ありがとうございました!
(余談)
ありがたいことにモンスター×マスターのSSのリクエストを何度かいただいたことで背景や裏側の設定が固まってきて、白いデュエルディスクのお話を一本のシリーズにすべきか考えています。
次のリクエストも既にいただいており、このシリーズに準じたお話になっております。
ふと目が覚めたとき、知らない天井が視界に飛び込んできた。
自分が寝転がっている布団は信じられないぐらい硬く、体を起こすとズシリとした疲労感に襲われる。
開きっぱなしのカーテンの向こうには、アスファルトとコンクリートの街が広がっていた。
覚えがある。見慣れた景色だ。久しぶりに見た。……これは何だ? 彼女たちはどこに?
どこか別の部屋にいるかもしれないと、キスキルとリィラを呼ぼうとして、不意にここがワンルームであることを思い出す。
「……ああ」
戻って来たのか。元の家……元の世界に。
そう気づくのに、ずいぶんと時間を要した。
*
数十分ほどせんべい布団の上で喪失感に浸っていたが、頭が回らないこと、そして体が空腹を訴えていることに気づき、いつかのように、小さな冷蔵庫を開けて食材を探す。
賞味期限の近い調味料ばかりが詰まっていて、すぐに食えるものは無い。床に放られた財布の中には一度くらいなら外食が出来そうな額の金が残っていた。
外出の支度をして、いつものようにデュエルディスクを手に取り、腕にセットする。そこでなんとなく、収まりっぱなしのデッキからトップをめくり取った。
融け合い、混ざり合うほど愛し合った女性――の、アバターの少女が、にっこりと歯を見せて笑うカード。
(なんというか……)
つい昨日までの出来事であった筈なのに、『ない』と気づいた瞬間、それが遠い過去のように思えた。
それどころか、あれは現実に存在しなかった、夢の中の出来事だったようにすら思う。手にまともな職もない自分が、ある日突然愛するデッキのエース二人と淫らに乱れて暮らす生活など、あまりにも夢のようで……出来すぎている。
ともすれば、やはり本当に夢だったのかもしれない。しかし、だとするなら、それでも。
「いい夢……だったなぁ」
ぽっかりと心に空いた穴の大きさに、心底、そう思うのだった。
*
行きつけの定食屋の味は変わらず、この世界に戻ってきてはじめて安堵を覚えた。
よほど腹が空いていたらしい自分の体は米と味噌汁と生姜焼きを容易く平らげて、財布の中を殆どカラにして店を出た。
そうして出た街の中には、ギラつくネオンの輝きも、セキュリティフォースのサイレンも無い。
真昼であるから当然といえば当然なのだが――夜のとばりが降りたとて、自分が見慣れた光景はどこにも存在しないのだろう。
飛び出したレーンの上をDホイールが走り去るのが見えた。その音も熱気も、今の自分には随分と安っぽく思えた。
熱気――熱気か。そうか……そうだな。
向こうに無くて、こっちにあるものと言えば、それかもしれない。
ふと気づけば、自分の足は行きつけのカードショップに向かっていた。
用があるのは一階のショーケースたちではなく、二階のデュエルエリアだった。
それまでは重かった足取りも、デュエルの熱気を感じると僅かに軽くなる。いくつも並ぶテーブルは殆ど埋まっていたが、窓際に空いているテーブルを見つけた。
テーブルの片側に青年が座っている。青年の傍らには――。
「…………蟲惑魔?」
何を言っている? 自分の口から無意識にこぼれた言葉を、自分が疑った。
派手――な筈が、そう思えないほど、桃色の髪がよく似合う女性が立っている。当然カードから飛び出した蟲惑魔などではなく、実際にそこにいる普通の女性である。
青年は彼女と親し気に話しながら、対戦相手を待っている様子だった。
あの日もそうだった。ウィッチクラフトを連想させる女性を連れた青年とデュエルを行って、そして勝利した。
ギリギリの勝利だったと記憶している。あの一戦を行ったのも、あのテーブルだったような気がする。
示し合わせたかのようにそこにいる青年の元へ、深呼吸をひとつ挟んでから、自分は足を運んだ。
あの日、ウィッチクラフト・ハイネを連想させる女性を連れた青年が、ウィッチクラフトを使ったように。
フレシアの蟲惑魔を連想させる女性を連れた彼のデッキも、蟲惑魔だった。
*
マッチの結果――自分は敗北した。決着はあっさりとついた。
惨敗だった。小さなミスに気づいたときにはフェーズはもう次へと移っていた、そんなプレイの連続で俺は負けた。
思わず、肘をついた手で顔を覆う。
「お兄さん……大丈夫か?」
向かいから顔を覗き込まれながら、そう問いかけられる。
勝利を得たはずの彼の顔は、どうしてか、俺以上に曇っていた。
「……?」
「――の際、――――が出来たと思うんだが……俺はそれを警戒して、――――」
言われてはじめて気づく、自分が気づいていた以上のプレイングミスの数々。
使っているデッキは違う筈なのに、彼はよく観察している。素直に感嘆した。
ことデュエルにおいて、勝敗に直結する選択というものは限りなく少ない。だがデュエルの最中、『別の道を選ぶ』という選択肢は無数に存在する。
あの時ああしていなければ、或いはあの時ああしていれば。デュエルを終えた直後はそうした考えが無数に浮かび、対戦相手とこうして話し合うことも珍しくない。
だが、今の自分は……まるで、スクールに通う子供そのものだった。
基本的な動きはこなしながら、どこかの一手で小さなぼろが出る。普段であれば出ないはずのそれを指摘される度、羞恥を超えて、自分に対する失望があった。
彼はそれすらも見越していたようで、笑うでも勝ち誇るでもなく、長年連れ添った友人にそうするように、酷くこちらを心配していた。
「……このミスは、たぶん……プレイングじゃなくて、メンタルの問題だ。そう、じゃないか?」
「ああ……。そう……なのかも、しれないな……」
心当たりならある。……というか、心当たりしかない。
