扱き始めた。こうすると射精まで早くなるんです、と、得意げに言いながら。
「そろそろしゃぶりますので、他の女の子にして私にしていないプレイがあったら白状しておいて下さいね。自白は罪が軽くなります」
「重くても良いが……あー、秘薬の組み合わせで、すごくえっちになるやつがあるんだが、一日ぱっぱらぱーになる」
「ふむ。はむ。ぷは。今度やりましょう。あむ」
君恵さんは大きく口を開けてちんこを咥え込む。完全に俺の気持ちいいところを把握している君恵さんは、裏筋を舐めながら鈴口にすいつき、金玉を揉み、首のストロークで搾り取ろうとしてきた。気持ちがいいのはもちろんだが、嬉しそうにしゃぶってくれる君恵さんがかわいい。
君恵さんが理性をぶっ飛ばす姿は、正直見たい。回り回って健康にも良いみたいだし、今度、冬先輩をぱっぱらぱーにしながら月海の秘薬をたくさん貰ってこよう。お仕置きもかねて。
君恵さんは軽快に俺のちんこから精液を搾り取ると、喉を鳴らして飲み干して、にっこりと笑う。とにかく、君恵さんが上手すぎて震えている俺に、君恵さんはおっぱいを差し出した。
「さ、紅茶にミルクをどうぞ。量はお好みで♡」
「どれどれ」
俺は君恵さんに卓袱台の前に正座して貰って、後ろに回り込む。膝立ちになると、後ろからおっぱいを掴んで、まだ湯気の立つ紅茶に向けた。
白いティーカップ。琥珀色の紅茶。右の乳首を絞ると、ミルクが噴出する。だが、これが妙に難しくて、入らない。
「ぁぁんっ。もう少し、上ですよ」
「難しいな」
君恵さんのおっぱいを、左右交互に絞っていく。柔らかいおっぱいとコリコリの乳首を扱いてミルクティーを作るという作業に、興奮が募る。既にちんこは勃起しなおしていて、痛いくらいだ。
君恵さんは絞られる度に嬌声を上げ、おっぱいを絞る俺の手に涎を垂らす。抵抗の一切はなく、むしろおっぱいを押し付けてくるかのような行動に、俺の興奮も募っていく。えろ可愛いすぎるだろ……。
「ぁんっ。乳首きもちいいです。上達しなくてよいですよ」
「冷めちゃうだろ。コツ掴んできたんだ」
「やぁんっ♡」
やがてほどほどにコツを掴んで、俺は見事、ミルクティーを作ることに成功した。
「ふふ、お上手でしたよ、浩太くん♡」
「はは、ありがとう、君恵さん」
笑顔に君恵さんに、俺もまた笑みを返す。お茶会、だけでは済まなさそうだ……なんて思いながら。
――夜。
俺は、装束姿で離れに立つ。持ち物は夢に持ち運べる(そういう効果のアイテムとして)らしく、適当に裾に道具を放り込んで、俺は金色の丸薬――月の薬を飲み込んだ。
布団の真ん中に枕を置いて、月を見ながら寝そべる。七月も近い夏の季節。夜には虫の声も聞こえるはずなのに、この離れは驚くほど静かだ。
(夢の中で、か)
目を閉じる。掛け布団はいらない。ただ、無風の月夜に思いを馳せて。
(いしき、が)
落ちていく。
墜ちていく。
おちていく。
くらやみのなかで。
ひかりをみて。
めを。
あけた。
(こ、こは?)
身体を起こす。場所は、離れのようだ。季節は夏だろうか。中天に上る太陽は白く、肌で感じる気温は、熱い。本当に夢の登場人物になったのかと不安に思いながら、俺は装束姿で離れから母屋へ足を向けた。
夢の中にいる間、夢の登場人物からは、とくに違和感なく認識されるらしい。だがそれじゃあまっさらな光景は見られないかも知れないので、俺は懐から万年筆型の煙管を取り出して、透明人間になるお香――沈魚の秘薬を長めに吸った。
「俺の家……だけど、雰囲気が、匂いが違う」
母屋に足を踏み込み、人の気配がする方へ。そっちに、魂がいるのかもしれない。場所は、そう、君恵さんがよく洗濯物を畳んでいる、縁側の方だ。君恵さんがいるのか?
