人間、事が進まなければ気がつかないものだ。そう実感したのは、ある休日になんとなく思い立って記帳した時の事。金のかかる趣味を持たず色恋にも没頭せずいい歳までOLとして生きてきた私、そこそこの金額はなんとなく蓄えてきた。独身OLは基本小金持ちなんだよ畜生。…しかし最近、その積み上げ方が鈍っている事に気がついたのだ。目に見えて減っているわけではないし、単に増え方が微妙に減りつつあるだけ。生活が変わってきた、その原因はわかっている。風俗通いだ。
少しずつ少しずつ、抵抗もなく気ままにふたなり風俗へ行くようになって結構経つ。いつの間にやら、私の人生はあの店と切っても切れなくなりつつある。鈴花さんがいなくなったら、生きる理由も無くなるんじゃないだろうか。もう首まで沼に浸かりきって、それでもまだ私は大きな危機感を抱いてはいない。もしかして、息が出来なくなってもこのままかもしれない。――気にしすぎ、とも思う。だかどうにも分からない。悩んだ挙げ句に行き着くのは、いつもの場所なのだから私も相当だ。
甘い香りに呼ばれ、眠りの扉を通った先で私は今日もふたなっている。心の強張りは影形もなく、硬いのはおちんちんだけだ。我ながら流されるものだ、本当に。射精させてもらうだけだった最初の頃が嘘のように、ひたすらセックスセックスまたセックス。多分普通の男性が一生かけてする膣内射精回数を、とっくに越えてるんじゃないだろうか。それでも飽きることも膿むこともなく、ひたすらむさぼり続けて来たのだからそりゃ金も貯まらないわけだ。
「素子お姉さん、すっかり常連さんですねぇ」
「んぁー…まぁねぇ。あたしゃ常連じゃなく、鈴花さんのカノジョになりたいわよ」
「うふふ、またまたぁ」
…これだけ深い関係でも所詮私はお客さん。プライベートへの誘いは鮮やかにかわされ、ふたなっていない時に逢うことは一度も無い。恋人よりも濃密で友達よりも細い関係。まったくなぁ、どうしたものだろうか。これから先、どんどん金を注ぎ込もうが進展は恐らく――無い。おまんこの奥まで知っているのに、心の中には入れていない。あぁ、まったく堂々たる片想い。でもま、片想いだって楽しいものだ。そんなの大分前から知っている、報われないから面白い。そう思い続けることが出来れば、きっと辛くないんだろう。私だけが常連でもあるまいし、別のお客にも抱かれているわけだ。独り占めしてやりたいけど、こうも無力だと足掻く気にもなりゃしない。ただ精液を溜める為だけのような平日を終え、週末には鈴花さんの所で全弾発射。そんな日々はこれからも、多分しばらくは続くんだろう。そう、続いてくれなければ困る。
お互いふたなって、と言うのは考えてみれば殆ど無かった。それも鈴花さんのリクエストで、なんて。互いの股間に生えたおちんちんは、同じようでも大分違って。私の方が筋肉質というか、力強そうな感じでカリも高い。鈴花さんのは、なんというかシュッとしてるというかスマートな感じ。何度かおまんこで味わっているけど、こうやって自分のと見比べるのは新鮮な気分になる。先同士を擦り合わせていると、すぐに透明な汁が溢れて幹を伝っていくのが何だかとてもいやらしい。兜合わせ、だったかな?そう考える間にも指先で鈴口をクチュリクチュリと弄ばれ、思わず腰を引いてしまう。やっぱり弄り方では敵いそうも無い。まぁ相手はプロなんだから、勝てるわけがないんだけど。
引いた所で愛撫が止まるわけでなく、今度は幹を摘まむようにソフトタッチでしごかれていく。弱点もなにもかも知り尽くされたおちんちんは、反り返ったままビクビクと震えるばかり。御返し、と私も鈴花さんのおちんちんをしごいてあげる。お互いにおちんちんを弄りあい、先端を押し付けあう。ぐにゅぐにゅと小さな口同士が濃厚なキスを交わし、透明な汁が糸を引いていく――。