俺の心は今、ひどく乱れていた。デュエルの熱気ならそれを忘れさせてくれるかもしれないと思ったが、結局、このテーブルの上に並ぶのは、あの夜をともに過ごしてくれた彼女たちで――その姿を見るたびに、余計に心が乱れた。
あの夜のように、抱きたいとか、犯したいとか、そういう気持ちも確かにあるが……それよりもずっと、会いたいという気持ちのが大きかった。
(……イラスト違いのを使ったのが悪かったかな……)
私服姿ではなく、怪盗姿であれば、いくぶんかマシだったんだろうか。
そんなことを考えていると、突然彼が立ち上がり、ぱちんと自身の両頬を叩き。
――よっしゃ! と、大きな一言。
「飲みに行こう! 奢りますよ!!」
親指をぐっと立てて、どんと胸を叩き、俺にそう言った。
「…………えっ」
「レシア、というわけでも……いい? 遅くはならないから……」
困惑する俺。隣の女性に訊ねる彼。俺の返事を待たずに話が進んでいる。
「……構いませんよ、あなた。そちらの方が、ご迷惑でなければ、ですけれど……」
「あ……は、い。えっと……そう、ですね。ちょっと、むしゃくしゃしてるとこ、あるんで……嬉しくは……あります」
俺がそう答えると、彼の顔がぱあっと明るくなり、そのまま俺はカードショップの外へと連れ出される。
入り口でレシアと呼ばれていた女性と別れ、俺は彼に連れられるまま、入ったこともない居酒屋へと足を運ぶことになった。
*
「――そんな夢を見てたんだよ。笑えるでしょう」
元来、俺は酒に強いほうじゃなかった。
数本の焼き鳥と一杯の酒で、俺は心に残っているむしゃくしゃの正体を彼に明かしていた。
細かなプレイなんかは口にする勇気がなかったので、さすがに省いたが。
カードに描かれた女性と、淫らな生活を送る。そんな妄想みたいな夢の話。
そんなものを聞かされた彼はどんな顔をしているやらと、底に残った酒を飲もうとグラスを傾けながら見た彼の目は、何か、思案に耽っているように見えた。
「…………そっちのパターンもあるんだな……」
酔いもあって、ぼそりと彼が呟いた言葉の意味はよく理解できなかった。
からりと落ちてきた氷がごんと唇に当たる。酒は残っていなかった。
「ああ、失礼。……もう一杯ぐらい頼んでおきましょうか?」
「……お願い、します」
お互い酒が入って、だのにデュエルをしていた時より態度がつつましくなるという、奇妙な光景がそこにあった。
ぼうっと体温が高まって、頭の働きがにぶくなっているのを感じる。久々に飲んだんだ、次の一杯で最後にしよう――。
「ありがとうございます。話してくれて」
「…………?」
不意に礼を言われて、頭にぽうっとハテナが浮かぶ。
何でお礼を言うんだろう。俺はただ、見た夢の話をしただけなのに。
彼はまた俺の目じゃなくて、思案に耽って――遠いところをぼうっと見ていた。指でとんとんと机を叩きながら、俺とは対照的にしきりに頭を働かせているらしかった。
「向こうにも――なら――こっちにも…………。……えっと……お兄さんは」
「……はい?」
「大事に、されてますよね。その……イビルツインのデッキ」
「ええ……。とても。俺ぁ……他のデッキを使うと、頻繁に事故っちゃうぐらい運がないんですけど……なんでか、イビルツインだけは、絶対に初動がうまくいくっていうか……好きだし、慣れてるし、これ以外を使うってことは、もう、ないっていうか……」
好き……。だ。そう、好きだ。だから大事だし、だから今日のプレイングが自分で許せなかった。
彼女たちに対して不誠実だった。そう思う。もっとまじめに、ちゃんと彼女たちと向き合わなくちゃ……。
「だったら…………向こうも……お兄さんが急にいなくなって、困ったでしょうね」
「…………へ」
……何を言っているんだろう。
耳を疑う俺の前に、ことんと二杯目のジョッキが置かれる。
「怪盗でしょう? イビルツインの二人は」
「……です、ねぇ」
もしかしたら――そう言って、彼は僅かに火照った顔で小さく笑いながら言った。
「盗みに来るかもしれませんね。いなくなったお兄さんのこと」
…………。
「……だと、いいですね」
気休めでも、なんでも。
夢の内容にノってくれるだけの言葉でも、今の俺にとっては、心底うれしかった。
*
結局、二杯の酒と軽食を奢ってもらって、彼とはそのまま別れた。
自販機で買ったミネラルウォーターを飲みながら、帰路の途中で俺は路地裏に座り込む。
酒が回って、押し隠そうとしていた気持ちが溢れ出てきているのを感じていた。
(寂しい)
ここに彼女たちがいないのが、寂しい。
愛する彼女たちと一緒に過ごせないことが、寂しい。
……俺の帰る場所は、もうとっくにあそこになっていたというのに。今更、どこへ帰ればいいんだろう――。
「そんなとこで何してるの? おにーさん」
ふと、誰かの声が聞こえた。
女性の声だった。女性の知り合いなどいない筈が、やけに懐かしく聞こえた。
奇妙なことに、人の気配はしなかった。
「悪い人に絡まれちゃうよ。大丈夫?」
「そうそう。そんなとこで寝てると、大事なもの、盗まれちゃうかもよ」
生憎だが――そんなものは持ち歩いていない。
財布の中身はカラッポだ。長年連れ添ったデッキだって、もううまく使えない。
落ちぶれた自分に突き合わせるくらいなら――いっそ…………。
「……いいんだ。盗まれても」
ぼんやりした意識で、ゆっくりと頷いた。
「じゃあ――盗ませてもらうね」
その犯行予告が、どうしてか、ひどく安心するものに聞こえた。
知らない男に彼女たちを奪われるよりも、ずっと。
この、どこか懐かしい気がする女性たちになら、俺のデッキを盗まれたとて構わないと思えた。
――ふわりと、体が軽くなって。酒が回って、ぼんやりした意識が浮き上がる。
俺の意識は、そこで途絶えた。
*
『あ……安全、装置……?』
『そう。いくら時間も次元も超えて召喚できると言っても、あくまでも召喚……存在を借りているにすぎない。だから、借りたものは返さなくちゃ。そういうわけで、このディスクによる召喚は、一週間ほどで自動的に終了することになってるの』
深くフードを被った少女は、突如姿を消したマスターを探し求めていた二人の前に現れると、淡々とそう説明した。
