ギラギラ光るネオンの看板たちが、夜の闇の真っ黒いキャンバスに幾何学的な模様を作り出す。
そんな夜景を見下ろせる、高層ビルの高層階。俗に言うタワマンの上層階が、彼女たちの今のアジトである。
自宅のせんべい布団とは比べ物にならない、やけにいい香りのするとても大きなふかふかのベッドで、今の自分の一日は始まる。
体を起こして背伸びをひとつ。両脇で寝ている二人を起こさないよう、慎重にベッドを降りてリビングに向かう。
冷蔵庫の中身を確認して、買い出しの予定を立てながら、そこにあるもので三人分の朝食の調理に取り掛かる。
「マスターくぅん……おはよぉ……」
おはよう、とキスキルに返す。
「くぁ……。マスターくん、おはよ」
リィラにもおはよう、朝ごはんはもう少しかかると。
――つい先日まで、自分は一人暮らしの冴えないデュエリストだった。
デッキを持っていれば市民権を得られて、デュエルが強ければ満足のいく暮らしが出来る街で、それなりの生活をしていた。
なにぶん使っているデッキのティアが真ん中より上程度には高い方だったので、男一人で暮らすには不自由はしなかった。
そんなある日のことである。
愛用していたデュエルディスクから突然デッキのエースが飛び出して、モンスターゲートを開き、自分を異世界に連れて行ってしまった。
初日こそ驚き戸惑ったものだが――それから数日。
特に何事もなく、お世話になっているデッキのエース二人と一緒に、普通に暮らしていた。
イラスト違いのカードが収録されたパックを買い、引き当てたEvil★Twinリィラ。
恐らくはシークレットレアではなかったから捨てられていた、そのパックの袋に包まれてゴミ捨て場にいたEvil★Twinキスキル。
彼女たち二人との生活は、一時はどうなることかと思ったものの、なんだかんだで安定しており――自分でも驚くほど、心が安らいでいた。
(よし、いい出来)
焼きたてのウインナーとハムエッグ、付け合わせにちょこっとキャベツ。朝のプレートとしては定番といった顔ぶれ。
出来上がったそれらをテーブルに運びながら考える。自分がやけに落ち着いている、その理由。
……もとより彼女たちは、自分にとって家族のような存在だったから……だろうか。
一人暮らしで鍛えた家事のスキルを発揮しながら彼女たちと暮らす日々は、元の世界で過ごす時間よりも、ずっと充実していたのだった。
*
「あのさ、キスキル」
「んぅ……? なぁに、りぃら……?」
「危機感持ったほうがいいよ、マジで」
マスターが買い出しに出掛けた頃。リビングのソファに並んで腰かけて、二人が話をしていた。
キスキルは幸せそうにティースプーンで掬ったアイスを頬張りながら。
リィラはそんな姿のキスキルを横目で見ながら。
「ききかんぅ……? ……何の話?」
「だから……マスターくんを誘拐した話。今のところ帰る気配はないみたいだからいいけどさ……」
「うん、嬉しいよねぇ。大好きなマスターくんが毎朝毎晩ご飯つくってくれるんだよ? しゃーわせだよねえ……」
「…………」
食べているアイスの甘さが表面ににじみ出るような、じんわりと蕩けて笑うキスキル。
その顔を、楽しみにしていたアイスが袋の中で融けているのを発見したような、眉間に皺を寄せた表情で見つめるリィラ。
「……そもそも、彼を、何のために、攫ったか……覚えてる?」
「えと……それは…………マスターくんと一緒に過ごしたいから…………?」
「……じゃあ、ないよねえ? あわよくば襲って、襲われて、でろでろんなって結ばれたいって言い出したのはキスキルだよね?」
「ぇや……あ……その、それはぁ……そのお…………」
そう詰められて、しどろもどろになるキスキル。
――事の発端はキスキルの提案だった。
マスターが住まう人間界とは別の次元の住民である彼女たちが、人間界に存在するカードの精霊となって次元を渡れるようになったのはずいぶん前のことになる。
人間界に存在するカードは彼女たちにとっていくつも存在する窓のようなものであり、そこからカードである自分たちがどのように扱われるかを見てきた。デュエルモンスターズには様々なデッキテーマが存在するが、同時に盛衰の流れが激しいゲームであり、新たなテーマが現れれば人はそちらへ流れていく。
店の奥、売れ残ったパックの中でずっと眠る自分。
日の目を見れたと思いきや、可燃ごみとしてゴミ捨て場に捨てられる自分。
環境は既に新たなテーマたちの独壇場となっており、最盛を過ぎた自分たちを好んで使うマスターは殆どいなくなっていた。
ティアの数字の少なさと生活環境が直結するあの街ではそれが当然のことだが、そんな街で、自分たちを好んでずっと使うマスターがいた。
店の奥から取り出されたパックの中から、自分を拾い上げてくれた手。
ゴミ捨て場に捨てられていた自分を拾い上げてくれた手。
いつしか彼女たちが選ぶ『窓』は、彼の手の内にあるカードだけに限られた。
そこを選べば、彼の顔が見れる。そこから覗けば、自分たちに礼を言ったり、激励を飛ばしてくれる彼と会える。
時折ソリッドビジョンに干渉し、くるりと回転しながら彼に向けてキスを投げるようなこともした。
けれど、彼女たちに出来る人間界への干渉はその程度が限度だった。
――今は自分たちを握ってくれるけれど、いつか彼は他のデッキを選ぶかもしれない。
彼の言葉を受けるカードが、自分たちだけであってほしい。いや、もうむしろ、叶うことならずっと彼と一緒にいたい。
彼のEvil★Twinはいつしか熱く重い恋慕の感情を彼に向けるようになり、そんな折、キスキルはリィラにある提案をした。
『彼、盗んじゃわない?』
と。
リィラは答える。『どうやって?』
キスキルは取り出す。曰く、ぶかぶかなフードを被った小さな女の子からもらったという――白いデュエルディスクを。
呼び出したい相手を強く念じれば、このディスクは答えてくれるらしい。半信半疑でデッキトップをめくったリィラの手には、彼の顔と名前が書かれたカードがあった。
提案したのはキスキル。
召喚したのはリィラ。
そうしてEvil★Twinという怪盗は、自分たちが何よりも欲していたお宝を呼び寄せたのだった。
「今はまだ、彼はここにいてくれてるけど。あのディスクからカードを取っちゃえば、いつでも帰れるってこと覚えてるよね」
「……ぅ……ん」
あくまで今は彼をこちらの世界に召喚しているだけであり、彼自身の手であのディスクからカードを取ることもできる。
帰ろうと思えばいつでも帰れてしまう、それでもここに残ってくれる彼の厚意と、現状の幸福に甘んじていたキスキルに、リィラはその事実を突きつける。
「この場にはあるけど、手に入ってはいないんだよ。確実に彼をモノにするために、もっと直接的な手段も取るべきだと思うんだけど」
結局のところ、彼を男として手に入れる、女として自分たちを意識させるという目的は、まったく達せられていない。
彼はまるで付き合いの長い家族のように料理を振る舞ってくれるし、同じベッドで寝ることに抵抗もなく、それどころか起きる時間は自分たち二人のどちらもよりも早い。
もっとしっかりと示し、がっつりと攻めるべきだと伝えるリィラに、キスキルは顔を赤くしてまくしたてる。
「だあって!! やじゃん!! むき出しの性欲ぶつけて嫌われたりとかしたら!! そーいう女なんだへーっそうなんだどうせサブスクの高額プランでえっろい動画とか出してんだろうなとか思われたら超イヤじゃん!? そりゃああたしだってエロい気持ちになるってかもうそういう目でしか見てないけど!? 物事にはやっぱり順序ってか準備ってかスタンバイフェイズが必要っていう……かぁ……」
「恥ずいんでしょ、要するに」
「…………ぅん」
