それは、これまでと同じ暗い光景。
それが、どこなのかも分からない。
ただ一つ、理解出来るとしたら、この空間もまた、怪獣の中にいる少女が生み出したトラウマである事。
「これは」
見ると、そこは棺。
誰の棺なのか、俺は分からない。
だけど、そこで1人の少女が、棺を見つめていた。
「・・・誰かの葬儀だったのか」
俺は、そう問いかける。
「お爺ちゃんの棺です」
俺の言葉に対して、彼女は、答える。
その言葉は、おそらく、彼女の中にあるトラウマだろう。
「お爺ちゃんは待っててくれた」
「いじめを必死に耐えていた」
「血は繋がっていなくても、支えてくれた家族だった」
「けど、あいつらのせいで、お爺ちゃんの最期に立ち合えられなかった」
それと共に発した言葉の数々は、彼女の言葉だろう。
同時に、その言葉から、俺はなんとなく理解した。
これまでの怪獣も、少女の心に反映したのだろう。
リーリエの場合は、母親の執着。シノンは、銃によるトラウマ。
そして、この子は。
「だから誰にも見下されず、大切なものを守れる強さを」
彼女の言葉は、自分自身を守る為に殻に籠もる事にした。
それに対して、俺の答えは。
「強さって言うけど、結局、強さって、なんだろうな」
「えっ」
俺は思わず呟いた。
「未だに俺も分からないよ、そんな事。偉そうな事だって言えない。けど、一つだけ言える、そんなやり方じゃ、守りたい物まで壊してしまう」
「守りたい物まで」
この戦いが始まってから、どのようにすれば良いのか分からない。
だけど、もしも俺が行える僅かな事は。
「けど、もしかしたら、今、君に必要な事は、たぶん、誰かに頼る事かもしれない」
「頼るですか」
「あぁ」
心配をかけたくなかった。
大切にしてくれた人達に。
けど。
「それと同じぐらいに、君を守りたい人の心を忘れないでくれ。それは、たぶん、この人も同じだと思うから」
そう、俺は棺にいる人物にいる。
幻であり、後悔かもしれない。
けど、ここにいる人はきっと。
「助けを言っても良いんですか」
「まぁな」
「だったら」
そうしている間にも、こちらに迫る声が聞こえる。
トラウマの象徴だろう。
その存在は、こちらに迫る。
それと共に彼女の目が僅かに揺れる。
だが、俺は、そいつらに向けて、目を向ける。
人を形成している黒い何か。
それが近づいた瞬間。
「さっさと出て行け」
睨み付ける。
腹の底から湧き上がる声で。
それに、黒い何かは、怯えたような気がする。
それと共に、棺を見る。
「えっ」
棺の中には何もいなかった。
けど、まるでそこに広がるように。
「そこに入れという事なのか」
まるで導くように。
おそらくは、ここは彼女の心の中。
そして、これは彼女を助けたいという誰かの思いかもしれない。
未だに分からない。
けど。
「行こうか」
それに対して、彼女は。
「はい」
それと共に、俺達は、棺の中に入る。