ネオンの光も届かない暗い路地裏で、いつか自身が彼女らに預けた白いデュエルディスクの調子を調べながら。
『……じゃあ、また召喚すれば、マスターくんは帰ってくるわけだ』
『そういうこと。カードはデッキの中に戻ってるはず。確認しておいて――』
リィラの言葉に頷くと、フードの少女はデュエルディスクを彼女に返す。
そこにセットされたデッキの中に、彼を呼ぶカードは存在しているはずだと。
『あの』
『てことは、マスターくんは……やっぱり……ずっと、ずっと向こうの世界の人間って……こと?』
キスキルはその説明を聞いて、瞳を震わせながら少女に訊ねる。
『ぁた、あたし……やだよ、やっぱり……こんなふうに急にお別れして、また呼んで、別れてなんて……やるの』
願わくば彼とずっと一緒にいたい。再会が叶うと知って尚、それでは足りないとキスキルは訴える。
それほど、彼との不意の別離は彼女の心に消えない傷を生んでいた。
会いたくてたまらない。あの顔を、あの体を、ずっと自分のそばに置いておきたいと。
――自分を、永劫、彼の傍に置かせてほしいと。
『……方法は、ないわけでもないよ』
その言葉を、少女は肯定する。こくりと頷くと、羽織った外套の内側から一枚のカードを取り出した。
細く小さな二本の指に挟んだカード。その裏面を彼女たちに向けながら、それが何かを説明する。
『これはこのディスクでのみ使用できる、使い切りのカード。使えばカードは消え失せて、その効果も消えなくなる。対象を指定し、ひとたび効果を発動すれば、対象の魂は使用者に結びつき、二度と離れることはない――』
くるりと手のひらを返し、それの表面を彼女たちに向ける。
そこに書かれたカードの名は。
『特別性の……超融合。……君たちには、ちょっと関係の薄いカードかもしれないけど』
差し出されたそれを、キスキルは慎重に両手で受け取った。
じっと見つめるキスキルの隣で、リィラが訊ねる。
『……いいの? それ……わたし達が使っても』
『いいかどうかは彼と相談して決めなよ。とはいえ、こっちにも事情はある。何人かはこっちの世界に来てくれないと……戦力が偏っちゃうからね』
彼女がぼそりと呟いて最後に付け加えた言葉に、リィラは首を傾げた。
『ああ、こっちの話。さて、用は以上かな?』
わずかな間の後、リィラが切り出した。
キスキルの願いはこれから叶うが、だとすれば、自分の願いも叶うのではないかと。
『無理を承知で……お願いするんだけど、さ』
そう、前置いてから。
『魂だけじゃ足りない。体も繋がりたい。他の人ともできることじゃなくて、彼としかできない体になりたい。そういうことって、できる?』
じくじくと彼を求めて疼くお腹を撫でながら、リィラは言う。
この疼きは彼を求めてのものだ。心はそうでも、肉体はそうではない。
彼の代替として他の誰かを抱けば、わずかでも疼きは収まってしまうかもしれない。リィラにはそれが堪え難かった。
――彼以外のものになりたくない。彼だけのものに、この体を変えてしまいたい。彼を悦ばせるためだけのものになりたい。
『これまた難しい注文だな。……以前、向こうの世界から神父様を迎えたエクソシスター達も同じような注文をしたよ』
小さな指で顎を掻きながら、フードの少女はそう答えた。
リィラは思う。……あの彼も向こうからの客人だったのか。けれど、その彼が突如ふらっと消えたという話は聞いたことがない。
五人のエクソシスター達と、今も欠かさず各地へ慰問に訪れていると、そう聞いている。
ちらと、リィラはキスキルが持つ超融合のカードを見た。フードの少女は話を続ける。
『その時は試薬の段階だったが、今はもう完成してる。この世にふたつとない特注品になるから、値は張るが……』
『払う。いくらでも。彼のためなら』
リィラは強く頷いた。
それを見て、フードの少女はにっこりと笑う。
『よろしい』
そして、自身のフードを掴むと。
『なら、ディスク配りの頭巾ちゃんはおしまい。今からは……』
ばさりとそれを脱いで、赤いラインが僅かに走る艶やかな薄青い髪と、水晶のような瞳を露わにした。
『――ウィッチクラフトマスターとして。その注文に応えよう』
*
「ん……ん…………?」
ゆっくりと意識を取り戻し、蹲った体勢のまま顔を上げると、見慣れた二つの顔があった。
心臓が跳ねる。見ていなかったのは僅かな間なのに、懐かしいとすら感じてしまった自分の心に。
「……マスターくん?」
「おかえり。マスターくん」
にっこりと微笑むのは、怪盗姿のイビルツイン・リィラ。
それからバネのように飛び出して抱き着いてきたのは、同じく怪盗姿のイビルツイン・キスキル――。
内臓が口から噴き出そうなほど強くキスキルに抱きしめられながら、俺はあたりを見回した。
全面がガラス張りの壁。部屋の奥に見えるリビング。三人が上に居ても余るほど巨大なベッド。
間違いない。俺が甘く幸せな時間を過ごしていた、あの部屋だった。
――これは、一体。
醒めた酔いがもたらす明瞭な意識で、俺はリィラの顔を見た。
「簡潔に、話すね」
――。
――――。
……そうして俺は、今に至るまでのことを、ずっと自分を抱きしめてくるキスキルの頭を撫でながら聞いた。
突然俺がいなくなって狂おしいほど寂しい時間を過ごしたこと。
その原因が、あの白いデュエルディスクに備わった安全装置だということ。
そして、その強制的な帰還を防ぐ手段のこと――。
その手段は今、俺の手にあった。ベッドシーツの上に置かれた白いデュエルディスクを見下ろしながら、手に持ったカードを見つめる。
超融合――。書かれている効果は、俺が記憶している超融合とはまるで違う……。
「そのカードをマスターくんが使ってくれれば……わたし達はもう二度と別れない。こっちの世界で、同じ魂を共有するわたし達と、ずっと一緒に暮らすことになる」
「も……もちろん、マスターくんが向こうの世界の生活のが大事っていうなら、無理強いはしないよ!? あ……あたし達も、さみしいし、さみしいけど……ああほら、こっちに呼んだときみたいに、精霊になって声をかけるくらいはできるだろう、し……」