わたわたと複雑な内心を吐露するものの、『要するに』でその思いのすべてを束ねられてしまい、かくりと項垂れて肯定するキスキル。
「ここ数日、ずっとわたしとマスターくんと三人で一緒に寝てるから、そーいう欲求の解消もできてないんでしょ?」
「……マスターくんに禁欲を強制させるための策だったのに、なんか……毎日の決まりごとみたいになっちゃってるんだよね……三人で寝るの」
「女二人に挟まれて川の字になって、スヤスヤ眠れるのは逆に惚れ直すけどね」
「わかる」
内股を擦り合わせ、リィラにさらりと指摘された部分を意識するキスキル。
解消できていない。自慰行為に及べない。頻度は多くないものの、性欲が高まる日にはどこまでも高まり、我慢が出来なくなる。
そういった体質のキスキルは、彼と対面できた日にその性欲の高まりを覚えたものの、それをずっと抱えたまま今日まで過ごしていた。
意識さえしなければ蕩けた顔でアイスを頬張れるが、いざ意識させられてしまうと、股間に手をやりたくて仕方ない。自分の胸にしゃぶりつき、硬く勃起している先端に噛みあとをつけながら性器を掻き回したい。
今まさに、キスキルはそんな心境に至っていた。
殆ど無意識に自分の胸をふにふにと搾るように揉むキスキルを見ながら、リィラも思う。
(まあ、その禁欲を強制させられてんの、わたしも一緒なんだけどね)
下着をつけていない自分の胸の先端をぎゅううっとつねりながら、心の内にリィラは呟いた。
マスターが彼女らのもとにやってきて、数日。
異世界での生活に順応し、充実した日々を過ごす彼とは裏腹に、Evil★Twinsの欲求はひたすらに高まるばかりだった。
*
その日の深夜。同じベッドで横になる三人のうち、一人がふと目を覚ます。
薄赤い色をした薄い生地のネグリジェを着ている、薔薇色の髪の少女。
彼女の目の前には、同じ世界にいて欲しいと願い続けた青年がいて、すやすやと寝息を立てていた。
夜の暗闇の中、彼の顔を見つめるだけの静かな時間があって。
それから、彼女が着ているネグリジェとベッドシーツが擦れる音がして、その細い指が、彼の腹や胸をするりと撫でた。
「…………」
はぁ、と、熱い吐息をひとつ。彼の耳へ、撫ぜるように。
ベッドに流れて散っている髪の毛と同じ色に、彼女の頬と心が染まっていく。
ぎゅ、っと彼の二の腕に、自分の胸を押し付けて。
彼の体に横から抱きついて、キスキルは呟いた。
「すき」
溢れ出てくる感情を、ありのまま。
普段は伝えられない言葉が、堰を切って小さな口からいくつも流れ出た。
「すき……だいすき。マスターくん、だいすき……。すき、すき、好き……っ」
彼が起きてしまうかもしれない。心の内で働く小さな理性の声に、起こしてるんだよと大きな欲望が答える。
起きて欲しい。聞いて欲しい。あわよくばこの体を押さえて――襲って、欲しい。
ぎゅっと彼の腕を拘束し、強く抱きしめようと向かいに伸ばした手が、同じように彼の体を抱きしめている手とぶつかり、すれ違った。
「……っ」
彼を挟んで向こう側。そこに寝ている彼女の声が、ほんの僅かにキスキルにも聞こえた。
「犯して」
お腹の奥がひやりとした。
それから、じわりと熱くなった。
「マスターくん、大好き。大好きだよ、マスターくん。大好き。だから――犯して。わたしのこと、使って。いつだって、いいから」
……言っていいんだ。
そんなこと。
…………言って……いいんだ。
「…………マスターくん」
好き、という感情の奥底に秘めていた、その想いの核。
もっともっと奥にあった、本能が形作る欲望を、リィラがしたようにキスキルも口にした。
「えっち……しよ。……いいよ。しよ。まいにち……毎晩でも、いいよ。あたし……だいすき、だから……マスターくんのこと」
胸の間にある逞しい二の腕が、もぞもぞ動くのを感じていた。
抱きしめる腕が、彼の体がぴくりと動くのを感じていた。
顔は見なかった。ただ、塞ぐことのできない耳に向けて、家族や相棒ではなく、女としての姿をさらけ出す。
「犯して。レイプして。何度だって。乱暴に。お菓子でも齧るみたいに――」
「えっち、しよ。セックス、しよ。して。あたしがマスターくんを大好きでいるみたいに、マスターくんも、あたしのこと――」
「好きにして」
「好きになって」
「わたしの処女」
「あたしのはじめて」
「雑に、食べて」
「大事に、奪って」
両側から注ぎ込まれる、大きな大きな恋慕と愛情。
それに包まれて身動きひとつ取れないまま、ぼんやりとした思いでそれらを受け止める。
塞ぐことのできない耳から流れてくる感情と言葉を、ただ飲み込み続ける。
「好き」「好き」「好き」「好き」「大好き」「大好き」
腕は抱き寄せられて動かせない。ベッドシーツの中で大きく膨らんだそれを、どうしようもできない。
相棒と慣れ親しんだ彼女たちの声と熱に、わずかな間一緒に過ごした家族のような彼女たちの感情に、心をかき混ぜられる。
しよう、して、そう彼女たちが口にする行為を、しようにも、できない。
抱きしめられているから。拘束されているから。何よりも――。
「ねえ、マスターくん」
「……あのさ……マスターくん」
「「どっちからが、いい?」」
選べない。
そんな理由で。
身動きが、取れなかった。
――深い深い夜の底で、長い長い時間が過ぎる。
堰を切って溢れ出る二人の感情を、ただただ注ぎ込まれ続けて、溜め込まれ続けて。
それから目が覚めたのは、日が昇り切った昼過ぎのことだった。
*
寝坊した。
何時に起きようが誰に責められることもないのだが、起きたときに時刻が午後を回っているのを確認したとき、いつもそんな気持ちになる。
頭がぼんやりする。脳漿が全部メイプルシロップに変わったような甘ったるい感覚がずっと胸に残っていた。
……昨晩見た、あまりにも幸福な悪夢のせいだろうか。
(今の今まで、自分の中の感情に見て見ぬふりをしてきたが……)
左右の耳からイビルツインの二人にとろとろと愛を流し込まれる、そんな夢。
まるで現実にあったことのように鮮明に刻まれている彼女たちの甘い声が、今でも聞こえてくる気がする。
彼女たちはあくまで、自分と一緒に暮らしてくれているだけの相棒たち。だから邪な目を向けて、彼女たちからの信頼を損なうわけにはいかない。
自分の中で、自分ひとりで勝手に告解するが、自分のデッキのエースを性的な目で見たことは一度や二度なんてものじゃない。
衣装も表情も対照的なライブツインの姿も、怪盗として翼を広げて尻尾を伸ばすイビルツインの姿も、どちらも大好きだ。
彼女たちとはじめて出会ったのは、イラスト違いの姿が収録されたパックを購入した時で――あの私服姿が、何よりも強く印象に残っている。
とりわけ自分がこらえきれずに欲望を向けた回数が多いのも、その私服姿で。
どういうわけか、というべきか――彼女たちが自分の前に見せる姿も、あの私服姿に近かった。
髪型はミディアムボブとお団子で、服装はライブツインのアバター姿に近い。リィラのは……かなり刺激的ではあれど。
だから余計に意識してしまいそうになるのを、心の内で頭を振って払い、その気持ちを自分の中に押し留めて見ないようにし続けてきた。
「おはよう、マスターくん」
「あ! おっはよーっ」
どうにか体の熱が冷めるのを待ち、リビングに向かった自分に向け、依然変わらず挨拶をしてくれる彼女たちの姿を見て、やっぱりあれは夢だったのだろうと、そう思うことにした。
――仮に、本当にあったのだとしたら。
その『仮に』は、やっぱり、自分の中に押し留めることにして。
「マスターくん。ここでの生活って、もう慣れた?」
食事をしながら、不意にリィラがそう訊ねてきた。
こくりと頷いて、それなりにと答える。同時に、前の生活よりよほど充実している、とも。
「そっか。ならよかった。聞きたいこととか、気になってることとかあったら言ってね」