歩いて、縁側に足を踏み入れて、そして。
「うぅ~、つらいぃ」
お腹を押さえて蹲る、黒髪の女性。青い着物に身を包んだ、きりっと尖ったつり目が特徴的な、女の人。
「背中、摩るよ。魂にあたたかい飲み物を持ってきて貰っているから、少し耐えて」
そんな女の人の背をさする、背の高い男の人。柔らかい口元と、俺に、よく似た、顔。
「神子様は、ちょーっとぽややんとしすぎよ。あいたたた」
「二人きりなんだから、
「はいはい、我が儘な神子様だわ。ごめん、しょんぼりしないでよ、浩希」
倉持――久城浩希と、倉持笙子。
ずいぶん若い頃の二人が、並んで、笑っていた。
穏やかな光景だった。優しさと温かさに満ちた光景だった。俺は不意に、自分の頬に手を当てる。涙すら、流せない己に、少しだけ嫌気が差した。
「主様~、笙子様~……暖かい生姜湯です」
俺の後ろからそう言って駆け寄ってきた声。一四〇センチ半ばの身長と、毛先が白い銀の毛並み。大きな、銀色の尻尾。浅葱色の小袖姿。
今よりもずっと落ち着いた格好の魂が、盆に湯飲みを載せて、二人の後ろに正座した。
「ありがとー、魂」
「いえいえ、なんのその! しかし大変ですねぇ、
「はは、笙子ちゃんは“血の守人”だからねぇ。僕のために、ごめんね」
「謝んないでよ。ふぅー、おいしい。……村のため、よ」
母さん……倉持は、久城を守る守人であったという。それは身体的なことでもあったかもしれないけれど、一番は、村のシステムに誤作動があったとき、それでも久城の血を絶やさぬよう、閉月の秘薬を摂取せず、村の結界から除外し、普通の女性としての機能を保持していたのだとか。
苦しそうな母さんを見る父さんの目は、優しさと温かさに満ちていた。そんな父さんに体重を預ける母さんの目も、信頼と温かさで満ちていた。ああ、二人は本当に、好き合っていたんだと実感する。
「ふぅ。ちょっとトイレ」
「もう。お花を摘んでくるって言いなよ、笙子ちゃん」
「用足してくるわ」
「はぁー、まったく。そんなだからこーちゃんたちに怒られるんだよ。いってらっしゃい」
ふらふらとした足取りで、俺の隣を通り過ぎる母さん。母さんは月のモノの重みに腹をさすりながらも、どこかむずがゆそうな顔をしていた。
残されたのは、父さんと、魂の二人だった。まだ少しだけ冷たい風が、縁側に降りる。日差しは暑く、空は青い。
「お似合いですね、お二人は」
口を突いたのは、魂だった。それは、誰が見ても、という枕詞がついてもおかしくない。そんな、的確な言葉だった。でも、父さんは首を横に振る。
「そうかな。でも、ダメだよ。倉持は本当に村の存続が危うくなったときに久城を受け入れる。だから、倉持と久城は血を交える訳にはいかない。血が濃くなり過ぎちゃいけない。僕は、
父さんは、前を見ていた。でもその瞳は揺らぎ、納得できるものではないのだということが、よくわかった。父さん、アンタは……だから、母さんの手を取ったのか?