変わらず平静を保つリィラと対照的に、キスキルの言葉は速くなったりゆっくりになったりしながら、俺の元に届いてくる。
結果的に……奇妙なことに、彼の言った通りだった。向こう、もといここにいる二人は俺の不在に驚き、戸惑い――それでも対処する方法を探してくれていた。
一方の俺は、彼女たちの存在を夢と考え、ただふらふらしていただけだ。その結果、彼女たちの信頼に背き、得られる勝利すら逃した……。
「……俺は」
二人の信頼に応えるために、俺ができることは、ひとつ。
心残りがあるとすれば――あの彼に礼を言えなかったこと、名前も聞きそびれてしまったことくらいか――。
だが、もしかすればきっと。また会えるのかもしれない。向こうではなく、今度はこちらの世界で。
続く言葉を待つ二人に、俺は行動で答えを示した。
「イビルツイン・キスキル、イビルツイン・リィラを対象に、超融合を発動。これにより使用者の魂は、彼女たちと同一のものとなる――!」
このディスクには魔法&罠ゾーンが存在せず、それらを使用する際には、モンスターゾーンに直接置く必要がある。
彼女たちを呼ぶ時と同様に、流れるように指先でそれを置いた瞬間、心がどくんと沸騰したような感覚があった。
目の前のディスクに置かれたカードは光に変わり、三つに分かれて俺達の体を貫くと、そのまま跡形もなく消え去った。
「――――っっ!!!? ちょ、っと、マスターくんっっ、もっとこう、ためるとかためらうとか無かったのぉっ……!!? こ、心の準備とか、こっちにもぉ……っ!!」
「あーーーーっっ……やば……これ、こういう感じなんだ……っ、頭んなか……かきまざって、ぐちゃぐちゃになって……っ!! ……っっ!!」
瞬間、流れ込んできたのは、膨大な『好き』という感情。ひとときの、けれど底の無い『別離』という事実によって生まれた悲しみ、その亀裂を埋めるように底から溢れ出た想い。
二人の想いを一身に受け止めた俺の体は感じたことのない熱に浮かされ、胸を押さえながら白いディスクをよそへと追いやるので精一杯だった。
こんなに……こんなに、想われていたのか。こんなに寂しかったのか。こんなに。時間と共にその想いたちは心の中で整列され、それが誰の想いなのかの判別がつくようになっていった。
「……はぁ……はぁ……うわ……リィラって……ずっとこんなこと考えて過ごしてたの……? ……やばくない?」
目を向けた先で顔を赤らめているのは、膨大な『えっちしたい』と『孕みたい』の感情を向けているキスキル。
「そういうキスキルは……なんてっか……純粋だねえ……。マスターくんとのえっち……そういうやさしい感じじゃなかったじゃん……?」
彼女と顔を合わせる、同じく顔を赤らめたリィラは、とにかく『犯されたい』と『壊されたい』の一心を想っていた。
そしてそれらの感情を大きく包み込んでいる、一番外側にあって、もっとも大きな感情。それは俺も、同じことを想っていた。
二人の目が俺に向けられる。その意味がわかる。彼女たちは、もう……『次』を、用意している。
「……マスターくんは……うん、立派に男の人だね。抑え込むのに慣れてるんだ」
「その分、容赦がなくなったときの反動がおっきいっていうか……ぁ、思い出したらまた……っ、えと、あの……マスターくん、あの……ね」
『好き』。その想いがこの場の全員を繋いでいて、これからすること、成すことを必然へと変えていた。
キスキルとリィラの二人が俺との距離を詰めて、内側に閉じ込めた空気が火照っていく。
それからキスキルが胸の谷間から細いガラス瓶を取り出した。体温でよく暖められた、ピンク色の液体が入った瓶だった。
「わたし達……ね。このクスリを飲んでる……の。媚薬……といえばそう、なんだけど……なんていうか」
「誰とでもいいから、とにかくえっちしたい……っていうのじゃなくて。心は変えないまま、肉体だけを、内側から改造してくれるクスリなんだ」
肉体を改造する薬……。この世界らしい、おっかない言葉だ。
彼女たちの意思を通して、それの意味するところは把握していたが――彼女たちの口から至近距離で耳に流し込まれる言葉が心地よくて、その薬を見つめながら言葉を待った。
「あたし……もう、ね。手遅れなの。体、このおクスリにぐちゃぐちゃに改造されちゃって……後戻りできない体になっちゃった。普通のおちんちん、普通のせーしじゃ、孕めなくなっちゃった……。このおちんちんじゃ……もう、マスターくんの赤ちゃん、産んであげられなくなっちゃった……♥」
パンパンに膨らんだ俺の股間を撫でさすりながら、まるで怪物や化け物に犯されてしまった、寝取られてしまったとでも言うような口調で囁くキスキル。
それは確かに事実なのだろう。彼女の言葉の裏にある意図や意思がすべて伝わってくるから、それが『振り』であると理解できる。
けれど、だからこそ、それを含めて尚。心と性欲の両方で、沸騰するような苛立ちは抑えられなくなっていく。
「……このクスリはね、特注品なの。全く同じクスリを飲んだ相手の体と、相性が抜群になる――ううん、同じクスリを飲んだ相手とじゃなきゃ満足できない、孕むことも孕ませることもできない、そんな取り返しのつかない体になっちゃうクスリ。……勿論、わたしもキスキルも、二人とも……もう、飲んじゃった」
左右の耳から、二人の声が流し込まれる。そうか、それならリィラも、もう俺の子供を孕めないわけだ。
あの夜のように感じることもできない。悦ぶこともできない。この薬で体を改造されてしまっているから、もう……。
「特別に用意してもらったんだよ。あたしが飲んだ分、リィラが飲んだ分、それと――コレの、三本。その三本だけ。だから特注品。これと全く同じクスリは、これ以外、どこにも無いの……♥ マスターくん♥ 意味……わかるよね……?」
指先でそれをつまんで、揺らしてみせるキスキル。
その説明の通りなら……俺が今ここでこれを飲んでしまうと、俺ももう誰ともセックスできなくなるわけか。