リィラにそう言われて、そういえばとふと考える。
自分がこの世界で過ごしている間、向こうの世界でも同じだけの時間が流れているんだろうか、と。
幸せそうに自分が作った食事を食べるキスキルの姿は愛おしいが、それ故に、あんな感情を隠し続けるのは誠実ではない。
自分を招いてくれたことは嬉しいが、いつかは帰るべきじゃないか。そう思って、ひとつ訊ねた。
――自分が元の世界に帰ったら、ここで過ごした日数だけ、自分は向こうで行方知れずになってるのだろうかと。
ぴたりと食事の手を止めて、キスキルが答えた。
「ああ、そこは大丈夫だよ! マスターくんの次元とこっちの次元で、時間の流れはそれぞれ独立してるから……『行った瞬間』にそのまま帰ってこれるの。だからこっちで何日過ごしても、向こうでは一秒もその場から離れてないってことになるんだって」
そうなんだ。……なんだかすごい話だな。
だって、という他人行儀なところは少し気になったが、ならいつでもいいのかと少し安堵した時だった。
「ところでさ、マスターくん」
「お風呂、あとで一緒に入らない?」
にっこりと目を伏せた笑顔のまま、キスキルが言った。
キスキルが見せるその顔の圧に押され、首は自然と縦に動いていた。
*
彼女たちが住まう家に備えられたお風呂場は、風呂場というよりも、スパに近い。
広い。ものすごく広い。その上、部屋と同じようにガラス張りの壁があって、湯に浸かりながら空と夜景が見れる。
初めて利用したときに感じたすべての衝撃が、自分の後に浴室へと入って来た二人の姿の前でかすんでいった。
「お待たせ、マスターくんっ!」
「お待たせ……。じゃあ一緒に入ろっか」
イビルツイン。キスキルとリィラ。その二人が、惜しげもなく裸体を晒して歩いてくる。
普段は衣服に包まれている豊満な胸も、つるりとした股間も、すべて見せたまま。
「ダメだよリィラ、入る前に体洗わないと。って……ああ、もう入ってるし」
「うぁ゙…………ぁ……。しみるわぁ……。あー、わたしは後で洗うから、二人で楽しんでて」
心底心地よさそうな声を上げてお湯に浸かるリィラ。
彼女の姿が見えなくなるのを名残惜しく思いつつも、慌てて洗面台の鏡の前に向き直る。
まだ大丈夫、まだ大丈夫。一緒に住む仲なら一緒にお風呂に入るのも普通。だから何気なく、普段通りにと自分に言い聞かせながら。
ばくばくとやかましく鳴り響く心臓を胸の上から、血が集って硬く膨らむ股間を直接押さえながら、自分の体を洗おうとした時だった。
「じゃ、マスターくんの体はあたしが洗ってあげるね?」
両手でボディソープを泡立てる音と、キスキルの声が同時に聴こえて。
ああ、じゃあお願いしようと何気なく答え、背中に訪れるボディタオルの感触を待って。
不意に、視界にキスキルの泡まみれのお腹とおっぱいが現れて。
顔を見上げた瞬間、にっこり微笑んだキスキルと目が合った。
「はい……ぎゅぅーーーーっ……♥」
それから、むぎゅう、と強く抱きしめられる。
背中に回る手がごしごしとうなじや肩を撫で、胸板に潰れるおっぱいがにちにちと上下に動いて擦る。
完全に不意をつかれる形で受ける、大好きな彼女の初めて知る裸体の感触。
「ふふふふっ、キスキルの全身タオルの感触はどうかな……マスターくん?」
……最高。
包み隠せず、そんな感想が飛び出てしまう。
「……そっかぁ……♥」
心底嬉しそうな暖かい吐息交じりの声が、耳を撫ぜる。
キスキルがこちらを強く抱き寄せる為、必然こちらからもキスキルの背中を抱きしめる形になる。
自分の両腕と胸の内に収まる彼女の体は、両胸の圧迫感はあれど、思っていた以上に小さく思えた。
すべすべしたキスキルの背中を撫でて、その溝に指を這わせる度、彼女の口から甘い声が漏れる。
そうしてお互いに背中を撫でさすり合い、十分以上にボディソープの泡を馴染ませ合ったあたりで、不意にキスキルが口を開く。
「マスターくんってさ」
何気ない雑談だろうか。だと助かる。
少しでも股間の熱を引かせたくて、日常の延長のようなやり取りを理性が欲していた。
「あたしのおっぱい、好きだよね」
そんなわけがなかった。
見透かされたような言葉に息が詰まり、口をつぐんだのを肯定と捉えたのか、キスキルはくすりと笑い。
「だって、いつもカードのあたしのそこんとこをずーーっと見てたし……あたし、それがすっごく嬉しくてさ。他の子もいっぱいいるのに、あたしのおっぱいに釘付けになってるマスターくんのことが、好きで好きで好きで……自分の体が、誇らしくってさ?」
そう言って、ゆっくりと体を離すキスキル。
胸板から離れ、ぷるんと揺れる彼女の胸の谷間には、穴が空くほど見つめたキスマークのワンポイントがあった。
そのすぐ下でぷっくりと膨らんでいる乳首が、そのワンポイントが、脳髄に焦げ付くような興奮を味わわせる。
「ね、マスターくん」
たぷん、と両の胸を持ち上げて、興奮と浴場の熱気で火照った顔を向けながら。
徐ろに、キスキルはこちらの手を取り、自分の胸へと導いた。
むにゅぅ、と歪む熱く柔らかな胸の感触に手のひらが溺れると同時に。
「あたしの体……さ。どう、かな。……ちゃんと、あなたの好きな……あたしの、まま?」
ばくばくと高鳴る心臓の鼓動が、手のひらに伝わってくる。
柔らかい胸の向こう側で、興奮と緊張が入り混じったその音が鳴っているのを知ったとき。
紅潮した頬で不安げな表情を浮かべるキスキルに向ける感情が、興奮や欲情といったものを押しのけて、愛おしさへと変わっていった。
自分が抱いていた、期待と違う姿に失望されたくないという感情。
彼女も、自分に対して同じものを抱いていたんだろうか。
心臓の音を手のひらで聞きながら、もういっそのこと、と彼女に打ち明ける。
「……へっ…………?」
依然変わらず、どころか、大好きな二人と過ごせる時間がとても楽しくて、嬉しくて、前よりもずっと好きになったこと。
それに比例して、こんな目を向けちゃいけないという気持ちも大きくなって、必死で我慢してきたこと。
堰を切って溢れ出るこちらの言葉を受け止めたキスキルは。
「そっかぁ……、ょ……かったぁ……! はぁぁぁぁ……!!」
大きな大きな息をついて、深く深く安堵した。
その息に驚く自分にキスキルは畳みかける。ぎゅっと、自分の胸を強く揉ませながら、しっかりと目を見つめて。
「だぁって、マスターくんほんっとにあたし達になんにもしてくれないんだもん、一緒に寝てるのにだよ!? リアルで会ってみたら色々ちがうなーって思われて幻滅されちゃったかなってずっと不安でさ!? でもほんとは違うんだね!? 毎晩カードに向かって言ってくれてたみたいに、今でもあたし達のこと大好きなんだよね!?」
そこまでこちらのプライベートだったはずの行いを赤裸々に突き付けられると、さすがに首が縦以外に動かせず。
それを見たキスキルがまた、よかったぁぁあっ……と息を吐きながら、強くこちらの体を抱きしめた。
反射的に抱きしめたキスキルの体は、今までで一番熱かった。
「ね」
同時に。
「このまま、シちゃおっか」
静かに突き付けられた提案も、屹立して涎を垂らし続ける股間に触れる手も、耳に吹きかかる吐息も。
何もかもが、熱く火照っていて。
だからこそ、反対に自分の心は小さな氷が落っこちたように、ほんの一瞬だけひやりとして。
その冷えが、首を横に振らせた。それだけは、だめだ、と。
「…………どうして?」
ぎゅっと股間を握る力が強まる。びくんと体が跳ねそうになる。
彼女の体を強く抱きしめ返しながら答える。
だって自分は、この世界の人間じゃない、と。
「……だと、だめなの?」
少なくとも自分はそう思っていると、頷き、そう伝える。
そりゃあ、したい。したい気持ちは、強張った股間がよく示しているが。