役割を受け入れて、ただの繁殖用の棒となっても、村の存続のためへの使命感もあって、結婚相手すらも許容して。
それでも、母さんを受け入れられないことだけは、納得できなかったんだな。
「魂」
「はい」
「出会うということは、辛いね」
「……わたしは」
魂は縁側の下に降り立ち、父さんの正面に回る。それから、両手を取って、笑った。
「わたしは、出会いが辛いとは思いたくありません。主様と、笙子様に出会えたのですから」
「魂……」
「ですから、約束しましょう? この先、どんなことがあっても、わたしを、魂をおそばに置いて下さい。あなた様が柱となって、名の意味を忘れようと、魂がお名前を呼び続けますゆえ」
「そう、だね。うん――ずっと一緒にいてくれるかい?」
「はい」
「じゃあ、約束だ」
二人きりの縁側。小指が絡んで、約束が成る。魂は確かに、父さんのことを、温かい目で見ていた。でも、母さんのことも同じように見ていた。本当は誰よりも、二人のことが好きだったんだ。でも、儀式を通じて名を失ってしまうのは父さんだから、父さんに寄り添おうとして。
「わたしは、あなたとずぅっと一緒にいとうございます」
きっとそれが、恋になった。
報われぬことが定められた、恋だった。
早送りのように場面が変わる。
夜になり、朝になり、夜になり。
月が落ち、星が環になり、夜が訪れ。
俺の後ろ、縁側を覗くように、柱の陰に魂が立つ。
夜の縁側に座るのは、青い着物姿で泣きじゃくる母さんだ。黒い髪を垂らし、両手で自分の身体を抱きしめて泣いている。そんな母さんを、縁側から降りて抱きしめる父さんの姿が、あった。
父さんは慰めるために降りたのだろう。裸足に白い浴衣姿で地面に立って、小さな母さんの頭を撫でる。
「浩希が、うぇ、ぐす、私の恋のために、全部投げ捨てなくてもいいの! ぅぁっ」
「違うよ、違うんだよ、笙子ちゃん。君のために投げ出すんじゃない。僕は僕の恋のために、
「でも、でもっ、私なんかのために、地位も、名誉も、婚約者も捨てることなんて!」
「笙子ちゃん、僕の目を見て」
父さんは、穏やかに微笑んで、母さんに顔を上げさせる。緩く微笑む笑顔には優しさと――いやこれ、どこか、そう、どこかで見たことがある。いや、父さんが、じゃなくて、母さんの顔が。
「こ、浩希?」
そうだこれ。
俺の逆鱗に触れたときの、女たちの顔だ。
「僕が全部を捨ててでも好きになったのは君だよ、笙子。愛されている自覚、今から刻みつけてあげてもいいんだけど、どうする?」
「ヒェッ……ご、ごめんなさい」
涙を引っ込めて震える母さんと、にこにこと柔らかい笑顔で見つめる父さん。その様子を、影で見つめていた魂は……ぎゅっと唇を噛みしめて、その場を立ち去る。その寂しい背中を追いかけようとしたとき、また、場面が変わった。
夜の縁側。魂は足を止め、振り向き、俺の横を通って縁側へ。俺も釣られて振り向くと、夜の縁側には俺の知らない女性がいた。
(あれは、誰だ?)
黄金の長い髪、表情を変えず、茫洋と涙を流す緑の目。黒い小袖に身を包んだ女性の姿。
「どうして……どうしてなの、浩希さん」
「……
「魂? ふ、ふふ、私たち、置いて、いかれてしまったのね」
ああ、そうか、彼女が、最初の記憶で父さんが言っていた、父さんの婚約者。その美しい
彼女が、父さんと結婚するはずだった人。銀木、金さんなんだ。金さんは、近づいてきた魂を抱きしめる。華奢な肩を震わせて、脆く、弱く。
「私ね、笙子の親友だったの。笙子ね、私の“恋”を、応援してくれたの。なのに、なのにッ!」
「金、様。金様、こがねさまっ」
「ゆるさない。絶対に、絶対に許さないわ。償わせてやる。
恨み辛み。
ああ、そうだな、あんたは置いていかれたんだな。わかるさ、父さんと母さんの気持ちよりも、金さん、あんたの気持ちの方がわかっちまうかもしれない。
手を伸ばせないことがもどかしい。だって、遠き過去の、冬先輩に似たこの女性は、口で紡ぐ憎しみという言葉なんかよりもずっと、ずっと強く、“寂しい”と、涙に濡れた瞳の奥で叫んでいたから。叫んでいると、“理解”しちまったから。