誰も孕ませられない。誰も満足させられない。この……。
「選んでいいよ……マスターくん。孕みもしない、感じもしない、マグロまんこの生オナホ使ってオナニーするか」
「…………あたし達専用の……あたし達のためだけの、専用おちんぽになるか……♥」
汗で蒸れたおっぱいをぎゅうっと押し付けて、牝の匂いで部屋を充満させる、『飲んで』のひとつ以外何も考えていない、イビルツインを除いて。
指先でそっとその薬瓶を受け取りながら、一言訂正する。
今、キスキルが言った言葉を。
「……ん……ぇ? ぇ、えへへ……なに、かな……?」
ぽんと小さな栓を抜いて、その中身を一気に飲み干す。
ほんのりと甘い味が喉を通って呼吸した瞬間、体中が熱くなった。ただでさえ大きく怒張した股間のソレが、さらに熱を持って大きくなっていく。
密着し、こちらを煽り立てる二人の牝。彼女たち二人に、堪える必要など何ひとつない欲情と恋慕を抱きながら。
――俺専用の、俺のためだけに存在する牝二人に、最初の命令を下した。
*
「……はっ……はっ……♥ は……っ、ぁ…………♥」
広いベッドの上で、汗で髪を湿らせたキスキルが隣で膝を畳んで座っている。
キスキルもリィラも今日だけはあの怪盗服を纏わせたまま、俺だけが服をすべて脱ぎ捨て、女体を求めていきり立つ性器を目の前の尻に突き付けている。
ベッドの上にぺたりと体を寝かせた――土下座を命じた、リィラの尻。
頭はこちらではなく向こう。土下座の姿勢で尻だけ浮かせて、そこを使われるためだけに頭を下げさせた。
それを見下ろす興奮。見下される興奮、見ることしかできない興奮。全部が入り混じって、彼女たちの想いはもう手に取るようにわかる。
「……その……マスター……くん? ぁの、えと、ごめん……なさい……♥ あやまる、あやまるから……ぉ、おちんちんいらいらさせちゃったこと、謝るから……ね? あの、だから、そのっ、身動きひとつ許さないっていうのは、ちょと、その――」
あたふたと何かを言っているキスキルの言葉をすべて聞き流して、ホログラムの向こうにあるリィラの膣を親指で押し広げる。
今彼女たちが着ている怪盗の衣装、それを投影しているボディスーツには、彼女たちが自分で開けた穴が股間にある。そこに性器の先端を突きつけて、一切の遠慮もなく性器をねじ込んだ。
「――――ひぎぅっっぅぐっ!!?♥♥」
「――――!!! んぶ――ん゙ン゙んんんぅぅぅぅッッ!!!♥♥」
――――ッッ。
挿入した瞬間、尾骶骨を強く叩きつけられたような快感が脊髄から全身に迸った。
食いしばった歯の隙間や口の端から辛うじて息を吸い、膣内が性器を咥えて馴染むのをじっと待った。
リィラの口はベッドシーツに押し付けられ、喘ぎ声はすべてシーツに飲まれて籠った音に変わる。先程の快楽は、彼女の絶頂も相まっての刺激だったのだろうか。
隣でキスキルが背中を丸めながら声を上げたが、彼女自身の膣内には何も入っていないから、犯される感覚と、犯してもらえないもどかしさの両方に襲われている。
……まるで何かに寝取られて、二度と取り返しがつかなくなってしまったと言うようなキスキルの先の挑発に対し、身動きを許さぬまま、リィラを犯す様子を見せつけて仕置きとするつもりだったが。
挿入した瞬間にそれどころではなくなった。俺の体を最も悦ばせるように変わったリィラの膣。渦を巻く無数のヒダとイボがぴったりと性器に密着し、ほんの僅かに動くだけでも腰が砕けてしまう。
「ふ……♥ ふっ、ふうっ、ふっ、ふううっ、ふぐっっ、んむぐぅっ……!!♥♥」
不味い、とわかっていながら、腰が動く。本能が、快楽とリィラの体を求めて。快感という針が敷き詰められた筵に、自ら敏感な性器を突き入れる、その快楽に悲鳴が漏れそうになる。
リィラの尻を強く掴みながら、頭の中でキスキルが感じているもどかしさを覚えながら――味わったことのない快楽を感じながら、聞いたこともない音を立てながら自身の腰をリィラの尻にぶつけ続けた。
「んぶっっ、ぐぶっ!!♥ ぶ、ふぶぅっ!!♥♥ ん゙ぉ……お゙っ、お゙……お゙っっ!!!♥♥」
……このセックスに感じたことのない快楽を覚えているのは、リィラも同じ。
自分の体のはずなのに、心を置き去りにして膨大にすぎる快楽を勝手に覚えている膣と、それを乱暴に味わう俺の性器の両方に、頭の中で何度も感謝を口にしていた。
紛れもなく、あの薬の効果だ。挿入するだけで空気が入る余裕もないほどぴったりと密着する肉と肉の感触が、男女両方の性器を甘くぐちゃぐちゃにかき混ぜて蕩けさせていた。
「き……っっもち、ぃ……♥♥ あ、ぅうっ……♥♥ あたし、も、あたしも、したぃっ、して、ほしぃっっ……♥♥ リィラ、リィラっ、いいなぁっ、リィラぁっ……♥♥」
目の前で行われるそんなセックスに対し、感じたことのないもどかしい疼きを堪え難いと思いながら、正座の姿勢を崩さないまま股間をしとどに濡らすキスキル。
ぎゅううっとお腹を握り締めながら、自分の相方が犯されるのを『羨ましい』と口にする姿は、どこか倒錯的でもあった。
うらやましい――。そう思うということは、同じことをされたいと願っている。けれど、これを仕置きとするなら――。
「あ、たし、もっ……おちんちん、欲しいぃっ……中に、なかにせーえき、びゅううう、って……♥♥ ~~~~っっ……♥♥」
唾液を垂らしながら、リィラが乱暴に犯されながら絶頂し続ける姿を見つめるキスキル。
腰を動かすうちに自分にも限界が訪れる。この快楽に晒され続けて、遅すぎるとすら言える絶頂。
股間の奥できつく閉まった蛇口の栓がこじ開けられたような感覚を覚えた瞬間――俺は。
「……へ――――っ」
「ん゙っっむ゙ぇ…………え……っ??」
ずぽっっ、と膣から性器を引き抜き。ぎゅっと締まる膣口から噴き出した愛液を浴びながら、思い切り精液を噴き出した。
爪痕が残るほど強くリィラの尻を握りながら。膣奥で思い切り射精したかったという想いを噛み締めながら――外に。リィラの尻や背中に、形が崩れないほど濃厚な精液を、吐き捨てた。