……交わってはいけないものだと、そう理性が主張している。帰る場所が、違うから。
「そっか。マスターくんにとって、あたしたちのとこは、帰る場所じゃないんだ」
するりと彼女の体が離れ、鼻と鼻が触れそうな距離に彼女の顔があって。
その目は、寂しいとも傷心とも怒りとも取れない、ただ薄く開いただけの目だった。
普段の溌剌としたキスキルからは想像もできないような顔だった。
ぺたり、つるりと彼女の両手が自分の頬を撫でて。
「そりゃそうだよね、あたしたちが攫ってきたんだもんね。マスターくんの気持ちは向こうにあるよね」
静かにゆっくりと頷いて答える。きっと、彼女たちには彼女たちの世界で、もっとふさわしい相手がいる。
よそ者である自分は本来は帰るべきだ。今自分がここにいて、彼女たちと過ごしている幸せな瞬間に対し、罪悪感にも似た感情を抱いている。
そんな自分の感情を、見透かすように。
「……マスターくんがイヤなら。ちゃんと、抵抗してね」
キスキルは、小さく口を開いて。
そのまま、ぱくりと、こちらの唇を塞いだ。
「ん……♥ はむ……ぁむ……ぢゅぅぅぅ…………ぢぅぅぅ……♥♥」
無防備な唇に吸い付かれ、柔らかい唇の感触と熱、それからその奥にある歯の硬さが自分を襲う。
困惑と混乱と、それから興奮。それらに同時に襲われて硬直する体を、キスキルは絡め取るように抱きしめる。後頭部と背中に回る手が、彼女の体温と感触から逃れることを許さなかった。
「っちぅ♥ ~~~~っぷぁ♥ ぁむ……っぢゅぅ……♥ ぢぅぅぅぅ…………っ♥ っぱ……♥」
離れては吸い付いて、また離れては吸い付いて。
何度も啄まれた唇がだんだんと柔らかい痺れを覚えはじめ、それが思考にも影響を及ぼし始める。
始めは離れなければと思っていたのに、ほんの十数秒で心の中が真逆になる。唇が離れた瞬間に恋しくなり、吸い付かれた瞬間に悦びが心を襲う。
全身と、その内側に至るまで。
愛する女性に包まれて、幸福で満ちていくと同時に、堪らえようのないもどかしさが股間に集っていった。
「んむ、んぅ……んっ、ぅ……んむ♥ まぅたーくん……すき♥ らいふき♥ ん~~~~っ……♥」
それからゆっくり、ゆっくりと、彼女に押し倒されて。
冷たく硬いタイルの感触を背中に、柔らかく暖かいキスキルの体の感触を胸と腹に感じながら。
長く、長く、じっくりと口の中を蹂躙されて、何度も何度も唇に吸い付かれて。
頭の中が、彼女への想いでいっぱいになって、はちきれそうになった瞬間。
「…………つ、ぱっ♥」
あっさりと、彼女は唇を解放した。
目を白黒させて彼女の目を見つめる。赤く火照り、乱れた呼吸のまま、キスキルはにっこりと微笑んで。
「湯船、浸かろっか。体、冷えちゃうしさ?」
まるで何事もなかったかのように、いつもと変わらない声色でそう言った。
*
――事実。本当に、何もなかった。
女が二人と男が一人、揃って裸で湯船に浸かりながら、他愛もない話をして過ごした。
先日の夕食が美味しかったとか、次の献立はこうがいいとか、配信のネタはどうとか。
何故か自分を挟み、両肩をそれぞれに抱きしめられながら、彼女たちの話を聞かされ続けていた。
深夜、寝静まった二人の間を抜けてベッドから降りて、そっとトイレに足を運ぶ。
透けたネグリジェに身を包んだ彼女たちの体が、今夜だけは異常なほど煽情的に思えて、こらえきれなくなっていた。
思えばずっと、この家に来てからずっとしていなかったこと。女性二人の家に招かれたという事実と、相棒である彼女たちに対し一線を引くべきという想いで、無意識にそこに蓋をしていた。
その蓋に爪を立てて、こじ開けてきたのは――。
「…………っ、キスキル……キスキルっ……!」
この家のトイレは横に広く、左には長い洗面台、右端に近づけば勝手に蓋を開ける便座がひとつ。
壁に手をつき、口を開けた便座に硬く勃起した欲望の塊を向けて、久しく忘れていた快楽を貪る。
あの後の態度のすべてが、あまりにもいつも通りで。何事もなかったと言わんばかりの普段通りの笑顔が、脳裏によぎって。
その直後に彼女の胸と、心音と、キスの感触がふつふつと思い出された。
ソリッドビジョンではけして味わえない、キスキルの生の体。頭の中がそれでいっぱいになって、鈴口から垂れる涎の量が増え、にちにちと音を立て始めて――。
「リィラじゃないんだ」
次の瞬間、聞こえた声に、体がびくりと跳ねる。
振り向くよりも速く彼女の体が背中に密着し、細い指先が涎にまみれたそこをぐちゅりと掴んだ。
引ける腰も、彼女の腰に押さえられる。肩甲骨に感じるのは、柔らかく温かい乳房の熱と感触。
「ねえ、リィラじゃないんだ。マスターくん。なんで?」
耳元へぼそぼそと注ぎ込まれる、静かで甘い声に何度も体が跳ねた。
声。香り。体の感触。もう視界に入れずともわかる――リィラが、自分の背中を抱きしめていた。
なんで――それは――。言い淀む自分の代わりにリィラは言う。
「おっぱい触らせてもらったから? キスしてもらったから? ふふっ、それでものの見事にあの子の手玉に取られちゃって……素直でかわいいとこあるね、マスターくん。ある意味無欲っていうかさ」
無欲? 耳を疑う。彼女が今握っているのは、その欲望の塊のはずなのに。
ゆっくりゆっくりと前後に扱かれ、引こうとする腰がリィラの腰に密着する。無欲なんかじゃないと、自罰的にそう口にして。
「無欲だよ。だって、マスターくんが求めさえすれば、ヤれたのに――ああいや、よろしくないね。言い方変えよっか」
ぴたりと、扱く手が止まって。
「キスキルね。犯してほしかったんだよ、マスターくんに」
そう、告げられる。
…………そう、だったとしても。否定しようとする言葉が、内側から昇りつめる快楽に飲み込まれて消えた。
速くも強くもなく、ただ根本から先端まで余すところなく指と手のひらが這う、射精以上に勃起を強要させてくるようなリィラの手つきに、息が切れる。
その快楽をどうにか飲み込んで、キスキルに言った言葉を復唱する。
……だって、自分は。この世界の人間じゃない。
一瞬ぴたりとリィラの手がまた止まって。
ぎゅっと強く抱きしめられて、殆ど唇を耳にくっつけながら、リィラは訊ねた。
「……マスターくんは、キスキルのこと、大事? わたしのことは? 好き? イビルツインの二人のこと……どっちも大好き?」
こくりと深く頷く。だから手なんて出したくないと答えるかわりに。
どこか熱を帯びた――いや。
実際に熱く火照っている。汗ばんでいる。香りが強く漂ってくる。
それが示すことを、嫌でも理解させられながら。
「じゃあ、こっちにくればいいじゃん」
強い強い興奮と一緒に、リィラにそう誘われる。
不意に思い出すのは、昨晩の甘い悪夢。左右から流し込まれる、受け入れる頭が破裂しそうなほどの好意。恋慕、恋情、欲情。
あれは夢なんかじゃなかったと、イビルツインに迫られて、嫌でもそう認めさせられる。
「マスターくんが大好きな女の子が二人、ずっと一緒だよ? 我慢なんてなんにもしなくていい。やわらかくてきもちいい体がふたつ、ずーっとマスターくんと一緒なの。マスターくんは何をしたっていい。何をされたって、わたし達は嬉しいから」
確かにそこにいるリィラが囁く。悪魔じみた誘いにも聞こえる、その実、すべてが一途な想いから来る言葉を。
集う快感は煮え立った真っ白い欲望をせり上げさせ、心の内では鐘を鳴らすように何度も同じ言葉が聞こえてくる。
駄目だ。彼女たちをそんな眼で見ちゃいけない、駄目だ。元の世界に帰るべきだ。そこが正しい場所だから――。
快楽が頂に上り詰める刹那、思い浮かぶことがあった。
なら。彼女を突き飛ばして拒むことと。彼女を受け入れて欲望のはけ口に用いること。
イビルツインのマスターとして、どちらの選択なら、彼女たちを傷つけない?
