多分子供向けTCG世界か何かに転生したっぽいが、俺だけ成人誌の世界なんだが? 作:輝く羊モドキ
魔技が死んだ。
俺の目の前で今、魔技の死体が横たわっている。
まだ中学も卒業してない、
手足から骨を抜かれ、内臓を全て引きずり出された身体からは吐き気を催す程の腐敗臭がした。
単純な話。俺は
唯一生前の面影を残していた魔技の頭は見た目以上に軽くなってしまっていた。
俺はカグラを呼び、腐っている死体を燃やすように指示した。
赤い、紅い地獄の炎は、瞬く間に魔技の身体を塵にしていった。
俺は抱え上げた魔技の表情だけでも整えて、その炎の中へ差し入れた。
後には、何も残らなかった。
◆
中学校に通うのを辞めた俺は、裏の世界へ降りて行った。
裏の世界というのは所謂
『裏』の世界は、ただの人間である俺が生きられるような場所ではないが一日二日程度であれば問題なく活動出来る。影から影、闇から闇へ渡り歩くように生きていた。
そして『表』の世界では時々
ある日は気に食わないヤツを
ある日は闇の組織から、別の組織を
そしてある日は、俺が気に食わない組織全てを
そうして、いつの間にか俺は
元々、下地は有った。中学の時に一つの組織を滅ぼし、『機関』とも呼ばれる正義側のSW組織の襲撃から逃げ延びた俺は裏の世界において有名だった。
そして、今も。
俺の目の前に這い蹲って命乞いをしているのは、表の世界において名の知れ渡った超巨大財閥の会長であり、裏の世界において数多の人間を滅ぼしてきた『死神』の名を持つ老人。
あの日、魔技が無惨に殺された原因の大本。
「わ……ワシを殺せば、この世界がどうなると思う!!この『帝王グループ』が無くなれば、この日本は……否、世界全体が傾くぞ!!」
俺は持っていた鉈を老人の腕に向けて振り下ろす。跳ねる腕。舞い散る血。泣き叫ぶ老人。
「違うだろう、言うことが。俺が聞きたい言葉はそんな言葉じゃ無いんだ。分かるか?」
「ひぃ……ぎひぃ……か、金なら幾らでも払う!10億か!?100億か!?お、お前が一生掛かっても使いきれない大金をやる!!」
「そうじゃないだろう。そうじゃないんだ。そんな言葉が聞きたいんじゃない」
鉈を反対の腕に向けて振り下ろす。ガッと鉈が老人の骨で止まり、その腕を繋ぎ留めていた。
「ぎぃやあアアア!!!?」
鉈を強引に引き抜き、再び振り下ろす。ドガッと鈍い音と共に跳ね飛ぶ腕。溢れ出す血。いつ死んでもおかしくない顔色だが、
「さあ、お前のターンだ」
「が……カハッ……」
老人の手札は10枚。フィールドにはスピリットが2体、どちらも強力な効果を持ち、破壊耐性を持っている。十分な勝機はあるだろう。
無論、
「無くなったライフの代わりに金か身体を支払って攻撃を受ける特殊ルール。随分面白いルールだ。心が躍るよ。なあ?」
「ひぃ……ひぃぃ……許してくれ……金なら幾らでも払う……」
「お前が始めた
3分。『スピリット・ワルツ』の基本ルールにおける1ターンの持ち時間だ。
それが過ぎ、俺のターンへと回ってきた。
「100万払ってドロー。メインフェイズ、更に100万払ってスピリットを1体召喚。『虚構の勇者』」
『あはははは!無様無様ァ!!』
フィールドに現れたのは、全身を返り血に染めた女勇者。魔王を殺し、生まれ故郷に凱旋した勇者を待っていたのは国王による卑劣な罠だった。散々に甚振られ、犯され、処刑される直前に逃げ出せた勇者は、処刑人の持っていた剣を奪い取り、国王の首を切り落とした。
【虚構の勇者】スピリット LV8
・このカードは相手に直接攻撃した次のターン、手札から召喚出来る。もしくはフィールド・手札のアイテムカードを2枚捨てて手札・墓地から召喚出来る。
・このカードが召喚に成功した時、手札のスピリットカードを1枚選択して効果を発動出来る。選択したスピリットのLV以下のフィールド上のスピリット1体を墓地へ送り、選択したスピリットをフィールド上にハイド状態でセット出来る。
