「そんな、かえでが…」
未来といろはは消えたかえでを探している途中でももこに電話して河川敷で会って何があったか説明した。
「ごめんなさい…私、何もできなくて…」
「なんで謝るのさ。トンズラこいたレナの方が問題だよ」
「で、でも怖くなるのも分かりますよ。絶交ルールの噂が本当になっちゃったんですから…」
「絶交ルールが本当になったぁ?」
声を上げるももこ。
「偶然そういう使い魔が相手だっただけだよ。現実と妄想を混同しちゃいけない」
「は、はい…」
何が何でもやちよの話を否定したいのかももこの強気な言葉にいろはが押される。
恋人の話を否定された未来だが口は出さない。
ももこの気持ちも理解しているからだ。
「でも…何か理由があるんだと思います。レナちゃんがどこか行ったのって…避けていたのもかえでちゃんを心配してのことだったし…」
「…まぁ、そうだろうな。昔っから不器用で素直じゃないからさ。かえでのことで何かしてるのかもね」
「レナちゃんのこと、信用してるんですね」
「そりゃ仲間だからな。本気で逃げたとは思ってないよ…まっ、とりあえず…アタシらはアタシらで出来ることをやるしかないか」
「はい。まだ追跡できるだけの魔力は残ってます。ただ…かなり移動してるみたいで途中で途切れちゃうかも…」
「ならなおさら急がないとね」
「だったら俺は別行動するよ。手分けした方が見つかりやすいだろ」
「お願いします」
ももこが合流したことで未来は別行動を取ることに決めた。
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未来は高い場所から探しながらやちよに電話をかけていた。
《それで私に泣きついてきたってわけね》
「なんか棘ない?」
《別に…あなたといいレナといい都合のいい時だけ頼ってくると思っただけよ》
若干疲れたやちよの声が聞こえる。
「水波さん?」
《あなたから電話が来る前に訪ねてきたのよ。絶交階段のウワサに連れていかれた人間を取り戻す方法をね》
「それで?」
《謝って絶交階段のウワサを呼べばいいって言ったわ》
「つまり俺がやちよと1回絶交して…」
《ぶち殺すわよ》
「こわっ!」
電話なのにまるで背後から聞こえたかのような冷たい声だった。
《とりあえず私も向かうからあなたも合流しなさい》
「分かったよ。正直手詰まりだったからな…やちよ」
《なによ?》
「愛してる」
《なっ…あな》
未来は途中で通話を切った。
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路地裏。
「あえて人がいないところに来てみましたけど…あの…ももこさん、みたまさんに頼ってみませんか?もしかしたら何か知ってるかもしれないですし」
「…確かに知ってそうだけど情報への対価がない。あいにくグリーフシードのストックは切らしてるからね」
「そう言われちゃうと私も持ってないです」
「ツケ…いやアイツに貸しを作るのは怖いな…いっそのこと未来を使って…」
すると、小さいキュゥべえの動きに変化があった。
「どうしたの?」
「モキュ!」
小さいキュゥべえが示す先にレナがいた。
「レナ!」
ももこが呼びかける。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
レナは息を切らしている。
「ちょっとももこ!アンタどこに行ってたのよ!」
レナは会って早々キレていた。
「建設放棄地にいると思ったのに!」
「どこも何もかえでを探してたんだよ。さらわれたなんて聞いたら普通は飛んで行くだろ!」
「おかけで…探したじゃない!滅茶苦茶走ったんだからね!」
「…てかさぁ…仲間がさらわれて逃げた奴がどの面下げて出てきたんだよ!」
レナを非難するももこ。
「…は?…はぁ⁉逃げるぅ⁉ちょっとアンタ!ももこにどんな説明したのよ!」
矛先がいろはに向けられる。
「ぇぇえ⁉そんな逃げたなんて!も、ももこさん⁉」
急な展開に慌てるいろは。
「ふん…その様子だとやっぱり逃げたわけじゃないんだな?」
カマをかけたのかももこが態度を変える。
「あったりまえじゃない!何か解決策がないか確認しに行ってただけよ!」
「解決策を確認って…あ、それって…もしかして、やちよさん?」
「バ、バッカ!ももこの前だから濁したのに‼」
「ぇあ⁉ご、ごめん!」
レナに怒られて萎縮するいろは。
「…」
ももこは黙っている。
「ほら…信じてくれないかもしれないじゃない!」
「いいや…信じるよ」
「えっ⁉ほ、ほんとでしょうね⁉嘘だったら今度のゲーセン代、ももこ持ちだからね!」
「なんだよ…そのセコい条件は。嘘だったらアイドルのコンサート代だって奢ってやるよ。それに…やちよさんを信じるんじゃない…レナの言葉だから信じるんだ」
「ふぇ⁉あ、ありがとう…」
ももこのストレートな言葉に照れるレナ。
「それでレナちゃん…私達、どうすればいいかな?」
「は?アンタ関係ないのにまだお節介を焼こうってわけ?」
「おい…手伝ってくれてる人になんて言い草だ。八つ当たりするんじゃないよ」
「うっ…ごめん…アンタは悪くないわよ…」
ももこに叱られて素直にいろはに謝るレナ。
「レナ達が始めたことだし…」
「普段からそれだけ素直だといいんだけどな…で、アタシらはどうすればいいんだ?」
「とりあえず建設放棄地に行く。何が起きるか分からないし人がいない方が良いと思うから」