「マスターくんのことが、大好きだから。何されたって、いいよ。……ていう、よりね」
鈴口をこじ開けて、溜め込みつづけたそれが噴き出るより前に。
ぬるりと、リィラの手が離れる。求め続けた絶頂がするりとどこかへ去っていく。
何故、どうして――快楽にかき回されて思考を失った頭では、もう彼女から与えられる刺激を欲することしか考えられず。
振り向き、リィラの顔を見る瞬間。
リィラは、片脚をこちらの向こう側にある便座へと伸ばし、置き。
ほんのわずかに腰を落として、正面から相対するこちらの、涎にまみれて硬く勃起した性器の先端を、自分の性器で受け止めた。
「もうさ、我慢、できないんだ。頭の中、マスターくんのことでいっぱいで……犯されたくて、レイプされたくて、使われたくて、狂いそうで」
着ているのは薄いネグリジェ一枚。胸の先端の桃色が浮かび、下半身は、無防備。
下着すらなく、直接触れる先端で味わう彼女の蜜壺の味は、甘いと言うには甘すぎて、熱いと言うには熱すぎて。
熱く火照り、真っ赤に染まったリィラの汗ばんだ顔を見つめながら、思った。
「……そっちに出すより。こっちの肉便器のが、きもちいいよ?」
魔性だ。
彼女の言葉の全部が。
『逃がさない』と言っているように、聞こえる。
「…………ぁ」
彼女の背中に両腕を回し、抱きしめる。
そうして固定した体に向け、少しずつ、少しずつ腰を浮かせ、先端をぐずぐずに蕩けた肉壺へと埋め込んで。
「ぁ……あ、っ、待って、そんなゆっくり……?? もっと、もっとこうっ、一気にがっつりくるんじゃなくて――」
がたがたと音が鳴る。それはリィラが踏んづけている後ろの便器から鳴るもので。
両脚を震わせる彼女の体をしっかりと抱きしめながら、ゆっくりとゆっくりと、リィラを、犯す。
鈴口。亀頭。雁首。竿――。順に埋まっていく性器が味わうリィラの味を、噛み締めるように。
「ま、マスターくんっっ、ほんっと、これ、これやば、ぁ、待って、いま、待って」
そして半ば程まで埋まったあたりで、彼女の耳元へ囁いた。
ずっとずっと言ってきた言葉。彼女たちに、彼女たちの存在に感謝を伝える言葉。
――いつもありがとう。
「待っ――、ぃま、それは、やば」
それから、大好きだ。
お返しに愛を伝えて、残る根本までの竿を一気に挿入し、膣内にあった小さな抵抗ごと、彼女を内側から突き上げた。
「ぃ゙ッッッあ゙ッッぉ゙」
聞いたことも無い嬌声と、感じたことのない快楽が同時に心へ突き刺さる。
肉体が股間とそこ以外で別々にちぎれるような感覚。膨大な快感に危機感を覚える体を、ひどく嬉しそうに跳ねる股間が突き動かす。
ずっとこうしたかった。ずっとしたかった。ずっと、ずっと、ずっとずっとずっと。
「ぉ゙っっ――ぁ、ひぅ゙ッ、ぉ゙っ、お゙ぉぉぉぉ…………っっ……♥♥」
どくんどくんと精液が尿道を押し広げて鈴口に至るまでの時間、そのほんの数秒で、幾度も彼女の腰に自分の腰をぶつける。
彼女の体を抱き寄せながら、彼女の全身を求めながら。低く唸るような、普段の凛々しさも可愛げもなにひとつ残っていない濁点の混ざった喘ぎ声を聞く。
腰が跳ねる。体が求める。リィラの心も体も全部、欲しくてたまらなくなって。
「ぃ゙っ……♥♥ ぃぃ、よっ、おねがい、このままっっ、はじめてのセックスで生中出しっっ、トイレで中出しっっ……♥♥ このままっ、わたしが一生忘れらんないはじめてにしてっ、くださっ……ぉ゙ッッぐ♥♥ ぉ゙、ぁ゙ぁぁあぁぁぁぁ…………ッッッ♥♥♥」
腰を引く、なんて選択肢はすでに消え失せて。
リィラの膣を貪りながら、リィラの声を聞きながら、リィラの熱に包まれて。
――便器に吐き捨てるはずだったものを、愛しい愛しい肉便器の中に、注ぎ込んだ。
「ぃ゙っっぐぃぐぃぐいぐいぐいぐっっ、人生でいっっちばんやばいアクメ来るっっ、孕ませてっ、わたしの元処女まんこっっ、ティッシュがわりにして、ぶちまけた精液でもののついでみたいに孕ませでっっぐっぃ゙…………♥♥♥ ぃ゙っっぐぅぅぅうぅぅう…………っっ♥♥♥」
跳ねる。注ぐ。痙攣する。注ぐ。注ぐ、注ぐ、注ぐ……。
突き刺さるような残尿感にも似た快感に腰が引け、自分でも驚くほどの量が溢れ出た。
密着している腰と腰の間にドロリとした熱い液体がこぼれ出てくる感覚があって、それが今しがた出したばかりのものだと、少しだけ体を離して確認した。
「はーーーーっ……♥ はぁーーーーっっ……♥ はぁぁっ、や、っばぁ…………♥ シちゃった……ほんとにしちゃった……♥ 大好きなマスターくんと初えっち、しかもトイレとか……最高…………っっ」
ぼたぼたと零れ落ちる精液が、黒くつややかな大理石の床を濡らす。
この家に来てからずっと溜め込んだ欲求。ここに来る前からも向けていた欲望。
今しがた吐き出したものが、そんなものたちのほんの一部に過ぎないと、リィラの膣からずるりと抜け出る硬いままの性器がそう示していた。
足りない。
もっと。
「はぁ……はぁぁ……♥ ……あとでキスキルにお礼言っとこ……マスターくん……どうだった? わたしの体、ちゃんと気持ちよかっ――」
リィラ。
「――はい」
背中を向けて、尻を突き出せ。
「……っ…………はい……♥♥」
指示された通り、リィラはふらつく足で少しだけ歩くと、正面にある出入り口のドアに両手をつく。
そうして今しがた真っ白に汚してもらったお尻を突き出すと、催促するように穴をひくつかせ、こぽこぽと注がれたものを唾液がわりに垂れ流した。
誰も見ることのできない、リィラの淫らな姿、体。それが今は、自分のためだけに存在する。
今度はこちらがリィラの背中から抱きつくと、ネグリジェの下に手を忍ばせ、キスキルに負けず劣らずのサイズを誇る両胸を下から揉んで持ち上げる。
すべすべした地肌と柔らかい乳房の感触。背中にあてられるばかりだったそこを、お返しと言わんばかりに揉んでやった。
「あっ……♥♥ っ、マスターくん、ほんと……おっぱい、好きだよね……♥♥ それにっ、揉むのも、上手い、しっ……♥ んぉ゙へッッ!!?♥♥」
吸い込まれるように腰を突き出すと、何の抵抗もなくずるりとリィラの膣がこちらの性器を受け入れる。
瞬間、ぎちりと締まる膣内、がくがくと震えるリィラの体。胸を揉まれながら挿入されただけで、彼女は容易く絶頂する。
「ぃ゙ッ……っぎなり、それ、ゃば……♥♥ ぁたまっ、おかしく、ん゙ぉッッ!!!♥♥」
絶頂の最中にある膣の味は格別で、凶悪で、最初の射精まではわからなかったことがよくわかる。
リィラの膣内の形。奥に行くにつれてぎゅっと狭苦しくなり、無数のヒダが亀頭を逃がすまいと絡みついてくる。
体温も相まってソコの具合は手のひらとは比べ物にならないほど心地よく、吐き出した精液がすぐに充填されていくのがわかった。
「ぉ゙へ、ぉ゙っっ、お゙ぉぉぉぉっっ……お゙ッッ!!?♥♥ っっ待ってまってマスターくん待って、わたしまだイってるっ、まだ帰ってこれてないがら……ぁ゙ッッ!!♥♥ あ゙っぁっっあっぁっぉ゙っ♥♥」
腰を打ち付け、がたがたとドアを鳴らしながら、既に精液にまみれた膣内をさらに掻き回し、犯す。
