その違和感はきっかけとなった。
その違和感の正体が、ここに来てようやく理解出来た。
それは、これまで、見えなかったから。
この世界が、どのような感じなのか、知らなかったから。
だからこその勘違いを、俺はここで理解出来た。
「なんだよ、これ」
見つめた先、それは泡。
だけど、ただの泡じゃない。
見つめた先の泡の中。
その小さな泡の中に、見えたのは街。
それだけじゃない。
小さな村や、まるで別世界のような光景。
それらが、目の前に広がっていた。
「マルチバース」
「っ」
同時に聞こえて来た声。
それを見つめた先には黒い髪のアカネがいた。
「ウルトラマンシリーズでよく出ている単語だけど、簡単に言えば平行世界だね」
黒いアカネは、その泡の向こう側にいた。
泡のような透明な膜。
だけど、それは、世界の壁であり、それを越える事は出来ない。
「それじゃ、お前は、」「平行世界の別の世界の自分かもしれないねぇ」
そう、黒い髪のアカネは言った。
俺と全く同じ姿形をしているけれど、違う存在。
それが、目の前にいる。
「……」
その言葉を聞きながら、俺はその先にあるマルチバースの泡を見ていた。
そこにあるのは、自分の知らない世界だった。
見渡す限りでも、崩れている泡。
その光景は、おそらくは、俺達がいただろう世界。
俺がいたと思われる場所と同じ事が起きたのだろう。
「だからね、私にとって、世界はその程度の価値しかないの。ジオラマの中で暴れる怪獣を見て、飽きたら、捨てる」
黒いアカネは、そう言って笑みを浮かべていた。
「……だったら、それ以上はさせない」
俺は、そう睨む。すると、黒いアカネは、こちらを見つめて、目を細めた。
「へぇ、どうやって」
未だに、俺がここに来た理由が分からないのか、黒いアカネは首を傾げていた。
俺自身、未だに、その方法は分からない。
だけど、それでも、一つだけ分かった事がある。
「俺は、俺達は、お前を止める」
「……だったら、止めて見なよ」
笑みを浮かべる黒いアカネ。
その言葉に合わせるように、黒いアカネは、ゆっくりとそこから消えていく。
それは、まるで霧の中に隠れるような動きで、その姿は、あっという間に見えなくなった。
「平行世界か」
未だに、分からない事が多すぎる。
だけど、これは。
「何か違う」
平行世界というには、なぜかその言葉は、この光景には違和感があった。
先程、消えていなくなったアカネのように、ここにある全てが幻の中にあるような感覚が、俺にはあった。
「そもそも、俺自身も」
まるで、幻の中に、いるように。