・このカードが攻撃した時、カードを一枚めくる。めくったカードがアイテムカードだった時手札に加え、続けて攻撃出来る。それ以外のカードの場合、めくったカードを墓地へ送る。
【虚構の勇者】が持っていた処刑剣を投げる。鋭く回転する剣が相手のスピリットの持っていた金の盾によって防がれたが、その防御の死角から素早く接近した【虚構の勇者】は相手のスピリットの首の骨を捩じり折った。
「効果でお前の【黄金王ベーリカ】を墓地へ送り、手札から【不死身のツーリスト】をセット。更に100万払って手札からアイテムカード【地獄の呼び声】を発動。効果によってハイド状態の【不死身のツーリスト】を表側表示にして装備させる」
『ははっ』
燃え盛る獄炎から【不死身のツーリスト】が現れるが、その炎による影響を受けていないかのように笑いながら背負ってるバックパックから拳銃を取り出した。
【地獄の呼び声】アイテム
・ハイド状態のスピリットが存在する時のみ発動出来る。ハイド状態のスピリット1体を表側表示に変更し、このカードを装備させる。
・このカードを装備しているスピリットが戦闘する度にコイントスを行い、その結果で以下の効果を得る
●表 戦闘している相手スピリットを破壊し、続けて攻撃出来る。
●裏 このカードを装備しているスピリットを破壊し、このカードを戦闘した相手のスピリットに装備する。
【不死身のツーリスト】スピリット LV7
・このカードを召喚する場合、フィールド上のスピリット2体を墓地へ送る。もしくはフィールド上のLV4以上のスピリット1体を墓地へ送り、ハイド状態で召喚する。
・1ターンに1度、このカードをハイド状態に出来る。
・このカードがハイド状態から反転した時、相手の手札を1枚確認する。確認したカードがアイテムカードだった場合、自分の手札に加える事が出来る。それ以外の場合、そのカードを墓地へ送る。
・このカードがフィールドから墓地へ送られる時、墓地のアイテムカード1枚を手札に加える。
・墓地にこのカードが存在する時、手札のアイテムカードを2枚墓地へ送って発動出来る。このカードをハイド状態でフィールドに呼び戻す。
【不死身のツーリスト】が手に持った拳銃で老人の手札を打ち抜き、舞い上がったカードが俺の手札にクルクルと落ちてきた。
「【黄金の国からの招待状】アイテムカードだから俺の手札に加える。さあ、お待ちかねのワルツフェイズだ。まずはお前の腕を奪った【死神冥土長】で攻撃。効果でそのまま直接攻撃だ」
「や、やめ―――」
【死神冥土長】は相手フィールド上のスピリットが『呼び戻された』スピリットのみの場合直接攻撃が出来る。
黄金に身を包んだ騎士が行く手を阻もうとするが、振り回した剣は【死神冥土長】をすり抜けていった。
直接攻撃、成功。
「ライフが0のお前は金か身体を支払う必要があるが、もう金は無いもんなぁ」
鉈を老人の脚へ振り下ろす。
「ぎぃやああああああああ!!!!!」
絶叫と共に泣き別れる右足。ドボドボと流れ出る血は老体にとって既に致死量を超えているのだが、既に『闇のゲーム』と化して久しい。
【死神冥土長】スピリット LV10
・【メイド契約】カードとこのカードの効果でのみ召喚出来る。
・このカードがフィールド上に存在する限り、相手は墓地からスピリットを召喚することが出来ず、『墓地のカードを呼び戻せる』効果を持つプレストカードの効果は無効化される。
・相手フィールド上の墓地から呼び戻されたスピリットは効果の発動が出来ない。
・このカードは相手フィールド上に墓地から呼び戻されたスピリットのみ存在する時、直接攻撃が出来る。
・直接攻撃に成功した時、デッキから1枚カードをドローする。ドローしたカードがプレストカードの時、もう一度だけ攻撃が出来る。
・このカードがフィールドから墓地へ送られた時、墓地の【メイド契約】カードを可能な限り手札に加える。
「効果で1ドロー。……追加攻撃は発動しない。続けて【不死身のツーリスト】の攻撃。『
『はははっ!』