ぐちゃぐちゃという粘液の音、リィラの声、全部を聴きながら彼女の背中を抱きしめ、乳房を握り、次の射精を待った。
好きとか、愛してるとか、そんなのは前提だった。ただ今、本当に自分がリィラに対して抱いている感情はただひとつ。
孕ませたい。もっと犯したい。自分だけのものにしたい。
我慢していた全部がいっぺんに解き放たれて、精液に変わって、二度目の射精としてリィラの体内に刻み付けた。
「止まっっ……♥♥ なぃ、よねえ、あは、ぇへへへっ、ぉ゙っ――♥♥ ~~~~~~ッッッ♥♥♥」
息を殺し、歯を鳴らし、喘ぎ声すら飲み込んでリィラが絶頂する。
ぼたぼたと結合部から精液と愛液が溢れ、トイレの床に広がる白濁がもっと広がっていく。
数秒、数十秒、数分。互いに沈黙し、快楽を貪り合う時間があって、ようやく名残惜しさを手放すことができた時、硬さを失った性器がずるりとリィラの膣から抜け落ちた。
「はぁぁ…………っ、はぁ…………。……ぁ……おつかれ、マスターくん……」
壁に手をつき、腰が抜けて崩れ落ちそうな体をどうにか立たせる。
こちらに背と紅潮した顔を向け、こぽこぽと股間から精液を垂れ流すリィラの姿を見て、今の今まで見えなくなっていた感情が蘇ってきた。
…………やって、しまった。
「ぃや……ほんっっと……気持ち良かった、ねぇ……♥」
ひどい罪悪感と多幸感が同時にあって、その上で、まだ足りないとすら思っていた。
精液になって流れ出たと思っていた理性のわずかな一欠片が、これっきりにしろと囁く。
けれど体は、これ以上の――次を、求めていて。
「……、ヘタっちゃ駄目だよ、マスターくん。わかるでしょ? マスターくんのデッキのエースは何? お嫁さんに迎えちゃおって決めちゃったのは、何?」
そんな心をやっぱり見透かすように、リィラが笑う。
汗と涙でぐちゃぐちゃによれながら、それでもこの上ないほど魅力的な――悪魔じみた微笑み。
「そ……イビルツイン、だよね……♥」
かたんと、リィラがトイレのドアに手をかける時。
吐き出しつくして、無くなったはずの熱が、また股間に集うのを感じていた。
「行こっか。……キスキルがベッドで待ってるから」
*
マスターがベッドから立ち去ったあと、二人は同時にぱちりと目を覚ます。
それから同時に後を追おうとして上体を持ち上げ、同時に互いの目を見つめ合って。
『『…………どうぞ』』
互いに互いを譲り合った。
数秒、同じように頭を抱えて沈黙があって、先にキスキルが口を開く。
『……あたしより早くマスターくんに当ててもらったのって、リィラの方だよね』
『まあ……。キスキル・リィラは最後だったし、わたし、キスキル、二人の順番だったけど』
『だよね。ああほら、それにさ、お風呂で先に手ぇ出したのもあたしの方だし……今度はリィラの番、っていうか……』
『……なら……お言葉に甘えよう、かな……』
そんなやり取りを経て、リィラがマスターの後を追った頃。
ひとりベッドに残されたキスキルは、ぼうっとしながらこれからのことを考えていた。
先を越される……なんて嫉妬心はどこにもなく。
イビルツインを愛してくれるマスターが、片方だけを愛するなんて不平等なことはしないという信頼もあり。
それ故に、ただ単純に。
(……次はあたし次はあたし次はあたし次はあたしっ……次はあたしだ……あたしの番がもうすぐ来るわけで、待ち望んだ瞬間がやっと来るわけで、けどいざそれが目の前となるとっ……!!)
緊張していた。
けれど心を満たす興奮が、緊張で体が硬直するのを許さず、自然とキスキルはネグリジェを脱いでいた。
この数日、マスターとキスキルと一緒に横になっていた大きなベッドの上で、キスキルはひとり、素肌を晒してぺたりと座っている。
ほどなくして聞こえてくるのは、聞いたこともないリィラの声。
あんな声が出るものなのかと驚きつつも、次の瞬間にはその声を出しているのが自分なのだと想像すると、キスキルの手は自然と両胸へと移動していた。
「やば……激しっ……。や、そりゃそっか、ずっと我慢してたんだもんねぇ……マスターくんも、リィラも……」
ふに、ふに。むに、むにゅ。根本からすくい上げるように、まだ出せないものを搾り出すように、手慣れた手つきで胸を慰めるキスキル。
彼女が自分を慰めるとき、股間に触れることは少ない。そこは自分の指でなく、マスターのそれを受け入れるために使いたいと常々思っているが故。
触れる瞬間は最後の一瞬、達するためのスイッチ代わりに。けれども、今は。
「ぁー……マスターくん…………ぁっ、…………」
自慰ではなく、彼の為の準備。
彼がすぐに自分を使えるように、そこを濡れそぼらせるための行為。
普段のように胸を慰め、先端の周囲を指先で撫でさすり、くつくつと体の奥底を煮え立たせて、少しずつ口数が減っていく。
「…………っっ……♥」
やがて、キスキルの体は大きなベッドの中心にぼふりと横たわった。
普段はマスターが使っている場所。そこでキスキルは胸を弄り、だらしなく両脚を広げ、疼くばかりの股間を晒して見せる。
触れたい。達したい。けれどその瞬間は、自分の意思では訪れない。もどかしい、辛い、切ない、心地いい。
待て。ただ、待て。心の内に自分自身にそう命じるも。
「ぁ゙っっ」
大人しく待っていられるほど、キスキルの体は従順ではなく。
ぎゅ、っと強く両の乳首をつねり上げた瞬間に、圧し留めていた快楽がすべて一切の刺激を与えられていない股間から溢れ出た。
「ぁ――やば、だめ、ぁ゙っっ、来ちゃ、だめだめだめっっ止まってっお願いっだからっっぁ゙ぁぁあああぁぁぁぁぁぁあっっ…………♥♥」
がくん、びくん、ばたんと腰が跳ねる。むっちりと膨らんだ太ももの間から、ぶしゃあああっと潮が散る。
止まれと命じながら両手は貪欲に乳首を握り締め続け、痙攣する体が腰を持ち上げる。
その姿は、さながら。
「ぅ、わ……♥ キスキル……何してるの……?」
主人に、そこを差し出し、捧げるような形をしていた。
「はぇ…………??」
不意に聞こえたリィラの声に、ぱちぱちと瞬きを繰り返すキスキル。
次いで彼女の全身が感じたのは、ベッドが沈む感触。ぼふぼふと柔らかいベッドが浮き沈むのは、その上に誰かが上り、移動していることを示していて。
両胸だけで達し、桃色の霧がかかって思考すらままならないキスキルの目の前に現れたのは。
「ぁ…………」
自分の体の上に跨り、こちらを見下ろす、汗ばんだ顔の主人だった。
息は荒く、頬は赤い。自慰に耽る彼の姿を見たことはあったけれど、ここまで全身を熱く火照らせた姿を見るのは初めてだった。
見下ろした視線の先には、今しがた弄んでいた乳房がある。そこを、ただじっと、見つめられていた。
「……ひゃぅ……っ」
揉まれ、弄られ、感度の高まった胸に彼の指先が触れる。
お風呂場では優位にあった自分の立場が、今は明確に彼の下だ。
触らせていたものを、触られる。同じはずの感触が、今のキスキルにはまるで別のものに感じられていた。
(揉まれっ……触られ……る……っ、もみくちゃにされちゃう、っ…………♥ ……?)