瞬間、じぐりと腹の奥と心に太い棘が突き刺さるような喪失感を覚える。
それは目の前のリィラと、それを見せつけられたキスキルの、両者が感じた想いだった。
「~~~~っっや゙、ぁ゙…………あ、ぁぁあぁぁぁぁぁぁ…………っっ、…………っっ!!!」
「……ぇ、あ……あっっ……ひ……っど……♥ そと、そとに、出す……って、そんな、ぅ、わ……もったいなっっ……ぁ……♥♥」
土下座の形はとっくに崩れ、ひどく心を傷つけられたと言わんばかりに両手でベッドシーツを握りしめるリィラ。
……これで少しは、何かに奪われるという気持ちが伝わっただろうか。膣内に貰えて当然の精液を、目の前で無惨に吐き捨てられて。
あの極上の名器の中で果てたかった気持ちはあるが……あるからこそ、俺の性器は愛液にまみれながらまだ屹立したままだった。
これで仕置きのつもりだったが――ちらと横目で見たキスキルの顔は。
なぜか、ひどく嬉しそうにぐちゃぐちゃに蕩けた笑顔を浮かべていた。
……あの子は、案外……こういうことが好きなのだろうか。
俺はリィラの頭をそっと撫でて、彼女の耳元で、中の具合は最高だったと呟き褒める。
――ひどい、ひどい、嬉しい、大好き、ちゃんと使ってほしい、疼く、ひどい、のが、大好き、好き、好き。
心の内から聞こえてくるリィラの声。この俺専用の肉便器は、ただ使われるだけでも嬉しくてたまらないが――使い心地を褒められたいという、隠れた欲求があることを知った。魂を共有して、はじめて気づくことができたことだった。
リィラを使い、リィラの愛液に濡れた性器を、横のキスキルに向ける。
キスキルは――それでも、へにゃりと崩れた笑顔のまま、正座を崩さなかった。
「……え、ぇへ……つ、つぎは……あたし……?♥ あたしも……せーえき、外に捨てられちゃう、かんじ――んぅっ♥」
ホログラムの向こうにあるボディスーツ越しの胸をそっと掴み、根本から搾るように揉む。
互いの息と息が触れ合う距離で、互いの目を見つめながら、俺は胸を、キスキルは竿を。
こういう風に触ってほしいと、互いが互いの想いを知っているからこそ、ただの愛撫ひとつが互いの興奮をこの上ないほど高めていく。
スーツ越しの胸の感触を味わいながら、余計に疼きを加速させる焦らし合うような刺激にも悦ぶキスキルに、俺は心の内で訊ねた。
――こういう扱いをされること。好きなのか?
その問いかけに、キスキルは小さく、けれどしっかりと頷いた。
「好き……かも……。って、いうより……ね」
キスキルは蕩けた顔で俺を見ながら、酷い疼きを堪えながら言葉を紡いだ。
「マスターくんが、あたしたちのこと……大好きって、気持ちいいって思ってくれてるのが、ちゃんと……伝わるから。その上で、我慢までしてくれて……いじめてくれる、って、ことが……すごく、すごく、想われてるなって思えて……幸せ、って、いうか……ぇ、えへへ、おかしいよね、放置されてるだけなのにね……? おまんこ、お預けされてるだけなのに、それが、すっごく、すっごく気持ちいい……♥♥ んっっむ♥ ん、ぅっっ♥ んむっ、ん、そ、こういうの、らいひゅき……♥♥」
その姿がひどく愛おしく思えて、言い切ったあたりで彼女の唇を奪った。
性器には触れないまま、ただシたいと疼く男女の性器を放置したまま――こういうキスが本当に大好きとキスキルは心と言葉で伝えてきた。
すぐに押し倒して犯せる女体が目の前にありながら、食らいつくのを堪え続ける。この時間は、確かに――愛おしい。
「……ね」
不意にキスキルがぴったりと体を密着させて、耳元で呟いた。
「どうするの……。あたしには……なに、するの? やっぱり……おしおき……?」
わざと、少しだけ腰を浮かせて、膝立ちになって。胸に触れていない方の手を掴み、自分の股間へと招いて。
――そこに触れた瞬間。熱湯を吸った、柔らかいスポンジを握ったような感触があった。
揉もうと少し指を曲げるだけでぬるりと滑り、ぐぷ、と入り口に中指と薬指が触れる。
「お゙――――ッッ!!?♥♥」
たったそれだけの刺激でも、キスキルの体はびくんと跳ねる。脳裏に伝わる、『触ってほしい』と『触ってほしくない』の気持ち。
ぎゅっと彼女の体を抱き寄せて、後ろ髪を優しく撫でながら、熱湯に触れている指をさらに奥深くへと突き進ませた。
熱く柔らかい、何枚もの舌を重ねたような肉の感触が指を包む。リィラのそれとは違う、入れていて心地いいと感じるような優しくいやらしい肉の感触。
「ちが――っっ、指、じゃ、なくて、~~~~っっ♥♥ ぅ、ごかしちゃ、だめ、駄目っっ――」
体を密着させると、それだけ魂の距離も近くなる。狂おしいほど弄ってほしい、けれど欲しいのはそれじゃない。
しきりにそう訴えながらも、キスキルの心は膣内のどこを責めてほしいかをはっきりと教えてくる。
それに従って容赦なく彼女の膣内を掻き回しながら、もう片方の手で彼女の頭を撫で、耳元で愛を囁く。
「…………っっ、…………♥♥」
意思と言葉、その両方で伝える好意。キスキルが可愛い、愛おしい、悶えて喘ぐ姿が愛おしくてたまらない。
耳から伝わる声で頭の中を蕩けさせ、やかましく水音を立ててしきりに責め立てられる股間は疼かされ、思考のすべてが唾液と愛液になって体外に流れ出ていく。
「~~~~っっとに、ほんとに、だめ、だよ、そういうことするの……っっぐぃぐいぐいぐいぐ、イ、っっ――――♥♥」
がくん、びくんと破裂するようにキスキルの腰が跳ねる。動く腰から手は逃させず、絶頂の最中にある彼女の肉を尚もかき混ぜる。
行為はいくらでもできる。今すぐ彼女を押し倒して犯して精液を吐き捨てたい気持ちは溢れている。それを押さえてでも、今。
ぐちゃぐちゃに蕩けていくキスキルの顔と、声と、心を、堪能したかった。
――余裕を無くしてイかされ続けているだけの彼女の全部が、愛おしかった。
「~~~~ッッぎぅ――♥♥ ふぎぅ、ぐっぅ、ぁ゙っっ……♥♥ ――っっぇへ、えへ、えへへへへへへぇ♥♥ ~~~~ッッぇへへへへへえへっぃひぇっっ♥♥」