【不死身のツーリスト】が手に持った銃をクルクルと回しながら黄金に身を包んだ騎士に駆けて行く。
黄金の騎士は持っている剣を振るい、放たれる銃弾を切り落としながら迎え撃つ。
銃の間合いから剣の間合いに突入した時、【不死身のツーリスト】は持っていた拳銃を真上に放り投げた。
「【地獄の呼び声】の効果。戦闘の度コイントスをして、出た面によって効果を得る」
俺がコイントスをすると同時に、【不死身のツーリスト】は懐から小さな拳銃を取り出し、真上に放り投げた拳銃の引き金に向けて打ち出した。
「コイントスの結果は……表だ」
小さな拳銃から飛び出した小さな銃弾は正確に拳銃の引き金に当たり、その引き金を引いた。
空から放たれた銃弾が黄金の騎士の着ていた鎧の隙間を縫うように撃ち抜き、大きな隙を晒し、【不死身のツーリスト】のバックパックから引き抜かれたサバイバルナイフによって顔面に大穴が空いてそのまま死んだ。
「そのまま続けて攻撃。コイントス……裏だ」
【不死身のツーリスト】の足元から獄炎が噴き出し、その身を呑み込んでいく……が、それでも【不死身のツーリスト】は笑っていた。
「【地獄の呼び声】は本来戦闘した相手のスピリットに装備されるが、直接攻撃時には無意味な効果……だが、どうやらそうでもないらしい」
老人の周りから噴き上がる豪炎。カードもお前が地獄落ちに相応しいと言っているようだ。
「【不死身のツーリスト】が墓地に送られた時、墓地のアイテムカードを回収する。【虚構の勇者】で直接攻撃。『悪王殺し』」
『あはははは!!あァははははははは!!!!』
怒りに狂った女勇者の剣が阻むもの無く老人の残った脚を断ち切る。
不愉快な絶叫と血肉の匂いが当たりを包む。
「ぎゃあああああ!!!がぁ……!がはァッ……!あ……あぁ……熱い……熱い……!!じ、地獄に落ちるのか……このワシが!?嫌じゃ!!嫌じゃ!!!死にたくない!!!死にたくない!!!!た、頼む……殺さないでくれ……!ワシの出来る事なら何でもする……金なら全てやる……!だから……助け、助けてくれぇ……」
「【虚構の勇者】の効果発動。デッキから1枚めくり、そのカードがアイテムカードだった場合、続けて攻撃が出来る」
「頼む!なんでもする!!ワシの全財産全て貴様にやる!!だから命だけは!命だけは!!!」
「【無慈悲な鼓動】アイテムカードだ。【虚構の勇者】で続けて攻撃」
『あァはははははハははハハは!!!!』
「た、助け―――」
【虚構の勇者】の剣が老人の首を落とす。
もう支払える金も、身体もない。
「―――な、い……生きて……?」
「【虚構の勇者】の効果発動。デッキトップは【強欲の剣】アイテムカードだ」
『ヒひゃははハはハは!!!!』
剣が老人の胴体に振り下ろされる。
「がッ、ぎぃやああああああああ!!!!」
「効果発動。デッキトップはアイテムカードだ」
『ひゃァあはハはははは!!!!』
更に剣が振り下ろされる
「ぎゃがああああああああ!!!!」
「効果発動。アイテムカード」
更に剣が振り下ろされる。
「効果発動。アイテムカード」
更に剣が振り下ろされる。
「効果発動。アイテムカード」
更に剣が振り下ろされる。
「効果発動。アイテムカード」
更に剣が振り下ろされる。
「効果発動。アイテムカード」
更に剣が振り下ろされる。
「効果発動。アイテムカード」
更に剣が振り下ろされる。
「デッキが切れたので効果の発動は出来ない」
目の前には挽肉同然となった老人の胴体。両腕。両脚。そして首。
そんな状態でも
「が……ァ……ぁぁ……」
「ほら、望み通り『命だけ』は助けてやったぞ」
地獄の業火が老人の肉体を燃やしていく。腕、脚、粉々に砕けた胴体がゴウゴウと音を立てて消し炭へと変わっていくが、頭だけは無事だった。
「助け……助けて……」
もはや正気を無くした老人の頭を捨て置き、俺はこの部屋から立ち去る。
それと同時に闇のファイト場が解放され、外に居た黒服達が部屋になだれ込んでいった。