襲い来る快感を覚悟するキスキルの思いと裏腹に、彼の指先は、ただただするり、すり、と乳房を撫でるだけで。
五本の指先が開いては閉じて、乳房の形を変えないままじわじわと刺激する。
(揉んでくれない……? や……これ、違う……じわじわ、欲しがる体に、されちゃってるっ……?? なん、でっ、こんな、焦らすみたいなっ…………)
指先が乳房の上で踊り、ぷっくりと膨らんだ乳輪と乳首が弄ってほしいと主張する。
そこをじっと見つめながら、本能のままにめちゃくちゃにしたいという気持ちを押し殺しながら、主人はキスキルの乳房を撫でさすり続けた。
どうして、なぜ、こんないじわる。その疑問が、いつの間にか主人の耳元に口を寄せていたリィラの顔を見て氷解する。
「……そう、すっごい上手。キスキルはおっぱい好きだから、こうやって少ぉしずついじめてあげるのが、いっちばんキくんだよ。……そ、根本の……肋骨のちょっと上、おっぱいの付け根のとこ。ちょっと押して、すりすり、すりすりって」
「ちょっと……?? リィラ、何してるの?? あ、あたしのおっぱいを、勝手に説明しなっっ……ぉっ……んぃぃいいいっっ…………♥♥」
リィラの指示の通りに手が動く度、背中に快感が走る。その快感は突き抜けて達するものではなく、ただ延々と子宮に留まり続けるもので。
マスターにおっぱいを触ってもらえる。おっぱいを見て興奮してくれる。それが、股間に押し付けられる硬い男性器の熱と形ではっきりとわかる。
肉体の接触が言葉以上に愛を伝え、それを受け入れるほどに、キスキルの体は狂おしいほど熱くもどかしく仕上がっていった。
「ぁ……あっ、あ……っ、おっ♥ っっ、マスターくんっ、ぁの、ほんとにっ……そろそろ、そろそろぉっ……!!」
「……そろそろ限界みたいだけど。どする? あれ、そろそろやっちゃう?」
「へ……へっ? はぇ……なに、何なのっ、ん、んぅっ……♥ くひぅっ…………!!」
揉まれたい、弄られたい、揉みくちゃにしてほしいと背中を丸めて胸を突き出し、懇願するキスキル。
彼女のそんな姿を見下ろす二人は、目配せをして小さく頷く。それからリィラの細い手がキスキルの右胸へ、主人の手が左胸へと伸びて。
続けざまに訪れる快楽の大きさを考え、甘い悪寒を覚える……よりも、ずっと早く。
「あっっ」
「ぁむ♥」
ぱくりと。
主人とリィラの口で、二つの乳房を同時に食べられ、ねっとりとした甘く熱い口内の刺激に乳首が蕩けるとともに。
あてがわれ、擦りつけられていた男性器が、にゅるんっっ――♥ と容易くキスキルの愛液まみれの股間を貫いた。
(待ッッおっぱぃっおまんこっっ全部っぜんぶっぜんぶっっ??? 待っ、待、ぁっっやばっこれおわるっヤバいのくるきちゃだめなの来ッッッ)
待ち望んだ快楽が一切の容赦なく襲い来る瞬間。疼く子宮を、快楽という五本の指で握りつぶされたような錯覚。
ベッドシーツを握り締めて、全身を強張らせてのけ反りながら容易く絶頂を迎える。
食いしばった歯の隙間から漏れるのは、少しでも快楽を逃がそうと腹の底から吐き出てくる言葉にならない嗚咽。
「~~~~ッッ!!!♥♥ ふぎぅっっひぎゅっぐっっあっ――お゙ッッぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ…………♥♥♥」
「わー……すごい声。れる……ぴちゅ、はむっ。前にひとりで遊んでたときは……可愛く喘げるように、練習してたのにねえ……」
「ぇあ――っっ、何で、それ、知っ――ひぅッッ!!?♥♥」
垂れ下がって実った果実から果汁を啜るように、片手で乳房を抱き寄せて吸い付きながら話すリィラ。
彼女の言葉に反応を示すと同時に、もう一方の乳房をねぶる主人が腰を打ち付ける。背中を丸め、乱暴に乳首を吸い上げながら、たん、たんと膣奥を叩く。
もっと強く、正気を失ってしまうような快感が来ると覚悟していたキスキルの心とは裏腹に、彼らがもたらす快楽は甘く、先の絶頂で消耗した体を休ませられる程の余裕があった。
「はぁ……はぁぁっ…………、いつの間に覗いてたのさ、リィラっ……んっ♥」
「覗くも何も、キスキルがいっつもシてたの、自室じゃなくてこのベッドじゃん……。はむ、んむっ、れろれろれろれろっ……ドアちゃんと締めないでしょ、声漏れるよ……?」
「ひきゅっ♥ ゃ、あ、うぁ、まじかあっ……恥っずぅ…………っ♥ んっっ♥」
「あ、かわいくなってきた。練習の成果あったね」
にゅるんと裂かれた膜の痛みはじくじくと残っていれど、愛するマスターと交われた喜びは、その事実だけでキスキルの頭を蕩かし得る。
リィラと交わす軽口はいつもの日常の延長にあるもので、それ故に、嬌声と混じって話す言葉が失いそうな気を保たせた。
つぷりと、不意にリィラの口がキスキルの胸から離れる。
それから彼女は再び主人と耳打ちして、のそりとベッドの上を這い、キスキルと主人、その二人から少しだけ距離を取った。
これから起こることを、蚊帳の内から鑑賞するために。
「にしても……ずーっと笑顔だね、キスキル。マスターくんとえっちできたの、そんなに嬉しかった?」
「ぅ、嬉しいも、何もっ……♥♥ ずっと、ずっとずっと夢だったもんっ、マスターくんにはじめて貰われるのっっ……♥♥」
「それだけじゃないくせに……。もっとあるでしょ、いちばんマスターくんにお願いしたいこと。してみたら?」
「はぇ……?? ぇ、なにそれ、何のことっ……」
「わたしは、マスターくんの専用オナホ、専用肉便器にしてもらったよ。キスキルは? マスターくんの、何になりたい?」
にっこりと嬉しそうに微笑むリィラ。体を前後に揺らしながら、彼女の目を見るキスキル。
何になりたい。心の奥底にある恥ずかしい欲求。恥ずかしいことではないのだろうけれど、それでもじわっと心が熱くなる願いごと。
喘ぎ声を聞かれていたんなら、リィラも知ってる。その事実にかあっと顔を赤らめて、キスキルは主人の顔を見た。
汗ばんだ、優しい顔。いつもカードの向こうから見ていたマスターの顔。
お願い事をする立場だったのは、いつも向こうだった。どうか勝たせてくれといつも願っていた。
その顔に、今度は自分が願う。
「マスターくん……ぁの、えっとっっ」
何をためらうことがあるんだろう。恥ずかしい。恥ずかしいと言うなら、ベッドの上で抱かれてる今の自分の姿のがよっぽど恥ずかしい。
半ばやけっぱちになりながらも、キスキルは胸の内の願いを主人に明かした。
「あた、あたしっっ、その――マスターくんの……ぉ、およめさんに、なりたい、なりたいな、って……こっちの、こっちの世界でずっと、ずっとっっ、一緒に暮らしたいなあって……! だ、だめかな、だめだよね、ぇあ、あたし、攫った側だもんね、その、えと――――」
お嫁さんになりたい。あなたと一緒に暮らしたい。
愛する相手の純粋な言葉が、彼の心に火を灯す。
ふっと微笑みがこぼれたのは、ああ、彼女は本当に可愛いなと、心底そう思ったからで。
「……マスターくん……?」
ベッドシーツを掴むキスキルの手首を、ぐっと握り、押さえ。
主人は返事の代わりにキスをした。誓いにはそれが必要だろう、と。
ほんの一瞬あわを食ったキスキルだったが、その行為の意味するところを知り、彼の背中を抱き返し、じわりと湧き立つ幸福感に涙が一滴浮かんだ。
「んっ、んっ……♥ んむっ♥ んっ、ちぅ、ちゅうぅ……っ♥ ぷぁ……♥♥ …………え、えへへっ、キスも奪われちゃった……♥ 嬉し――っ」
無邪気に笑う彼女の顔は、次の瞬間には驚愕と快楽で歪んでいた。
ずんっ……と彼が彼女の膣奥に硬い性器を突き入れて、押し上げている。
その一突きは、先ほどまでの単調な前後運動と異なり、キスキル自身も知らない弱点を的確に突いていた。
「…………はぇ……っっ??♥♥」
目が見開かれる。頭の上にいくつもはてなが浮かぶ。
知らない快楽。突然叩き込まれる一瞬の膨大な快感。
理解が及ぶより早く、主人は彼女の両の胸を鷲掴みにしながら、再度そこを強く突き上げた。
「あ゙ッッ――――!!?!!♥♥ ぁ゙っっ、こひゅ、ぁ、ぉ゙!!!♥♥」
乱れる、という言葉がこれほど似合う様も無いだろうなと、リィラは股間を慰めながら思った。
