暗闇の中に入る。
周囲には何もない。
真っ直ぐと、崖に落ちるように。
「これは一体」
先程まで戦っていた相手の中に入り込んだはず。
だけど、その先で待ち受けていたのは暗闇。
疑問に思いながらも、俺は、そのまま暗闇の先にある何かへと辿り着く。
それと共に、ようやく俺は地面に辿り着く事が出来た。
確かに足下に地面の感覚があり、この暗闇から抜け出せた事に安堵する。
だけど。
「っ!?」
そこで俺が見たのは、俺よりも小さな女の子が倒れている姿。
慌てて駆け寄り、声をかける。
「大丈夫か?」
そう問いかけるも、反応はない。
「……脈はある」
しかし、息をしている事は確認できた。
「一体何があったんだ」
こんな暗闇の中で一人倒れている少女なんて、普通じゃない。
そう疑問に思っていると。
「ごめんなさい」
「えっ?」
そう、女の子を起き上がらせると、何か呟いた。
疑問に思い、俺はその子の呟く声に耳を近づける。
「お母様っごめんなさいっ言う事を聞かない悪い子でっごめんなさいっごめんなさいっ」
泣きじゃくる女の子を抱きしめて、落ち着かせる。
だけど、女の子は一向に泣き止まない。
「お母様っ私もっ頑張るからっお願いだから見捨てないでぇ」
「大丈夫、大丈夫だ」
「っぁ」
背中をさすりながら、女の子が落ち着くように宥める。
だが、未だに止まらない。
「これは一体何が」
そう思っていると、周囲には暗い空間から現れたのは、触手。
「っ」
クラゲのような触手。その特徴は先程まで戦っていた相手の特徴と一致している。
「ここは一体」
「ごめんなさいっごめんなさいっごめんなさいっ!
疑問に思っている間にも、その女の子の泣き叫ぶ声。
それに合わせて、女の子の悲鳴に合わせるように触手の勢いは増していく。
「助けなくちゃ」
そう思っても、女の子の声は反響するように響き渡り、何処に助けがいるのかさえわからない。
それでも、何とかしなければという一心で、必死に手を伸ばす。
すると、女の子が俺の手を掴んでくれた。
しかし、手を掴んだところで、女の子の涙は止まらない。
「っ!」
そこで俺は気づいた。
この空間は、もしかしたら。
「この子と関係しているのか」
まるで恐怖に共鳴するように、触手の勢いが増していく。
そんな中、俺は考えを巡らせていた。
「(この子の不安が、怪獣の力を増す。ならば)」
ならば。
「頑張れ」
「えっ」
俺は、彼女に呟く。
「何を謝っているのか、俺には分からない。けど、謝っても何も変わらないんだったら、頑張るしかない」
「頑張る」
「あぁ、何をすれば良いのか、俺も分からない。けど、このまま何もしないよりはマシだ」
目の前にある暗闇を睨みつける。
何が起きているかは分からない。だけど、この女の子の恐怖に呼応するなら、出来る事があるはずだ。
「お母様は、私を嫌いになりましたか」
震える女の子の問いかけに、俺は即答する。
「分からないよ。けど、君は嫌われたいか」
「いいえっ、けどずっとお母様の言う事を聞いているだけで」
「だったら、自分で考えて行動してみればいい」
「っ!」
「その思いを、ぶつけてみたら良い」
その問いに対して、女の子は頷いた。
「やって……みます」
その心強い言葉を聞いて、俺は女の子を安心させるように抱きしめた。
「私は、まだ、何をしたら良いのか、分かりません。けど、会ったばかりのあなたの声。なぜだか分かりませんが。お母様と同じ、暖かな感じがします」
「そうか」
「私は、まだ、頑張れます。だって、私にはあなたがいますから」
そう言って、女の子は笑った。
その笑顔に、俺は思わずドキッとしてしまった。
「あぁ、俺も、君が頑張っているのを応援する」
そう答えると、触手の勢いは、こちらに迫る。
だけど、それよりも先に、真っ直ぐと何かが迫る。
それが何か分からない。
けど、それは。
「これは一体」
俺は疑問に思わず声が出る。
その答えを。
「サンライトハート」
「えっ?」
そう答えたのは、少女だった。
「なんとなくですが」
そう、答えた。
それと共に、俺の手に収まる。
そして、周囲が太陽のように輝き、暗闇を照らす。
「アクセスコード、サンライトハート」
その言葉と共に、暗闇が振り払う。
同時に、俺は再び元の世界に戻った。
「っ」
疑問に思う。
だが、それよりも、俺の手にある何か。
その正体がすぐに分かった。
「サンライトハートなのか」
それは、巨人になっているはずの俺と比べても、巨大な槍。
それが手元にあった。