悲鳴と絶叫と、嘔吐の音が響く廊下を歩き、俺は『裏』の世界へと姿を消した。
◆
『帝国グループ』の会長が
今日もまた、
表の世界を覗き見れば、今回は邪神と呼ばれる巨人が暴れているようだ。
「……行くぞ」
何度目かも分からない呟き。意志の力でデッキを呼び寄せ、暴れている邪神の下へ降りていった。
邪神の下に来たときには大勢は決していた。
『主人公』とその仲間達はボロクズのように地面に転がり、唯一立っている銀髪の少女がその身を捧げて邪神を封印しようとしている所だった。
またこのパターンか。
似たような光景は今まで何度見てきただろうか。巨悪に立ち向かい、勝てず、友を犠牲にして、なお
そうして世界は滅び、『無かったことにされる』。
『無かったことにされた』世界は、何も起こらなかったかのように振る舞い、そしてまた新たな巨悪に滅ぼされる。
何も学ばない。何も学ばないんだ。俺以外。
『主人公』は変わらず巨悪に勝てないほどに弱く、周りの友達も呆れる程に弱く、唯一の異能持ちも笑える程に弱い。
「グラトニー」
そして何より笑えるのが、それでも未だに
「ソレーヌ」
何度も何度も何度も何度も。時間が立てばいずれ成長するとでも思っているのか、いつか変化が起きるとでも思っているのか。
「
ならば変えてやろう運命を。変えて見せよう台本を。
全部全部、台無しにしてやろう。
「名称の異なるLV10スピリット3体を生け贄に。現れろ、神すら喰い尽くす怪物。【世界喰らう大顎門】」
まずは邪魔なお前からだ、デカブツ。
世界に、穴が開いた。
◆
オレ達は、負けた筈だった。
邪神タイタン。その眷属達を倒し、その身に世界の邪悪を集めたと言われる巨人の神との勝負で、オレ達はあと一歩の所で
オレ達に勝利し、世界を滅ぼそうとするタイタンに一人立ち上がる銀髪の少女。オレの幼馴染の少女、ユウカ。
「私が、私の全てを賭けて止めるから……!」
「ユウカ、待て!!」
「さようなら……みんな……」
ユウカが、その身に宿した神聖を意図的に暴走させようとしている。闇精霊に対抗するための一族としての力を全て使って、邪神に立ち向かおうとしている。
くそ……クソッ!!!強くなると決めたのに!!!オレは……結局友達一人さえ守れないのか……!!
ユウカの身体から光が溢れ出し、自身の命ごと邪神を倒そうとしているのをオレは蹲りながら見ている事しか出来なかった。
「えへへ……私ね、皆と一緒に居られて、楽しかったよ……だから、皆は生きて―――」
「ユウカ!!」
「ユウカちゃん!」
「ゆ、ユウカ……サン……!」
光の中へ消えていくユウカを、オレ達は……ただ、見ている事しか出来なかった。
「見飽きた茶番だ」
ぞっ、と。
突如背筋が凍りつくような怖気が走ると共に聞こえてきた言葉。
「グラトニー」
大人よりも遥かに大きな巨体を持つ黒色の液状人間が。
「ソレーヌ」
全身が塵に溶けていっている小さな子供が。
「クラマ」
煌びやかな赤い衣装を着た、妙齢の女性が。
溶けて、溶けて、混ざって。
「名称の異なるLV10スピリット3体を生け贄に。現れろ、神すら喰い尽くす怪物。【世界喰らう大顎門】」
世界に、穴が開いた。
そして。
そして。
オレ達を蹂躙した邪神タイタンは、突如現れた超巨大で邪悪な見た目をした怪物に呑まれ、消えた。
あまりにも恐ろしい。あまりにも悍ましい。
その巨体に対してあまりにも小さな双眸が、オレを貫いた。
その巨体が、僅か。ほんの僅かオレの方を向いた。ただそれだけで。
オレは全身が燃え上がるような、あるいは全身が凍り付いたかのような。それでいて全身の血が沸騰したような、全身の筋肉が痙攣したような。
いうなれば、そう。
たとえるなら、そう。
圧倒的な捕食者を目の前にした、
「―――ぁ」
そんな気分になったのはどうやらオレだけではないようで。
俺の近くで倒れていた友達も全員全身をガタガタと震わせながら目の前の化け物から目を背けずにいて。
全身から光を放っていたユウカは、その光を消失させて腰を地面に落とし、音にもならない声を上げていて。