自分もされたこと。膣奥の弱点を的確に見つけて、そこを執拗に突いてくる、マスターくんのえげつない責め。
これをされると終わるんだ。女として終わって、牝になる。あんなに可愛くて純粋で、余裕を保っていたキスキルも、あんな姿にならざるを得ない。
ばんっ、ばんっっ、と腰と腰がぶつかる音が響く。先程までの甘い責めと比べ物にならない、けだものの音。
「助け、たひゅけっっ、これ違っっ、ちがうっっ、マスターく――ん゙っっ!!♥♥ ぉ゙っっ――あ゙!!♥♥ ッッ!!!♥♥♥」
ぶんぶんと首を横に振りながら抵抗を示すけれど、一切の容赦はないままで。
好きだ、かわいい、愛してる――そんな言葉を口にしながら、主人は少しも遠慮しない。
悲鳴じみた嬌声をあげる妻に対し、乳房と乳首をいっぺんに揉み潰しながら、こみ上げる射精感を覚える性器を彼女の弱点に突き立て続ける。
「や゙っっ、ぁ゙ぁあぁあっっ!!! やさしっ、もっどやさしっっ違っごれ違うよっっおよめさんとするえっちじゃないっっぃ゙ぃいぃいいぃいいいぁ゙ぁあああああああッッ!!!♥♥」
まぐわい合う両者は殆ど同時に背中をのけ反らせ、声を張り上げて絶頂し合った。
言葉で拒みながらも彼の腰の後ろへ回した両脚を強張らせるキスキルの姿と、結合部からどぷどぷと溢れる精液の量に、きゅんと子宮が疼くのを感じるリィラ。
大好きな彼女と大好きな彼が、あんなに乱れてる。そんなに気持ち良かったんだ。うらやましいな。
わたしもお嫁さんに立候補してれば、あんな風になったのかな。トイレで注ぎ込まれた彼の精液が、ぎゅっと締まる膣に押し出された。
「ぁ゙……あ゙ッ、かひゅ……はひゅぅっっ…………♥♥」
長い長い絶頂がやっと終わって、へたりと全身から力が抜けるキスキル。
意識を失ったわけではないにしろ、絶頂に絶頂を重ねられる強烈な交尾に心が耐えきれていなかった。
たっぷりと涙を浮かべた彼女の顔に、硬いままの性器をずるりと引き抜いた主人が自身の顔を重ねる。
唇の外へ投げ出された舌は、彼の唇が重なるのを感じると、無意識に動いて彼を受け入れていた。
「……お疲れ、マスターくん。どうだった? お嫁さんとするえっちの感想」
頭を撫でながら労わるキスを終えた彼に向け、にひ、と火照った顔で笑みを浮かべて訊ねるリィラ。
今しがた犯しつくした彼女はすっかり限界で、けれど心に灯った火は今だ消えないままで。
彼女が愛おしい。彼女をもっと愛したい。自分の相棒が、Evil★Twinsが、愛おしくて仕方ない。
ふと目を向けた先で、リィラが笑っていた。
まるで、自分は外から鑑賞させていただいてました、なんて顔だった。
「やー、うらやましいね、キスキル……あんなガチのえっぐいセックス、オナニーの妄想でもなかなかやんないよ……ん……んっ? ひゃっ――?」
そんなわけがあるか、と心の内に彼は呟く。
自分の相棒も、今しがた嫁に迎えたのも、Evil★Twinsだ。
現実には何の一言も用いないまま、彼はリィラの上に覆いかぶさり、キスキルの愛液と自身の精液にまみれっぱなしのそれを無遠慮にリィラへと突き立てた。
「んぉ゙へッッ――♥♥ ぁ、っっ、今度は、わたし――??♥ いいよっ、お嫁さんはばてちゃったもんね、代わりのおまんこ必要だよね――ぇ゙ッッ♥♥」
キスキルにしたように、リィラの乳房を弄びながら彼は口にする。
リィラの名前と、彼女に向ける愛の全部を。
嬌声と水音に紛れながらもその言葉はリィラに届き、その微笑みを容易く砕く。
「待っっ――だ、駄目だよ、そんなっ――ぉ、オナホに愛してるとか言っちゃ駄目っ、もっと、もっと駄目になっちゃぅ、大好きになっちゃうから……っ♥♥ ぁ゙っっ♥♥ ぉ゙っ、お゙っっ♥♥ お゙ぉぉぉぉおおぉぉぉぉっっ!!♥♥」
愛おしい。愛おしくてたまらない。Evil★Twinsが、愛おしい。
この上ないほど優しく純粋な愛情で、この上ないほど酷く不純な欲望を煮え立たせ、流し込むのは愛情と欲望が入り混じった白濁の体液。
その日の夜はずっと長く、嬌声は耐えることなく、ベッドの上を三人分の体液で汚し続けながら、夜が明けるまで彼女たちと彼はまぐわい合った。
*
夜が明けていると気づいたのは、ふと窓の外に目をやった時だった。
ずっと彼女たちの体と顔を見ていたから気づかなかった。少し休もうとベッドの上に転がって、そこで初めて窓から朝日が射しこんでいるのを知った。
「…………朝……なっちゃった、ねえ……」
ぜえぜえと息も絶え絶えに、呟いたのはリィラ。
唾液にまみれて歯型のついた乳首をすりすりと指先で撫でさすりながら、自分と同じく窓の外を見ていた。
「……カードショップでギリギリ勝った日の朝さ。こうやって、みんなでベッドの上にいたよね」
続く言葉はキスキルのもの。汗だくになって、片腕で両の胸を隠しながら、上体を起こしていた。
カードショップで勝った日……。ああ、そんなこともあったと思い出す。
彼女連れでカドショに来ていたデュエリストに、半ば因縁をつけるように挑んだことがあった。
結果として自分たちは勝ったが、あれは辛勝だった。
次また挑んだ時には安定して勝てるよう、対策のために、ベッドの上にカードを散らばらせて朝までデッキ構築をしていたんだ。
「あったあった。懐かしいね、キスキル。……あれってなんで勝てたんだっけ……?」
「さあ……。勝敗には運も絡んでくるし、よく覚えてないや」
――ふと思い出したのは、あの日、そのウィッチクラフト使いが連れていた女性のことだった。
その時、俺は彼女がウィッチクラフト・ハイネのコスプレをしていたと思った。雰囲気がよく似ていたからだ。
だが思い返すと、その女性が着ている服はいたって普通の私服だった。
似ていたのは髪くらいのものだったのに、何故自分は、彼女がハイネだと思ったのだろう。
それから彼のデッキを見せてもらったとき、自分はあることに気づいた。
「ハイネが、一枚しかなかった」
「マスターくん?」
「ハイネを場に二人立てると、お互いを自分の効果で守り合える。それもあって大抵の場合、ハイネはデッキに二枚入ってることが多い……けど」
それが勝敗に関わる理由だったのかはわからない。
そもそもどうやって勝ったのか、辛勝だったはずなのによく覚えていない。
……その人の横で、ハイネっぽい女性がやけにそわそわしていたのは覚えていた。
「あとさ、枚数。五十九枚だったよね」
そうだ。リィラの言葉でそれを思い出す。
互いのメインデッキを確認した際、自分は四十枚で、向こうは五十九枚だった。
「変な枚数だったから覚えてるよ。あ、マスターくんも思い出した?」
「えー……よく覚えてるね、リィラ。あたしそんなの全然気にしてなかった……」
あの日、ベッドの上に散らしていたカードたち。そこにいたのは自分一人だった。
一人で朝まで悩んで、何をしているやらと思ったが――実際には。
「ん……どしたの、マスターくん」
「まだ足りない感じ? いーよ、わたしならいつでもさ」
目を向ければ、どちらにも彼女たちがいた。
あの日も、実際にはこうだったのか。
自分の両隣にいるキスキルとリィラは、確かにあの時、ベッドの上でともに夜を明かした彼女たちと同じ『彼女』なのか。
ふと、体から気が抜けて、ぼふんとベッドの上に落下した。
「あー……さすがにマスターくんもお疲れか。朝だしね」
「ふあ……。今日の配信はお休みしよっか……。一日中寝ちゃおうかなあ……立てそうにないしぃ……」
「ベッドシーツも洗って……ご飯どうしよ……やば……考えてたらわたしも眠くなってきちゃった……」
彼女たちの声が両隣から聞こえてくる。ベッドの上に置いた両手を、それぞれ彼女たちが握ってくれている。
その声と体温を感じていると、ひどく心が安らいだ。
全身にずっしりと溜まった幸せな疲労を感じながら、ゆっくりと目を閉じる。
ぎゅっと、彼女たちの手を握り返しながら。
――朝が過ぎ、昼も過ぎて、夕方に差し掛かろうとする時刻に目を覚ましたとき。
キッチンの方で慌てふためき、食事の用意に手間取っているらしいキスキルとリィラの声が聞こえた。
また、ここでの一日が始まる。
そんなことを考えながら、ひとりでは広いベッドを降りて、固まった体をほぐしながら彼女たちの元へと向かった。