場面がかわる。
離れの中。夜の天窓に向かって、泣き叫ぶ魂の姿。
白い浴衣は涙に濡れ、食いしばった歯から嗚咽が漏れる。
「どうして、どうしてですか。約束、したではありませんかッ! うぁっ、ぅぅ、ぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
魂はひとしきり泣いたあと、するりと狐の姿に変わって、夜の離れを後にする。思わず追いかけようと手を伸ばした俺に、後ろから、声が掛かった。
「これでわかりましたでしょう? 主様」
本殿によく似た離れの中心。丸く敷かれた布団の上。月明かりに照らされた、白い着物の少女。毛先の白い大きな銀髪。同じ色の耳と尾と麻呂眉。銀色の、瞳。
時に陽気に、時に軽快に、軽口叩き飛び回り、元気な様子を見せていた魂は、ここにはいない。最初に出会ったときの小柄な少女の姿のまま、けれど疲れた老婆のように立ちすくむ。
「約束は踏みにじられ、思いは塵に帰し、恋は骸になりました」
「魂、おまえ」
「ですから、主様によく似たあなたに、私の初めても何もかも、踏みにじって欲しかったのです。くふふ、まるで処女ではないように見えましたか? そうでしょう、そうでしょう、経験豊富に捉えていただくために、
そうか、あの技術は命のものか。魂は命の眷属と言っていたな。どうせ命のことだ。面倒くさがって“自動”で引き継ぎか何かしたのだろう。だから、命は魂のことを覚えていないんじゃないか。あいつめ。
「さ、おいでくださいな。夢の中であるようですが、まぁいいでしょう。哀れに思われたでしょう? 滑稽にも見えたかもしれませんねぇ。あるいは、間抜けだと思いましたか? ああ、それとも、この狐めに同情をしてくださいましたか? であればどうか、置いて逝かれた哀れな雌狐に、温情と思って情けをくださいませ。主様と、笙子さまの、愛の結晶に踏みにじられたら――わたしはようやく、恋を
俺は――俺は、嘲笑を浮かべる魂に近づいた。同情か。ああ、そうだな。同情はあるさ。置いて逝かれたもの同士の、キズのなめ合いが無いと言えば、きっと嘘になる。
憐憫か、と、問われたら、それだって否定はできやしない。だってそうだろう。泣きじゃくる彼女を哀れんで、手を伸ばそうとしたのだから。
「魂」
「さ。陵辱してくださいな。押し倒して、毛皮を剥ぎ取り、鍋にでも放り込んで」
「魂」
「なんです? ああ、名前で呼べばよろしいですか? それとも、名を奪い獣としますか? それも良いでしょう」
「魂」
俺は魂に近づいて、その、華奢な肩を抱きしめた。
「言ったよな。俺に失恋の八つ当たりをするなって」
「なっ、ちょ、あー、はいはい、気に入らなかったのですね? では苛立ちをぶつければよろしい」
「言い換えるよ。俺で恋を忘れようとするな。傷も、痛みも、苦しみも、投げ捨てて自分自身を苦しめようとするな」
「ッ! はっ、何様のつもりで? ああ、主様でしたね。失敬失敬。心を陵辱しようと?」
腕の中でもがく魂を、強く、強く抱きしめる。傷だらけの心が、ばらけてしまわないように。
「露悪的だな。恋情を小馬鹿にして、血縁の善し悪しで他人を測り、経験豊富に見えて快楽に弱い」
「っ、なん、ですか、急に」
「傷つきやすいわりに、傷ついている人が放っておけなくて、裏切られても信じたくて、笑顔の下に寂しさを隠して、他人の気持ちに鈍感で」
「ど、鈍感呼ばわりは本当に心外なんですけれど!?」
「鈍感だろ」
肩を突き放し、両手で魂の頬を持つ。銀の瞳と、視線が交わった。
「俺がどうして、夢の中にまで入り込んで、魂のことを知りたがったのか気が付いていない」
「は、ぇ?」
「はっきり言ってやる。奔放で我が儘で傷つきやすくて、面倒で。優しさと寂しさを表に出せなくて、前を向けずに彷徨うおまえが、どうしようもなく見放せなくなった。俺はたぶん、魂みたいな女を好きにならない。でも、愛おしくなっちまった」