絶頂に絶頂と絶頂を重ねさせられ、どぷどぷと股間から熱湯のような愛液をこぼし続けるキスキルの声が、ある瞬間に変わった。
悲鳴のような喘ぎ声は聞き慣れていたが、彼女はどうやら、限界を超えて絶頂し続けると笑ってしまうらしい。
はじめて聞くその笑い声が本当に愛おしくて、俺の体を必死で抱きしめる彼女の背中をぎゅっと抱きしめ返しながら、溢れ出る愛液を掻き出し続けた。
重なり続ける絶頂の快楽は、俺自身にも少なくない快感のフィードバックをもたらす。
堪え続けていた射精感は限界に近づき、二度目の空打ちをしそうになる。それを迎える前にキスキルを押し倒し、涙と鼻水と唾液でぐちゃぐちゃになった彼女の笑顔を正面から見つめた。
「ごめんなさっっごめんなざいマスターっっほんものちんぽじゃなぐて指ちんぽでイかされまぐるざこまんこでごめんなざいっっごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃぃいいっっん゛っっむ…………」
衝動のまま、彼女の唇にむしゃぶりつく。
顔中から溢れた液体が入り混じった味がするそれをしゃぶり、ねぶり、味わいながら飲み下し、心を砕く絶頂とともに溢れる笑い声を口で受け止めた。
ぎちぎちと締まり、どぷどぷと愛液を漏らし続ける膣内から、指の腹でひっかくように手を引っこ抜く。どぷりと溢れる愛液を手に浴びた直後、空いたばかりの穴に先走りに塗れた性器の先端をあてがった。
「あ」
笑顔だった表情が、その一瞬で目を見開いて凍り付いた。
挿入するためだけにスーツに開けられた穴、そこめがけて腰を突き出すと共に、彼女の体に覆い被さる。
爪を立てて掻きむしりたくなるような、痒みにも似た疼きを抱え続けた性器と性器が混じり合い、腹の底から息と声が漏れた。
「――――ぉ゙」
その刺激の強さに腰が砕ける。同期する快楽でぐちゃぐちゃになっていく頭をよそに、性器は膣肉の感触に歓喜しながら、キスキルの膣奥で精液を吐き続けた。
堪え続けた疼きはそれでも、吐いても吐いても収まらない。確実に孕ませられる牝に種を付けて尚、痒みのような疼きが性器に纏わりつく。
白目を剥きかけて、意識を手放しそうになっている彼女の膣を、今度はただ疼きを消すためだけに使い始めた。
「~~~~っっ??♥♥ っ???♥♥ ぁ゙、ぇへ、ぃひ、えへへへへっっ、ぇへ――ぃ゙っっ!!!♥♥」
性器をぞりぞりと余すことなくねぶる無数の舌。凶器のような名器だったリィラのそれとまるで違う、ぴったりとこちらの形に馴染んで貼り付く膣肉。
その内側には味蕾のようなツブがあり、ただ挿入しているだけでも微弱な刺激が性器を包む。互いに疼かせ合った性器と性器を悦ばせるのに、この上無い形をしていた。
吐き出したばかりの精液を自分の雁首で掻き出しながら、疼きを解消させるために膣肉で性器を掻きむしる。目の前でばるんばるんと円を描いて揺れ動く、スーツに包まれた乳肉を鷲掴み、その感触をオカズにしながら、腰に体重を預けるようにして何度も彼女の膣奥にこびりつけるように精液を吐き出し続けた。
「…………っっ♥♥ お゙ぉぉぉっっ、ぉ゙……♥ ぇへ……ぇへへへへへっ、えへへ、ぃひ、ぇへ、えへ――――っっ♥♥ あ゙~~~~っっ……♥♥」
射精しても射精しても、結合部から愛液混じりの精液が噴き出ても、心の奥で彼女の想いが伝わってきて、それが性器を内側から刺激する。
膨大な快楽に希釈されて薄まった意識。舌を垂らして笑い声しか出せなくなった口に代わり、繋がった魂から彼女の想いが伝わる。
モノのように扱い、乱暴に腰をぶつけるだけの、いつか彼女が言った『およめさんとするセックスじゃない』、その言葉を再現するような行為にも、彼女は。
『大好き』。『嬉しい』。『大好き』。そう、伝えてくれる。受け止めた上で、喜んでくれている。
それが本当に、本当に嬉しくて、愛おしくて。数えきれないほど、彼女の中で絶頂を繰り返した。
――ようやく疼きが収まり、満足しきった性器を、ごぷ、と自分が吐き出した精液に押し出されるようにして引っこ抜いた。
へたりこんでいるが、まだ僅かに血が集まっている。刺激を受ければすぐに首を持ち上げることはよくわかった。
キスキルの意識は……辛うじて残っている。彼女も、疼きが収まる満足感と多幸感に浸りながら、目を閉じて体を痙攣させていた。
「おつかれ。マスターくん」
後ろに居たリィラが声をかける。振り向き、彼女が手に持っているものを見る。
長方形の――カロリーバー? それと、ペットボトルのミネラルウォーターだろうか。
それを齧りつつ、俺にペットボトルを手渡しながら、ぐい、と顔を近づけられる。
「再会したお嫁さんとするえっち……気持ち良かった? って……まあ……わたしも味わってたから知ってるんだけどさ」
それから、ぱくりと口を塞がれる。反射的に開いた口に流し込まれたのは、彼女の口で咀嚼されて柔らかくなった、あのカロリーバー。
立て続けのセックスで失った体力は思っていたよりも多かったようで、飲み下すそれがやけに美味く感じて、リィラの唾液一滴に至るまで貪ろうとしきりにしゃぶりついた。
「んっっ……♥♥ んむ……んっ、むぁ…………っ。もう、へばってるお嫁さんの前でこんなキスするとか……」
……俺にとっては、リィラも同じ、お嫁さんだけど。
心の内にぼそりと口にしたその呟きも、今は彼女に伝わってしまう。ぽっと顔を赤くしたリィラは、照れ隠すようにベッドの脇から何かを取り出した。
数本のカロリーバーと、ミネラルウォーター。
いつの間にか大きなクーラーボックスがそこに並んでいて、所狭しと並べられていた。
「……お二人がえっちしてる時に持ってきたよ。ウチにあった保存食……。だいたい……一週間ぶんくらいかな。あと、これとか」
もう一つリィラが取り出したのは、丸いボールのようなもの。
それの頂点にあるツマミを外すと、ボールはぶわりと広がり、青いシーツに変わった。
これは、いわゆる…………ペットシーツ、だろうか。