「あ…のさ、もう…出ちゃう…から……っ」
「ふふ、じゃーぁ…しましょうか」
離した手でおまんこをクチュリ、と拡げる鈴花さん。そう、どうせ出すならおまんこの奥に注ぎたい。ふたなっていなければきっと理解出来ない、雄の性欲だ。勃起したおちんちんが求めるのはそれだけなんだと、頭の奥が告げている。きっと鈴花さんもそうなんだろうけど、でもやっぱり私は射精されるより射精する方がいい。身勝手ではあるが、私「お客さん」だし良いじゃないか、うん。
そのままベッドに腰掛けると、そのまま鈴花さんが抱き合うように私に乗ってくる。ズブリと私のおちんちんが鈴花さんの中に沈み、更に私のお腹に鈴花さんのおちんちんが擦り付けられる。…男同士で正常位したらこうなるんだろうか。あんまり想像したくないけど。強く抱きしめ合いながら身体を上下に揺さぶると、おまんこの奥へとおちんちんが突き当たる感触と共にお腹で擦れる鈴花さんのおちんちんの熱を感じて。そして押し付け合い形を揺らしていくおっぱいと、貪り逢う二人の唇。身体全部が愛し、愛されている。全身で恋する、そんな熱い熱い濃厚な絡み。このままずっと繋がっていたい、終わりなんて来なければいい。そう思いながらも、クライマックスへと身体を追い立てていくのは他ならぬこの私だ。
体を入れ掛け、力の限りおまんこを突き続ける。一挿し毎に脳が蕩けていくような快感、狂暴な射精欲求へと素直に身を委ねると、直ぐにその時が訪れた。最後の力でおちんちんを突きだし、少しでも奥へ奥へと目指しながら、身体の奥で溢れそうになっていた精液を全力で注ぎ込む。目の裏がチカチカし、意識はもう絶え絶えだ。お互いを抱き抱えるように、ゆっくりと背中がベッドへと軟着陸していく刹那。
「…―― ―――」
何か、言われた気がした。気だけはしたがそれを理解する前に、私の意識は白く塗り潰され彼方へと流れていってしまっていたのだけれども。まぁいいや、と目を閉じる。何時もの事だ。
そして気がつくと、私は雑踏の中にいた。…どうやら店で目を覚ましてから今まで、夢現のまま歩いていたらしい。身体は戻っているようだけど、こんなふわふわしたままで出てきたのは初めてかもしれない。全くなぁ、いくら気持ちいいからって。私も相当だ。さてと次の週末まで、仕事に耐えて頑張ろうか。また、セックスしたいし。
あれから暫く。私はあれ以来、鈴花さんと会えていない。店で先約が続いたかと思えば、いつの間にか所属嬢リストからも名前が無くなっていて。まるで、最初からいなかったみたいに痕跡も残すことなく見事に消えてしまった。あぁ、そうかあれはお別れだったのか。まったく私と来たら鈍いにも程がある。でも他所へ行く気はない、とも言ったじゃないか。こんなのフェアじゃない、と思いながらも私はどこか楽観的だった。夜のお商売の人は店を渡り歩くのが常だと言うし、探せばいつか逢えるだろう。そんなふわふわした考えで、私は今日も風俗街を歩いてくる。客として入ると不思議な顔をされたりするが、とりあえずふたなり風俗以外もあちこち周ってみる。何処にいるか分からないし。
将来に備えていた筈の蓄えは少しずつ切り崩れ、仕事以外の殆どが風俗を中心に回っている。その仕事さえ手につかなくなり、自分の時間を優先するようになって幾年月。もう顔さえ朧気になってしまって尚、私は彼女を探して夜をさ迷う。いつか何処かで、また出逢えると信じて。逢ったとしても分からないかもしれないけれども、まぁ縁があれば逢える筈なんだ。きっと、いつか。