「ど、え?」
動揺と、疑心と、不可解さ。揺れ動く魂の瞳に、ただ、思いをぶつける。
「おまえに“恋”をした。だから、処女がどうの、傷がどうの、陵辱がどうのと面倒な感情“
引き寄せて、震える唇を奪う。魂は、抵抗しなかった。
俺はきっと、魂みたいな女を好きにならない。前を向く女が好きだ。傷ついても、辛くても、前へ向かって歩ける女が好きだ。でも、俺は昔から、そんな女と付き合ったことは無かった。
好きだ嫌いだとか、善し悪しだとか。
どうにもならなくて、どうしようもなくて、どうともできなくて。
小賢しい理屈をまるっと踏み潰して芽生えてくるのが、“恋”なんだ。
だから俺は、この村で最初に――どうしようもなく不器用な冬先輩に、恋をしたんだ。
「ん、ちゅ……っ、ふ。普通は、返事を貰ってから接吻しません!?」
「俺なんかに恋された魂が悪い。愛されてる自覚はきちんと刻んでやらないと」
「わ、わたしにはまだ、断るという選択肢が残されているんですからね!?」
「ないよ。ずぅっと一緒だ。死が分かつまで、ずぅっと一緒に生きろ」
「重すぎます!!!」
魂は、ついに目を逸らす。俺の胸元に手を置いて、装束を握りしめる。
「どうせ、“外”に出たら村のことは捨て置くのでしょう?」
「“外”だろうが“町”だろうがついて来れば良いだろ。一緒にいるって、そういうことじゃないのか?」
「し、信じたら、捨てるのでしょう? 都合の良いように、使って!」
「嘘吐いたら死ぬ契約とかできないのか? 命に聞くか」
「現人神をそんな契約で縛れるはずがないでしょうに!! あと重いです!!」
俺が頬を固定しているから、魂はろくに動くこともできずにじたばたする。その様子が可愛らしくて魂の唇を舐めると、魂は大人しくなった。
「……たくさんの恋人のひとり、でしょう?」
「それはすまん。でもちゃんと愛し抜くから」
「ふ、ふふ、ウソでも“おまえだけだ”とは、言わないんですねぇ」
「ああ、そうだな、それを約束しよう。俺は魂に嘘を吐かない。絶対に。言えないことは、言えないって言うさ」
「あははっ、なんですかそれ! 我が儘ですねぇ。ふ、ふふっ」
魂から手を離し、両手を広げる。
「俺の“恋”をやる。代わりに俺に“恋”をくれ」
「本当に、嘘を吐かないんですか?」
「吐かない」
「ではわたしは、あなたの恋人達の中で何番目で?」
「全員同じだ。一人残らず、身も心も俺の女だ。優劣なんかない。全部だ」
「ぅぅ、本音っぽいです。重いですねぇ、ふ、ふふ」
魂は、ふらふらと俺に歩み寄る。それから、俺の胸にもたれかかった。
「嘘を吐いたら――いいえ、置いていったら死にます。全部を怨んで、憎んで、怒って、狂って、でも、きっとなにもかも嫌になって死にます。ですからどうか、わたしに死んで欲しくなったら、約束を破って下さいね、浩太様」
「そんな日は来ないが……まぁ、魂の、どう転んだって疑っちまう心のまま、全部くれるんならそれでいい。一緒にいながら、確認してくれ。俺が約束を破ったりしないってことを」
魂は、声を上げて笑った。転げ回るように、心の底から、笑った。
「あっははははっ、“恋”が“全部”になってますよぅ。ふっ、ふふふっ、くふふふっ」
「嘘を吐かないとそうなる」
「あははははっ、なんですかそれ! くふふ、こんなところまで追いかけてきて、必死な様子で口説くかと思えば勝手に接吻をして――ふふふ、絆されない女など、どこにおりましょうか」
月明かりの中、観念したように笑う魂。
その笑顔が、幼げに見えた彼女が、積み重ねてきた時間の結晶のように見えた。
「じゃ、俺の嫁だな。結婚するぞ、魂」
「はいはい、しょうがないお人です。もう好きになさって下さい。あーあ、もう本当に、ひどいおひと。わたしの最後の“恋”、受け取って下さい、主様。わたしも、主様の“恋”を、頂戴いたしますゆえ」
魂の頬に手を当てて、唇を合わせる。
月の照らす布団の上、小さく、二つの影が重なった。