オレ達全員、全身の穴という穴から液体を垂れ流していて。
「これが『主人公』の姿か?」
あまりにも場違いな、全てを嘲笑うかのような、それでいて諦めているかのような、そんな、声が耳を打つ。
「これが『主役級』の姿か?」
まだ成人してないような……否、高校生の自分達よりもまだ幼そうな姿の男の子が、悠然と。堂々と。
歩いてくる。
「高校卒業。
何の変哲もない。未だ中学生か、ギリギリ高校一年生だろうかと思えるような子供が、化け物の前を平然と歩いている。
「物語は何時になったら始まるのか。そして終わるのか。小学生編。中学生編。高校生編。そして、大学生編?馬鹿が。対象とする視聴年齢は何歳だよ」
意味は理解出来るが、何を言っているのかが全く分からない言葉を紡ぐ。
「今年の最後。……今年度の最後って言っておくか。それで全部、全部終了だ。何もかも、一切合切。ヒーローは悪を倒して、メデタシメデタシ。物語の終わりに丁度良い、だろ?」
誰に向けて話しているのか、あるいは誰にも向けてないただの独り言なのか、嫌にハッキリと聞こえる言葉がただ空へ溶けていく。
邪神が降臨したことで黒く、黒く染まっていた空は、その邪神が化け物によって喰われた事で元の色に戻っていた。
「つまらないつまらない、退屈な物語の結末は何時だってそう。見る者が居なくなっての打ち切りが相応しい。それが嫌なら、テコ入れするしかない。だと言うのにいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでも」
青空の下で。巨大な怪物と、その前に倒れているオレ達と、間に座り込んでいるユウカと、その、目の前に立つ男の子。
「おめでとう。これで最後で、これが最後だ。この世界はもう、
その目には、何も映していなかった。
「そういうわけで、俺がラスボスだ。どうかその手で、俺を殺してみてほしい」
シニカルに嗤った男の子が、手を振り下ろした。
そして世界に、再び。巨大な穴が、開いた。
◆
世界は、変わった。
大きく、変わった。
世界中、ありとあらゆる場所に現れるその『男』は、破壊を齎していった。支配を齎していった。
破壊は、支配は、『世界』だけでなく『
多くの国が滅んだ。多くの国が支配された。
そして、多くの国が『男』に立ち向かった。
『男』を倒す為に、あらゆる
『男』を倒す為に、世界中からプロ・アマ問わず強者が集められ、討伐隊を結成した。
その中には、この世界の『主人公』達も居た。
『男』が居ると思われる、
大穴の中そびえ立つ巨大な城に向けて、進軍した。
そして。
そして―――
「何度繰り返す。何度繰り返したと思う。何度繰り返されたと思うんだ。なあ。分からないか。分からないかぁ。痛みを伴わなければ。苦しみを得なければ。何も進んでない。何も成長してないじゃぁないか『主人公』」
「や……めろ……」
「喚いて、嘆いて、それで世界は良くなると?違うだろう、何もかも。……ああ、どうにも。まあ、
「ひ……嫌……いやぁ……し、死にたくな―――」
「ユウカ……ッ!!あ、あああああああ!!!!!」
「おい、コイツは『丁寧に』送り返してやれ」
「お前おまえオマエェェェ!!!!!」
「ユウカとやらが自爆するのは良くて、目の前で殺されるのは駄目な理屈が分らんな」
討伐隊は全滅。
僅かな生き残りの内、心が折れたものは皆自身の故郷へ戻り、残り僅かに残された世界の余命を有効に使おうとした。
討伐隊の結末を知った民衆は、この世界の終わりを悟った。
そして、一人。最後の、一人。ただ、一人。
最後まで抗おうとする一人は。
「なあ。俺をこの世界に転生させた神様ってのが居るとして。結局。その神様は俺に何をさせたかったんだろうな」
「さあな。ただ一つ言えることは、この世界はもはや本来の流れに戻ることは無いということだけだ」
「はは、ナイスジョーク。もしその時になったら、
「
全部を諦めて尚行動する系の舞台装置君が癖かもしれん。