依存するのは良くない、というのは分かりきっている事で。自分なりに節度を持っていたつもりだし突然言われる筋合いもないけれども、何処かで違和感は在ったのかもしれない。風俗通いなんて柄でもなかった私が、なんでまたああも入れ込んでしまうのか。恋だと思っていた感情の正体が、再び分からなくなってきた気がする。岡目八目とは言うけれど、やはり冷静さを欠いている状態が長く続いてしまったせいなんだろうか。
そもそも、だ。寝てる間に性別が変わってるってなんだよ。それにふたなりなんて、今まで合ったこともなかったぞ私。こうも重要な話を、何の疑問もなくガンスルーして来たというのも信じがたい。結構疑り深い筈なのだけれども私。
…とは言え、来ちゃえば気持ち良いんだから困ったもんだ。どんなに深く悩んでも「二度と行かない」という選択肢は無い、それが私。間を開けたのだって、別に悩んだせいだけじゃない。仕事が忙しくなったから、というのが大きい。懐具合にさえ大きく響かなければ、とりあえずは大丈夫だと思うし。茹だった頭でそういう結論を出すと、後はもう楽しむだけの時間だ。悩みを棚上げし、鈴花さんとのセックスに集中してしまうと本当にそうとしか思わなくなる。ああ、確かに依存しているんだろうな。
蕩けるキスから始まる時間、最近はいつも本番メインだ。細かいプレイより、どれだけ鈴花さんのおまんこをおちんちんで堪能するかという事ばかり考えてしまう。そして勝手知ったる他人の中へドクドクと精液を注ぎ込み、心地良い脱力感が身体を支配する頃には、細かい事を悩んでいた自分が馬鹿馬鹿しくなる。久しぶりの射精感、粘膜の触れ合う愉悦。これさえあれば、良いじゃないか。うん。
「良くはない…か」
プレイを終えて帰り道、夜の風で頭を冷やされると、不意に疑問が帰ってくる。良くはない。本当に、良くはない。あそこにいるとマトモにモノを考えられなくなってしまう。それとも場所ではなく、ふたなり化のせいだろうか。どちらにせよこのままでは良くない。――考えなければいけないのだ。でも距離を置くと言うのは無しだ、寂しい。あぁもう、本当に。私はどうしてしまったのだろう、そしてどうしたいのだろう。何かしなければならないんだ、例え無駄であっても。だからこそ、私は次に備えて一つオプションの予約を入れたのだ。
そして少しばかり日にちを開け、また鈴花さんの下へと訪れる。しかしいつもとは違い、私はふたならない。ふたなるのは私じゃない。そう、いつぞや「そういうオプションもある」と聞いた、逆ふたなりプレイを敢行する為に今日は来たのだ。ふたなり化で私の頭が鈍っているとしたら、こうすれば少しはマトモに考えられるかもしれない。…いや、こういう考えになる時点で普段の私も相当壊れている気もする。どうも手遅れかもしれないな、うん。
いつもとは違い眠りに落ちる事もないまま、いつもとは違い頭が緩まないまま部屋へと通される。寝たまま運ばれているのが常だから、どうも勝手がおかしい気もする。とは言えど、鈴花さんはいつも通りの笑顔で私を迎えてくれた。ふたなっていてもどうやら変わっていないようだ。こちらとしては、どうにも落ち着かないのだが。
「じゃぁ、今日は攻守交代ですね」
「ん、うん……」
言いながらも、視線がどうにも下へ集中してしまう。鈴花さんのそこには、ふたなっているんだから当然だがおちんちんが有って。その下にはおまんこが息づいているのに、男でも女でもない存在で。あぁ、やっぱり変な感じだ。今までどれだけ熱に浮かされていたのか、と思う。