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建設放棄地。
「さ、着いたけどここで何をどうすればいいんだ?」
「ちょっと急かさないで。今、心の準備をしてるんだから」
「心の準備?」
「少し気持ちを落ち着かせたいの」
「ふむ…」
「…ねぇ、ももこ」
「ん?」
「何があってもレナとかえでのこと…守ってよね」
「当たり前だろ。これまでも…これからも守る気満々だよ」
ももこの言葉にレナは覚悟を決めた顔になった。
「どうだ?心の準備はできたか?」
「うん…もう大丈夫」
「それで…どうするつもりなの…レナちゃん」
「…謝る」
「謝る?」
「信用してるからね…ももこ」
「すぅ~~~~はぁ~~~~すぅ~~~~っ…かえでぇぇぇぇぇ‼絶交するなんて言ってごめん!レナも、かえでとももこと3人のチームに戻りたい!だから…謝らせて!」
深呼吸した後、レナは大きな声で謝罪の言葉を叫んだ。
「急に謝るだなんて…レナの奴、何考えてるんだ?」
「あの…多分なんですけど同じ状況を作ろうとしてるんです。かえでちゃんが使い魔にさらわれた時と…レナちゃんが謝れば…また結界が現れるから」
「レナ、ちゃんと気づいてたから!怒ってるの分かってたから!ほんと無理やりコンビニに使いっ走りにさせてごめん!レナが好きなフルーツタルトがなくて怒ってごめん!気を遣ってレナの好きなスイーツ、買って来てくれたのに…気に入らないからって投げちゃってごめん!服汚してごめん!お金返さなくてごめん!ペットの餌代だったのに本当にごめんなさい!あと、そのペットのことキモイって言ってごめん!でも、爬虫類とか苦手だから今もキモイと思っててごめん!」
堰を切るように次々と懺悔の言葉を叫ぶレナ。
「はぁ…はぁ…はぁ…くっ…ほんと…ぜんぶぜんぶ…ぜ~んぶ謝るから…出てきなさいよ~!」
「…私、ここまでされたらヘコんじゃうかも…」
「…普通そうだよね…」
「早く出てきなさいよ、かえで!アンタ、レナの下僕でしょ⁉」
「っ、ぅおい!」
「命令になってる…」
「だから…だから…出て…きなさいよぉ…」
涙が出るレナ。
「レナちゃん…」
「かえでの家に行く度にこっそり家庭菜園の果物食べてたのも…やっぱりやっぱり…爬虫類も虫もキモイって思ってたの謝るからぁ…全部、後悔してるから!」
「…ダメ…なの?」
その時、かえでをさらった時と同じ結界が現れた。
「っ⁉なんだ…この結界!」
「これ…あの時と同じ結界です!」
「ってことは…」
「迎えに来たよ…レナちゃん」
異形の怪物…使い魔と共にかえでが現れた。
「かえで⁉」
「レナちゃん、こっちにおいでよ。一緒に階段さんをお掃除しよう」
「なに言ってるのよ、かえで…アンタがこっちに来るのよ!」
「じゃあ…私が連れて行ってあげる。今よりずっと良いところだから」
「やめて…かえでちゃん!」
いろはが叫ぶ。
「レ~ナちゃん♪ふふふっ…」
かえでがレナを追い詰めていく。
「はやっ!かえでの動きとは思えない…」
「なんだよこの結界…こいつら本当に使い魔なのか⁉」
「いけない。レナちゃんと引き離されちゃう!」
レナとかえで、いろはとももこの距離は使い魔によって引き離されていく。
「当たって‼」
いろはが矢を放って風穴を開ける。
「これで道が出来た!ももこさん、今のうちにレナちゃんを!」
「あぁ!」
応えるももこの前に使い魔が立ちはだかる。
「そんな…まだいるのか⁉」
これではレナとかえでに追い付けない。
「それじゃあ…行こうかレナちゃん」
「なんで…なんでかえでなの!ずるい…こんなの…攻撃できるわけないじゃない!」
大好きな友達を相手に何も出来ず逃げることしか出来ないレナ。
「みなさん、お願いします~」
かえでの呼びかけにレナが使い魔に包囲されていく。
「イヤアアアアアア‼」
「レナちゃん‼」
「くっ…一足遅かった…」
「やちよさん⁉」
そこに駆けつけたのがやちよと未来だった。
「神浜うわさファイルの通り、現実になってしまったわね」
「何がうわさファイルだ!魔女の性質が偶然似てただけだろ!」
「いい加減、現実を見なさい!あなたが私を嫌いなのは構わないわ。だけどそれを理由に仲間を危険に晒さないで。曲がりなりにもリーダーでしょ」
やちよの叱咤に返す言葉を失うももこ。
「魔女と魔法少女が集まり、調整屋や小さなキュゥべえが現れ、噂まで現実になる神浜市…もはや普通の状況じゃないのよ」
「…分かった…分かったよ…認めざるを得ないよ」
観念した様子のももこ。
「おい!早くしろ!こっちもいっぱいいっぱいなんだよ!」
やちよとももこが言い合っている間、未来は1人で使い魔の相手をしていた。
その数は数百に及ぶ。
「…それで私達はどうすればいいんですか?」
いろはが作戦を訊く。
「レナとかえでが敵の手に落ちればすぐに逃げられてしまうわ。だから今はここのボスを倒すか2人を足止めする必要がある。私はかえでの動きを止めるわ。あなた達はボスを見つけてくれる?」
「分かりました!」
「…身を挺してレナが作ってくれた機会だ。無駄にはしないさ…それじゃあ行こう…いろはちゃん!」
「はい!」
ももこと一緒に走り出すいろは。
「ふふ…あなたは行かせないよ。やちよさ~ん」
「かえでが自分から立ち塞がるだなんて…安心なさい。私もあなたを行かせないつもりよ。すぐに楽にしてあげるわ」
かえでを前にやちよは槍を構えたのだった。