「そ。コレとコレ、食べて飲んでれば十分だし……出したいもの、出したいときには……ね」
その為の準備を……こっそりと行っていたのか。偉い、助かる。そう言ってリィラの頭を撫でると、めったに崩れないリィラの表情が蕩けた笑顔に変わった。
受け取ったミネラルウォーターを飲みながら、食事と排泄の用意をこのベッドの上で完結させた意味を考える。
それから――リィラが感じている、お腹の疼きの理由を。つまりは、要するに……。
「……これから、一週間。……ずーーっと……お嫁さん二人と、えっちだけする生活。しようね」
…………改めて。薬や超融合の効果もあれど。
つくづく変態的な性欲をしていると、彼女と、少しずつ意識が回復している彼女と、その言葉でいきり立つ股間の疼きを感じながら、そう思った。
カラになったペットボトルをベッドの脇に置き、またカロリーバーを頬張っているリィラに、キスキルにも食べさせてやってほしいと伝える。
「ん」
こくりと頷き、リィラは寝転がるキスキルに覆いかぶさると、俺にしたように彼女の口を塞ぐ。
仰向けのキスキルに上からかぶさる形になるから、必然、リィラの尻はこちらに向く。
……これから一週間。ずっと。それが終わった後も、ずっと、体も魂も、彼女たちと離れることはない。
その実感がふつふつと心の中で興奮に変わり、硬さを取り戻した性器を、キスキルと口を貪り合うリィラの膣にあてがい、ねじ込んだ。
「――ん゙っっぶっっ!!?♥♥」
一瞬で性器を膣奥まで受け入れる、快感という針が敷き詰められた肉の筵。
ほんの一時離れていただけだというのに、渦を巻く無数のヒダとイボの感触がひどく懐かしく、恋しいものに思えて、それを愛でたい一心で腰を打ち付けた。
「んぶっっ、むぐ、んむっっ、ん、ん゙っっ!!!♥♥ ――む゙っっ!!?♥♥」
そうしてリィラの全身を揺らしていると、不意にリィラのうなじにキスキルの両腕が伸びる。
キスキルはリィラの頭をぎゅうっと抱き寄せてキスをねだると同時に、回復した意識で俺に伝えてきた。
――『リィラのことも、ママにしてあげて』。
「~~~~~~ッッ!!?♥♥」
無論だと、一際強く腰を打ち付けて答える。
『待って』。『待って』。『まだ心の準備が』――。リィラの困惑を聞きながら、それすら興奮に変えて一心に腰を振る。
専用の肉便器で性欲を処理するのではなく、二人目の妻を孕ませるための交尾。ぎゅうと締まって性器に快感を突き刺す膣に、褒美をくれてやるつもりで膣奥を叩き続け――こみ上げる射精感に身を任せ、堪えて引き抜くのではなく、本能のままに、何度目かもわからない精液を吐き出した。
「ん゙ッ、ン゙ッッ!! ん゙ッッ!!!♥♥ んぶぇっっぉっお゙ぉぉぉぉぉおおおおおぉぉおっっ!!!♥♥」
何度も吐き出したにも関わらず、朝一番に流す小便のような量と濃さの精液が、リィラの奥で溢れ出た。
性器にぴったりと吸い付く膣の中で、尿道をこじ開けて精液を流し込む、その快楽にぶるぶると体が震える。
今まで何度も味わった快楽。これからずっと味わい続ける快楽。犯している女体も同じ、筈なのに、それでも。
これが初めて味わう女体と射精の味だと言わんばかりに、彼女たちとするこの行為は、味わう快楽は、ずっと新鮮なまま、一度たりとも飽きが来ない。
彼女たちを犯して、喜びを覚えて、喜ばれていると彼女たちが感じて、その喜びが俺に伝わって――。
ずるりと性器を引き抜き、ごぷりと溢れる精液を浴びて、ぐ、っとリィラの肩を掴んで寝転がす。
自身の唇に舌を這わせ、舐め取る様子を見せるキスキル。不意に犯された快楽にまだ子宮を疼かせているリィラ。
ベッドの上に、二人が並ぶ。ともに仰向けになって、注ぎ込んだばかりの精液を股間から溢れさせ、黒いスーツを一点だけ白く染めて。
「……マスターくん……っ♥」
「……はぁ…………はぁっ……♥ ……マスター、くん……っ」
とろとろに蕩けた彼女たちの好意が、魂を通じて流れ込んでくる。
目の前に二つ並ぶ女体の、熱も香りも感触も、すべてここにある。その感覚はすべて、現実のもの。
――ぷつりと、思考することを止めて。
目の前のイビルツインを、自分のためだけに在る女体を抱き。
吐き出した傍から溜め込まれていく精液を、ひたすらに流し込み続けた。
*
初日はそうして過ごした。二日目もそうして過ごした。
三日目には休み、絶頂に至らない前戯だけをして過ごした。四日目にはけだものになった。
五日目には――六日目には、七日目には――。まともな会話や思考があったかすら定かではない。
夢のようにぼんやりとした、快楽に満ちた日々を過ごし。そうして迎えた八日目の朝。
「……ん…………、……」
「……くぅ……くぅ…………」
ふと目を覚ますと、いつかと同じく、両腕に彼女たちが抱かれていた。
あのボディスーツは二日目にはもう脱いでしまった。剥き出しの裸体が、歯型がつけられて先端を赤く腫らしたおっぱいが、俺の腕に押し付けられている。
俺自身の体も全身がじわじわと快感と小さな痛みを覚えていた。起き上がって体を見下ろすと、いたるところに赤いキスマークがついていた。
ベッドは冷たく、ぎゅっと押すだけでじわりと水分が溢れる。三人分のあらゆる体液を吸って、ずいぶん不快になっていた。
部屋の隅にいくつも積み重なったカラのペットボトルと、カロリーバーの包み紙と、いろんなものを包んで閉じた丸いペットシーツ。
ふと意識を向けると、臭いもひどかった。ひどい有様だ。きっと掃除をして片付けるのは俺の役割だ。
……ただ、それでも。窓から見える街並みと、見知った天井と、両腕のイビルツインを抱いていると。
いつか感じた喪失感はどこにもなく、ひどく幸福な充足感だけが、今の俺を満たしていた。
「……マスターくん…………大好きぃ……」
「好き……好き、好き、好き……。……ん……」
寝言ですら愛を囁いてくれる彼女たちから、するりと腕を離す。
それから、朝であるが故に屹立した俺の性器を。
「……ん゙っぅ……♥♥」
体温で温まった精液を溢れさせている膣内へ、ぬるりとねじ込んだ。