でも、だからと言って、身体は身体で受け入れていく。頭がどう悩んでも。気が付くと私は膝立ちで、目の前にある鈴花さんのおちんちんへとキスしていた。自分がされてきたように、啄むようなキスが止められない。こんなにも他人のおちんちんをいとおしいと思った事は、多分無い。高校時代の初体験からずっと、排泄器官としか思えなかった。臭いし不味いし自発的に口に入れようなど考えず、求められても嫌々だった。なのに今は、舌を絡め吸い付き美味しそうにしゃぶっている。冷静さなど保てない。口全体で味わいたくなり、頭を前後に揺すりながらおちんちん全体へじゅぱじゅぱと音を立てて奉仕を始める。イラマチオ、とか言うんだったかな。こうやってくわえながらなら手を使わずとも身体を保持出来る、と気付くと私は空いた手を自分のおまんこへと向かわせてしまう。人差し指と中指を揃え入り口を掻き回し、粘液を纏った指先を鈴花さんのおまんこにも向けてやる。二人の汁は絡みあってベッドに流れ、布へと染みを作っていく…。指とおまんこと口、それぞれへ意識が分散し少しずつ脳の境界が蕩けていくのがわかる。
「うふふ、じゃーぁ、そろそろ一回出しますねー…」
ハッと気が付くより、口の中で脈動が増大する方が早かった。唇がおちんちんの根元に触れた感触と共に、喉の奥へと熱い飛沫が迸っていく。口内射精されたのは、人生で二度目だ。最初の時は嫌々フェラさせられた上「飲むとか無理だから」と言っておいたのに不意討ちで出されてしまい、思わず殴ってしまったっけ。でも今回はそんな感情は湧いてこない。私の口中で気持ちよくなってくれた事が、純粋に嬉しい。しかし放たれた大量の精液を胃の腑に呑み込むと、今度は早くも「次」が欲しくなってしまう。
欲望のままに脚を拡げ、見せ付けるように両手でおまんこを大きく開かせる。ここ、ここ、とおちんちんへ目で合図する、まったくもって浅ましい性欲の虜な私。ふたなりのせいでも何でもない、これが私なんじゃないか。何度同じことを考え直せば良いんだ、答えなんか手のなかにあるのに。
ぷくちゅ、と粘膜がキスをする。大分ご無沙汰の、受け入れる快感。そして生でするのは初めてだ。これが本物だったら絶対躊躇うんだろうが、どうせふたなりなら妊娠もしないそうだから構うものか。ゆっくりゆっくりと、押し拡げられていく膣肉。私の奥が、征服されていく感覚。あぁそうだ、
だがそんな感情は、身体を貫く激しい快楽に消し飛ばされ跡形も無く塗り潰されていく。口からは切れ切れの嬌声と唾液が止まらず、突き上げられる度に目の前が白く染まる程視界がスパークし、身体中が壊れそうな程感覚が高まっていくのがわかる。そして、程なくその時が訪れた。
「…っ、あ…ぁっ」
胎内を走る強烈な拍動と共に、身体の最奥で何かが弾ける。殆ど意識したことのない子宮口に、激しく叩き付けられる粘液質の快感。―生まれて初めての、膣内射精。するとされるで、こんなに違うとは思わなかった。今度三人で、膣内射精しながら膣内射精されてみたらどうなるか試してみたくなる。…と、グチュリとおまんこの中でおちんちんが再び動き始める。そうか、私も一回じゃ終わらないしそりゃまだまだ続けるよね。
気がつくと私はいつも通り、気を失うように倒れ込んだまま終了時刻を迎えていた。お腹が若干出ているように思えるのは、きっと気のせいじゃない。何度出されたか分からないくらい、たっぷりと膣内に射精されたからに他ならない。マーキング、とも言えるか。
何にせよ、分かったことは二つ。私はふたなりとかそういう事に関係なく、単に性欲旺盛な人間だという事。そして、この店での経験が現実だと言うこと。いつも眠る手順を挟んでいるから、もしかしたら全て夢なんじゃないかとも思えていた。ふたなり化だの都合のいい精液だの、現実感の無い出来事ばかりの空間に疑問を持てなかったのは、全部夢の中だから…という訳でもないようだ。とは言え、それが果たしてどういう意味になるのか。知ってしまわない方が良いような、そうではないような。
まぁ、いいか。…何だろう、何か悪いサイクルに嵌まっている気がするのだけれども。